Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ドビュッシー最後の一年

2020-09-25 08:58:32 | 読書
青柳いづみこ,中央公論新社(2018/12).

Amazon の内容紹介(「BOOK」データベースより)*****
没後100年。55歳で生涯を閉じた作曲家の「終活」を追う。最晩年に凝縮された真実の姿とは?演奏・解釈・研究の第一人者による最新のドビュッシー論。*****

図書館で借用.最後まで読み通せるかなと思ったが,意外にすらすら.しかし同じことが何度も書いてあったり,内容が行ったり来たりで,喜楽に読む分にはいいが真面目な読者には気の毒.

冒頭,死の14ヶ月前のドビュッシーは寒さに震えているが,直腸癌で仕事もできない.音楽好きな石炭商に「石炭の明かりに照らし出された夕べ」という曲を捧げて石炭を融通してもらう.
紹介文には「終活」と書いてはあるが,漠然と死が近いことは感じても,いつ死ぬか当人にはわからない.あと何ヶ月と知っている著者は,したがって読者も,神みたいな視点を持つが,当人はドジバタしているうちに,たいていのことが中途半端に終わってしまうのだなぁ.これはドビュッシーに限らず,誰しもだろうなぁと言うのがぼくの感想.

雑誌「ふらんす」に連載した「...最後の一年」に,書き下ろし「ヴィクトル・セガレンとドビュッシー - 沈黙の音楽をめぐって」が加わっている.セガレンは劇作家・詩人で医師(船医).ドビュッシーに振り回されて気の毒.しかしドビュッシーが目指した音楽は書き下ろしの方が実感できる.

これは著者の演奏の動画.本書によれば「戦争のさなか,瀕死の作曲家が最後の力をふりしぼって書き,自ら初演したこの曲が,もうすこし理解されるまで生きていられたら...(中略)...音楽史の方向は変わったかもしれない」.


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