つめたい記憶は海にしずんだ
そのたからものを探しに月は潜った
人魚になりかわりて呼吸をおぼえ
月は月であったことを全て忘れた
しずんだたからも泡となり
目的もないまま人魚はゆれる
海のそこ眠る わたしのかけら
やがて人魚は歌を口ずさむ
人魚の知らない月のみた夢
その夢物語に魅せられて
ひとは海をわたる
ここにない場所にあるはずのどこかまで
いつかみた場所を知る人魚の瞳に
かつてみた知らない夜を照らす月明かり
その月の明かりに涙あふれた
こぼれおちた涙の理由はまるで知らない
泣きながら歌う ことばなき哀歌
人魚は夜のしじまにとけこんで
海は空と重なり熱をもつ
その熱に魅せられたさかなは旅に出た
目的はあれども音沙汰もなき
海におちたかけらをあてもなく探す
海にさ迷い 心は惑わず
そのかけらこそが我がいのちなりと
迷い路に光る迷いなき眼(まなこ)は
暗く深い海に入りて人魚と出会う
すべてを抱きて海は眠った
今宵もひとり、わたしは知らないだれかの夢をみる
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