[↑ 命どぅ宝/沖縄を再び戦場にするな! (2022年05月15日、朝日新聞)] (2022年11月18日[金])
番犬様の超デタラメ、文句も言わない主権なきニッポン政府。プーチン氏に嗤われ、蔑まされるはずだね。《植民地》ニッポンの中の沖縄。番犬様はやりたい放題だ。主権なき非《独立国家》の自公政権は、番犬様に沈黙。
『●巨大新基地建設による辺野古破壊…プーチン氏に《主権を行使できて
いない実例》と指摘されてしまう始末』
『●和泉洋人首相補佐官…《日本の民間企業に建設協力を打診し、
便宜供与を匂わせていた…徹底的に民意をないがしろにする政権の姿》』
「《これは安全保障政策ではない。日本をぼろぼろにすることと
引き換えにした米国への隷従であり、「売国的」ですらある》…
ホシュやウヨクの皆さんの大好きな売国奴という言葉。でも、一体誰が
《売国》奴なのでしょうか? 皆さんのお嫌いなプーチン氏に
《主権を行使できていない実例》と指摘されてしまう始末ですよ?」
『●《日米地位協定…あからさまに主権を踏みにじられても、岸田首相は
「現実的に最善の方法を考えていく」とゴマカし、改定に後ろ向き》』
『●目取真俊さん《中台危機を煽って東アジアに軍事的緊張を生み出し、日本
や韓国に米国製の軍事兵器を大量に売り込もうという意図》がミエミエ』
琉球新報の記事【世界遺産やんばる「米軍廃棄物に対策を」 国際NGOが報告、日米に働き掛け強化も】(https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1612333.html)によると、《…沖縄県国頭、大宜味、東の3村の世界自然遺産に接する米軍北部訓練場での廃棄物が撤去されず、土壌汚染も除去されていないとして、日米両政府に調査と対策を求める報告が掲載された。…報告は(1)米軍機騒音による生物への影響が調査されていない(2)遺産に関わる問題が日米合同委員会環境分科会で議論されていない(3)遺産に関する日米合意文書の全文が公開されていない(4)米軍廃棄物が撤去されず、土壌汚染も除染されていない―など六つの問題を指摘。日米政府に調査、対策と情報公開を求めている。OEJPの吉川代表は「WHW報告を活用し、やんばるの森を米軍廃棄物がない『真の世界自然遺産』にするために取り組んでいく」と説明。IPPの河村代表は「米国・米軍から具体的な解決策を引き出すことで、基地問題を解決していく枠組みをつくることにつなげていきたい」と述べた》。
『●立法府の自公お維議員による土地規制法案 ――― 《何のための国会か》
《内閣委員のお一人お一人が問われている》(馬奈木厳太郎弁護士)』
《さらに、法案を先取りするような事件も沖縄では起こった。
米軍北部訓練場の返還跡地である「やんばるの森」に米軍の廃棄物が
残っていることを指摘、その廃棄物を米軍基地ゲート前に並べるという
抗議活動をおこなったチョウ類研究者の宮城秋乃さんに対し、沖縄県警が
威力業務妨害の疑いで家宅捜索に入ったからだ》
『●土地規制法案の先取り ―― 宮城秋乃さんの家宅捜索という見せしめ
…《見せしめの過剰捜査…人権侵害行為》が頻発すること、必至』
やんばるの森での番犬様の超デタラメ、文句も言わない主権なきニッポン政府。
沖縄タイムスの【社説[戦争と環境破壊]危機の拡散 食い止めよ】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1053547)によると、《50年前の1972年6月、スウェーデンのストックホルムで、第1回国連人間環境会議が開かれた。ホスト国のパルメ首相は、講演で、ベトナム戦争を念頭に「戦争こそが最大の環境破壊である」と指摘し、大きな反響を呼んだ。50年後の今年3月。ロシアによるウクライナ侵攻の直後に、日本環境教育学会は同じ表現を用いて軍事侵攻を批判し、「原発への攻撃は地球規模の環境汚染を生む恐れがある」と危惧した》。
『●戦争、環境破壊の最たるもの』
《二十世紀の初めごろ、デンマークの陸軍大将が、こんな法律があれば、
戦争をなくせると考えて起草した法案がある。題して
「戦争絶滅受合(うけあい)法案」▼戦争の開始から十時間以内に、
敵の砲火が飛ぶ最前線に一兵卒を送り込む。順序はまず国家元首、
次にその親族の男性、三番目は総理、国務大臣、各省の次官、
そして国会議員(戦争に反対した議員を除く)、戦争に反対しなかった
宗教界の指導者…▼妻や娘は従軍看護師として招集し、最前線の
野戦病院で働く。権力を持つ者から犠牲になるなら、自らは
安全地帯にいてナショナリズムをあおる政治家は姿を消すだろう》
琉球新報の【<社説>国際NGO対策要求 米軍の環境破壊を止めよ】(https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1612909.html)によると、《世界遺産の保全に取り組むNGO「ワールド・ヘリテージ・ウオッチ(WHW)」は、国頭、大宜味、東の3村の世界自然遺産に接する米軍北部訓練場で廃棄物が撤去されず、土壌汚染も除去されていないとして日米両政府に調査と対策を求める内容を2022年次報告に掲載した》。
『●辺野古「この風景は戦争」:
誇り高き「海猿」の実像は番犬様の飼い主「アベ様のイヌ」』
ところで…、辺野古「この風景は戦争」な、破壊「損」な辺野古を想うと複雑な心境だね…誇り高き「海猿」どころか「アベ様のイヌ」。現実は脇に置くとして、法的にも《その職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認める》わけだ。法律が、現実に追いつく、ホントにいいの?、「海猿」の皆さん?
