集歌四四九
原文 与妹来之 敏馬能埼乎 還左尓 獨而見者 涕具末之毛
訓読 妹と来し敏馬(みぬめ)の崎を還(かへ)るさに独(ひと)りに見れば涙ぐましも
私訳 愛しい貴女と奈良の京から来た敏馬の埼を、筑紫からの帰還の折にただ独りだけで眺めると涙ぐむ。
集歌四五〇
原文 去左尓波 二吾見之 此埼乎 獨過者 情悲哀
訓読 去(い)くさには二人吾(あ)が見しこの崎を独(ひと)り過ぐれば情(こころ)悲しき
私訳 奈良の京から筑紫へと去り行くときには二人で私が眺めたこの岬を独りで帰り過ぎると気持ちは悲しい。
左注 一云 見毛左可受伎濃
注訓 一(ある)は云はく、見も放(さ)かず来ぬ
左注 右二首、過敏馬埼日作謌
注訓 右の二首は、敏馬の埼を過ぎし日に作れる謌なり。
還入故郷家、即作謌三首
標訓 故郷(ふるさと)の家に還り入りて、即ち作れる謌三首
集歌四五一
原文 人毛奈吉 空家者 草枕 旅尓益而 辛苦有家里
訓読 人もなき空しき家は草枕旅にまさりに苦しかりけり
私訳 愛しいあの人が居ない虚しい家は、草を枕にするような苦しい旅より、一層、辛いものです。
集歌四五二
原文 与妹為而 二作之 吾山齊者 木高繁 成家留鴨
訓読 妹とせに二人作りし吾(あ)が山斎(しま)は木高(こたか)し繁しなりにけるかも
私訳 愛しい妻と二人で作った我が家の庭は、木が高く茂っている。
集歌四五三
原文 吾妹子之 殖之梅樹 毎見 情咽都追 涕之流
訓読 吾妹子し植ゑし梅木し見るごとに情(こころ)咽(む)せつつ涙し流る
私訳 私の妻が植えた梅の木を見るたびに心もむせるように涙が切に流れます
原文 与妹来之 敏馬能埼乎 還左尓 獨而見者 涕具末之毛
訓読 妹と来し敏馬(みぬめ)の崎を還(かへ)るさに独(ひと)りに見れば涙ぐましも
私訳 愛しい貴女と奈良の京から来た敏馬の埼を、筑紫からの帰還の折にただ独りだけで眺めると涙ぐむ。
集歌四五〇
原文 去左尓波 二吾見之 此埼乎 獨過者 情悲哀
訓読 去(い)くさには二人吾(あ)が見しこの崎を独(ひと)り過ぐれば情(こころ)悲しき
私訳 奈良の京から筑紫へと去り行くときには二人で私が眺めたこの岬を独りで帰り過ぎると気持ちは悲しい。
左注 一云 見毛左可受伎濃
注訓 一(ある)は云はく、見も放(さ)かず来ぬ
左注 右二首、過敏馬埼日作謌
注訓 右の二首は、敏馬の埼を過ぎし日に作れる謌なり。
還入故郷家、即作謌三首
標訓 故郷(ふるさと)の家に還り入りて、即ち作れる謌三首
集歌四五一
原文 人毛奈吉 空家者 草枕 旅尓益而 辛苦有家里
訓読 人もなき空しき家は草枕旅にまさりに苦しかりけり
私訳 愛しいあの人が居ない虚しい家は、草を枕にするような苦しい旅より、一層、辛いものです。
集歌四五二
原文 与妹為而 二作之 吾山齊者 木高繁 成家留鴨
訓読 妹とせに二人作りし吾(あ)が山斎(しま)は木高(こたか)し繁しなりにけるかも
私訳 愛しい妻と二人で作った我が家の庭は、木が高く茂っている。
集歌四五三
原文 吾妹子之 殖之梅樹 毎見 情咽都追 涕之流
訓読 吾妹子し植ゑし梅木し見るごとに情(こころ)咽(む)せつつ涙し流る
私訳 私の妻が植えた梅の木を見るたびに心もむせるように涙が切に流れます