よみびとしらず。

あいどんのう。

星と舟

2021-06-24 11:06:50 | 散文
忘れないことしかできないのに
それでも忘れてしまったいくつかの出来事は星になった
誰も信じないそんな戯れ言を夜空に託して
わたしは眠れないまま朝を迎える
そうしてやってきた
希望にあふれて笑うしかない朝の入り江に
待ちわびた荷を乗せないままの舟は着く

夢も現実も枯れ果てたとて
進むしかない舟のみよしにいつしか瞬いた光は浮かぶ
星になれないままで肩を落とした
あの日の思い出に涙は揺らぎ
もう覚えていない昔の話を
魚は歌い継ぎわたしは溺れて泡となる

すべてを重ねた夜の彼方に
置いてきた荷を取りに行くための舟は発つ
経つ年月の流れに逆らい
わたしの記憶は光の速さで遠ざかりながら
一番星はこの星の上に残されたままキラキラと
人魚姫の歌声に舟は酔いしれて嵐をよんだ
あなたに出会うためなのとは決して言えない
わたしの罪咎(つみとが)をただ月だけが眺めていた

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