日刊スポーツのコラム【政界地獄耳/防衛大綱「多次元統合防衛力」とは】(https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202211150000048.html)によると、《安保3文書改定で消え去る運命にあるであろう海上保安庁法第二十五条を書き留めておく。「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」。海保設立の誇りと独立性をついえさせるべきなのだろうか。》
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【https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1053547】
社説[戦争と環境破壊]危機の拡散 食い止めよ
2022年11月8日 05:00
50年前の1972年6月、スウェーデンのストックホルムで、第1回国連人間環境会議が開かれた。
ホスト国のパルメ首相は、講演で、ベトナム戦争を念頭に「戦争こそが最大の環境破壊である」と指摘し、大きな反響を呼んだ。
50年後の今年3月。ロシアによるウクライナ侵攻の直後に、日本環境教育学会は同じ表現を用いて軍事侵攻を批判し、「原発への攻撃は地球規模の環境汚染を生む恐れがある」と危惧した。
ベトナム戦争時の枯れ葉剤による自然生態系の破壊。湾岸戦争時の原油流出による海洋環境汚染…。
戦争で使用された枯れ葉剤や劣化ウラン弾、クラスター爆弾などの兵器は、その影響が後々まで残り、人々の生活を脅かし続ける。
ロシアによるウクライナ侵攻も、環境への影響は甚大だ。公共施設や住居が破壊されただけではない。
砲弾やロケット弾など兵器という兵器が攻撃のために使用されているが、金属破片はどう処理されているのか。
大気、水質、土壌への影響が懸念される。
荒廃した街の復興にいったい、どのくらいの時間と経費がかかるものなのか。
戦場には多くの戦車や戦闘機、兵員輸送車両などが投入され、ガソリンやディーゼルなどの化石燃料を大量に消費する。
軍事行動によって大量の廃棄物が生じるだけでなく、温暖化の原因となる温室効果ガスを大量に排出しているのである。
■ ■
ウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、エジプトで、地球温暖化対策を話し合う国連の気候変動枠組み会議(COP27)が始まった。
温室効果ガスを排出し続ければ、地球表面や海洋の温度を上昇させ、各地に異常気象をもたらす。
実際、気候変動による自然災害は、世界各地で発生しており、対策は急務だ。
だが、ここにもウクライナでの戦争が暗い影を落としている。
脱炭素化と電力の安定供給をどう両立させるか、という問題だ。
各国の対応はまちまちだが、ロシア依存のエネルギー政策から脱却するため一時的に石炭などの化石燃料に回帰する動きも見られる。
自国優先の結果、COP27が実効性のある温暖化対策をまとめることができなければ、先進国と発展途上国の対立を深める結果を招きかねない。
■ ■
茶の間には毎日のように戦争報道が流れる。その衝撃があまりにも大きいだけに、地球温暖化に対する危機感や人々の関心が薄らいでいる印象は否めない。
「気候変動の影響によって戦争のリスクが高まっていく」という指摘にあらためて耳を傾ける必要がある。
気候変動は洪水、熱波、食糧不足などを通して戦争のリスクを高める。
「戦争は最大の環境破壊である」という言葉は、沖縄の人々が沖縄戦と戦後の米軍統治の経験から学んだリアルな認識でもある。
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【https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1612909.html】
<社説>国際NGO対策要求 米軍の環境破壊を止めよ
2022年11月9日 05:00
世界遺産の保全に取り組むNGO「ワールド・ヘリテージ・ウオッチ(WHW)」は、国頭、大宜味、東の3村の世界自然遺産に接する米軍北部訓練場で廃棄物が撤去されず、土壌汚染も除去されていないとして日米両政府に調査と対策を求める内容を2022年次報告に掲載した。
環境団体「オキナワ・エンバイロメンタル・ジャスティス・プロジェクト(OEJP)」がWHWに問題を指摘していた。日米両政府に解決への具体策を提案しており、国際組織への働き掛けを強化する。
世界自然遺産である山原の自然が米軍の活動によって破壊されることは許されない。今回の報告は、この問題が国際問題化している証しである。日米両政府は米軍の活動がもたらす山原への影響を網羅的に調査し、悪化原因を取り除く国際的責務がある。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会は21年7月、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産登録を決めた。世界的に希少な亜熱帯の森に、数多くの固有種が生息する生物多様性を評価した。
「沖縄・奄美」は16年に世界自然遺産の国内候補として暫定リストに記載された。しかし18年に政府が推薦した区域のうち、沖縄島北部地区は、隣に広がる米軍北部訓練場の返還地約4千ヘクタールを含んでいなかったことから国際自然保護連合(IUCN)が生態系の連続性を維持するよう地域の再考を求めるなどしたため、世界自然遺産登録まで長期間かかった経緯がある。
返還跡地からは、放射性物質や薬きょうなどの廃棄物が見つかっている。16年の訓練場の過半の返還に伴い、ヘリパッドが残りの訓練場内に併設され、米軍は昼夜を問わず訓練を繰り返し、騒音や振動を引き起こしている。
