竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

後撰和歌集 巻6 歌番号346から350まで

2023年09月04日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻6
歌番号三四六
原文 堂以之良寸
読下 題しらす

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 遠美奈部之以呂尓毛安留可奈末川无之遠毛止尓也止之天多礼遠末川良无
和歌 をみなへし いろにもあるかな まつむしを もとにやとして たれをまつらむ
読下 女郎花色にもあるかな松虫をもとに宿して誰れをまつらん
解釈 「おみな」と言う名の女郎花、艶っぽいものがあるのだろうか、人を待つと言う響きを持つ、その松虫を根元に宿して、さて、誰を待っているのだろうか。

歌番号三四七
原文 世无左為尓遠美奈部之者部利个留止己呂尓天
読下 前栽に女郎花侍りける所にて

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 遠美奈部之尓保不佐可利遠美留止幾曽和可於以良久八久也之可利个留
和歌 をみなへし にほふさかりを みるときそ わかおいらくは くやしかりける
読下 女郎花匂ふ盛りを見る時ぞ我が老いらくは悔しかりける
解釈 手折るべき「おみな」と言う名の女郎花が美しく咲いている盛りを眺める時ばかりは、私が年老いていることが悔しく思われることです。

歌番号三四八
原文 春満比乃加部利安留之乃久礼川可多遠美奈部之遠
於利天安徒与之乃美己乃加左之尓佐寸止天
読下 相撲の還饗の暮れつ方、女郎花を
折りて敦慶親王のかざしに挿すとて

原文 左无天宇乃美幾乃於保以末宇知幾美
読下 三条右大臣

原文 遠美奈部之者奈乃奈々良奴毛乃奈良波奈尓可八幾美可々佐之尓毛世无
和歌 をみなへし はなのなならぬ ものならは なにかはきみか かさしにもせむ
読下 女郎花花の名ならぬ物ならば何かは君がかざしにもせん
解釈 私の屋敷に咲く女郎花、「おみな」と言う言葉が、花の名とは違うものでしたら、このように、どうしてあなた様の髪翳しとして簡単に差し上げましょうか。

原文 止之己呂以部乃武寸女尓世宇曽己加与波之者部利个留遠
於无奈乃多女尓加留/\之奈止以比天由留左奴安比多尓奈无者部利个留
読下 年ごろ家のむすめに消息かよはし侍りけるを、
女のために軽々しなど言ひて、許さぬ間になん侍りける

歌番号三四九
原文 保宇己宇可家乃遠美奈部之遠女之个礼者
堂天万川留遠幾々天
読下 法皇、伊勢が家の女郎花を召しければ、
たてまつるを聞きて

原文 比和乃比多利乃於保伊萬宇智岐美
読下 枇杷左大臣

原文 遠美奈部之遠利个无曽天乃布之己止尓春幾尓之幾美遠於毛比以天也世之
和歌 をみなへし をりけむそての ふしことに すきにしきみを おもひいてやせし
読下 女郎花折りけん袖のふしごとに過ぎにし君を思ひ出でやせし
解釈 女郎花を手折った貴女の袖、その言葉のような「曾て」、かっての折々の出来事に、過ぎ去った仲の御方とのことを色々と思い出としましたか。

歌番号三五〇
原文 可部之
読下 返し

原文 以世
読下 伊勢

原文 遠美奈部之於利毛於良寸毛伊尓之部遠佐良尓加久部幾毛乃奈良奈久尓
和歌 をみなへし をりもをらすも いにしへを さらにかくへき ものならなくに
読下 女郎花折りも折らずもいにしへをさらにかくべき物ならなくに
解釈 「おみな」と言う名の女郎花、それを手折ったとか、手折られなかったとか、昔の出来事を今更に、あれこれと、心に懸けるようなものでもないでしょうに。
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後撰和歌集 巻6 歌番号341から345まで

