ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

評価は分かれるはず

2017-05-15 07:11:01 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「共感できますか」5月6日
 矢野純一記者が、『幸せですか?』という表題でコラムを書かれていました。その中で矢野氏は、スイス生まれで米国育ちのホーネガーさん(26)を取り上げています。ホーネガー氏は、『1カ月前からロンドンで友人に家に居候しながら就職活動を続けている』『卒業後、スイスやオランダ、フランスで旅行会社、ラジオ局、人材派遣会社などを転々とした。どの職場も1年ほどで辞めている』「英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、オランダ語の5カ国語を操る」『職場選びは、次へのステップになるかどうかではなく「エキサイティングかどうか」を優先する』『国境を越えて職を探すのも、仕事以外の時間も有意義に過ごすことができる街を探すため』という、信条と経歴を持つ人物だそうです。
 コラムは、大学卒業以来ずっと同じ会社で働く矢野氏が、それで幸せなのか、と問い返されるところで終わっています。ですから、矢野氏がどういう意図でホーネガー氏のことを取り上げたのかは分かりません。おそらく、同氏の生き方を評価する人もいれば、違和感を感じる人もいることでしょう。私は後者です。
 私個人の感覚はともかく、同氏の生き方を教材として取り上げるとしたら、我が国のキャリア教育では、どのように評価し、どのように扱うのでしょうか。国境にも職種にも縛られることなく、自分がやりたいことを追い求め続けることは素晴らしいという肯定的な扱い方が考えられます。5カ国語を身に着けたという点を自己研鑽に励む姿勢として評価するかもしれません。仕事以外の時間も有意義にという選択をワークライフバランスの好例として捉える見方も可能でしょう。
 一方で、26歳にもなって、友人に家に居候という現状を甘えだと否定する人もいそうです。旅行会社、ラジオ局、人材派遣会社などを転々とした。どの職場も1年ほどで辞めているということを、計画性のなさ、見通しの悪さという視点で問題ありという考え方もありそうです。仕事は経済的に自立するためにあるという考え方の人からは、エキサイティングということを重視する価値観への批判もありそうです。
 私は、教員はもちろん、保護者や中高生、文部科学省や都道府県教委の担当者、進路指導やキャリア教育をテーマにしている教育学者などを対象に、矢野氏のコラムを読ませ、率直な感想を聞いてみたい気持ちがします。私は今までにこのブログで、夢を追い続けよう式のキャリア教育に疑問を呈してきました。でも、上記のような試みに結果、ホーネガー氏のような生き方を是とする方が多いのであれば、もうこれ以上この問題に触れるのは止めようと思います。自分が時代遅れの少数派ということなのですから。
 でももし、ホーネガー氏の生き方に違和感を感じる人が多いのであれば、キャリア教育は見直されるべきだと思うのです。私は30年後、ホーネガー氏に会い、「幸せでしたか?」と訊いてみたいとも思います。

 

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