goo blog サービス終了のお知らせ 

Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

芥川賞の「おいしいごはんが...」

2022-08-21 09:26:00 | 読書
高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」文藝春秋9月号.生駒さちこのカットは掲載号より.

山田詠美によれば,猛禽 @ 臨死!! 江古田ちゃん©️瀧波ユカリ,ぼく的に昭和語で言えばカマトト が登場.彼女と その同僚のできる女子社員・男子社員 (このふたりが交互に語り手になる) の三角関係.猛禽ちゃんは人数分のケーキとかを会社に持ってくるが,それを潰してゴミ箱に捨てる意地悪などがある.

こういう職場は知らないので新鮮だった.飲食場面多数.できるほうの女子社員と男子社員との居酒屋での一問一答がいちいちおもしろいのだが,再三再四となると,もっと適当に書いてくれ と言いたくなる.

猛禽ちゃんと男子社員との結婚が最後に示唆される.彼女はペット犬の世話もできないらしいのに...

受賞者インタビューによれば,著者は「『ムカつき』をエネルギーにして書き続けたい」.でも,会社勤めも続けたいとのこと.彼女の勤務先が小説のモデルと取られそうでちょっと心配.

不思議の国のアリスたち

2022-08-20 08:58:37 | 読書
「不思議の国のアリス」に接したときは小学生で,童話世界とは異なる,どこか意地悪が支配するような世界像に面くらった.Wikipedia によれば,それまで支配していた教訓主義から児童文学を解放したということらしい.

図書館に夏休みに読む本として,画像左から3番目の
 ルイス・キャロル,高山宏 訳,佐々木マキ 絵「不思議の国のアリス」亜紀書房 (2015/4)
があった.原書刊行 150 周年記念出版としての新訳だそうだが,佐々木マキの描き下ろしイラストを目当てに,小学生を差し置いて借用した.

150 年前の刊行時の挿画は John Tenniel によるもので,画像左端の,ちょっと怖いタッチには今でもよくお目にかかる.でもその右のディズニーの可愛いアリスが,いまではポピュラーかもしれない.
高山訳の佐々木イラストでは,アリスは幼児化している.全体にのほほんとした雰囲気.文章は...これから読むつもり.

右端は,古書市場でウン万円以上の
 金子國義押絵  "Alice's adventures in Wonderland" Olivetti (1974)
英文.ネットで少し中身を覗いただけ.

ノーベル物理学賞 : 地球温暖化はなぜ起こるのか

2022-08-19 06:17:50 | 読書
真鍋 淑郎, アンソニー・J・ブロッコリー, 阿部 彩子・増田 耕一 (翻訳, 監修), 宮本 寿代  (翻訳)「地球温暖化はなぜ起こるのか - 気候モデルで探る 過去・現在・未来の地球」講談社 (ブルーバックス 2022/6).

序文には「(著者のひとり)真鍋がプリンストン大学大気海洋科学プログラムで教えた大学院課程の講義ノートをもとにしている」とあるが,大学院レベルの教科書をイメージすると勝手が違う.数式を使えばすっきりすると思われる部分もほとんどコトバで説明するので,まどろしく分かりにくい.フラックス調整とか湿潤対流調整とかも,この厚さの本では無理かもしれないが,数式に数値を入れて定量的に示していただきたいところだ.
翻訳は悪くないと思う.

学術図書並みに図版目次,文献リスト,索引完備.勉強したければ文献を当たりなさい...ということか.2010 年代後半以降の文献はあまりないが,大した進歩がなかったのでしょう.カラー図版が参照すべき位置に挿入されず,巻頭にまとめられているのは不満.

数式なしだからポピュラーサイエンス本ということ ?  それにしては口当たりが悪すぎ !  ブルーバックス化は最初は念頭になかったように思う.講談社の編集担当はひとことも口を挟んでいないのではないか.

監訳者あとがきには「読む方は第1章の後半から内容が急に高度になったと感じるかもしれない.それは「悟り」がここに書かれているからである」.だから「第1章を難しく感じた方も,気にせずその先へと進んでほしい」とある.仰せの通り,かなりの斜め読みではあったが,読み進んだら最後まで行ってしまった.
深く狭い分野ではなし,シュレディンガー方程式・マックスウェル方程式に匹敵する予備知識は不要だから,なんとかついて行けた,というところ.