2023年09月01日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻6
歌番号三四一
原文 堂以之良寸
読下 題しらす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 遠三奈部之者奈乃佐可利尓安幾可世乃布久由不久礼遠多礼尓加多良无
和歌 をみなへし はなのさかりに あきかせの ふくゆふくれを たれにかたらむ
読下 女郎花花の盛りに秋風の吹く夕暮れを誰れに語らん
解釈 女郎花、その花の盛りに秋風が吹く夕暮れ時のこの風情を、さて、誰に語りましょうか。

歌番号三四二
原文 堂以之良寸
読下 題しらす

原文 川良由幾
読下 つらゆき(紀貫之)

原文 之呂多部乃己呂毛加多之幾遠三奈部之佐个留乃部尓曽己与比祢尓个留
和歌 しろたへの ころもかたしき をみなへし さけるのへにそ こよひねにける
読下 白妙の衣片しき女郎花咲ける野辺にぞ今宵寝にける
解釈 「おみな」と共にするはずの、その白妙の衣を片方だけ敷いて、女郎花の咲いている野辺に、今宵、その「おみな」と共寝をすることです。

歌番号三四三
原文 堂以之良寸
読下 題しらす

原文 川良由幾
読下 つらゆき(紀貫之)

原文 名尓之於部者志比天多乃末武遠三奈部之者那乃己々呂乃安幾者宇久止毛
和歌 なにしおへは しひてたのまむ をみなへし はなのこころの あきはうくとも
読下 名にし負へばしひて頼まむ女郎花花の心の秋は憂くとも
解釈 「おみな」と言う名前を持っているのだから、無理だとしても貴女に慕われるでしょうことへの信頼を寄せます、女郎花よ。その花の気持ちの、秋と言う響きのような、私が「飽き」られることは辛くとも。

歌番号三四四
原文 堂以之良寸
読下 題しらす

原文 美川祢
読下 みつね(凡河内躬恒)

原文 多奈者多尓々太留毛乃可奈遠美奈部之安幾与利保可尓安不止幾毛奈之
和歌 たなはたに にたるものかな をみなへし あきよりほかに あふときもなし
読下 織女に似たる物かな女郎花秋よりほかに逢ふ時もなし
解釈 天の河の織姫に似たようなものなのでしょうか、女郎花よ、年に一度の秋の季節の他に出逢う時はありません。

歌番号三四五
原文 堂以之良寸
読下 題しらす

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 安幾乃々尓与留毛也祢奈无遠美奈部之者奈乃奈遠乃美於毛比可个川々
和歌 あきののに よるもやねなむ をみなへし はなのなをのみ おもひかけつつ
読下 秋の野に夜もや寝なん女郎花花の名をのみ思ひかけつつ
解釈 秋の野にこのままに夜を寝てしまうかもしれない、女郎花、その「おみな」と言う花の名のだけを心に想いかけながら。

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後撰和歌集 巻6 歌番号336から340まで

2023年08月31日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻6
歌番号三三六
原文 者川幾乃止宇加安万利以川可乃与
読下 八月十五夜

原文 布知八良乃幾与多々
読下 藤原清正

原文 安幾可世尓以止々布遣由久川幾月可个遠太知奈可久之曽安万乃可者幾利
和歌 あきかせに いととふけゆく つきかけを たちなかくしそ あまのかはきり
読下 秋風にいとど更け行く月影を立ちな隠しそ天の河霧
解釈 秋風によって、一層、更けて行く月影を、立ち上って隠さないでくれ、天の河に立つ河霧よ。

歌番号三三七
原文 衣武幾乃於保武止幾安幾乃宇多女之个礼者多天万川利个留
読下 延喜御時、秋歌召しければ、たてまつりける

原文 川良由幾
読下 貫之(紀貫之)

