岐阜県の裏金や知事ら退職金の返還の住民訴訟などのデータのまとめは 12月10日
ここは、退職金返還の訴状の(1)
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岐阜県知事等退職金返還請求事件
訴訟物の価格 金1.600.000円
貼用印紙額 金13.000円
予納郵券代金 金10.000円
訴 状
原告 寺町知正 外13名(目録の通り)
被告 岐阜県知事古田肇
岐阜市薮田南2-1-1
2006年12月7日
岐阜地方裁判所民事部御中
請 求 の 趣 旨
1. 被告は、別紙「岐阜県常勤特別職の退職金」一覧表中、「相手方」欄記載の梶原拓らに対して、岐阜県に、「退職金合計額」欄記載の各金額(計3億1千7百万円)及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うように請求せよ。
2. 被告は、古田肇に対して、金3億1千7百万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うように請求せよ。
3. 被告が、過去20年間、知事、副知事、出納長の職にあったものに対して、金3億1千7百万円を支払うように請求することを怠ることは違法であることを確認する。
4. 被告は、棚橋晋及び杉江勉に対して、常勤特別職退職金を支給してはならない。
5. 訴訟費用は、被告らの負担とする。
との判決、ならびに仮執行宣言を求める。
請 求 の 原 因
第1 当事者
1. 原告は肩書地に居住する住民である。
2. 被告は岐阜県知事古田肇(以下、被告という)である。
3. 原告らが被告に対して損害賠償請求もしくは不当利得返還請求あるいは差止め等するよう求める相手方は、以下である
(1) 岐阜県の副知事から知事を4期努めた梶原拓、副知事2人、出納長7人の個人
(2) 現在、岐阜県知事の職にある古田肇個人
(3) 2006年11月20日に退職した副知事、出納長の個人
第2 住民監査請求前置と本件提訴
1. 前知事梶原拓分
原告らは、2006年9月29日もしくは10月23日に岐阜県監査委員に対して、まったく同一の本文で次の措置を求めて住民監査請求を行った。
「第9 求める措置
岐阜県庁ぐるみの長年の裏金作り、隠し、費消した事件にかかる支出及び財産の管理に関して、違法もしくは著しく不当であるから、裏金作り・隠し・費消に関与した現職員や前知事ら退職職員に次の趣旨の措置をとるよう住民監査請求する。
1.(略) 2.(略)
3.梶原前知事は、16年間の知事として退職金全額を返還すること
4.以上3項につき知事等権限ある者の違法な怠る事実を是正すること
5.(略) 」
これに対して監査委員は11月7日付で請求を却下した(監査結果/甲第1号証)。
2. 知事(前知事梶原拓分を除く)、副知事、出納長分
原告らは、2006年10月12日に岐阜県監査委員に対して、次の措置を求めて住民監査請求を行った。
「第5 監査委員に求める措置
過去20年間において、岐阜県知事、副知事、出納長ら常勤の三役特別職職員に支給した退職金につき、次の趣旨の措置をとるよう(外部)監査委員に求める。
1.過去20年間に支給した退職金の全額の返還(含む利息)(「梶原知事職」分を除く)
2.前項につき、各交付時の知事及び交付決定者と受益者に対して、各自に対応する退職金相当分の損害(含利息)の返還請求・賠償請求をしない場合の知事の違法な怠る事実の是正
3.退職金支出の根拠が欠如した状態での常勤の特別職三役への退職金支出の差し止
4.現状で支給した場合は、知事及び交付決定者と受益者が弁済する義務を負うとの通告」
これに対して監査委員は11月7日付で請求を却下した(監査結果/甲第2号証)。
3. 併合請求
本件は、原告及び被告を一とし、岐阜県の常勤特別職3役の退職金という対象物も制度も同一であるから、関連請求であることは明らかであり、地方自治法第242条の2の第11項において準用する行政事件訴訟法第43条が準用する同法第17条《共同訴訟》の原始的主観的併合の請求の場合に当たるといえる。
第3 退職金の制度
1. 県庁ぐるみの裏金作りと裏金隠しの発覚
2006年7月5日、岐阜県に長年、多額の裏金作りとその費消があったことが発覚した。被告らは、調査を進め、その報告書には「遅くとも昭和40年代の初めの頃には、既に不正な経理による資金が作られていたことがうかがわれる」と記載された。
