ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

事前に、堂々と

2021-05-19 08:10:21 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「堂々と」5月13日
 『首長「優先」接種相次ぐ』という見出しの記事が掲載されました。茨城県城里町や兵庫県神河町の町長が新型コロナワクチンの接種を受けていたことを報じる記事です。城里町の町長は、『町内の医療従事者向けのワクチン接種でキャンセルが発生したため接種を受けた』ということで『ワクチン接種は保健センターなどで行われ、ここは医療機関に当たるため開設者の私も医療従事者となった』と説明しているそうです。
 また、神河町の町長は、『廃棄予定だった分を有効活用した。危機管理のために打った』『公立神崎総合病院の開設者になっており、院内で開かれる会議に週1、2回参加(略)院内での感染リスクを考慮して』と説明しているようです。
 2人の首長の行動に対して、批判する声があるようです。ずるい、特権利用というような感覚からの非難でしょう。実際にそうだったと思われます。だからこそ、2人ともメディアに情報が流れるまで公にしていなかったのでしょうし、自らを医療従事者と見做すという「詭弁」を弄してまで正当化しているのでしょう。
 しかし私は、首長が早期にワクチンを打つことは当然であり、むしろ義務でさえあると考えています。地方自治体は政府とは違います。政府の長である首相は、万が一倒れるようなことがあっても、副総理、官房長官とその職務を代行する「政治家」がいます。しかし、地方自治体では、首長しか「政治家」はいません。副市長や副町長はいますが、彼らは「政治家」ではなく、つまり民意という後ろ盾をもっていないため、規定外、マニュアルの想定外の事態に直面したとき、果断な決定を下しにくく、危機対応が遅れてしまう可能性が高いのです。
 つまり、コロナ禍という未曽有の危機において、首長を欠くことがなく組織が運営されるということは危機管理上重要なことだと考えるのです。首長は、けっして特権として接種を受けたんではないんです、と言い訳するのではなく、真っ先に接種し、そのことを自ら直ちに明らかにし、「自分の存在こそが皆さんの健康と安全を守る最大のカギなのです」と言い切るくらいの自覚と矜持をもつべきなのです。
 スケールは違いますが、教委の教育長や学校の校長もリーダーという意味では同じです。自分が感染せず様々な事態に的確な判断をスピーディーに下せるようにしておくことこそ、リーダーとしてふさわしい行動なのだという自覚が必要です。
 もちろんこうした自覚が独り善がりな思い上がりであっては単なる喜劇でしかありません。そう言い切るだけの資質を磨くとともに、日頃の職務遂行を通して「この人にリーダーシップを振るってもらわなければ困る。学校はやっていけない」と思わせるだけの実績を積み重ねておくことが不可欠です。1本しかワクチンがないとき、「私が打つ」と自信をもって言えるように。

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