原文 遠美奈部之尓本部留安幾乃武左之乃者川祢与利毛奈保武川万之幾
和歌 をみなへし にほへるあきの むさしのは つねよりもなほ むつましき
読下 女郎花匂へる秋の武蔵野は常よりもなほむつましきかな
解釈 女郎花が美しく咲くでしょう、その歌に詠われた秋の武蔵野の情景は、ここで見ている女郎花の花よりも一層に親しみを感じるのではないでしょうか。

歌番号三三八
原文 比止尓川可八之个留
読下 人につかはしける

原文 加祢三乃於保幾三
読下 兼覧王

原文 安幾々利乃者留々者宇礼之遠美奈部之多知与留比止也安良无止於毛八
和歌 あききりの はるるはうれし をみなへし たちよるひとや あらむとおもへは
読下 秋霧の晴るるはうれし女郎花立ち寄る人やあらんと思へば
解釈 秋霧が晴れるのはうれしいことです、私の屋敷のこの女郎花を眺めようと立ち寄る人が居るでしょうと思いますので。

歌番号三三九
原文 堂以之良寸
読下 題しらす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 遠美奈部之久佐武良己止尓武礼多川者多礼万川武之乃己衣尓末与布曽
和歌 をみなへし くさむらことに むれたつは たれまつむしの こゑにまよふそ
読下 女郎花草むらごとに群れ立つは誰れ待つ虫の声にまどふぞ
解釈 女郎花、草むら毎に群れとなって立っているのは、誰を待つと言う名を持つ、松虫の、その野に待っていてと言う声に惑わされたのだろうか。

歌番号三四〇
原文 堂以之良寸
読下 題しらす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 遠三奈部之飛留美天末之遠安幾乃与乃川幾乃飛可利者久毛加久礼川々
和歌 をみなへし ひるみてましを あきのよの つきのひかりは くもかくれつつ
読下 女郎花昼見てましを秋の夜の月の光は雲隠れつつ
解釈 女郎花よ、昼間に眺めて置けばよかった、秋の夜の月の光は雲に隠れてしまったままです。
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後撰和歌集 巻6 歌番号331から335まで

2023年08月30日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻6
歌番号三三一
原文 川幾遠美天
読下 月を見て

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 安幾久礼者於毛布己々呂曽美多礼川々万川毛美知者止知利万佐利个留
和歌 あきくれは おもふこころそ みたれつつ まつもみちはと ちりまさりける
読下 秋来れば思ふ心ぞ乱れつつまづもみぢばと散りまさりける
解釈 秋が来れば物思う気持ちが乱れるままに、まず、松の葉も紅葉した葉として散り増えて行きます。(常にある松の葉も散るように、私の気持ちもはかなく散って行きます。)

歌番号三三二
原文 川幾遠美天
読下 月を見て

原文 布可也不
読下 ふかやふ(清原深養父)

原文 幾衣加部利毛乃於毛布安幾乃己呂毛己曽奈美堂乃可者乃毛美知奈利遣礼
和歌 きえかへり ものおもふあきの ころもこそ なみたのかはの もみちなりけれ
読下 きえかへり物思ふ秋の衣こそ涙の河の紅葉なりけれ
解釈 貴女との共寝の朝の着え帰り、その様子を想う秋に着る衣こそは、別れの悲しみに流す涙の河に流れる紅葉の模様をしているのでしょう。

歌番号三三三
原文 川幾遠美天
読下 月を見て

原文 与美比止之良春
読下 詠み人知らす

原文 布久可世尓布可幾堂乃美乃武奈之久者安幾乃己々呂遠安佐之止於毛者武
和歌 ふくかせに ふかきたのみの むなしくは あきのこころを あさしとおもはむ
読下 吹く風に深き田の実のむなしくは秋の心を浅しと思はむ
解釈 吹く風の中に泥深い田の稔りの刈り取られた跡が寒々しいことを、秋の心を「浅い」、風流ではないとは思いません。