今回の報告内容は、これらを背景に作成された。報告は、米軍機騒音による生物への影響が調査されていないことや、遺産に関わる問題が日米合同委員会環境分科会で議論されていないこと、米軍廃棄物が撤去されず土壌汚染も除去されていないことなど六つの問題を指摘している。
OEJPの吉川秀樹代表はWHW報告を活用し、山原の森を米軍廃棄物のない「真の世界自然遺産」にするため取り組むと強調した。日米地位協定で米国は返還地の原状回復義務を負っていないが、日米両政府は世界自然遺産を保護する責任がある。
奄美・琉球諸島の豊かな自然は陸域に限らない。今後、遺産地域は海域にも拡大し、生物多様性などを次世代に伝える取り組みが必要だ。一方で遺産地域と連続する貴重な海域である辺野古沖で米軍の新基地建設が進められている。豊かな自然を破壊する行為は、自然遺産を守る取り組みと逆行する。最大の環境保全策は登録地域と隣り合わせの米軍施設の全面返還であり、訓練や新基地建設の中止だ。
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【https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202211150000048.html】
コラム
政界地獄耳
2022年11月15日7時19分
防衛大綱「多次元統合防衛力」とは
★13日、首相・岸田文雄はプノンペンでの日米首脳会談で「同盟の抑止力・対処力を一層強化することで一致」したが、その準備は着々と進められている。首相は昨年12月に「新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画を、1年をかけて策定する」と、いわゆる安保3文書の大幅見直しを検討中だ。防衛大綱では「多次元統合防衛力」という言葉が出始めた。また「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」が内閣官房に設置され議論が続けられているが「総合的な防衛力」は大綱の考える「多次元-」と同義ととらえるべきだろう。
★13日付「琉球新報」は長崎県五島列島の津多羅島で陸上自衛隊が11日に実施した尖閣諸島での対処を想定した訓練に沖縄県警の警備部に属する「国境離島警備隊」と第11管区海上保安本部の巡視船数隻が参加していたことが分かったと報じた。県警の国境離島警備隊は「20年4月に発足し、自動小銃やサブマシンガン、小型ヘリなどを装備しており、今回は実際に陸自などと対処訓練に加わったとみられる」とあり、同紙によれば「昨年11月にも津多羅島で陸自水陸機動団、沖縄県警、大阪府警、海保など約400人が参加」しているという。
★まさに多次元統合防衛力であり総合的防衛力とはこういった防衛省、海上保安庁、警察と役割が違う組織を一元化するということにほかならず、それに米軍やNATOが加わる大規模編成が想定されているのではないか。既に海自と海保の合同訓練や連携は“役割の違い”を乗り越えて実施されつつある。安保3文書改定で消え去る運命にあるであろう海上保安庁法第二十五条を書き留めておく。「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」。海保設立の誇りと独立性をついえさせるべきなのだろうか。(K)※敬称略
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『憲法と社会問題を考えるオピニオンウェブマガジン。/マガジン9』(http://www.magazine9.jp/)のコラム【柴田鉄治のメディア時評/第97回 「権力の監視」ができなかった今年のメディア】(http://www.magazine9.jp/article/shibata/31668/)。
《「ジャーナリズムの使命は権力の監視にある」という言葉がある。権力の監視で最も大事なことは戦争を起こさせないことだ。戦後71年、今年も終わるにあたって、2016年という年を振り返ってみると、日本は平和ではあったが、キナ臭さが一段と増した年だといえよう。それに対してメディアのチェック機能が極めて弱かった年だと総括してもいいのではなかろうか》。
柴田鉄治さんは、《権力の監視で最も大事なことは戦争を起こさせないことだ…今年も…キナ臭さが一段と増した年だ》、と言います。マスコミ、特に、沖縄破壊から想起されるのは、「本土」マスコミの凋落。アベ様や最低の官房長官=沖縄負担軽減担当相のスガ殿のやりたい放題を監視せず、批判もしない…マスコミから失われる「ジャーナリズムの義務」…今年も酷い年でした。
『●失われる「メディアの作法、矜持」…
「権力を監視する機能が失われ」、しかも、アベ様の「思う壺」』
『●青木理さん: ジャーナリストの矜持
「権力や権威の監視」「強者にこそ徹底した監視の目を」』
『●反骨の報道写真家・福島菊次郎さん亡くなる:
『証言と遺言』の最後に赤々と押印、「闘え」「菊」と』
『●斎藤貴男さん、大新聞社は「自分たちだけは例外。
権力にオネダリして、そうしていただいたのである」』
《このままではジャーナリズムが死に絶えてしまう。反権力的な番組を
流した放送局の電波停止を示唆した高市早苗総務相の発言など、
安倍晋三政権のメディアコントロール戦略だけを指すのではない。
恐ろしいのは圧力よりも自滅だ》
「アベ様に逆らう者は「誰一人残っていなかった」
…という惨状なジャーナリズム。「電波」な「凶器」高市総務相の暴走と
「報道現場の声」から見えてくるのは、「自粛」「忖度」「委縮」…が「内部から」」
「どうやら消費税増税に賛成する理由は、アベ様らによる、
新聞社への軽減税率適用という「御慈悲」にあるらしい。
報道機関・ジャーナリズムであれば悪税制度・消費税そのものに
反対すべきなのに…」
『●軽減税率というお零れと「ジャーナリズムの義務」:
「権力の犯罪を暴くためなら、権力に対しては…」』
「斎藤貴男さんは、以前、軽減税率について、上記の記事で
《自分達だけは例外。権力にオネダリして、そうしていただいたのである》
と言っています。そのココロは、《最大の問題は、
権力に報道内容に干渉する余地を与えることです》ということです。
ジャーナリズムの落日。
青木理さんや神保哲生さんら、尊敬できるジャーナリストは数少ない。
斎藤さんもそのうちの一人。斎藤さん曰く《極端に言えば、
権力の犯罪を暴くためなら、権力に対しては何をしたっていいとさえ、
僕は思っています。それがジャーナリストの義務なんですから》。
亡くなったフォトトジャーナリスト福島菊次郎さんも同じようなことを
言っている…《問題自体が法を犯したものであれば、報道カメラマンは
法を犯しても構わない》と。そして、「「福島菊次郎91歳の写真集
『証言と遺言』」の「最後に赤々と押印、「闘え」「菊」と」。
そう、「闘わねば」!」」
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【http://www.magazine9.jp/article/shibata/31668/】
2016年12月28日up
柴田鉄治のメディア時評
第97回
「権力の監視」ができなかった今年のメディア
「ジャーナリズムの使命は権力の監視にある」という言葉がある。権力の監視で最も大事なことは戦争を起こさせないことだ。戦後71年、今年も終わるにあたって、2016年という年を振り返ってみると、日本は平和ではあったが、キナ臭さが一段と増した年だといえよう。それに対してメディアのチェック機能が極めて弱かった年だと総括してもいいのではなかろうか。
具体的な事例について触れる前に、戦争とメディアについて大雑把に歴史を振り返ってみると、戦前・戦中のメディアは政府のお先棒を担いで戦意の高揚を図ったが、その反省から戦後の50~60年代はなんとか野党精神も健在で、ベトナム戦争にはメディアはこぞって反戦を貫いた。
ところが、80年代になると、読売・産経新聞が政府・与党寄りに論調を転換、湾岸戦争を経て、イラク戦争でははっきり賛成の主張を打ち出して、自衛隊がイラクにまで派遣される事態を招いた。幸い、憲法9条のおかげで戦闘に巻き込まれることはなかったが、一歩間違えば危ういところだった。
あれから10余年、中東は依然として戦争状態が続き、イラク戦争から産まれた鬼っ子だといわれる「イスラム国」によるテロ事件も絶えない。そんななかで日本は、「戦後レジームからの脱却」を標榜する安倍政権が誕生してから4年目、悲願の「憲法9条体制からの脱却」に向かって大きな一歩を踏み出した年だといえようか。
北朝鮮の挑発に過剰反応、「敵基地攻撃論」まで登場
今年は年明け早々、北朝鮮が4回目の核実験を行い、「水爆実験に成功した」と発表した。9月には5回目の核実験を強行し、その間にもミサイル発射を繰り返して「核弾頭の小型化にも成功した」と宣言した。
国民の飢えを放置したうえでのこうした挑発にはあきれるほかないが、それに対する日本の反応もまた、驚くほど過剰だった。北朝鮮に対しては韓国や米国が対峙しており、国連による厳しい制裁措置もとられるのに、日本はその前に独自の制裁に乗り出し、ミサイルに対しては自衛隊に撃墜命令まで出しているのだ。
しかも、北朝鮮が国際機関に事前通告までしていた人工衛星の発射にまで撃墜命令を出していたのだから驚く。
こうした過剰反応に対してメディアの批判は極めて弱く、逆に北朝鮮の脅威を煽るような報道が少なくなかった。なかでも、9月15日の読売新聞の社説「北ミサイル対策――敵基地攻撃能力も」には仰天した。ミサイルが発射されたあとでの撃墜は難しいので敵基地の先制攻撃も考えておくべきだというのだから、まるで日本から戦争を仕掛けるような話ではないか。
これには当然、メディアによる厳しい批判、いわゆるメディアチェックが働くだろうと期待していたが、残念ながら見当たらなかった。
北朝鮮の相次ぐ挑発は、安倍政権の「軍拡路線」を後押しするかのような作用をもたらしている。少なくとも安倍政権の、来年度予算も含めて5年続きの防衛費の増額も、北朝鮮の脅威を理由の一つにしていることは間違いない。
「駆けつけ警護」つき自衛隊の派遣にもチェック働かず
日本が戦後一貫して「憲法違反」としてきた集団的自衛権の行使を閣議決定で引っくり返して容認し、強行採決で成立させた安保法制が今年から施行されたが、安保法制に反対するデモや集会は、今年も全国各地で続けられてきた。
その安保法制の具体的な実施例として、「駆けつけ警護」という新任務を付与した自衛隊の南スーダンへの派遣があり、すでに現地に着いている。
南スーダンでは大統領派と反大統領派の武力対立が続いており、7月には270人が死亡するという戦闘まであった。それを安倍首相や稲田防衛相は「戦闘ではなく衝突だ」と言いつくろって、自衛隊の派遣を強行したわけだが、自衛隊のPKOとしての派遣は当然「PKO5原則」に則ったものであるべきで、南スーダンの状況は明らかにPKO5原則に反する状況だというのに、メディアの批判は極めて弱かった。
そのうえ、年末になって国連安全保障理事会で南スーダンへの武器の禁輸を求める決議案が米国、欧州、国連などから提案されたが、日本やロシアなど8カ国が棄権して廃案となった。日本が米国の提案に同調しなかったことは極めて珍しい。
日本の言い分は、南スーダン政府に武器禁輸の制裁を科すことは、派遣した自衛隊の安全にもかかわるというものだが、現地からの特派員報告によると、南スーダンには武器輸入のルートが多々あり、近くルワンダのような大虐殺が起こるかもしれないという危険な状況であると報じられている。
どちらの見通しが正しいのか判断はできないが、いずれにせよ自衛隊が戦闘に巻き込まれないことを祈るばかりだ。
核兵器禁止条約の制定に日本が反対するとは!
