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再び登場の"ザ・家父長制"判事リュ・ミョンハ判事と遂に姿を現した"家父長制"『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』第12話「ヨウスコウカワイルカ」

2022-08-06 | 備忘録
-『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(ウ・ヨンウ弁護士は天才肌 | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

第1話から通底していたこのドラマの敵の1つ、"家父長制"。第12話にして遂に台詞に出てきました、長男以外の人権を踏みつける、時には長男も踏みつける"家父長制"。そして同時に"家父長制"ギャグと言うこのドラマに限らず、初めて目にするギャグまでも。

今回の依頼人は外資系生命保険会社と合併を予定している韓国の保険会社。社内結婚をしている夫婦はどちらかが辞めなくてはいけないと言うリストラ施策を実施し、面談では社内結婚をしている女性社員に対して、性差別的な言動で退職を迫り、退職を拒否した社員から訴えられています。

どう見ても依頼人企業側が性差別的な対応をしたのが明白な為、ヨンウは乗り気ではありません。ミョンソクに依頼人企業が勝てば、性差別的な解雇が合法的になってしまう、社会を良くしないと訴えますが、嗜められてしまいます。

このドラマの面白い所は、大手弁護士事務所と言う設定の為か、依頼人は必ずしも弱者ではなく、大手企業など強者、"家父長制"の支配者側が多いです。弱者であっても"家父長制"的側面を持っていたりします。だからこそのヨンウの葛藤が産まれてドラマになるんですが。

依頼人を訴えた原告の弁護士はその筋では人権派弁護士として知られているリュ・ジェスク弁護士。このリュと言う苗字の設定が秀逸。

第6話「私がクジラだったら…」で登場した対面した相手に"本貫"(日本の本籍と苗字が合わさった様な概念?)を描きまくり、相手をステレオタイプに当てはめる"ザ・家父長制"、リュ・ミョンハ判事の再登板が味噌。いつものごとく、弁論準備手続きの為に原告、被告側双方の弁護士の顔合わせの際に、早速"本貫"を訪ねますが、原告側の弁護士、リュ・ジェスク弁護士はリュ・ミョンハ判事と同じ"豊山リュ氏"と言う"本貫"。気をよくしたリュ判事は更にリュ弁護士の父親の話をしようとしますが、リュ弁護士はリュ判事を性差別的だとやり込め、更には"本貫"上ではリュ弁護士の方が叔母に当たると述べてまさかの"家父長制"ギャグを展開していきます。こんなの見たこと無いです。"家父長制"がこんなに面白くなるなんて…!

裁判は原告に有利な形で展開し、その流れで原告にヨンウが同情的である事を知っているクォンが、ヨンウを陥れる為にハンバダが依頼人の生命保険会社に対してリストラの方法を教授した際の内部文書を原告側のリュ弁護士に送りつける描写からのツイスト(脚本上の”ひねり”)。これこそツイストだろ!って思います。『相棒』がツイストの為に悪人ぽい人を犯人にしないで、社会的弱者や人権派や支援団体の人を犯人にしがちなのとは訳が違います。人権派弁護士を真摯に茶化さず描く真っ当さに驚きました。そして原告側の勝訴と思いきや、まさかの敗訴の展開は『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』的だなと思いました。簡単にカタルシスは与えてくれません。

しかも今回も負けたはずの原告側は晴れやかで、勝ったはずのハンバダの弁護士陣や依頼人はどんよりしています。リストラを行い、被告側として裁判に来ていた人事部長はなんとクビになります。勝ったのは被告企業だけで働く人は部長職でも切り捨てられます。また、同時並行で展開されるミョンソクが過去に弁護した元被告が逆恨みして、ミョンソクも共に弁護したパク・ハスク弁護士を襲撃した後に逃走した件からのサスペンス描写は必見。サスペンスの常道をなぞりつつ、肩透かしを食らわせてからのミョンソクの吐血。普通のサスペンス映画だと、殺される!と思ったら違ったと言う描写の後に同じように殺される!と言う描写があり、本当に殺されたり、襲われたりする演出が多いです。が、本作では、そこから更に捻り、殺されなかったけど、吐血をすると言う、助かったけど、助からなかったみたいな絶望的な展開が待ち受けているとは…

第12話冒頭でミョンソクが徹夜していた描写があり、しかも朝食はファーストフード店のハンバーガーとポテトだけと言う描写まであります。その後も夜遅くまで働く様子が描かれていました。ミョンソクは激務で食事も栄養のあるものを食べていない事がサラッとわざとらしくなく演出されています。これは第12話に限らず、徹夜だったり、まともに食事を摂っていないと言う描写がこれまでも挟まれていました。もっと言うと、第1話の段階でヨンウとの会話中に咳をしている描写もありました。これは伏線というよりも細かな演出と言うべきものです。私の深読みでは無いと思います。


そしてそして、裁判後にリュ弁護士から打ち上げに誘われたヨンウとスヨンはリュ弁護士の元に。打ち上げの場でリュ弁護士が詠む詩は、第5話「ドタバタVS腹黒策士」の被告側の社長がヨンウに投げかけた、「勝つだけの有能な弁護士になりたいですか。真実を求める立派な弁護士になりたいですか」と言う問いかけへの答えの様な詩でした。しかも前段でリュ弁護士はヨンウを自身の弁護士事務所にスカウトしていたし、なんとも今後の展開を感じさせる詩です。

