竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌2082から集歌2086まで

2021年07月30日 | 新訓 万葉集
集歌二〇八二 
原文 天漢 河門八十有 何尓可 君之三船乎 吾待将居
訓読 天つ川川門(かはと)八十(やそ)あり何処(いづく)にか君しみ船を吾(あ)が待ち居(を)らむ
私訳 天の川に渡し場はたくさんある。その、どの渡し場で、愛しいあの人の大切な船を私は待っていましょうか。

集歌二〇八三 
原文 秋風乃 吹西日従 天漢 瀬尓出立 待登告許曽
訓読 秋風の吹きにし日より天つ川瀬に出で立ちし待つと告げこそ
私訳 秋風が吹き出した日から天の川の瀬に家から出て来て立って貴方を待っていますと、彦星に告げて欲しい。

集歌二〇八四 
原文 天漢 去年之渡湍 有二家里 君将来 道乃不知久
訓読 天つ川去年(こぞ)し渡瀬(わたりせ)荒れにけり君し来まさむ道の知らなく
私訳 天の川よ。去年に渡って来た瀬は荒れてしまった。愛しいあの人がやって来るでしょう、その道が判らない。

集歌二〇八五 
原文 天漢 湍瀬尓白浪 雖高 直渡来沼 時者苦三
訓読 天つ川湍瀬(せせ)に白浪高けども直(ただ)渡(わた)り来(き)ぬ待たば苦しみ
私訳 天の川のその急流に白波は高いけれど、そのまま押して渡って来ました。白波が収まるのをまっていると、その待つ時間が辛くて。

集歌二〇八六 
原文 牽牛之 嬬喚舟之 引綱乃 将絶跡君乎 吾久念勿國
訓読 彦星(ひこほし)し嬬(つま)呼ぶ舟し引綱(ひきつな)の絶えむと君を吾(あ)く念(も)はなくに
私訳 彦星の妻が、その彦星を呼び寄せる舟の引き綱のように、貴方との仲が切れてしまうとは、私は少しも思ったことはありません。
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万葉集 集歌2077から集歌2081まで

2021年07月29日 | 新訓 万葉集
集歌二〇七七 
原文 渡守 舟早渡世 一年尓 二遍徃来 君尓有勿久尓
訓読 渡守(わたしもり)舟早渡せ一年(ひととし)にふたたび通(かよ)ふ君にあらなくに
私訳 渡し守よ、舟を早くこちらに渡せ。一年に何度も通う愛しいあの人ではないのだから。

集歌二〇七八 
原文 玉葛 不絶物可良 佐宿者 年之度尓 直一夜耳
訓読 玉(たま)葛(かづら)絶えぬものからさ寝(ぬ)らくは年し度(たび)にただ一夜(ひとよ)のみ
私訳 美しい藤蔓のように、二人の仲は絶えるものではありませんが、共寝できるのは一年の内に、ただ、この一夜だけです。

集歌二〇七九 
原文 戀日者 氣長物乎 今夜谷 令乏應哉 可相物乎
訓読 恋(こ)ふる日(ひ)は日(け)長きものを今夜(こよひ)だに乏(とも)しむべしや逢ふべきものを
私訳 相手を恋い慕う日々は、その日々が長いものだから、恋人に逢う今夜だけは心残りと相手に思わすべきではありません。年に一度だけ逢うはずの日ですから。

集歌二〇八〇 
原文 織女之 今夜相奈婆 如常 明日乎阻而 年者将長
訓読 織(をり)し女(め)し今夜逢ひなば常しごと明日(あす)を隔(へだ)てて年は長けむ
私訳 織姫が今夜に彦星に逢ったならば、また、今までのように明日を限りに一年を離れ離れで暮らすのであろうか、その一年は長いことでしょう。

集歌二〇八一 
原文 天漢 棚橋渡 織女之 伊渡左牟尓 棚橋渡
訓読 天つ川棚橋(たなはし)渡せ織(おり)し女(め)しい渡(わた)らさむに棚橋渡せ
私訳 天の川に橋板を敷いた丈夫な棚橋を渡しなさい。織姫が彦星に連れ添って渡って行かれるように。その棚橋を渡せ。

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万葉集 集歌2072から集歌2076まで

2021年07月28日 | 新訓 万葉集
集歌二〇七二 
原文 渡守 船度世乎跡 呼音之 不至者疑 梶之聲不為
訓読 渡守(わたしもり)舟渡せをと呼ぶ声し至らねばかも梶し声せぬ
私訳 舟を渡す番をする渡し守よ、舟を渡してくれと呼ぶ声が渡し守の所まで届かないのか、舟を漕ぐ梶の音がしません。

集歌二〇七三 
原文 真氣長 河向立 有之袖 今夜巻跡 念之吉沙
訓読 ま日(け)長し川し向き立ちありし袖今夜(こよひ)枕(ま)かむと思ひしよしさ
私訳 この日一日を長く訪れを待って川に向かい立っていた、貴女の袖。その貴女の袖を、今夜に貴女との夜着として身に纏うと思うと気が弾む。

集歌二〇七四 
原文 天漢 渡湍毎 思乍 来之雲知師 逢有久念者
訓読 天つ川渡り瀬ごとし思ひつつ来(こ)しくもしるし逢へらく思へば
私訳 天の川の渡る瀬ごとに、恋い慕いながらやって来るのも甲斐がある。貴女に逢えると想うと。