被告は、1992年以降の約19億円(含む利息)の返還を現在の県職員及び退職した職員らに求めた。前知事ら幹部の悪意に起因する県庁ぐるみの裏金作りと費消や裏金隠しは甚だしかった。
2. 県議会質問で初めて明らかになった退職金制度の問題点
「平成18年第4回岐阜県議会定例会(2006年9月21日開会、10月12日閉会)」の一般質問で、岐阜県の常勤の特別職三役(知事、副知事、出納長)の退職金にかかる規定に関して、裏金事件絡みで問題が指摘された。
県民は、10月4日の議会でのやりとりの報道(10月5日付け朝刊)で初めて、当該退職金の根拠等が条例に明記されず、内規において示されているという「給与月額の0.7」を根拠としていたと知らされた。県は条例改正の意向も答弁した。
なお、12月1日開会の県議会に改正条例案を提案している。
第4 本件退職金支出の違法性
1. 地方自治法は、「額と支給方法」を条例で規定することとしている
退職金支出の根拠を条例に明記すべき理由は、以下のとおりである。
(1) 法律が、条例にその具体的内容を定めることを委任している場合、条例は法律が個別的、具体的に委任した事項について定めを置くことができるにすぎず、条例の規定が法律による委任の限界を超えたり、その趣旨に反する場合には、当該条例は当該法律に反して無効となる。その範囲は、法律で明示されている場合はそれにより、明示されていない場合にはその法律の構造や趣旨・目的、他の法令との整合性等を勘案して解釈することになる(後記(5)引用判決)。
(2) 地方自治法第204条第1項は、「普通地方公共団体は、普通地方公共団体の長及び・・常勤の職員に対し、給料及び旅費を支給しなければならない」、同第2項「普通地方公共団体は、条例で、前項の職員に対し、・・手当又は退職手当を支給することができる」、同3項は、「給料、手当及び旅費の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない」として各種給付を条例で明記・規定することを定めている(給与条例主義という)。
第204条の2は、「普通地方公共団体は、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基く条例に基かずには、これを第203第1項の職員及び前条第1項の職員に支給することができない」としている(第203第1項の職員とは、県議や各種委員など非常勤職員)。
(3) この制度の目的は、住民の代表者である議員によって構成される議会が、支給に関する条例を制定する過程で、その必要性、合理性を慎重に審議することで、当該自治体の財政の健全化及び透明化に資することにある。また、その支給基準が条例によって定まることにより、支給の対象となる職員の身分が安定する効果もある。
前記地方自治法は、「額」を条例で定めなければならないと規定しているから、条例自体にその金額を明記するか、その具体的算出方法を定めるなどして、少なくともその規定によって、誰が見てもその金額を同一のものとして確定し得ることが不可欠な要件である。
(4) 講学上も、「額と方法の条例明記」は定説である
「新版・逐条地方自治法 第一次改訂版」(松本英昭著/学陽書房)の解説は以下である。
(204条関連、同626ページ)
「本条では、給料、手当及び旅費の額並びにその支給方法を条例事項としており、かつ、給与その他の給付はすべて法律又はこれに基づく条例に基づかなければならない(法二〇四の二)から・・・条例中には・・・諸手当についても、規定すべきことはもちろんである・・・額を定め、・・・その支給方法としては・・・期間計算、支給期日等を定めるべきものである。」
(204条の2関連、同628ページ)
「本条は、昭和三十一年の改正によって新設され、普通地方公共悼体がその職員に対して支給する給与その他の給付は法律(前二条の規定を含む。)に直接根拠を有するか、又は法律の具体的根拠に基づく条例によって給与を支給する場合に限るものとし、それ以外の一切の給与その他の給付の支給を禁じ、給与の体系の整備を図ったものである・・・非常勤職員に対しては報酬及び費用弁償(法二〇三(改正前))、常勤職員に対しては、給料及び族費(法二〇四(同上))の支給を義務づけ、それぞれ該当条文において、これらのものについてはその額並びに支給方法を条例で定めることは要求はしていたが、これらの種類の給与以外の給与その他の給付については、なんら規定がなかった。したがって、一般職の職員については、条例で規定しさえすれば如何なる種類の給与をどのような方法で支給しても差しつかえなく、また、特別職の職員については、条例の規定すらも必要とせず、単なる予算措置のみで極めて曖昧な給与が支給されていても、適当不適当の問題は別として何ら違法の点はなかったため、一般職及び特別職を通じて、給与の実態は地方公共団体ごとに極めて区々であり混乱していた。このような給与体系の欠陥を抜本的に一掃すべく昭和三十一年に改正が行われたのであり、本条の新設は第二百三条及び第二百四条の改正と相まって、給与体系の公明化を図ったものである。
