光化学の驚異―日本がリードする「次世代技術」の最前線―(2006年9月23日)
私どもの世代は「光」は物理の分野で、「化学」・「生物」の分野でないとのイメージがある。光と化学・生物との接点はこの本でも少し触れられている「クロロフィル」による光合成の話くらいであった。尤も、「見ること」や「顕微鏡」も光の分野であるには違いないが・・・。
持ち合わせている「光化学」の知識は、最近になって、と言うかもう大分以前の話であるが、「光化学スモッグ」がある。しかし、これは決して「光」が悪いのではない。又、そのメカニズムを全く私は知らない。「光触媒」なる言葉も最近聞いたことがある。更に、何か恐ろしい光線のイメージがある「レーザー光」は何となくセンセーショナルな報道の影響がある。そもそも「光」のイメージがもう一つ湧かない。光は「波」と「粒子」の性格を合わせて持つ、電磁波の一種と言われても、もう一つピント来ない。
この本では光を応用した最先端の技術が紹介されている。ブルーバックスであるので、素人用に述べられているが、矢張り結構難しいと思う。しかし、何となく光化学の最先端の様子は良く分かる。ここでは、紹介されている全てに触れる訳にはいかないので、「さいら」なりにその技術を利用する光から分類してみる。「通常の光」と「レーザー光」に分けられる。可視光だけでなく、紫外線・赤外線を含んでいる。
通常の光を応用するにはまず、光と反応する目的に応じた「物質」を見出さなければならない。その反応は色々ある。光触媒として、強力な酸化を促進する「酸化チタン」。分子モーターの可能性を秘める光に拠って起こる異性体。光によって色が変化する物質等々。面白い性質を持つ物質が紹介されていく。
しかし、このような物質はどのようにしてその性質があることを見出されるのか?闇雲に一つずつ調べるのであれば、途方もないことである。系統的にある程度当たりが付けられるのか?と心配をする。研究者の苦労が分かる。
それにその様な物質を見つけたからと言って、直ちに応用するという訳には行かない。実用化するには、現場に合わした創意・工夫が必要になる。画期的な技術とはそう言うものであろう。
次に「レーザー光」である。レーザー光はほぼ単一の周波数で有ること。散らばらないこと。レンズにより非常に小さな点に集めることが出来ること。位相が揃っていること。又、その発生の仕方によって、連続的なもの。極短時間にパルス状に発生させるものも可能であること等の特徴がある。そのそれぞれの特徴を生かした技術が応用研究されている。レーザー光は光化学の本命のような感じを受ける。そして、今まで持っていた「レーザー光」の印象が全く異なったものであることに気付く。
レーザー光は極小さな点に集めることが出来ることから、CD、DVD等の記憶装置に既に応用されている。これは、レーザー光の熱エネルギーで小さな点に化学変化を起こさせ、記録するものである。しかし、その記憶容量をさらに高めるためには材質的にもレーザー光の周波数でも限界に来つつあり、次世代DVDが限界であろうと思われている。その解消方法として、熱化学変化でなくて、分子の光化学反応を応用する方式が研究されている。しかし、光の回折現象を利用した「ホログラフィー」による記憶は、一挙に二次元で処理が出来るために、飛躍的に容量を高めることが可能である。立体的に見えるホログラフィーの原理をこの本で初めて知った。その種は、レーザー光を「参照光」としても用いるところにあると言うことだ。知らなんだ。
レーザー光をレンズに集めるとフーリエ変換が瞬時に可能である。これは図形の認証を直ちに行うことが可能である。久し振りにフーリエ変換の言葉を読んだ。懐かしい気分であると共に、結構時間が掛かるのフーリエ変換が瞬時に可能であることに実は驚いた。
私が一番興味を持ったのは、光のピンセットである。そのピンセットを用いて非常に小さなナノ分子の定位とか操作が可能になる。そうすることにより、更に微粒子そのものの化学分析も可能になり、挙動が従来と異なったことを解析・応用する微粒子化学が開かれようとしている。光化学の裾野は本当に広いと改めて思ってしまう。
光化学の多岐に及ぶ分野の広さに驚かされる。正にその点で「驚異」であった。知識不足から理解できないところも多々有るが、読み進めるに連れて、自分もその最先端に引きつけられている。この本を読んでも、どれだけ理解が進んだかは分からないが、光化学先端技術の分野では多くの分野で日夜研究・開発されていることだけは理解できた。それにしても、読んで行くに連れて、最先端の光化学はそれだけでなく、多くの他の技術によって技術開発が可能であることが分かってくる。我が国の最も得意とする分野に発展することを期待したいものである。
それと同時に「光化学」という名称に違和感が出て来る。私の「化学」が古いのかも知れないが、ここは「応用光科学」の方が適切なように思ってしまう。
書籍のデータ
書名:光化学の驚異
―日本がリードする「次世代技術」の最前線―
編者:光化学協会
発行所:株式会社講談社
叢書名:ブルーバックス
