Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

颱風(タイフーン)

2020-09-26 08:35:54 | 読書
レンジェル・メニヘールト, 小谷野敦訳 幻戯書房(2020/8).

出版社の紹介
*****パリの日本人コロニーを舞台にした「ジャポニズム・フィクション」として、20世紀初頭、欧米各地の劇場を席巻、「黄禍論」の議論を呼んだドラマ。「台風」現象としてセンセーションを巻き起こした、ハンガリーの劇作家レンジェルの代表作。 すべての国がバスティーユですよ。 すべての愛国心の本能、それはもう一つの、人の魂で鍛えられた銃で守られた要塞なんだ。それらを突き崩さなかればならない!*****

台風という気象現象とは無関係.
原文はハンガリー語だが,ローレンス・アーヴィングの英訳からの重訳.
主人公はトケラモ・ニトベ.吉川,北村など字を当てられた人物もいるが,ヤマシ,アマリリ,ヨトモなどと言うのも含め10人余の日本人が登場.

登場時のトケラモの描写を抜き書きすると****貴族的な長い顔.顔色は黄色というよりクリーム色.脚は彼の同国人一般と同じくややがに股.体のしぐさは少ないがしなやかで,手の指は長くて細い.足を床から上げることなく歩く.(ヨーロッパ人といるときは)自然な動きをしようとするのだが,こわばって見える.外国語を話すときは,苦労している感じがあり,そのため歯がむきだしになる.ほほえみはあまりにニカっとしているので日本人的だ.日本人の間で話しているときは,こういう不自然さがなくなる.****

トケラモは何か使命をおびてパリに来ていて,それが成就したので菊花大勲章を贈られるらしい,彼は痴情の果てか,あるいは秘密を探られたためか,よくわからないが若い女性エレーヌを殺してしまう.その罪を若い日本人がかぶる.操作判事などが登場して推理劇っぽくなるが,うやむやに終わる.劇中でトケラモは東欧系の男性に説得され,個人主義に目覚めたようにも見えるが,この部分は英訳したアーヴィングの手が入っているらしい.最後にトケラモは切腹する.

発表されたのは日露戦争後の1909年.1915年には帝劇で上演された.
日本人の国家主義・全体主義・精神主義をからかっているとしか思えないが,当時の日本人の受け取り方はちがったのだろうか? 日本会議とかそれに連なる政治家連は当時の日本人のように受け取るのだろうか?
コロナへの対応などに見る集合した日本人の性格は,1世紀以上経っても変わらないようでもある.

約220ページのうち,50ページが著者の年譜,40ページが訳者による解説.

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