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現役獣医師が見た「最悪な飼い主」の実態

2023-06-10 06:15:49 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

現役獣医師が見た「最悪な飼い主」の実態
 初診なのに“愛犬の安楽死”を依頼されることも

2023年5月30日(火)

ここ数年で社会的にも注目されるようになった、犬猫の飼育放棄問題や殺処分問題。
全国の動物愛護団体が必死になって活動しているが、まだまだペットを“モノ扱い”しているかのような酷い飼い主が多くいる。
都内の動物病院で院長を務める獣医師のS氏は「犬や猫の気持ちをまったく考えていない酷い飼い主さんをたくさん見てきました」と話す。


(日刊SPA!)

◆手術代を払わず、逃げ去る飼い主
「これは動物病院界隈ではよくあることなのですが、手術代を払わずに逃げてしまう人がいるんです」
ペットの手術代は支払額が10万円以上の高額になることも多い。
待合室で会計時に呼んでも返事がなく、いつのまにかペットとともに消え去っているんだとか……。
「私の病院でも何度か経験があります。3年くらい前の話なのですが、入院していた犬の手術が終わり、まだ入院しなければいけない状態で50代くらいの女性飼い主と面会することになったんです。そして看護師が少し目を離した隙に、犬も飼い主もいなくなっていました。正直、追いかければ捕まえられるかもしれませんが……。あんまり追いかけすぎても、それを見ていた人に動物病院側の評判が悪くなる口コミを書かれるかもしれないので、ちょっと追いかけづらいんですよね」
なお、そのときの支払い金額について「入院費もあったので20万円くらいでした。最初にちゃんと金額の説明もしているので、ハナから逃げる気満々で入院させたんだと思います」とS氏は話した。

◆愛犬の命を大切にしないことの方が問題
診察代を払わなかったことも論外だが、診察の途中だった愛犬の身体のことを何も考えていないことにS氏は憤っていた。
「もちろん、それ以降来ることはありませんでしたが、まだ完治していないワンちゃんがどうなったのか心配です……。飼い主は『他行けばいい』くらいに思っているかもしれませんけど、他の病院に移るときに、その子のカルテなどの情報は引き継げないわけじゃないですか。また最初から診察ってなると、そのワンちゃんに負担がかかりますからね。金額的にも病院としての損失が大きいですが、自分が飼っているペットの命を大切にしていないことの方が憤りを感じます。自分の子供にも同じことするのかって話ですよ」

◆初診で安楽死を提案してきた飼い主
「ペットは家族」という認識がなく、大切な命を“モノ扱い”している人が多くいる。
以前、S氏の病院にやってきた飼い主は、今後の診察代の負担などを考えてなのか、初診で安楽死を依頼してきたという。
「初診で安楽死を提案してきた人がいて、そのときは本当に驚きました。まだ診てもいないのに『辛そうなので安楽死をさせてあげてください』と言われたんです。通院や入院しているワンちゃんなら、身体の状態を鑑みて、飼い主さんと相談を重ねたうえで安楽死を選ぶこともあります。安楽死は悩みに悩んだ末に出す苦しい決断であるはずなのに、初診で簡単に提案してくるなんて……。しかもパッとみた感じはそんなに苦しそうじゃなかったこともあって、ちょっと言葉を失いましたよね」

◆獣医師にとって安楽死は「辛い仕事」
獣医師による安楽死は法律で認められているが、苦しんでいる動物を目の前にして、他に治療の選択肢がないときに苦肉の策として行うこと。
動物病院に来るまでにどういったことがあったかは不明だが、初診でやってきた飼い主が提案することではない。
ただ、飼い主からの提案に対して、安楽死を断るのも難しいことのようだ。
「飼い主さんからの安楽死の提案を断る理由も難しいので、初診での安楽死は破格の金額を設定しています。通常は1万5千円~2万円なのですが、10倍くらいの金額にしていますね。そうなると『じゃあ他の病院に行きます』となるので、初診で安楽死の注射をしたことはないです。『あそこの動物病院は簡単に安楽死やってくれるわよ』って評判になっても嫌なんで……。動物が好きで獣医になったわけですから、基本的にはやりたくないですね。ただ私が断ったことで、その子の命を救えたわけではないので、その後どうなったかを考えると心苦しいです」
S氏は繰り返し「そんな人に飼われている犬猫が可哀想で……」と話した。
犬や猫を飼い始めるときは“最期まで面倒をみられるか”を真剣に考える必要がある。
しかし高齢者が子犬・子猫から飼い始め、人間が先に亡くなり、行き場を失って動物愛護団体に保護される犬猫が後を絶たない。
犬猫はモノではなく「命である」ということ、そして「飼い始めたなら最期まで面倒をみなければならない」ということが常識化していないことが、このような酷い飼い主が存在する要因のひとつなのではないだろうか。

文/セールス森田 【セールス森田】
Web編集者兼ライター。パチンコライター・動画編集者を経て、現在は日刊SPA!編集・インタビュー記事の執筆を中心に活動中。全国各地の取材に出向くフットワークの軽さがセールスポイント