波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

寒紅梅

2018-12-21 00:20:19 | 超短編



 新春の七日、木崎翔太郎は浮かぬ顔をして朝を迎えた。起き出して庭に出ると、寒紅梅が五六輪花をつけていたのである。なぜこの日に限って、赤い花が咲いたのだろう。
 翔太郎はそのことに、嫌悪を感じると同時に、いかにも天の約束であるかのように、凛として花を並べたその事実に、畏れに似た思いを抱いた。
 今日は三年前、同じゼミに所属した五人の仲間が、翔太郎の家に集まることになっていた。男性が三人と、女性が二人。
その二人の女性のうちの一人を好いた男性がいて、なかなか打ち明けられずにいるらしかった。意中を告白するのが難しく、翔太郎が中に入って、取り計らいを願っているようなところがあった。そして二人は本日、翔太郎の家に顔を出すことになっていた。時間はお昼頃顔ぶれが揃えばいいということで、はっきりとは決めていなかった。よしみは同じゼミというだけでなく、学内の俳句同好会に参加しているという、仲間意識を超えた親しみがあった。気の置ける同窓というわけだ。それならてきぱき運んだらいいものを、ついより親しい仲間に頼んでしまうという陰性な面も生じてくるのかもしれなかった。しかし、今回の恋の取引を引き受けるについては、こころよしとしない一面があった.それは翔太郎自信、その女性、真山恵子に惹かれていたからである。仲間の男性、水嶋佐太男の本音を知らされるにつけ、翔太郎の思いは募っていった。
 玄関のベルが鳴って、早くも一人が到着である。
未完

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