米国と違う日本独自の判断ができるのなら、今月の国連総会での「核兵器禁止条約の制定に向けて来年3月から交渉を始める」という決議案にこそ、賛成してほしかった。決議案には113カ国が賛成して採択されたが、米露英仏などの核保有国とともに日本も反対票を投じた。反対した国は35カ国、棄権した国は13カ国あった。
日本が反対に回った理由は、米国の「核の傘」のもとにあることと、核保有国も協力可能な現実的、実践的な取り組みを重ねることが、遠回りのようでも成果に結びつくというものだ。しかし、米国の核の傘のもとにあっても、核兵器禁止条約に賛成しても一向にかまわないだろう。
核兵器の廃絶は、世界で唯一の被爆国、日本国民の悲願ともいうべきものだ。禁止条約の提案国に名乗り出てもおかしくないところである。米国に遠慮する必要などないはずだ。
また、現実的にみても核保有国が禁止条約に賛成することはかなり難しく、それに核保有国でもある安全保障常任理事国には拒否権もあるので、保有国まで含めた合意は容易なことではない。
そう考えると、対人地雷禁止条約やクラスター爆弾禁止条約のように、賛成国だけで制定し、反対国にはあとからの加盟を待つ、という方式も考えられよう。
いずれにせよ、核兵器は、核戦争が起これば全人類が絶滅するかもしれない「悪魔の兵器」である。禁止条約はぜひとも成立させたい。
それに反対票を投じた日本政府の姿勢に対して、メディアの批判が何とも弱いのはどうしたことか。
政府も司法も「沖縄いじめ」ますます激しく
今年のニュースで避けて通れないのは沖縄の米軍基地問題だ。太平洋戦争で本土で唯一の地上戦が行われ、戦後も長らく米国の占領下に置かれ、やっと返還されても日本全体の1%にも満たない面積の土地に米軍基地の74%が集中するという沖縄――。
差別と言っていい状況が続くなか、今年はさらに、政府や司法まで「沖縄いじめ」に荷担するといってもいいようなひどい状況が繰り広げられた。たとえば、高江のヘリパッド建設現場では、反対する住民たちに対する規制のため、本土から機動隊まで動員して、沖縄県民を「土人」呼ばわりしたり、取材中の記者まで拘束したり……。
また、普天間基地のオスプレイ機が海岸べりに墜落したのに、米軍の司令官が「人家の上に落とさなかったことをありがたく思え」と言わんばかりの発言をし、そのうえ日本政府まで、住民のオスプレイに対する不安をよそに、安全性の確認もしないまま、事故からわずか6日後に飛行再開を認めてしまう、等々。
さらに、普天間基地の移転先として辺野古の埋め立て工事をめぐって、前知事の認可を現知事が取り消した問題に、最高裁まで民意を無視して前知事の認可のほうに軍配を上げるなど、沖縄県民から見るとまさに「踏んだり蹴ったり」の状況なのだ。
こうした状況に対して、本土のメディアがまた、沖縄に対して冷たいのだ。オスプレイの事故を沖縄の新聞は「墜落」と書いているのに、本土のメディアは政府発表通り「不時着」と報じているのもその一つ。
また、沖縄の新聞は、米国の軍事専門家に取材を重ねて「海兵隊は沖縄にいる必要はないのだ」と繰り返し報じているのに、本土のメディアは「辺野古に基地を新設以外に解決策はない」という政府の説明を信じているような報道ばかりが続いている。
オバマ大統領の広島、安倍首相の真珠湾訪問、謝罪なし
今年はオバマ大統領の広島訪問があり、それに応えるような形で安倍首相の真珠湾訪問も実現した。日米関係にとって長年の懸案の一つであり、その点では一歩前進と高く評価できよう。ただ、両者ともその際、懸案の相手国民に対する謝罪はなく、その点が何とも残念だった。両者とも謝罪していたら、今年は歴史に残る年になったのに――。
とくに安倍首相は「戦前の日本は悪くなかった」という歴史観の持ち主で、米国からも歴史修正主義者だと警戒心を持たれているだけに、絶好のチャンスを見逃したといえよう。憲法違反の疑いが濃い集団的自衛権の行使まで認めて米国にすり寄った安倍首相としては、その歴史観を改めない限り、当の米国からも、さらにはアジア諸国からも真の信頼感は得られないことを知るべきだ。
一方のオバマ大統領の広島訪問では、就任直後の「核廃絶を目指すプラハ演説」のあとに広島訪問を希望したのに、日本の外務省が断ったという事実を思い出し、就任直後だったらなおよかったのにと思いを新たにした。
ただ、離任間近とはいえ、米国民の間に広島訪問への抵抗感が強いなかで、あえて訪問に踏み切ったことは高く評価するが、もう一歩踏み込んで謝罪まですれば、歴史に残る大統領になったのに、と残念に思う。
両者が謝罪するには、両国のメディアがそれをあと押しする必要があろう。その機運にはまだ至っていないようだ。
メディアといえば、安倍首相の真珠湾訪問は現職の首相としては初めてと報じられたが、実は4人目だったという。発表が間違っていたのだとしても、メディアとして恥ずかしい話である。
北方領土、期待は空振りに
年末にロシアのプーチン大統領が来日し、安倍首相の故郷、山口県の温泉に入って首脳会談が行われた。安倍首相とプーチン大統領は、気が合って首脳会談を何回も繰り返してきただけに、北方領土問題にも朗報が、と期待されたが、まったくの空振りに終わった。
明るい期待を振りまいた安倍首相周辺の責任も重たいが、それに乗せられたメディアの責任も決して軽いものではない。
それにしても、安倍首相に最も近いといわれている読売新聞と日本テレビのインタビューに応じ、事前に首脳会談の見通しを明らかにしたプーチン大統領周辺の戦略のしたたかさには、舌を巻いた。
首脳同士が仲良くすることは、どんな国同士でも歓迎すべきことだが、ウクライナやシリアの問題などで、米国や欧州と厳しい関係にあるロシアとの急接近だけに、安倍外交について世界からどう見られるか、ちょっと心配なところでもある。
昭和は遠くなりにけり!
