竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

後撰和歌集 巻15 歌番号1085から1089まで

2024年03月29日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻15
歌番号一〇八五
原文 春可多安也之止飛止乃和良比个礼者
読下 姿あやし、と人の笑ひければ

原文 美川祢
読下 みつね(凡河内躬恒)

原文 以世乃宇美乃徒利乃宇遣奈留佐万奈礼止布可幾己々呂者曽己尓之川女利
和歌 いせのうみの つりのうけなる さまなれと ふかきこころは そこにしつめり
読下 伊勢の海の釣の浮けなるさまなれど深き心は底に沈めり
解釈 伊勢の海に浮かぶ釣りの、その浮きのようにふらふらと頼りない姿ではありますが、貴女を恋焦がれる深い気持ちは、見えないでしょうが、その頼り無いような浮きの底深くに沈んでいるのです。

歌番号一〇八六
原文 於本幾於保以万宇知幾三乃志良加者乃以部尓万可利
和多利天者部利个留尓飛止乃佐宇之尓己毛利者部利天
読下 太政大臣の白河の家にまかり
渡りて侍りけるに、人の曹司に籠もり侍りて

原文 奈可川可佐
読下 中務

原文 志良加者乃堂幾乃以止三末本之个礼止美多利尓飛止者与世之毛乃遠也
和歌 しらかはの たきのいとみま ほしけれと みたりにひとは よせしものをや
読下 白河のたぎのいと見まほしけれどみたりに人は寄せじものをや
解釈 白河の急流(白河院の庭池の様)を大層に見たいと思いますが、見たいと思う人を近寄らせたものでしょうか。それとも、白河の沸き立つ流れの乱れに人を寄せ付けないものでしょうか。

歌番号一〇八七
原文 可部之
読下 返し

原文 於本幾於本以万宇知幾三
読下 おほきおほいまうちきみ(太政大臣)

原文 志良加者乃多幾乃以止奈美々多礼川々与留遠曽飛止者満川止以不奈留
和歌 しらかはの たきのいとなみ みたれつつ よるをそひとは まつといふなる
読下 白河のたきのいとなみ乱れつつ撚るをぞ人は待つと言ふなる
解釈 白河の急流は大層に乱れて流れています、その言葉の響きのような、白い糸を撚るではありませんが、逢瀬の夜を貴女は待っていると言うのですか。(では、今宵、伺います。)

歌番号一〇八八
原文 者知寸乃者以遠止利天
読下 蓮のはひをとりて

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 波知寸者乃者比尓曽飛止者於毛不良无与尓八己比知乃奈可尓於日徒々
和歌 はちすはの はひにそひとは おもふらむ よにはこひちの なかにおひつつ
読下 蓮葉のはひにぞ人は思ふらん世にはこひぢの中に生ひつつ
解釈 まるで蓮の根のようだと人は思うでしょう、この世にあって泥中(こひぢ)の言葉の響きのような恋路の中に花を咲かせることなくずっと老いるままなので。

歌番号一〇八九
原文 安不左可乃世幾尓以保利遠川久利天寸美者部利个留尓
由幾可不飛止遠三天
読下 相坂の関に庵を作りて住み侍りけるに、
行き交ふ人を見て

原文 世美満留
読下 蝉丸

原文 己礼也己乃由久毛可部留毛和可礼川々志留毛志良奴毛安不佐可乃世幾
和歌 これやこの ゆくもかへるも わかれつつ しるもしらぬも あふさかのせき
読下 これやこの行くも帰るも別れつつ知るも知らぬも相坂の関
解釈 これが、まさしく、行く人も帰る人もここで別れ、知っている人も知らない人もここで会う、その相坂の関なのだな。

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後撰和歌集 巻15 歌番号1080から1084まで

2024年03月28日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻15
歌番号一〇八〇
原文 満多幾左以尓奈利多万者左利个留止幾加多波良乃
尓与宇己多知曽祢美多末不个之幾奈利个留止幾
美可止於保武佐宇之尓志乃比天多知与利多万部利个留尓
於保武多以女无者奈久天多天万川礼多万日个累
読下 まだ后になりたまはざりける時、かたはらの
女御たち嫉みたまふ気色なりける時、
帝、御曹司に忍びて立ち寄りたまへりけるに、
御対面はなくてたてまつれたまひける

