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劇場版『モテキ』を、観る

2012-04-15 | 授業
TBSラジオ「Dig」の金曜パーソナリティーが大根仁監督だったので、満島ひかり出演ということだったので、ドラマ版は事前番宣番組から観ておりましたが、サブカル糞野郎(ただしお洒落じゃないほうのサブカル)であるところの根っからの引きこもりなもので映画館には足が伸びず好評が聞こえてくるとなるべく耳を塞ぎブルーレイの発売を持っておりました。だけれども根っからのものぐさがたたり発売から1ヶ月近くたった今頃に封を開けた次第。



まずテレビ番組の映画版ながらも、フジテレビなどのそれと違うのは単純な続編では無いと言うこと。一応テレビドラマ版を踏まえてはいるが、観ていなくても話が通じる続編。というか、続編というよりもリプリント版というか、『フレンチコネクション』に置ける『フレンチコネクション2』というか、上辺は異なるけれども物語の基本構造は同じという新約版といった趣き。あっ、『エヴァ』と『ヱヴァ』か。

ドラマ版のメインなヒロインであったサブカルないつかちゃんと小悪魔系の夏樹ちゃんが合わさったのが今回のみゆき。墨さんとセックスしちゃう点ではいつかちゃんの部分、恋愛が下手という部分に関しては、今回はるみ子が引き受けている。幸世を導く一段上の存在であったリンダはナタリー編集部の唐木が引き受けている。ヒロインの彼氏という点では島田が山下ダイスケになったと。

ラブコメ、若しくはブロマンスなのだけれど、本質は童貞の、セカンド童貞の冒険譚。可愛い女の子との楽しくも苦しい関わり合いの中で、時には好きな女の子の彼氏と闘うことで女の子を獲るまでの話。これはテレビドラマ版でも同様で、幸世は4人の女の子たちの間でふらふらしつつも「人生で一番好きになった」女の子を求めて闘っていた。ただドラマ版の後半に関しては、ぼくは否定派。だってぐずぐずなんだもの。

でも映画版は基本的には肯定派。ラスト、幸世の恋が成就するところなどを踏まえると本当に『フレンチコネクション』における『フレンチコネクション2』という感じがする。初っ端の他人の痴話喧嘩からの刃傷沙汰に巻き込まれる冒頭からして、かましが聴いていて鷲掴み。ラストのみゆきとの成就からの、スチャダラとの『今夜はブギー・バック』の流れは最高にアガります。『モテキ』の最後の最期にぴったり!

『モテキ』は幸世の冒険譚、成長譚なので仕方は無い部分はあるにしても、ちょっと引っかかる部分もやっぱりあって、何でるみ子は幸世に惹かれたのかがいまいち分からない。なんかきっかけらしい、きっかけってあったっけ。とか、幸世のるみ子に対する態度とかいくらなんでも酷すぎるとか。ただ基本的な部分では不満はないです。ドラマ版よりもすっきりとまとまっている印象でいいと思います。

ドラマ版で数少ない不満だったダンスシーンも映画版は改善されていました。楽曲はドラマ版と同じくPerfumeの「Baby Cruising Love」。ここに関しては今作でも不満ではあるけど(みゆきへの恋心を表現するシーンのはずなのに「Baby Cruising Love」は単純に恋の展開にワクワクしているだけの曲には思えないから。)、Perfume本人が登場したり規模が大きくなったことで大分ポップになったと思う。

80年だから現代まで網羅する音楽の選曲センスももちろん良くて、これは『glee』に匹敵するセンスの良さ。男性視点で歌われている岡村ちゃんの「カルーアミルク」をるみ子側の視点で用いたり、「カルーアミルク」がかかっているシーンでは早朝の吉野家で牛丼をかっ込んでいるという演出もすばらしい。何故かは分からないけれど、これはすき屋やなか卵だと画にならないと思うですし。ふっきるシーンだから。



まぁ、そんなことよりも『モテキ』の凄さ、大根監督の凄さって言うのは徹底的なリアリティの積み重ねによる実存感、リアリティ。幸世もみゆきもそして墨さんもどこかに実在しているんではないかとうっかり思ってしまうほどにリアル。その理由はやっぱりこのキャラクターはどんな人物なのかということを監督と俳優が考えて作っているなんだからということを再認識させられる。絶対性格悪そうだけど。

そして大根監督の『モテキ』の最大の功績は長澤まさみを救ったこと。『モテキ』以前の長澤まさみって『ラストフレンズ』とかヒット作もあったのに、映画が『曲がれ!スプーン』とか『深呼吸の必要』とかが大コケしたから週刊誌、夕刊紙とかで叩かれていたけれど、結局は本広なんちゃらとか行定なんちゃらとかがウンコちゃんだったってことを証明したことなんじゃないのか。

誰かの言葉ですが、「下手な俳優など居ない。下手な脚本と監督が居るだけだ」という言葉を思い出すが、まさに。「都市伝説の女」のスタッフの人たちには猛省していただきたいと思います。長澤まさみを使って駄作を作ったら、それは製作者側の責任なのですから。それにしてもここまでの女優陣があっけらかんとセックスを肯定する感じの日本映画って、ここだけ治外法権なのか。


にしても、『モテキ』に関しては、ドラマ版も凄かったけれど、映画版の一般層への浸透が半端無いのがとても印象的でした。会社で普段はドラマとか映画に興味無い様な人たちが口々に「『モテキ』面白かった!」と言っているのを聞いて、これがブームなのだと。大根監督の好きな美人OLの方々も誉めておられました。

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