今年は、昭和を彩った人たちが次々と世を去った。政治家でいえば加藤紘一氏、作家でいえば永六輔氏、ジャーナリストでいえば、むのたけし氏、等々。「昭和は遠くなりにけり!」とあらためて感じた戦後71年だった。
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asahi.comの記事【核の非人道性―日本から行動すべきだ】(http://www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=comtop_pickup_p)、
東京新聞【高濃度汚染水100トン漏れ 東電、3つの兆候見逃す】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014022102000130.html)
『●小出裕章さん、核=原子力は「違憲」という視点』
『●「原子力」と「核」、言葉は違えど「原発=原爆」である』
『●「原子力」は「核」へのポテンシャル』
『●3.11後にヒロシマで原発推進・輸出を語れるその神経・・・・・・』
『●「核と人類は共存し得ない」』
『●核開発・核使用、そして原発推進・・・・・・、それは愛国心の発露か?』
「非人道的な核兵器を縛る法の枠組みが必要だ――。・・・・・・議長は、広島、長崎への原爆投下70年を前に「行動に移るべき時」と呼びかけた。会議では、日本の被爆者の証言が注目を浴びた。半生をかけた訴えが、国際社会の潮流となりつつあることを歓迎したい・・・・・・核軍縮が「積極的平和主義」なら、日本から行動すべきだ」・・・・・・日本がやらずに誰がやるのか?
一方、「漏れた水約百トンには、一リットルあたり二億四〇〇〇万ベクレルもの超高濃度の放射性ストロンチウムなどが含まれていた」・・・・・・2.4億ベクレルってどう想像すればいいの? もう神経がマヒしています。泥縄による泥沼はどこまでも続く・・・・・・。
『●東京電力原発人災処理、計画性もヘッタクレもなく』
『●世界に向けて「汚染水漏えい問題はない」と言い切ってしまったょ・・・・・・』
『●東電原発人災対策がお粗末すぎる・・・・・・、
そして「推進」しか出来ない原子力「規制」委員会』
『●「エレファント・イン・ザ・ルーム」: 原発再稼働・輸出という、「危険なゾウ」の暴走』
『●「宙吊り」下の「広島原爆が撒き散らしたセシウム137の
14000発分」を「UFOキャッチャー」・・・』
『●東電の「万全」神話: 「作業員の安全を祈らずにはいられなかった」』
『●泥縄の果て ~一旦拡散してしまった放射性汚染物質を
環境から移染することは可能か?~』
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【http://www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=comtop_pickup_p、】
核の非人道性―日本から行動すべきだ
2014年2月18日(火)付
非人道的な核兵器を縛る法の枠組みが必要だ――。146カ国が参加した会議が、こんなメッセージを発して閉幕した。
開催地メキシコは67年に中南米の非核化条約が調印された国だ。議長は、広島、長崎への原爆投下70年を前に「行動に移るべき時」と呼びかけた。
会議では、日本の被爆者の証言が注目を浴びた。半生をかけた訴えが、国際社会の潮流となりつつあることを歓迎したい。
世界には今も推定1万7千発の核がある。廃絶への道筋が見えないことを危惧する多くの非核国は、非人道性を強調し、使用や保有を条約で禁じていこうとする動きを加速させている。
08年には、やはり非人道性が問題視されたクラスター爆弾を禁止する条約が結ばれた。その潮流をいかす動きだが、核不拡散条約(NPT)で核保有を認められた米ロなど5カ国は核を安全保障の根幹に据えたままで、禁止条約に否定的だ。今回の会議にも参加しなかった。
日本政府の立場は複雑だ。昨年は核の非人道性を強調した共同声明に賛同する一方、禁止条約に慎重な別の声明にも加わった。核の残虐さはどの国よりも知っているが、米の核の傘に頼る安全保障政策はすぐには変えにくい。そうした板挟みが、国の方針を見えにくくしている。
広島出身の岸田外相は1月、長崎市内で、核軍縮・不拡散に向けた今後の戦略を語った。安倍政権の「積極的平和主義」の具体化と位置づけ、核兵器の数、役割と、核を持つ動機をいずれも下げていく「三つの低減」を掲げた。
大事な考え方だが、世界でも緊張感の高い東アジアで、どのように進めていくのか。
軍備増強を進める中国、核実験を繰り返す北朝鮮があり、米の核が果たす役割はなお重要というのが政府の認識だ。
ミサイル防衛の強化など、安倍首相が力を込める政策は、中国や北朝鮮を警戒させ、核の役割をかえって高めるリスクもある。韓国との関係悪化も、朝鮮半島非核化をめざす6者協議に影を落としている。
せっかくの核軍縮戦略も、周辺国との信頼醸成につながる外交なしでは、絵に描いた餅だ。
核保有の動機を下げるには、核に頼らなくてすむ安全保障の枠組みづくりが欠かせない。
オバマ政権も「三つの低減」と通底する政策をとってきた。核の傘の中にいる日本が、米国とともに「三つの低減」を具体化する政策を練るべきだろう。
核軍縮が「積極的平和主義」なら、日本から行動すべきだ。
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【http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014022102000130.html】
高濃度汚染水100トン漏れ 東電、3つの兆候見逃す
2014年2月21日 朝刊
