よみびとしらず。

あいどんのう。

2018-10-12 03:23:13 | 散文
からだの内側でもえる炎に水をくべれば
炎はさらに燃え上がり
からだはますます渇きをおぼえる
目を閉じてみえる暗闇は夜と同じ黒色で
その黒をまとう猫は暗闇を抜け出し夜を越えて朝日を目指した
それでも海から向こうへは渡れずに
黒猫の瞳にうつされた逆さまの朝日は
誰かを捕らえたまま離さない
朝日をみた黒猫が眠る頃
その瞳の奥で誰かが泣いている
いつかみた景色のなかにある記憶は瞳へと宿り
わたしたちは目を閉じて眠り
瞳が宿した記憶の夢をみる
かつてあった砂漠や燃え上がる炎をわたしがどんなに知らなくとも
わたしはそれらを知っていて
からだは渇望を繰り返す
今日もまた逆さまの太陽は昇り
この瞳の奥で誰かが泣いている
瞳にうつされた景色と記憶は循環し
世界は感情を手に入れる
その感情に従い黒猫はただ走る
西へ東へ
泣いている誰かよ、どうか泣かないで

最新の画像もっと見る

コメントを投稿