そしてそしてそして、次回予告では出張名目で韓国の観光地、済州島へハンバダのミョンソクチームが向かうと言うシーンが!しかも何故かグラミやヒゲ店長まで!何があるのかもはや分からないです。ミョンソクの吐血は大した事は無くて、ミョンソクの休養の為のバカンスであれば良いのに……!そしてスヨンとヒゲ店長がまさかの?グラミとクォンもまさかあり得るのか??でもこんな楽しそうな展開が用意されていると言う事は、辛い展開もその分ある可能性が高い訳で…

物語の軸と言うか、クリフハンガーもテ・スミのグァンホへのボストン行きの提案、クォンによるハンバダからヨンウ追放計画、ヨンウの転職、そしてテ・スミの息子の件などまだまだあるのですが、あと4話で型がつくのだろうか…もう最終回が来るのが悲しすぎる…

こんなに可愛いタイトルは見た事ないし、甘い展開ばかりだからやっぱりツラい話だった飴と鞭ドラマの本領発揮『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』第11話「お塩君、胡椒ちゃん、しょうゆ弁護士」

2022-08-06 | 備忘録
-『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(ウ・ヨンウ弁護士は天才肌 | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

第11話は冒頭からラブラブシーンもコメディシーンもフルスロットルで嬉しい反面、嫌な予感がしました。だって『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』ですから。飴と鞭ドラマですから…


初っ端からハンバダのエントランスでジュノを待つヨンウ。ジュノに会えば、「会いたいから待ってた」と伝えて、まんざらでもないイ・ジュノ氏。ヨンウがエレベーターに乗ると、ハンバダのハン・ミニョン代表と2人きりになり、悩みはない?とハン代表から問われるヨンウ。ハンバダの掲示板に書かれた抽象を念頭に聞いているのかな?とか視聴者としては思いましたが、ヨンウはキスの仕方の悩みを語り、ハン・ミニョン代表は困惑。私は大爆笑です。

そしてフロアではヨンウが執務室からジュノを見つめ続けていると言うシーンがホラー的な演出で描かれます。またも大爆笑。更にヨンウの視線に気付いたジュノはヨンウの執務室に向かいますが、執務室の前で呼び止められて執務室に入れません。ですが、ドSなジュノくんの面目躍如と言わんばかりに手のひらをヨンウの執務室のガラスに手をつけます。それに気づいたヨンウは執務室の内側のガラスに自分の手をつけ、ガラス越しに手を合わせる訳です。エロい事してますね、社内恋愛め!こんなに甘くて面白いシーンばかりなので、それはやっぱり地獄が待っているわけで。

今回の依頼人は、闇カジノ仲間で買った宝くじの分け前を求める依頼人。妻と共にハンバダにやってきますが、オシドリ夫婦ネタを展開した後で、ヨンウからかば園長宜しく自然界のオシドリは仲良し夫婦などでは無く、夫が浮気しまくりですよと指摘をします。これは慣用句が実際と異なっている事の指摘に留まらず、物語の行き先を暗示していました。証拠が無いから、証拠の捏造や証人買収をしようと提案する依頼人に頑として譲らないヨンウ。そんなヨンウに対して、「柔軟性が無い!」と非難する依頼人たち。このシーンすら、終盤のヨンウの柔軟性に繋がる伏線である点もほほーってなります。


結局、裁判は原告の情婦の偽証によって原告の勝訴となり、宝くじの当選金は三等分に。14億ウォンを手にしたオシドリ夫婦の夫は情婦とその金で楽しく暮らすために妻に離婚を迫ります。韓国の民法だと宝くじの当選金は離婚時の財産分与の対象外の様なので、離婚時に宝くじの当選金を妻に分与する必要が無いよう。ここでヨンウが依頼人に求められた柔軟性を発揮するのは面白い展開でした。可愛いタイトルの意味も終盤、このヨンウの柔軟性が発揮されるタイミングで明らかになります。からの飛躍が始まりグサグサやられます。アレしかオチは考えられませんでしたが、あんな演出するのは本当に凄い、Netflixマネーと思いました。『MIU404』第1話でも出来なかったのに…

あと、オチのシーンでヨンウのケアをしたジュノはケアの説明はしたが何故そんなことを知っているのかは語りませんでした。これも脚本が上手いなぁと唸ります。何故そんなことを知っているのかといえば、恐らくはヨンウの為に、自閉スペクトラム症に付いて勉強しているからって事なんですよね。では、何故勉強しているかと言えば、ヨンウの事を真剣に考えているって事なんですよね。落涙です…

そして事件のオチの飛躍が単に事件のオチであるだけでは無くて、テ・スミがヨンウの父グァンホに提案したヨンウのケアに繋がる事を暗に伝えていて、またほほーってなりました。ヨンウを慮るグァンホはテ・スミから渡されたテサンのボストン支部のパンフレットを眺めており、思い込みの馬鹿親父め!ってなりましたよ…ヨンウはもう大人だよ!グァンホの前でジュノとキスするくらいには!


Lee Jun-ho becomes Woo Young-woo’s designated hugger | Extraordinary Attorney Woo Ep 11 [ENG SUB]



それにしてもクォン・ミヌ…どこまで落ちるのか(第12話で更に落ちる所まで落ちますが…)、そして、そしてスヨンが不憫過ぎてツラいけど、結婚詐欺師にお金巻き上げられる前に教えてくれる人が居て良かった…あと詐欺師に高い酒のボトルの支払いさせて、ラッパ飲みの演出も最高です。