東京電力福島第一原発のタンクで、またも大量の処理水漏れ事故が起きた。漏れた水約百トンには、一リットルあたり二億四〇〇〇万ベクレルもの超高濃度の放射性ストロンチウムなどが含まれていた。「なぜ送られてくるはずの水がこない?」などと、気づくチャンスは少なくとも三回あったが、東電はいずれも見過ごした。甘い危機管理により、ただでさえ疲弊する現場の作業員たちは、汚染土壌の除去など余計な作業に追われる結果になった。 (岸本拓也)
今回漏れた水は、本来は別のタンク群に送られるはずだった。いつになっても受け側のタンクの水位が上がってこないことに疑問を感じていれば、漏れは最小限に抑えられた。
そもそも、事故が起きたタンクは既にほぼ満水状態で、通常はタンクの大きな手動弁を閉め、これ以上は処理水が入らない状態になっているはず。しかし、東電はなぜか弁のチェックをしていなかった。
また、水漏れが発見される約九時間半前には、水位異常を知らせる警報が鳴っていた。実物のタンクで満水を確認してさえいれば、送水を停止し、事故は防げた。
しかし、東電は計器の故障と安易に判断していた。東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は「直接見るという思いに至らなかった」と話した。
東電は今後、汚染土壌を掘り起こして取り除く予定だが、汚染された敷地は約八百七十平方メートルに上り、現場には負担がさらに加わる。
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東京新聞のコラム【筆洗】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2013080502000107.html)と社説【原発被災者 支援法に魂を入れよ】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013080502000132.html)。asahi.comの社説【広島・長崎と福島―凶暴な原子の力、直視を】(http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup、8月6日)。
「核=原子力」である。「原発=原爆」である。「爆心から八百五十メートル余の旧制広島一中の校舎で被爆した児玉光雄さん(80)は静かに語る・・・・・・体験を次代に継承する育成講座の講師も務める児玉さんは命ある限り訴える。「核と人類は共存し得ない」」、とブログ主も思う。
『●小出裕章さん、核=原子力は「違憲」という視点』
『●「原子力」と「核」、言葉は違えど「原発=原爆」である』
『●「原子力」は「核」へのポテンシャル』
『●3.11後にヒロシマで原発推進・輸出を語れるその神経・・・・・・』
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【http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2013080502000107.html】
【コラム】
筆洗
2013年8月5日
「放射線がいかに人間の体を痛めつけるか。それを伝えるために生かされていると思っているんです」。爆心から八百五十メートル余の旧制広島一中の校舎で被爆した児玉光雄さん(80)は静かに語る▼還暦の時からがんの手術を十九回も受けた。直腸、胃、甲状腺、十六回にわたる皮膚がん…。至近距離で被爆した人に見られる「重複がん」と呼ばれる症状だ▼あの日朝、通学した同期生約三百人のうち、生き延びたのは二十人足らず。倒壊した校舎から奇跡的に脱出した児玉さんも四〇度を超える高熱や歯茎からの出血、下痢に苦しみ、頭髪が抜け落ちた。生き残った仲間も多くが若くしてがんで亡くなり、今も健在なのは二人だけになった▼五年前、放射線影響研究所で染色体を調べる機会があった。画像を見ると、切断された一部が修復されずに、別の染色体につながってしまう転座という異常が起きていることが分かった▼数値から推定すると、児玉さんが浴びた放射線量は四・六グレイ。二人に一人が亡くなる半致死量のガンマ線四グレイを超えていた。血液をつくる幹細胞が傷つけられたので治らないと専門家に言われ、「腰が抜けそうになるほど落ち込んだ」という▼積極的に被爆体験を語るようになったのはこの後だ。体験を次代に継承する育成講座の講師も務める児玉さんは命ある限り訴える。「核と人類は共存し得ない」
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【http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013080502000132.html】
【社説】
原発被災者 支援法に魂を入れよ
2013年8月5日
原発被災者への支援が一向に始まらない。「子ども・被災者支援法」は成立から一年以上がたつのに、方策の前提になる被ばく線量基準の検討は手付かずだ。法を動かす責任体制を整えてほしい。
原発事故で被害を受けている人々に「避難する権利」を認める支援法は、事故に対する国の責任を明らかにした、日本版の「チェルノブイリ法」とも呼ばれる。
放射線量が「一定の基準」を上回れば、避難指示区域でない地域の住民や、自ら避難した人も医療や生活支援の対象に含まれる。とくに妊婦や子どもには配慮して、被災者には頼みの綱だ。
しかし、昨年六月に成立してからも、担当する復興庁は基本方針を決めるための「一定基準」を定められないでいる。
法制化を求めた市民団体は、線量の目安として、国が定める一般の年間の被ばく限度「一ミリシーベルト」を主張する。対象範囲を広げれば、財源の問題も出てくるだろう。どう線引きしても批判は起きるのかもしれない。
しかし、忘れてもらいたくないのは、この法律が当時は野党だった自民党も含めて、衆参両院すべての党会派の議員が賛成して作られたことだ。