原文 左可乃幾左以
読下 嵯峨后

原文 己止志个之志波之者多天礼与為乃万尓遠計良无川由者以天々波良者无
和歌 ことしけし しはしはたてれ よひのまに おけらむつゆは いててはらはむ
読下 事しげししばしは立てれ宵の間に置けらん露は出でて払はん
解釈 人の嫉妬での噂が激しいので、しばらくの間、御曹司の外で立っていてください、宵の間に置くでしょう露は、皆が寝鎮まるころに、私が御曹司を出てうち払いましょうから。

歌番号一〇八一
原文 以部尓由幾比良乃安曾无万宇天幾多利个留尓川幾乃
於毛之呂加利个留尓左計良奈止多宇部天
満可利多々武止之个留本止尓
読下 家に行平朝臣まうで来たりけるに、月の
おもしろかりけるに、酒らなどたうべて、
まかり立たむとしけるほどに

原文 可八良乃比多利乃於本以万宇知幾三
読下 河原左大臣

原文 帝累従幾遠満左幾乃徒奈尓与利加个天安可寸和可留々飛止遠徒奈可无
和歌 てるつきを まさきのつなに よりかけて あかすわかるる ひとをつなかむ
読下 照る月をまさきの綱に撚りかけてあかず別るる人を繋がん
解釈 照る月を、神祀りの真拆(まさき)の葛(かづら)の綱で撚りかけて引き留め、まだ、飽き足りない宴から罷り帰って行く人を繋ぎ止めたいものです。

歌番号一〇八二
原文 可部之
読下 返し

原文 由幾比良乃安曾无
読下 行平朝臣(在原行平)

原文 可幾利奈幾於毛比乃川奈乃奈久者己曽万佐幾乃加川良与利毛奈也万女
和歌 かきりなき おもひのつなの なくはこそ まさきのかつら よりもなやまめ
読下 限りなき思ひの綱のなくはこそまさきのかづら撚りも悩まめ
解釈 限りなく貴方を思う長い綱が無いからこそ、その長い真拆の葛の綱を撚り作るのが大変でしょう、(でも、末永く貴方を思う私には真拆の葛の綱は不要です。)
注意 清輔集「たち難き思ひの綱につながれて引き返さるることぞかなしき」を引用する。

歌番号一〇八三
原文 与乃奈可遠於毛比宇之天者部利个留己呂
読下 世の中を思ひ憂じて侍りけるころ

原文 奈利比良乃安曾无
読下 業平朝臣(在原業平)

原文 春美和比奴以末者可幾利止也万左止尓徒万幾己留部幾也止毛止女天无
和歌 すみわひぬ いまはかきりと やまさとに つまきこるへき やともとめてむ
読下 住みわびぬ今は限りと山里につま木こるべき宿求めてん
解釈 この世に住むのが嫌となった、今はもうこれまでと、山里に薪を伐る、その言葉のような、妻と籠るような宿を探したいものです。

歌番号一〇八四
原文 和礼遠志利可本尓奈以比曽止於无奈乃以比天者部利
个留可部之己止尓
読下 我を知り顔にな言ひそ、と女の言ひて侍り
ける返事に

原文 美川祢
読下 みつね(凡河内躬恒)

原文 安志比幾乃也万尓於比多留志良加之乃志良之奈飛止遠久知幾奈利止毛
和歌 あしひきの やまにおひたる しらかしの しらしなひとを くちきなりとも
読下 あしひきの山に生ひたる白樫の知らじな人を朽ち木なりとも
解釈 葦や檜の生える山に生えた白樫、その言葉の響きではありマシンが、貴女は知らないようですね、私が朽ち木、その言葉の響きのような、馬の口に木を噛ませる、その口木のように口が堅いと男とは。

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後撰和歌集 巻15 歌番号1075から1079まで

2024年03月27日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻15
後撰和歌集 現代語訳 原文付 巻15
原文 止遠末利以川末幾仁安多留未幾
読下 巻十五

