晴れのち曇り、時々パリ

もう、これ以上、黙っていられない! 人が、社会が、日本全体が、壊れかかっている。

仏新政権が船出した。最初の閣議決定が「閣僚俸給30%引き下げ」とは…。

2012-05-17 23:48:36 | フランスとヨーロッパの今日の姿
突然の激しい雨のなか、オープンカーで沿道の群衆に手を振りながら、濡れネズミでエリゼー宮まで向かった「フランソワ・オーランド」だった。


憲法評議会議長から「レジオン・ドナー勲章」最高章(総指揮官章)を付与されて、大統領就任式へ望んだ彼は、そのまま専用機でボンに向かった。

機体が落雷を受けて、パリに引き返し、飛行機を変えて再出発。

前途多難なのか、景気付けの花火を貰ってのお祭りなのか。


そして、昨日16日「内閣」が組閣され、本日17日に初閣議がもたれた。



首相は、長らく(15年)大西洋に近いナントの市長を務めて来た、オーランドの片腕で、ドイツとの人脈の多い(ドイツ語も話せる!)『ジャン=マルク・エロー』が、前評判通り、指名された。

やはり、欧州は独仏関係が中心という状況を、認識している証でもあろう。



     
     就任式当日の、オーランド新大統領と並ぶ『ジャン=マルク・エロー』首相



その翌日から、首相は組閣に入った。

そして、選挙期間中を通じて「男女同格政権」を謳って来た『フランソワ・オーランド』の<公約>通り、34名の閣僚のうち、半数の17名が女性閣僚となった。



     
     組閣終了後の初閣議を終えてエリゼー宮玄関での記念撮影


何と、ジーンズの上下の女性閣僚も見られたが、政府内でも、一般市民の間でも、批判も反対意見も無かった。



【外務大臣】

『ローラン・ファビウス』


     
     ローラン・ファビウス外相


ローラン・ファビウスは、ミッテラン大統領政権の改造内閣で1984年に37歳の若さで二代目首相に就任した、社会党のプリンスと呼ばれた。
第二期ミッテラン政権で、三代目首相となったジョスパン内閣で財務相を務めた今や社会党の重鎮。
オランドは首相としての外交経験を評価し、選挙前から特使として日本を含め諸外国に派遣していた。



【財務大臣】

『ピエール・モスコヴィッチ』


     
     ピエール・モスコヴィッチ財務相


ドミニーク・ストロース=カーンを補佐した後、今回の選挙でオーランドを補佐。
彼も社会党の重鎮で、歳出抑制に前向きな中道派。
2人の起用は、財政再建とユーロ危機への対応を重視する大統領の姿勢の表れと見られる。
『私たちの敵は、国家を左右する金融機関である』という表現を使った。
54歳。



【文部大臣】

『ヴァンサン・ペイヨン』

社会党内でも屈指のインテリで、長らく文教専門家で知られて来た。
何度か、党内の勢力争いで沈んだ事も合ったが、今回いよいよ「文部大臣」として、万を期して登場。
52歳。


     
     ヴァンサン・ペイヨン文部相



【法務大臣】

『クリスティアーヌ・トービア』

1993年以来、フランス海外県の一つ南アメリカ『ガイアナ』選出の下院議員を務め、頻繁に<自由エレクトロン>と呼ばれた「人権運動」の闘士。
50歳。

     
     クリスティーヌ・トーピア法相



【社会問題・保健(厚生)大臣】

『マリゾル・トゥーレーヌ』

かってのストロース=カーンの同志で、地道な活動と、今回の大統領選でのオーランド候補応援の実績から、任命。
さいしょにとり組むべきは年金問題と。
53歳。


     
     マリゾル・トゥーレーヌ厚相



【地域平等・住宅大臣】

『セシル・デュフロー』

欧州議会政党『ヨーロッパ・エコロジストと緑の党』全国書記。
今回「社会党政権」に入閣となった。
環境派政治家が、国土開発と住宅建設の大臣に。
37歳。


     
     セシル・デュフロー地域・住宅相



【内務大臣】

『マニュエル・ヴァラス』

今回の大統領選挙運動期間中、オーランド候補の「広報官」を務めて脚光を浴びた49歳。
長い地道な党内活動が評価された。
全国警察組織を預かる重要ポストを獲得。


     
     マニュエル・ヴァラス内相



【環境問題・長期開発・エネルギー大臣】

『ニコール・ブリック』

2004年以来パリ近郊「セーヌ・エ・マルヌ県」選出上院議員。
「男の世界」上院で、予算委員会で活躍。
環境問題からの財政専門家。
 64歳。


     
     ニコール・ブリック環境・開発・エネルギー相



【生産性向上大臣】

『アルノー・モントブール』

フランス中央部「ソーヌ・エ・ロワール県」選出下院議員で、社会党内では長らく非主流派であった。
保守政権に対抗して、高所得者優遇政策に反対して来た、財政健全化の専門家。
49歳。


