い・ち・に・ち

明日が今日になって昨日になるような毎日

八十八話

2020-06-12 | 物語
空気の重さ

雨を降らせる雲が
目の前まで迫ってきて
空気の自由を遮断する

濡れた風景も雨色のベールをかぶり
思い出の中に戻ろうとする
小さな傘しか持たない私は
振り向くことなくその場を離れた

逃げ込んだ屋根のある灯
温かい湯気の向こうには
届かぬ距離の匂いがする


コメントを投稿