原文 久左久左乃宇多比止
読下 雑歌一

歌番号一〇七五
原文 尓武奈乃美可止左可乃於保武止乃多女之尓天
世利可八尓美由幾之多万比个留飛
読下 仁和帝、嵯峨の御時の例にて
芹河に行幸したまひける日

原文 安利八良乃由幾比良乃安曾无
読下 在原行平朝臣

原文 左可乃也万美由幾堂衣尓之世利可八乃知与乃布留美知安止者安利个利
和歌 さかのやま みゆきたえにし せりかはの ちよのふるみち あとはありけり
読下 嵯峨の山行幸絶えにし芹河の千世の古道跡は有りけり
解釈 嵯峨の山、その嵯峨の帝のゆかりの地への行幸が絶えてしまっていたが、その嵯峨の山の芹河の野は千歳にも変わらぬ古き路の跡が今もあったことです。

歌番号一〇七六
原文 於奈之飛堂可々比尓天加利幾奴乃多毛止尓
徒累乃加多遠奴日天加幾川計多利个留
読下 同じ日、鷹飼ひにて狩衣の袂に
鶴のかたを縫ひて、書きつけたりける

原文 安利八良乃由幾比良乃安曾无
読下 在原行平朝臣

原文 於幾奈左比飛止奈止可女曽可利幾己呂毛遣不者可利止曽堂川毛奈久奈留
和歌 おきなさひ ひとなとかめそ かりころも けふはかりとそ たつもなくなる
読下 翁さび人なとがめそ狩衣今日ばかりとぞ田鶴も鳴くなる
解釈 鷹飼の役に相応しくなく、いかにも翁のような人だと、あれこれ言わないでください、狩衣を着る今日だけだと、ほれ、この通り、袖の田鶴も鳴いているでしょう。

原文 美由幾乃万多乃飛奈无知志乃部宇堂天万川利个留
読下 行幸の又の日なん致仕の表たてまつりける

歌番号一〇七七
原文 幾乃止毛乃利満多徒可左堂万者良左利个留止幾時
己止乃徒以天者部利天止之者以久良者可利尓可奈利奴留止
止比者部利个礼者与曾安万利尓奈无奈利奴留止毛宇志个礼八
読下 紀友則まだ官たまはらざりける時、
ことのついで侍りて、年はいくらばかりにかなりぬると
問ひ侍りければ、四十余になんなりぬると申ければ

原文 於久留於保萬豆利古止乃於保萬豆岐美
読下 贈太政大臣

原文 以末万天尓奈止可波者奈乃佐可寸之天与曽止世安万利止之幾利者寸留
和歌 いままてに なとかははなの さかすして よそとせあまり としきりはする
読下 今までになどかは花の咲かずして四十年余り年ぎりはする
解釈 今までどうして栄達の花が咲くことなく、四十年余りも、実が実らないだったのだろうか。

歌番号一〇七八
原文 可部之
読下 返し

原文 止毛乃利
読下 とものり(紀友則)

原文 者累/\乃加寸者和寸礼寸安利奈可良者奈左可奴幾遠奈尓々宇部个无
和歌 はるはるの かすはわすれす ありなから はなさかぬきを なににうゑけむ
読下 はるばるの数は忘れず有りながら花咲かぬ木を何に植ゑけん
解釈 四十年余りの遥かな年の数は毎年に忘れることなくありながら、実を付けるための、その花が咲かない木を、どのような理由で貴方はそばに植えたのでしょうか。

歌番号一〇七九
原文 曽止乃川可比尓志波/\満可利安利幾天止乃宇部於利天
者部利个留止幾加祢寸計乃安曾无乃毛止尓遠久利者部利个留
読下 外吏にしばしばまかりありきて、殿上下りて
侍りける時、兼輔朝臣のもとに贈り侍りける

原文 多比良乃奈加幾
読下 平中興

原文 与止々毛尓美祢部布毛止部於利乃本利由久々毛乃三八和礼尓曽安利个留
和歌 よとともに みねへふもとへ おりのほり ゆくくものみは われにそありける
読下 世とともに峯へ麓へ下り上り行く雲の身は我にぞ有りける
解釈 その時の中で峯へとまた麓へと下り上り行く雲、その雲の姿は、ちょうど、地方と都とを下り上りする私の身の上だったのですね。