     
     アルノー・モントブール生産向上相



【労働・雇用・社会対話大臣】

『ミッシェル・サパン』

オーランドと、最高のエリート学校『国立行政学院(ENA)』の同窓。
新大統領と「おれ」「おまえ」で話が出来る間柄。
勝って、社会党政権下で法相、財務相、労相等を歴任したベテラン。
60歳。


     
     ミッシェル・サパン労相



【防衛大臣】

『ジャン=イヴ・ル・ドリアン』

店員の父と専業主婦を母に持つブルターニュ人の彼は、大学の歴史学教授から人生をスタートし、ミッテランの演説に「惚れ込んで」社会党員となった。
29歳で下院議員。
若い頃からオーランドと共に政治活動に励んで来た。
64歳。


     
     ジャン=イヴ・ル・ドリアン防衛省



【文化・コミュニケーション大臣】

『オーレリー・フィリペッティー』

国立高等師範学校を出て、古典文学の教授。
父はイタリア移民の共産党員。
緑の党から政治活動を開始し、パリ区議会議院の後、公認問題から社会党へ移籍。
前回大統領選で「セゴレーヌ・ロワイヤル」候補の環境問題補佐官を務めた。
今回、38歳で文化大臣。


     
     オーレリー・フィリペッティー文化相



【高等教育・研究開発大臣】

『ジュヌヴィエーヴ・フィオラーゾ』

グルノーブロの研究機関で財政面で活躍。
上級高等教育機関のリノヴェーションの専門家。
57歳。


     
     ジュヌヴィエーヴ・フィオラーゾ高等教育相



【女性の権利大臣 兼 大統領広報官】

『ナジャ・ヴァロー・ベルカセム』

前回のセゴレーヌ・ロワイヤルと、今回のフランソワ・オーランドとの、選挙期間中の広報官として、注目を浴びた。
1977年、モロッコの辺鄙な村の生まれの35歳。
父がフランスへ移民するとき来仏。
フランスに帰化してモロッコとの二重国籍者。
社会学高等専門学校「シアンス・ポー」卒。


     
     ナジャ・ヴァロー・ベルカセム女性相



【農業・農産食品大臣】

『ステファン・ラ・フォル』

オーランドの選挙運動のスーパーバオザー。
新大統領の懐刀で、ずっと農業畑を歩んできた、農事問題専門家。
52歳。


     
     ステファン・ラ・フォル農相



【地方分権・公務員問題大臣】

『マリリーズ・ルブランシュ』

2002年から2年間、社会党「リオネル・ジョスパン」首相のもとで法相。
65歳。


     
     マリリーズ・ルブランシュ地方分権相



【海外領土担当大臣】

『ヴィクトラン・リュレル』

古くからの社会党活動家。
カリブ海の海外県「グアダループ島」で、2002年から下院の議席を守って来た。
セゴレーヌ・ロワイヤル、フランソワ・オーランドと、続けて大統領選の海外領土広報官を歴任。
60歳。


     
     ヴィクトラン・リュレル海外相




結果として、フランソワ・オーランドに近い陣営で固めた「論功行賞」の様にも見えるが、しっかりと夫々の分野の専門家を配置し、実務型内閣である。


閣外相(特命大臣)も入れて34名の中で、17人が女性が起用され、年齢も34歳から66歳までと、幅広い人材を集めている。

しかも、海外領土議員二人に加えて、フランス生まれの二世では無い、帰化移民議員が三名。

モロッコ人。
韓国人。
イタリア人。


来る「下院議員選挙(総選挙)」の為の、選挙対策内閣とも言われるが、選挙後も(万一保革逆転)にならない限り、大幅な変更は無いと思われる。


その第一回の閣議で、「閣僚報酬」の30%減額を閣議決定した。

前政権、ニコラ・サルコジーが「閣僚報酬引き上げ」を決めたのと、真逆のスタート。


さらに。



▶フランスは財政協定の修正希望、成長促進必要=新財務相(ロイター/見出し)