長期にわたる低線量被ばくが人の体にどう影響を与えるのか。実証するデータは乏しいが、深刻な影響を及ぼすと警鐘を鳴らしている学者も少なくない。線量の基準を科学が決められないのなら、将来に禍根を残さないよう、より被災者に寄り添う形で政治が決断する局面もあるのではないか。
被災者のニーズを反映させるという法の趣旨も踏まえ、公聴会も早く開かれるべきだ。
予算の流用も問題になった復興庁は今春、被災者との窓口になっていた幹部がツイッターに法を骨抜きにするような暴言を書き込んでいたことが発覚した。支援法の取り組みに消極的だった組織の問題が、思いがけず暴露されたようなものだった。支援法を担当する常設の部署がないのはおかしい。長くかかる支援に見合うだけの体制で臨んでほしい。
福島県は、十五万人を超える人が県内外に避難する。ストレスの多い生活から、病気や子どもへの虐待が増え、震災関連死は千四百人を超えた。過去に例のない震災は刻々と新たな犠牲者を増やしている。
支援の手を差し伸べなくてはならない。全国に離散した被災者の願いに一日も早く応えるために。
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【http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup、8月6日】
2013年8月6日(火)付
広島・長崎と福島―凶暴な原子の力、直視を
核兵器と原発は長年、切り離して扱われることが多かった。それは正しかったのだろうか。
68年前の広島、長崎の原爆被害に続き、福島でも核エネルギーによる途方もない被害を生じさせてしまった。
核が抱える想像を絶するリスクに正面から向き合うことが、もはや待ったなしの時代だ。
■「核の飢餓」の恐れ
核兵器の非人道性に焦点を当てて禁止につなげよう――。今年4月、ジュネーブで開かれた核不拡散条約(NPT)準備委員会に提出された「核兵器の人道的影響に関する共同声明」は、外交交渉での原点回帰の動きを示すものだ。
非人道性を憎み、化学兵器や生物兵器だけでなく、クラスター爆弾や対人地雷も禁止条約ができているのに、核兵器が禁止されていないのは道理に合わないのではないか。国際NGOの力強い主張が近年、多くの政府に浸透し、外交の表舞台でも共有されるようになってきた。
80カ国が賛同した「共同声明」は、核兵器が使用された場合の制御不能な破壊力、無差別な惨害の非人道性を指摘する。
パウエル元米国務長官が朝日新聞の取材に「極めてむごい兵器で、軍事的には無用」と発言するなど、かつて核保有国で安全保障政策を担った重鎮が次々と核廃絶論を公言している。保有国は「共同声明」に賛同していないが、核はますます「使えない兵器」と化している。
「共同声明」は、核戦争が国境を越えて環境を破壊し、次世代から健康、食料、水などを奪うとも主張する。
米ロの全面核戦争では、舞い上がったすすや粉じんで「核の冬」が訪れるとされてきた。
アラン・ロボック米ラトガーズ大教授(環境科学)らの最新研究は、インドとパキスタンがそれぞれの保有量の約半分の広島型原爆50発を使う地域核戦争(世界の核兵器爆発力の0・03%)が起きると、すす・粉じんによる気温低下やオゾン層の破壊による紫外線増加で、世界は「核の飢餓」に直面する恐れがあると指摘する。
私たちはいまも、核戦争による破滅の縁にいるのである。
■核拡散の60年
原子力にはそもそも核兵器への悪用、つまり核拡散のリスクがある。
60年前、アイゼンハワー米大統領が国連総会で「平和のための原子力」演説をしたことが原発利用拡大のきっかけとなった。大統領は核物質と核技術の国際管理を提案し、軍事から民生利用への転換を促した。
演説のあと、国際原子力機関(IAEA)とNPTが生まれた。しかし、国際管理は実現せず、拡散が進んだ。米ロ英仏中に加え、インドとパキスタン、北朝鮮が核実験。イスラエルも核保有が確実視され、イランの開発疑惑も続いている。
今後、途上国での原発急増が予想されるが、核兵器用の高濃縮ウランやプルトニウムを入手する隠れみのになりかねない。
原発経由の核拡散リスクをどう考えるべきか。
オーストリアはNPT準備委員会で、原発事故や核テロ、核拡散を懸念し、「平和利用という権利を使わない選択をした」と表明した。破滅リスクを避ける脱原発政策は傾聴に値する。
■原発政策も見直せ
日本政府は米国の「核の傘」への影響を考慮して「共同声明」には賛同しなかった。将来の賛同には含みを残した。
だが、核の非人道性を確認するだけでなく、核リスク脱却と逆行する原子力政策の転換にもっと力をこめる必要がある。
安倍政権は原発輸出に前のめりだが、核拡散だけでなく被曝(ひばく)・環境汚染のリスク、放射性廃棄物問題の輸出になりかねない。NPTに背を向けるインドと原子力協定を結べば、NPT空洞化を進めることになる。
日本の余剰プルトニウム保有への世界の厳しい目に対しても、自覚が足りない。安倍政権は明確な削減計画を示さないまま、使用済み燃料からプルトニウムを取り出す事業の継続を表明している。倒錯した政策は一刻も早く放棄すべきだ。
むしろ、リスクを増幅するような甘い核拡散防止体制の改革を主導することこそ、世界が日本に期待するところだろう。
今後、「共同声明」の趣旨を世界の基調にしていくには、発想の切り替えが不可欠である。
広島原爆がテーマの戯曲「父と暮(くら)せば」を書いた井上ひさしは生前、「遅ればせながら『心の被爆者』になろうと思う」と被爆者の手記を読みあさった。
より多くの日本人が被爆地の惨禍をもっと思い起こし、福島の被災者の苦境もきちんと知る。ヒバクによる健康被害の不安や恐怖などを共有し、「心のヒバクシャ」となって、人類と核の間に横たわる矛盾を内外に発信していくべきではないか。
私たちはいま、非核時代へ世界を向けられるかどうかの岐路に立っている。
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