ニ「法律又はこれに基く条例に基」づき支給するとは、法律上直接に給与の種類、額、支給方法等について規定があり、これによって直ちに給与が支給できるような場合に、これに基づいて支給すること、及び法律においてある種の支給について根拠があり、この法律の授権に基づいて条例で具体的に種類、額、支給方法等を定め、それに基づいて支給することをいう。「これに基く条例」と規定したのは、具体的に地方公共団体の職員の給与に関して法律の特別の定めがあり、その法律によって、すなわち当該規定に基づいて条例が内容的に給与の種類、額及び支給方法等を定めることを意味する。これは本法中「法律又はこれに基づく政令」(例 法二2、九六1Ⅳ等)という場合に、具体的に法律に根拠があり、その根拠に基づいて政令が制定される場合に限定しているのと全く軌を一にして解釈されるものである。」
(同、629ページ)
「四 本条に違反する給与その他の給付の支出は、違法であり、その支給を行った職員は地方公共団体に損害を与えた場合損害賠償の責に任じなければならないのみならず、支給を受けた職員も本来請求権のない者であるから、返還の義務があるものである。」
(5) 判例も「額と方法の条例明記」を示している
平成14(行ウ)24事件名/市議費用弁償返還請求事件/平成14年11月18日判決 /名古屋地方裁判所は、次のように判示した。
「法203条3項は,『第1項の者(普通地方公共団体の議会の議員等の非常勤職員)は,職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる。』と規定するとともに,同条5項は,『報酬,費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならない。』と規定し,いわゆる各種給付の条例決定主義を定めている。その主たる目的は,同様の規定である法204条3項,204条の2とともに,住民の代表者である議員によって構成される議会が,支給に関する条例を制定する過程で,その必要性,合理性を慎重に審議し,もって普通地方公共団体の財政の健全化及び透明化に資することにあると解され,副次的に,その支給基準が条例によって定まることにより,支給の対象となる職員の身分が安定する効果ももたらされる。
そして,『費用の額』を条例で定めなければならないと明定していることも考慮すると,条例自体にその金額を明記するか,又はその具体的算出方法を定めるなどして,少なくともこれによってその金額を確定し得るものであることを要すると解するのが相当である(最高裁判所昭和50年10月2日第一小法廷判決・集民116号163頁参照)。
この見地から検討すると,本件条例5条3項は,『前項に定めるものの外,議長,副議長及び議員が職務を行うについて費用を必要とするときは,その費用を弁償するものとし,その額は,予算の範囲内で市長が定める。』と規定し,費用弁償の額の決定を市長に一任し,かつその支給方法について何ら触れるところがないから,本件条例は,これによって支給金額等を確定し得るものとは到底いえず,明らかに,法203条5項の趣旨に反し,無効というほかない。したがって,本件条例に基づく本件費用弁償の支出は,その時点においては法242条の定める『違法な公金の支出』に当たるといわざるを得ない。」
(同事件の控訴審) 平成14(行コ)67等/市議費用弁償返還請求控訴,同附帯控訴事件/平成15年07月31日/名古屋高等裁判所は、次のように判示した。
「本件条例は,これによって支給金額等を確定しうるとはいえず,法203条5項の趣旨に反し無効であって,本件条例に基づく本件費用弁償の支出(平成13年6月分から11月分までの費用弁償)は,その時点においては法242条の定める『違法な公金の支出』に当たるといわざるをえない」
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