>フランスのピエール・モスコビチ新財務相は17日、欧州の新財政協定を修正し、経済成長の促進に関する条項を追加することを望むと述べた。

>オランド新大統領の主張をあらためて強調した。

>同相はBFMテレビに「われわれはこのままでは(財政協定を)批准できないと言ってきた」と発言。仏独両国はギリシャがユーロ圏にとどまることを望んでいるとも述べた。

>同相は「ユーロを救い、ユーロを防衛しなければならない」と述べた。
【ロイター/5月17日(木)17時3分配信】



早速、メルケルさんには頭の痛い事になる発言が、財務相からだされるなど、新政府は第一日目から着々と「新大統領」の公約実現に向けて、スタートを切った。


これから、下院議員選挙を経て、現在の保守党勢力過半数の下院の「大統領与党化」が為されて後、いよいよ本格的にフランス新政権の活動が待たれる。


ギリシャにおいて、世論調査の結果「緊縮財政」推進派の旧与党が勢いを盛り返し、やり直し総選挙での議席増を狙った「急進左翼」の連立工作拒否への反発と、緊縮政策に対する対案の無い事と共に、国民の目が多少「正常」に戻りつつ有る様だ。


ヨーロッパは、ユーロを失敗させてはならない。

ギリシャの「ユーロ離脱」を防ぐ事が、EUの緊急課題である以上、仏社会党政権が、どのような舵をとるか、いよいよ注目である。



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4 コメント

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フランス閣僚の面々 (ダンテ神曲)
2012-05-18 12:38:41
閣僚の方たちは良い面構えをしています。
勝てば喜びもひとしお、顔にでています。しかし女性閣僚の多さには舌を巻きました。そして若い。日本ではあり得ないことがフランスでは起きているわけですね。
こうしたことを知るためにも、世界へ目を向けることが必要なんだと思いました。
選挙にも行かない人々が依然多い現状、国民の政治に対する意識の向上が叫ばれて久しいですが、関心を持つことの大切さをここのブログから学んで欲しいと思いました。
返信する
ダンテ神曲様。 (時々パリ)
2012-05-19 20:42:07
コメントありがとうございました。
ミッテラン政権の二人目の首相に、ローラン・ファビウスが37歳で就任した時にも驚きました。
若いと視点が精鋭化して狭くなりがち。
早く言って若気の至り、になりがちですが、フランスのエリートは「教育水準」が違い、能力が違います。
まあ、それでも失業率は10%台になるし、財政赤字は膨らむし、問題は山積みです。
日本の役人が、何も出来ないのもむべ無きかな…。
ただ、80%台の投票率は見習うべきでしょうね。
返信する
Unknown (通りすがり)
2012-05-24 14:47:22
ユーロは解体させた方がいい。理念だけ
先行して各国の思惑がバラバラ。

フランスは経済も日本より悪いし日本以上の
公務員天国。武器商売に力入れてる
あたり駄目だわ。
返信する
通りすがり様。 (時々パリ)
2012-06-01 05:02:33
コメントありがとうございました。
>ユーロは解体させた方がいい。
第三者の無責任な反応です。
>理念だけ先行して各国の思惑がバラバラ。
西ローマ崩壊後、ヨーロッパが誕生して要らバラバラな民族の違いを乗り越えようという思想は、我々第三者がとやかく言うべき次元を遥かに越えたものです。
>フランスは経済も日本より悪いし日本以上の公務員天国。
公務員は天国では有りません。
日本の様に国を勝手に食いつぶす様な事は出来ませんから。
階級社会のフランスで、エリートは庶民とは生活の価値観も質も報酬も、全て違っているのは、官も民も同じです。
ただ、高級官僚は政権が変わると総入れ替えになります。
景気が悪い云々は、確かに財務赤字は大きいですし、EU各国お互いの相互介入による債券の持ち合い、そこから来る対外債務などの問題は多く有りますが、医療保険や年金などの充実ぶりは、日本などの比では有りません。
何を持ってして、経済を計るかは難しい所です。
武器の輸出は、日本の「間接輸出」を考えれば、多くは言えません。
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