集歌二〇七五 
原文 人左倍也 見不継将有 牽牛之 嬬喚舟之 近附徃乎
訓読 人さへや見継がずあらむ牽牛(ひこほし)し嬬(つま)呼ぶ舟し近づき往(い)くを
私訳 恋人以外の人でさへ見続けているでしょう。彦星の妻の許を訪ねる舟が近づいて行くのを。
左注 一云 見乍有良武
注訓 一(ある)は云はく、見つつあるらむ

集歌二〇七六 
原文 天漢 瀬乎早鴨 烏珠之 夜者闌尓乍 不合牽牛
訓読 天つ川(かは)瀬(せ)を早みかもぬばたまし夜(よ)は更(ふ)けにつつ逢はぬ牽牛(ひこほし)
私訳 天の川の、その川の瀬は急流なのでしょうか、漆黒の夜は更けて行くのに、まだ、織姫に逢っていない彦星よ。

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万葉集 集歌2067から集歌2071まで

2021年07月27日 | 新訓 万葉集
集歌二〇六七 
原文 天漢 渡瀬深弥 泛船而 掉来君之 檝之音所聞
訓読 天つ川渡り瀬深み舟浮けて掉(こ)ぎ来る君し楫(かじ)し音(ね)聞こゆ
私訳 天の川の渡りの瀬が深い。舟を浮かべて漕ぎ来る愛しい貴方の楫の音が聞こえる。

集歌二〇六八 
原文 天原 振放見者 天漢 霧立渡 公者来良志
訓読 天つ原降り放(さ)け見れば天つ川霧立ちわたる公(きみ)は来(き)ぬらし
私訳 天の原を振り仰ぎ眺めると、天の川に霧が立ち渡っている。愛しい貴方がやって来るようです。

集歌二〇六九 
原文 天漢 瀬毎幣 奉 情者君乎 幸来座跡
訓読 天つ川瀬ごとし幣(ぬさ)し奉(まつ)りし心は君を幸(さき)く来(き)ませと
私訳 天の川、渡る瀬ごとに幣を奉じて祈る気持ちは、愛しい貴方が無事でいらっしゃいとの思いで。

集歌二〇七〇 
原文 久方之 天河津尓 舟泛而 君待夜等者 不明毛有寐鹿
訓読 ひさかたし天つ川(かは)津(つ)に舟浮けて君待つ夜らは明けずもあらぬか
私訳 遥か彼方にある天の川の船着場に舟を浮かべて、愛しい貴方を待つ夜は、夜明けを迎えないままでいられないでしょうか。

集歌二〇七一 
原文 天河 足沾渡 君之手毛 未枕者 夜之深去良久
訓読 天つ川足沾(なづさ)ひ渡る君し手もいまだ枕(ま)かねば夜し更(ふ)けぬらく
私訳 天の川を足を濡らして苦労して渡る愛しい貴方の手も、いまだ手枕にしていないのに、夜が更けていく。

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万葉集 集歌2062から集歌2066まで

2021年07月26日 | 新訓 万葉集
集歌二〇六二 
原文 機 躁木持徃而 天河 打橋度 公之来為
訓読 機(はたもの)し躁木(まねき)持ち行きて天つ川打橋(うつはし)渡す公(きみ)し来(こ)むため
私訳 機織りのその踏み木を持って行って、天の川に杭を打った丈夫な打橋を渡します。貴方がやって来るために。

集歌二〇六三 
原文 天漢 霧立上 棚幡乃 雲衣能 飄袖鴨
訓読 天つ川霧立ち上(のぼ)る棚幡(たなはた)の雲し衣(ころも)の飄(かへ)る袖かも
私訳 天の川に霧が立ち上る。それは織姫の雲の衣の瓢る袖なのでしょうか。

集歌二〇六四 
原文 古 織義之八多乎 此暮 衣縫而 君待吾乎
訓読 古(いにしへ)し織りてし服(はた)をこの夕(ゆふへ)衣(ころも)し縫ひて君待つ吾(われ)を
私訳 ずっと以前から織って来た反物を、この七夕での衣に縫って愛しい貴方を待つ私です。

集歌二〇六五 
原文 足玉母 手珠毛由良尓 織旗乎 公之御衣尓 縫将堪可聞
訓読 足(あし)玉(たま)も手(て)玉(たま)もゆらに織(お)る機(はた)を公(きみ)し御衣(みけし)に縫ひもあへむかも
私訳 足首の飾りも手首の飾りもゆらゆらとするほどに懸命に私が織る反物を、貴方の大切な着物に縫い上げても、貴方に似合うでしょうか。

集歌二〇六六 
原文 擇月日 逢羲之有者 別乃 惜有君者 明日副裳欲得
訓読 月日(つきひ)択(え)り逢ひてしあれば別れしの惜(を)しかる君は明日(あす)さへもがも
私訳 この七夕の月日を決して逢ったのであるから、別れが惜しまれる愛しい貴方は、明日もまたやって来てほしい。
注意 原文の「逢羲之有者」の「羲之」は王羲之の「書の手の師」からの戯訓です。
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