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後撰和歌集 巻14 歌番号1069から1074まで

2024年03月26日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻14
歌番号一〇六九
原文 美奈毛止乃堂々安幾良乃安曾无可武奈川幾者可利尓止己奈川遠
於利天遠久利天者部利个礼者
読下 源正明朝臣、十月ばかりに、
常夏を折りて贈りて侍りければ

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 布由奈礼止幾美可々幾本尓佐幾个礼者武部止己奈川尓己比之可利个利
和歌 ふゆなれと きみかかきほに さきけれは うへとこなつに こひしかりけり
読下 冬なれど君が垣ほに咲きければむべ常夏に恋しかりけり
解釈 季節としては、もう、冬ですが、貴女の屋敷の垣根に咲いたのですと、なるほど、常夏(とこなつ)の言葉の響きのように、「常なつかし」との、その永遠にお慕いしますとの貴女のお気持ちに、私は一層に貴女に恋焦がれます。

歌番号一〇七〇
原文 於无奈乃宇良武留己止安利天於也乃毛止尓満可利和多利
天者部利个留尓由幾乃布可久奈利天者部利个礼八
安之多尓於无奈乃武可部尓久留万徒可者之个留
世宇曽己尓久波部天徒可者之个留
読下 女の、恨むることありて親のもとにまかり渡り
て侍りけるに、雪の深く降りて侍りければ、
朝に女の迎へに車つかはしける
消息に加へてつかはしける

原文 加祢寸計乃安曾无
読下 かねすけの朝臣(藤原兼輔)

原文 志良由幾乃計左者川毛礼留於毛日可奈安者天不留与乃本止毛部奈久尓
和歌 しらゆきの けさはつもれる おもひかな あはてふるよの ほともへなくに
読下 白雪の今朝は積もれる思ひかな逢はでふる夜のほども経なくに
解釈 白雪が、今朝、積もっているように、私に知らせることなく行ってしまった貴女にたくさんの恋焦がれる思いがあります、貴女に逢わないで時を経る夜がそれほども続いてはいないのに。

歌番号一〇七一
原文 可部之
読下 返し

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 志良由幾乃川毛留於毛日毛堂乃万礼寸者留与利乃知者安良之止於毛部八
和歌 しらゆきの つもるおもひも たのまれす はるよりのちは あらしとおもへは
読下 白雪の積もる思ひも頼まれず春より後はあらじと思へば
解釈 今朝の白雪がたくさんに積もるような、たくさんの積もれる私への恋心と言いますが、それは信用が出来ません、雪が融ける、その春から後は雪が無いのとおなじようだと思うと。

歌番号一〇七二
原文 己々呂左之者部利於无奈美也徒可部之者部利个礼者安不己止可
多久天者部利个留尓由幾乃不留尓川可八之个留
読下 心ざし侍る女、宮仕へし侍りければ、逢ふことか
たくて侍りけるに、雪の降るにつかはしける

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 和可己飛之幾美可安多利遠者奈礼祢八布留志良由幾毛曽良尓幾由良无
和歌 わかこひし きみかあたりを はなれねは ふるしらゆきも そらにきゆらむ
読下 我が恋ひし君があたりを離れねば降る白雪も空に消ゆらん
解釈 私の恋焦がれた思いは貴女の周辺を離れませんので、降る白雪も私の恋の「火」に溶けて地に積もる前に空で消えて行くでしょう。

歌番号一〇七三
原文 可部之
読下 返し

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 也万可久礼幾衣世奴由幾乃和比之幾者幾美万川乃者尓加々利天曽布留
和歌 やまかくれ きえせぬゆきの わひしきは きみまつのはに かかりてそふる
読下 山隠れ消えせぬ雪のわびしきは君松の葉にかかりてぞ降る
解釈 山蔭(宮の奥に居ること)にあって融け消えない雪は心気がかりなものですが、貴方が待つ、その言葉の響きのような松の葉に雪は降り懸かって、宮で時を過ごす私の周囲では降っています。(さて、降る雪を消すと言う貴方の思いの「火」は、どうなっているのでしょうか。証を見せてください。)

歌番号一〇七四
原文 毛乃以比者部利个留於无奈尓止之乃者天乃己呂本比川可者
之个留
読下 物言ひ侍りける女に、年の果てのころほひ、つかは
しける

原文 布知八良乃止幾布留
読下 藤原ときふる(藤原時雨)