講談社 BOOK 倶楽部のホームページに詳細な目次があるが,章のタイトルだけをあげると以下のようになる.n) という表記は第 n 章のことである.

1) はじめに / 2) 初期の研究 / 3)1次元モデル / 4)大循環モデル / 5)初期の数値実験 / 6)気候感度 / 7) 氷期・間氷期の比較 / 8) 気候変化における海洋の役割 / 9) 寒冷な気候と海洋深層水の形成 / 10) 地球の水循環はどう変わるか?

まず観測を再現するプログラムを作り,そこで CO2 量のようなパラメータを振るのはどの分野のシミュレーションでもおなじこと.16 トンにとって馴染みが深いのはプラズマのシミュレーションで,それと本質的には変わらないのだが,実験室プラズマの構成要素や境界条件に比べると,地球は生き物であり,ずっと複雑だということは実感できた.おもしろかったのは 7)-9) だった.

6) のタイトルとされている「気候感度」は平衡応答のことである.この 6) では珍しく数式が登場し,フィードバックについて記述される.ここは大学初年級の制御工学の説明を取り入れればずっとスマートに行けそうだ.7) までは平衡応答,すなわち熱を強制的に与えたとき,長い時間をかけて気候が落ち着く先を調べているが,8) 以下では過渡応答が問題にされる.
「コントロール実験」という耳慣れない言葉も頻出するが,これは標準的なパラメータを用いた試行の結果で,パラメータを振った結果と比べるときのスタンダードというほどの意味らしい.

この春の第77回物理学会年次大会領域13には林 弘文氏 (この7月にご逝去) による「真鍋論文に学べ」という,語呂合わせのようなタイトルのチュートリアル講演があったそうだ.

ニホンジン 《ブラジル現代文学コレクション》

2022-08-18 08:44:09 | 読書
オスカール・ナカザト,武田千香 訳「ニホンジン」水声社 (ブラジル現代文学コレクション 2022/6) .

著者は 1963 年生まれの日系三世.孫・ノボルの目から 1908 年に移民したオジイチャン・ヒデオの生涯を描いた小説.全7章が時代順に並んでいて,各章がある程度独立しており,連作小説と言ってもいい.

第1章 ( 1) と書く,以下同様) はオジイチャン・ヒデオとともに移民し,重労働に耐えきれず亡くなった最初の妻のこと.

2) ではヒデオはオバーチャンと再婚する.搾取され日本に錦を飾ることを諦めきれないままに母親の訃報に接する.

3) では3男ハルオが学校でブラジル生まれは「ブラジル人」だと教えられて,ヒデオとぶつかる.ヒデオは子どもたちにヤマトダマシイを持つ立派な「日本人」になることを強制する.長男・次男は学校では先生に,家では父親に従えばいいと割り切るが,3男ハルオはある意味ヒデオに似て強情である.ヒデオはハルオにヤイトをすえたり1週間を屋外で過ごすキンシンを命じたりする.

第2次大戦化ブラジル政権は米国支持を表明し枢軸国との国交を断絶する.この状況下,4) ではヒデオはシンド・レンメイに加わり,子どもたちに日本語を教えて逮捕される.

5) のヒロインは長女スミエで,小説の語り手ノボルの母.ヒデオが決めた相手と結婚して3人の子供をもうけた後,初恋相手と出奔する.そこそこ幸福だったようだが,相手と死別し,一度だけ実家を訪れる.

6) では,大戦での日本の負けを受け入れる「負け組」と受け入れない「勝ち組」との抗争.「負け組」である3男ハルオが新聞書いた文章のために殺される.「勝ち組」ヒデオが逃走を勧める場面にシンド・レンメイの刺客トッコタイが現れるのだ.
本筋とは無関係だが,「勝ち組」は,本当に負けたのなら天皇は自決したはずだと主張するのが印象的.

