命の重さ、動物の幸せ議論 中学生が「いのちの授業」
殺処分される犬猫の現状を描いた映画「犬と猫と人間と」(平成21年)を撮影した映画監督の飯田基晴さん(38)と、動物の殺処分に関する著書の多い作家、渡辺真子さん(53)による「いのちの授業」が文京区のお茶の水女子大学付属中学校で3日間行われた。
多くの犬猫がペットとして愛される一方、処分される動物の命の重さや幸せとは何か、2年生約130人が向き合った。
「全国で1日に655匹もの犬や猫が殺処分になっている理由は何だろう?」
飯田さんらは、約2時間の同作品を、授業に利用できるよう20分のDVD「いぬとねことにんげんと」にまとめた。
生徒らは、ごみのように捨てられていく犬や猫の映像を観ながら、命の価値について考えた。
もらい手が決まり、涙を流して喜ぶボランティアグループの職員。
動物福祉先進国のイギリスでは、ペットショップが制限され、ブリーダーや保護団体から一般市民に譲渡される土壌が紹介された。
「ペットショップをなくせないんですか」。
生徒の問いかけに渡辺さんは「ペットショップの犬をかわいそうだと思う人が増えれば営業を続けられなくなります」。
生徒はどうしたらこの問題を解決できるかを考え、ワークシートに書き込んでいった。
同校では、命の大切さを学ぼうと全学年で取り組んでいる。
2年生は、東日本大震災で両親が犠牲になった震災遺児や消防団の取り組みなどを取り上げてきた。
総合学習担当の戸谷順子教諭によると、人間以外の命の大切さも考えようと今回、飯田監督に依頼したという。
18日の授業で飯田監督は、猫の堕胎手術に立ち会い、胎児に触れた経験を話しながら「猫の赤ちゃんは温かかった」。
生徒らから大きなため息が漏れた。
その後、動物の不妊・去勢手術の必要性や、動物保護団体を運営する立場になって増えすぎた犬猫を安楽死させるかどうかを、グループに分かれて議論した。
白熱した生徒からは「殺される命を作るより不妊・去勢手術がいい」「多くの命が救えるなら安楽死を選ぶ」など、さまざまな意見が噴出した。
飯田さんは「生徒は予想以上にしっかり考え、人間も動物も命の価値に違いはないことを分かってくれた。これらも自分に何ができるか考え続けてほしい」。
渡辺さんは「分かったつもりになっているのではなく、身近に感じてもらえたと思う」と話していた。
この出張授業は小中高校を対象に、交通費のみで無料で実施する。