原文 安良多万乃止之者个不安寸己衣奴部之安不左可也万遠和礼也遠久礼无
和歌 あらたまの としはけふあす こえぬへし あふさかやまを われやおくれむ
読下 あらたまの年は今日明日越えぬべし相坂山を我や遅れん
解釈 時間が経ち神の気が荒れた荒霊が新しくなる、その年越・新年は今日から明日にと朝日が越える上るはずの相坂山、その言葉のように貴女との逢う坂を越えることに私は遅れを取るでしょうか、(ちゃんと、貴女の許へ行きますから。)

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後撰和歌集 巻14 歌番号1064から1068まで

2024年03月25日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻14
歌番号一〇六四
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 与三飛止毛
読下 よみ人も

原文 飛止奈美尓安良奴和可三八奈尓者奈留安之乃祢乃美曽志多尓奈可留々
和歌 ひとなみに あらぬわかみは なにはなる あしのねのみそ したになかるる
読下 人並みにあらぬ我が身は難波なる葦の根のみぞ下に泣かるる
解釈 貴女から人並みに相手にされない我が身は、難波の潟に生える葦の根のその下には水が流れる、その言葉の響きのように、音(ね)のみを上げて、貴女に気が付かれないように泣いています。

歌番号一〇六五
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 与三飛止毛
読下 よみ人も

原文 志良久毛乃由久部幾也万者佐多万良寸於毛不可多尓毛可世者与世奈无
和歌 しらくもの ゆくへきやまは さたまらす おもふかたにも かせはよせなむ
読下 白雲の行くべき山は定まらず思ふ方にも風は寄せなん
解釈 白雲が流れ行くべきの山は定まっていない、でも、あちらに流れ行くと思う方向には風が吹き寄せるでしょう、そのように、貴女への恋焦がれる思いは、貴女の許へと吹き寄せて欲しいものです。

歌番号一〇六六
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 与三飛止毛
読下 よみ人も

原文 与乃奈可尓奈保安利安个乃川幾奈久天也美尓万与不遠止八奴川良之奈
和歌 よのなかに なほありあけの つきなくて やみにまよふを とはぬつらしな
読下 世の中になほ有明けの月なくて闇にまどふを訪はぬつらしな
解釈 空には有明の月が出ていますが、世(貴方と私との関係)の中には闇夜を照らすような有明の月が出ていなくて、貴方との関係に戸惑う私を尋ねて来ないのは辛いものがあります。

歌番号一〇六七
原文 佐多万良奴己々呂安利止於无奈乃以日多利个礼八徒可八之个留
読下 定まらぬ心あり、と女の言ひたりければ、つかはしける

原文 於久留於保萬豆利古止乃於保萬豆岐美
読下 贈太政大臣

原文 安寸可々者世幾天止々武留毛乃奈良波布知世止奈留止奈止可以者礼无
和歌 あすかかは せきてととむる ものならは ふちせになると なとかいはれむ
読下 飛鳥河せきてとどむる物ならば淵瀬になるとなどか言はれん
解釈 貴女は私のことを一途では無いと言いますが、もし、あの飛鳥河が堰き止められるものでしたら、後は淵となり、瀬となると、どうして、歌に詠われるでしょうか。世(男女の関係)には移り変わりがあるものです。
注意 古今和歌集「世の中はなにか常なる飛鳥河昨日の淵ぞ今日は瀬になる」を引用する。

歌番号一〇六八
原文 飛佐之宇満可利可与八寸奈利尓个礼八可武奈川幾者可利尓
由幾乃寸己之布利多留安之多尓以比者部利个留
読下 久しうまかり通はずなりにければ、十月ばかりに、
雪の少し降りたる朝に言ひ侍りける

原文 宇己无
読下 右近

原文 三遠徒免者安者礼止曽於毛不者川由幾乃布利奴留己止毛多礼尓以者万之
和歌 みをつめは あはれとそおもふ はつゆきの ふりぬることも たれにいはまし
読下 身をつめばあはれとぞ思ふ初雪の降りぬることも誰れに言はまし
解釈 我が身に年が積みゆくと痛ましいものと感じられます、今年もまた初雪が降る、その言葉のように我が身が古く年を取り、貴方に振られてしまったことを、さて、誰に相談しましょうか。

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