歌番号三三四
原文 川幾遠美天
読下 月を見て

原文 与美比止之良春
読下 詠み人知らす

原文 安幾乃与者比止遠志川女天徒礼/\止加幾奈寸己止乃祢尓曽奈幾奴留
和歌 あきのよは ひとをしつめて つれつれと かきなすことの ねにそなきぬる
読下 秋の夜は人をしづめてつれづれとかきなす琴の音にぞ泣きぬる
解釈 秋の夜は周囲の人を寝沈めて、為すことも無いままに掻き鳴らす琴の音に、ただただ、独り寂しく泣いてしまいます。

歌番号三三五
原文 徒由遠与女留
読下 露をよめる

原文 布知八良乃幾与多々
読下 藤原清正

原文 奴幾止武留安幾之奈个礼者之良川由乃知久佐尓遠个留多麻毛加比奈之
和歌 ぬきとむる あきしなけれは しらつゆの ちくさにおける たまもかひなし
読下 貫きとむる秋しなければ白露の千種に置ける玉もかひなし
解釈 糸を貫いて留どめる秋が来ないのならば、白露の、そのたくさんの色々な葉に置く美しい玉も甲斐も無く散り消えて行きます。

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後撰和歌集 巻6 歌番号326から330まで

2023年08月29日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻6
歌番号三二六
原文 者川幾乃止宇加安万利以川可乃与
読下 八月十五夜

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 川幾可个者於奈之飛可利乃安幾乃与遠和幾天美由留者己々呂奈利个利
和歌 つきかけは おなしひかりの あきのよを わきてみゆるは こころなりけり
読下 月影は同じ光の秋の夜をわきて見ゆるは心なりけり
解釈 毎年の月の輝きは同じ輝きの秋の夜なのですが、特別に漢字て見えるのは、心持ちのせいなのです。

歌番号三二七
原文 川幾遠美天
読下 月を見て

原文 幾乃与之美川乃安曾无
読下 紀淑光朝臣

原文 曽良止遠美安幾也与久良无比佐可多乃川幾乃可川良乃以呂毛加者良奴
和歌 そらとほみ あきやよくらむ ひさかたの つきのかつらの いろもかはらぬ
読下 空遠み秋やよくらん久方の月の桂の色も変らぬ
解釈 空が天高く遠く見える秋ですが、月を避けているのでしょうか、遥か彼方の月に生える桂の色は黄金に輝くだけで紅葉することもなく変りません。

歌番号三二八
原文 川幾遠美天
読下 月を見て

原文 川良由幾
読下 つらゆき(紀貫之)

原文 己呂毛天者佐武久毛安良祢止川幾可个遠多万良奴安幾乃由幾止己曽美礼
和歌 ころもては さむくもあらねと つきかけを たまらぬあきの ゆきとこそみれ
読下 衣手は寒くもあらねど月影をたまらぬ秋の雪とこそ見れ
解釈 衣の袖口は寒くはありませんが、月の白い輝きを積もり貯まらぬ秋の雪とばかりに見ています。

歌番号三二九
原文 川幾遠美天
読下 月を見て

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 安満乃可者志可良美加个天止々女奈武安可寸奈可留々川幾也与止武止
和歌 あまのかは しからみかけて ととめなむ あかすなかるる つきやよとむと
読下 天の河しがらみかけてとどめなんあかず流るる月やよどむと
解釈 天の河にしがらみを仕掛けて留めてみたいものです。もっと眺めていたいのに天の河を流れ行く月の、その流れが淀むと願って。

歌番号三三〇
原文 川幾遠美天
読下 月を見て

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 安幾尓奈美也堂川良无安満乃可和々多留世毛奈久川幾乃奈可留々
和歌 あきかせに なみやたつらむ あまのかは わたるせもなく つきのなかるる
読下 秋風に浪や立つらん天の河渡る瀬もなく月の流るる
解釈 秋風に浪が立つでしょう、その天の河に渡る瀬も無く、ただ、月が流れて行きます。

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