発行年月日:2006年8月20日 第1刷発行
私どもの世代は「光」は物理の分野で、「化学」・「生物」の分野でないとのイメージがある。光と化学・生物との接点はこの本でも少し触れられている「クロロフィル」による光合成の話くらいであった。尤も、「見ること」や「顕微鏡」も光の分野であるには違いないが・・・。
持ち合わせている「光化学」の知識は、最近になって、と言うかもう大分以前の話であるが、「光化学スモッグ」がある。しかし、これは決して「光」が悪いのではない。又、そのメカニズムを全く私は知らない。「光触媒」なる言葉も最近聞いたことがある。更に、何か恐ろしい光線のイメージがある「レーザー光」は何となくセンセーショナルな報道の影響がある。そもそも「光」のイメージがもう一つ湧かない。光は「波」と「粒子」の性格を合わせて持つ、電磁波の一種と言われても、もう一つピント来ない。
この本では光を応用した最先端の技術が紹介されている。ブルーバックスであるので、素人用に述べられているが、矢張り結構難しいと思う。しかし、何となく光化学の最先端の様子は良く分かる。ここでは、紹介されている全てに触れる訳にはいかないので、「さいら」なりにその技術を利用する光から分類してみる。「通常の光」と「レーザー光」に分けられる。可視光だけでなく、紫外線・赤外線を含んでいる。
通常の光を応用するにはまず、光と反応する目的に応じた「物質」を見出さなければならない。その反応は色々ある。光触媒として、強力な酸化を促進する「酸化チタン」。分子モーターの可能性を秘める光に拠って起こる異性体。光によって色が変化する物質等々。面白い性質を持つ物質が紹介されていく。
しかし、このような物質はどのようにしてその性質があることを見出されるのか?闇雲に一つずつ調べるのであれば、途方もないことである。系統的にある程度当たりが付けられるのか?と心配をする。研究者の苦労が分かる。
それにその様な物質を見つけたからと言って、直ちに応用するという訳には行かない。実用化するには、現場に合わした創意・工夫が必要になる。画期的な技術とはそう言うものであろう。
次に「レーザー光」である。レーザー光はほぼ単一の周波数で有ること。散らばらないこと。レンズにより非常に小さな点に集めることが出来ること。位相が揃っていること。又、その発生の仕方によって、連続的なもの。極短時間にパルス状に発生させるものも可能であること等の特徴がある。そのそれぞれの特徴を生かした技術が応用研究されている。レーザー光は光化学の本命のような感じを受ける。そして、今まで持っていた「レーザー光」の印象が全く異なったものであることに気付く。
レーザー光は極小さな点に集めることが出来ることから、CD、DVD等の記憶装置に既に応用されている。これは、レーザー光の熱エネルギーで小さな点に化学変化を起こさせ、記録するものである。しかし、その記憶容量をさらに高めるためには材質的にもレーザー光の周波数でも限界に来つつあり、次世代DVDが限界であろうと思われている。その解消方法として、熱化学変化でなくて、分子の光化学反応を応用する方式が研究されている。しかし、光の回折現象を利用した「ホログラフィー」による記憶は、一挙に二次元で処理が出来るために、飛躍的に容量を高めることが可能である。立体的に見えるホログラフィーの原理をこの本で初めて知った。その種は、レーザー光を「参照光」としても用いるところにあると言うことだ。知らなんだ。
レーザー光をレンズに集めるとフーリエ変換が瞬時に可能である。これは図形の認証を直ちに行うことが可能である。久し振りにフーリエ変換の言葉を読んだ。懐かしい気分であると共に、結構時間が掛かるのフーリエ変換が瞬時に可能であることに実は驚いた。
私が一番興味を持ったのは、光のピンセットである。そのピンセットを用いて非常に小さなナノ分子の定位とか操作が可能になる。そうすることにより、更に微粒子そのものの化学分析も可能になり、挙動が従来と異なったことを解析・応用する微粒子化学が開かれようとしている。光化学の裾野は本当に広いと改めて思ってしまう。
光化学の多岐に及ぶ分野の広さに驚かされる。正にその点で「驚異」であった。知識不足から理解できないところも多々有るが、読み進めるに連れて、自分もその最先端に引きつけられている。この本を読んでも、どれだけ理解が進んだかは分からないが、光化学先端技術の分野では多くの分野で日夜研究・開発されていることだけは理解できた。それにしても、読んで行くに連れて、最先端の光化学はそれだけでなく、多くの他の技術によって技術開発が可能であることが分かってくる。我が国の最も得意とする分野に発展することを期待したいものである。
それと同時に「光化学」という名称に違和感が出て来る。私の「化学」が古いのかも知れないが、ここは「応用光科学」の方が適切なように思ってしまう。
書籍のデータ
書名:光化学の驚異
―日本がリードする「次世代技術」の最前線―
編者:光化学協会
発行所:株式会社講談社
叢書名:ブルーバックス
発行年月日:2006年8月20日 第1刷発行