歌番号一〇八五
原文 春可多安也之止飛止乃和良比个礼者
読下 姿あやし、と人の笑ひければ
原文 美川祢
読下 みつね(凡河内躬恒)
原文 以世乃宇美乃徒利乃宇遣奈留佐万奈礼止布可幾己々呂者曽己尓之川女利
和歌 いせのうみの つりのうけなる さまなれと ふかきこころは そこにしつめり
読下 伊勢の海の釣の浮けなるさまなれど深き心は底に沈めり
解釈 伊勢の海に浮かぶ釣りの、その浮きのようにふらふらと頼りない姿ではありますが、貴女を恋焦がれる深い気持ちは、見えないでしょうが、その頼り無いような浮きの底深くに沈んでいるのです。
歌番号一〇八六
原文 於本幾於保以万宇知幾三乃志良加者乃以部尓万可利
和多利天者部利个留尓飛止乃佐宇之尓己毛利者部利天
読下 太政大臣の白河の家にまかり
渡りて侍りけるに、人の曹司に籠もり侍りて
原文 奈可川可佐
読下 中務
原文 志良加者乃堂幾乃以止三末本之个礼止美多利尓飛止者与世之毛乃遠也
和歌 しらかはの たきのいとみま ほしけれと みたりにひとは よせしものをや
読下 白河のたぎのいと見まほしけれどみたりに人は寄せじものをや
解釈 白河の急流(白河院の庭池の様)を大層に見たいと思いますが、見たいと思う人を近寄らせたものでしょうか。それとも、白河の沸き立つ流れの乱れに人を寄せ付けないものでしょうか。
歌番号一〇八七
原文 可部之
読下 返し
原文 於本幾於本以万宇知幾三
読下 おほきおほいまうちきみ(太政大臣)
原文 志良加者乃多幾乃以止奈美々多礼川々与留遠曽飛止者満川止以不奈留
和歌 しらかはの たきのいとなみ みたれつつ よるをそひとは まつといふなる
読下 白河のたきのいとなみ乱れつつ撚るをぞ人は待つと言ふなる
解釈 白河の急流は大層に乱れて流れています、その言葉の響きのような、白い糸を撚るではありませんが、逢瀬の夜を貴女は待っていると言うのですか。(では、今宵、伺います。)
歌番号一〇八八
原文 者知寸乃者以遠止利天
読下 蓮のはひをとりて
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 波知寸者乃者比尓曽飛止者於毛不良无与尓八己比知乃奈可尓於日徒々
和歌 はちすはの はひにそひとは おもふらむ よにはこひちの なかにおひつつ
読下 蓮葉のはひにぞ人は思ふらん世にはこひぢの中に生ひつつ
解釈 まるで蓮の根のようだと人は思うでしょう、この世にあって泥中(こひぢ)の言葉の響きのような恋路の中に花を咲かせることなくずっと老いるままなので。
歌番号一〇八九
原文 安不左可乃世幾尓以保利遠川久利天寸美者部利个留尓
由幾可不飛止遠三天
読下 相坂の関に庵を作りて住み侍りけるに、
行き交ふ人を見て
原文 世美満留
読下 蝉丸
原文 己礼也己乃由久毛可部留毛和可礼川々志留毛志良奴毛安不佐可乃世幾
和歌 これやこの ゆくもかへるも わかれつつ しるもしらぬも あふさかのせき
読下 これやこの行くも帰るも別れつつ知るも知らぬも相坂の関
解釈 これが、まさしく、行く人も帰る人もここで別れ、知っている人も知らない人もここで会う、その相坂の関なのだな。
原文 春可多安也之止飛止乃和良比个礼者
読下 姿あやし、と人の笑ひければ
原文 美川祢
読下 みつね(凡河内躬恒)
原文 以世乃宇美乃徒利乃宇遣奈留佐万奈礼止布可幾己々呂者曽己尓之川女利
和歌 いせのうみの つりのうけなる さまなれと ふかきこころは そこにしつめり
読下 伊勢の海の釣の浮けなるさまなれど深き心は底に沈めり
解釈 伊勢の海に浮かぶ釣りの、その浮きのようにふらふらと頼りない姿ではありますが、貴女を恋焦がれる深い気持ちは、見えないでしょうが、その頼り無いような浮きの底深くに沈んでいるのです。
歌番号一〇八六
原文 於本幾於保以万宇知幾三乃志良加者乃以部尓万可利
和多利天者部利个留尓飛止乃佐宇之尓己毛利者部利天
読下 太政大臣の白河の家にまかり
渡りて侍りけるに、人の曹司に籠もり侍りて
原文 奈可川可佐
読下 中務
原文 志良加者乃堂幾乃以止三末本之个礼止美多利尓飛止者与世之毛乃遠也
和歌 しらかはの たきのいとみま ほしけれと みたりにひとは よせしものをや
読下 白河のたぎのいと見まほしけれどみたりに人は寄せじものをや
解釈 白河の急流(白河院の庭池の様)を大層に見たいと思いますが、見たいと思う人を近寄らせたものでしょうか。それとも、白河の沸き立つ流れの乱れに人を寄せ付けないものでしょうか。
歌番号一〇八七
原文 可部之
読下 返し
原文 於本幾於本以万宇知幾三
読下 おほきおほいまうちきみ(太政大臣)
原文 志良加者乃多幾乃以止奈美々多礼川々与留遠曽飛止者満川止以不奈留
和歌 しらかはの たきのいとなみ みたれつつ よるをそひとは まつといふなる
読下 白河のたきのいとなみ乱れつつ撚るをぞ人は待つと言ふなる
解釈 白河の急流は大層に乱れて流れています、その言葉の響きのような、白い糸を撚るではありませんが、逢瀬の夜を貴女は待っていると言うのですか。(では、今宵、伺います。)
歌番号一〇八八
原文 者知寸乃者以遠止利天
読下 蓮のはひをとりて
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 波知寸者乃者比尓曽飛止者於毛不良无与尓八己比知乃奈可尓於日徒々
和歌 はちすはの はひにそひとは おもふらむ よにはこひちの なかにおひつつ
読下 蓮葉のはひにぞ人は思ふらん世にはこひぢの中に生ひつつ
解釈 まるで蓮の根のようだと人は思うでしょう、この世にあって泥中(こひぢ)の言葉の響きのような恋路の中に花を咲かせることなくずっと老いるままなので。
歌番号一〇八九
原文 安不左可乃世幾尓以保利遠川久利天寸美者部利个留尓
由幾可不飛止遠三天
読下 相坂の関に庵を作りて住み侍りけるに、
行き交ふ人を見て
原文 世美満留
読下 蝉丸
原文 己礼也己乃由久毛可部留毛和可礼川々志留毛志良奴毛安不佐可乃世幾
和歌 これやこの ゆくもかへるも わかれつつ しるもしらぬも あふさかのせき
読下 これやこの行くも帰るも別れつつ知るも知らぬも相坂の関
解釈 これが、まさしく、行く人も帰る人もここで別れ、知っている人も知らない人もここで会う、その相坂の関なのだな。