最後の7) では孫・ノボルがマルクス研究会に参加しているところから始まり,バブルの日本へ「デカセギ」に出かけるところで終わる.彼にとっては単なるデカセギではなく「帰還」であることが強調される.彼の中では,日本人かブラジル人かという問題は弁証法的に統一されているようだ.曽孫の名前はペドロ・ヒデキとマリア・ヒサエだ.

著者はこの小説のテーマは文化の衝突とアイデンティの葛藤だと述べているそうだ.大河小説の風格はあるが, 長さは A5 200 ページちょっと.
訳者のあとがきが充実している.この翻訳は科研費基礎研究(C)(一般)「ブラジルのマイノリティ文学における複合性 : 交差する人種・ジェンダー・クラス」の一環として行われたそうだ.

図書館で借用した.

おこりじぞう

2022-08-17 10:37:24 | 読書
山口 勇子・原作,沼田 曜一・語り,  四国 五郎・絵 「絵本 おこりじぞう」金の星社 (1979/11).

四国五郎ギャラリーで購入.著者として3人の名前があるが,みなご逝去している.三者三様の「あとがきに変えて 語り伝えたい平和の尊さ」がある.

山口 勇子 (1916-2000) の原作は絵本に挟み込んであった,絵本が取り上げているのは原作の前半分だけである.「...平和の尊さ」でも「半分だけでは,わたしの「おこりじぞう」にはならない」と書いている.

でも絵本としては前半だけで正解だったと思う.絵本化のもとは沼田 曜一 (1924-2006) の「手づくり民話劇場」での語りだそうだ.絵本の文は「むかし,日本が せかいの たくさんの くにぐにと.せんそうを しておったころ---」で始まる.広島弁みたいだと思ったが,沼田の出身は岡山県真庭郡湯原村出身だった.

四国五郎 (1924-2014) の「...平和の尊さ」は,子どものころ「お化けかるた」を買ったが,ろくろ首や骸骨がこわくて捨ててしまったという書き出しだが,「子どもたちに怖がらないで最後まで見てもらえて,しかもこのうえなくこわい絵本を描くことは難しい」とも書いている.
トップの画像は唯一ナレーションのないページ.

動画は Youtube 「寝る前の一冊「おこりじぞう」」,読んだ気になれるかも.


四國五郎ギャラリー @ 大和町椋梨 旧・椹梨(くわなし)小学校

2022-08-16 08:37:00 | お絵かき
閉校した小学校はくわなし皆来館(みらいかん)として地域の交流に使われており,ギャラリーはその一角で教室ふたつを占めていた.土日祝にオープン.
目玉 ? はこの 50 号2枚のペア「ヒロシマの夏」だと思う.横並びに展示され,上の絵が左だった.

昨年の今頃,このブログで紹介し,下に再掲した作品の延長 ? あれから年月が経った制作であり,ちょっとオブラートで包む気になったのだろうか.顔がないのが怖い.

四國 五郎(1924 - 2014)はここ広島県三原市大和町椋梨出身の画家・挿絵画家・詩人.椹梨小学校は母校.
関東軍に入隊しシベリア抑留を経験した.弟は被爆死.ことし第 68 回を迎えた平和美術展の創立者のひとり.


ゴーヤのサラダ

2022-08-15 08:32:23 | 食べる
半分がとこ食べてから,思いついて撮影したので,あまり美味そうでない.

芯を取ったゴーヤを,せいぜいがむばって薄く切り,塩で揉んで,水洗いしてしぼる.
生ゴーヤだけではちょっと強烈かな...と,薄切り胡瓜で増量.トマトも投入.
塩昆布,オイル,酢.蜂蜜も少々.
混ぜてから,しらすをチンして散らす.

高峰秀子が歌う 森の水車

2022-08-14 06:34:36 | エトセト等
懐メロ CD セットの広告に 森の水車 : 高峰秀子 というのがあった.この歌は荒井恵子による 1951 年のラジオ歌謡だったので,歌詞も旋律も覚えている. Youtube によればその 10 年近く前の 1942 年,18 歳の高峰秀子によって録音されたが,発売から4日後に戦時にふさわしからずとされ,発禁となっていた.
おなじ 1942 年の「鈴懸の径」は OK.短調の曲は良いが 長調はダメとされたのかな ?

