よみびとしらず。

あいどんのう。

くもり

2021-03-09 11:10:55 | 散文
現れたのは曇り空
みんなその裏側にある太陽のことだけを気にかけている
雲はただひとり
ただのひとりにすらなることは能わず
のんびりと空を漂っていると思われている
憤懣(ふんまん)やるかたない感情も
その色には乗らず
誰の手にも届かず
幾重にも重なる灰色の
その雲のなかにわたしの本音は隠された

雲はやがて風の吹き青色の空は現れる
ようやく晴れたと人々は笑って
どこかへ消えた雲のことなど
ただのひとりも
ただひとり
ただの人々は太陽の光を受けて大いに歌うたう
どうかその歌声の届かぬ空の彼方まで
そんな場所へ行くことも能わない雲はいつの日か舞い戻る何度でも
いつもある空に
いつからかどこからか
その場所にあって誰にも見向きもされない曇り空の明るさを
ただあなただけが知っていた

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