米山正夫作曲のこの曲はドイツの作曲家リヒヤルト・アイレンベルクの Die Mühle im Schwarzwald が下敷きになっている.トップ画像はこの曲の Youtube 動画からいただいたが,われわれの水車小屋のイメージはヨーロッパとはずいぶん違う.

高峰秀子さんのディスコグラフィの最後は 1951 年の「カルメン故郷に帰る」で,これは日本最初のカラー映画の主題歌だった.彼女の役は故郷に帰るストリッパーで,小学生だったぼくには関心がなかった.主題歌ではなく挿入歌「そばの花咲く」がなぜか学生時代に大学サークルで,定番 山の歌のひとつになっていた.
カルメンの前が 1949 年の「銀座カンカン娘」である.



ヴァイブのマレットについて

2022-08-13 08:32:17 | ジャズ
標題のタイトルでブログを書くつもりで,念のため昔の記事を確かめたら,書きたいことは既に書いてあった.歳をとると同じことを繰り返す,の典型だ.

15 年前の記事「ヴァイブのマレット2本と4本」がそれ.ミルト・ジャクソン先生の御託宣はその後あちこちで披露した覚えがある.
付け加えるとすれば,ヴァイブを始めた頃は仕事上のストレスを音板を引っ叩くことによって解消しようとしたふしがあり,それには2本マレットが適していた.
6本のマレットを操る方もおられるが,ビブラフォンのジャズではお目にかかったことがない...と思っていたが.こんな動画があったので,画像を拝借しました

今どきのプレイヤーにはけっこう2本をメインにする人が多い.このブログに登場した方々でも,Sasha BerlinerJoel Ross,少し上の世代では Stefon Harris,Worren Wolf,Nat Steele, etc..
いっぽうでは,晩年のボビーハッチャーソンがひとり,4本マレットが出す音を確かめるように動画も...

動画の Jason Marsalis は Marsalis Bros. の末っ子.ドラマーとしての彼が有名かも.


南北朝

2022-08-12 09:28:05 | 読書
小学校高学年で,先生が講談調で日本の歴史を語ってくださった.このとき,源氏・平家,元寇、太閤秀吉などが「常識」としてぼく達に刷り込まれた.
このごろ書店で意外に太平記・南北朝の本が出ているので,小学校時代を思い出し.むかし買ったこの本を引っ張り出した.

林屋辰三郎「南北朝」朝日新聞社 (文庫 1991/1).

2017/2 に「南北朝―日本史上初の全国的大乱の幕開け」として朝日新書入りしている.もともとは 1957/10 大阪創元社「創元歴史選書」の一冊だった.その後の研究で本書があるいは時代遅れとなった部分もあるかもしれないが,ぼくにはどうでもいいことである.

目次*****
序章 内乱の前夜
第1章 結城宗広 - 東国武士の挙兵
第2章 楠木正成 - 公家勢力の基盤
第3章 足利尊氏 - 室町幕府の創設
第4章 後村上天皇 - 吉野朝廷の生活
第5章 佐々木道誉 - 守護大名の典型
第6章 足利義満 - 国内統一の完成
付章 内乱の余波*****

このように人物を軸に,しかしほぼ時代に沿って展開するという構成がうまい.結城宗広という,(ぼくは) 聞いたことがない人物で始まり,また佐々木道誉という婆娑羅大名も重要視されている.それにひきかえ後醍醐天皇という章がないところが面白い.

もともと悪党だった楠木正成が,時代も読めたのに,なぜ南朝に命懸けで義理立てしたのか,わからないが面白い.それも子・正行の代まで...といいたいが,正行の弟・正儀になると,コウモリ的に北についたりすることもある.
南朝は衰退するいっぽうだが,北朝 というより足利方の内紛に応じて何度も盛り返すのが,虚しい.
200 ページ強で,飽きずに読める.登場人物が多すぎ,系図が何本か欲しいところ.

あとがきで正成と観阿弥・世阿弥との関連に触れている.

reading

/Users/ogataatsushi/Desktop/d291abed711d558e554bf7af66ee57d7.jpg