竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

後撰和歌集 巻16 歌番号1185から1189まで

2024年04月26日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻16
歌番号一一八五
原文 加部之
読下 返し

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 飛止布之尓宇良美奈者天曽布衣多計乃己恵乃宇知尓毛於毛不己々呂安利
和歌 ひとふしに うらみなはてそ ふえたけの こゑのうちにも おもふこころあり
読下 一節に恨みな果てそ笛竹の声の内にも思ふ心あり
解釈 一節の竹笛、その奏でる一節の曲のことを残念と思わないでください、その竹笛が奏でる音にも貴方を思う気持ちがありますから。

歌番号一一八六
原文 毛止与利止毛多知尓者部利个礼八川良由幾尓安比
可多良日天加祢寸个乃安曾无乃以部尓奈川幾遠徒多部
左世者部利个留尓曽乃奈川幾尓久者部天川良由幾
尓遠久利个累
読下 もとより友だちに侍りければ、貫之にあひ
語らひて、兼輔朝臣の家に名づきを伝へ
させ侍りけるに、その名づきに加へて貫之
に送りける

原文 美川祢
読下 みつね(凡河内躬恒)

原文 飛止尓徒久多与利多尓奈之於本安良幾乃毛利乃志多奈留久左乃三奈礼八
和歌 ひとにつく たよりたになし おほあらきの もりのしたなる くさのみなれは
読下 人につくたよりだになし大荒木の森の下なる草の身なれば
解釈 人に我が身を託すその伝手さえも無い、あの歌に詠う「大荒木の森の下草」のように役にも立たない、そのような我が身なので。
注意 古今和歌集「大荒木の森の下草老ひねれば駒もすさめず刈る人もなし」を引用する。

歌番号一一八七
原文 加祢多々乃安曾无可者々三万可利尓遣礼者加祢多々遠波
奈幾飛者乃比多利乃於本以万宇知幾三乃以部尓武寸女遠者
幾左以乃美也尓佐不良者世武止安比左多女天
布多利奈可良万川飛者乃以部尓和多之遠久留止
天久者部天者部利个留
読下 兼忠朝臣の母、身まかりにければ、兼忠をば
故枇杷左大臣の家に、女をば、
后の宮にさぶらはせむと相定めて、
二人ながらまづ枇杷の家に渡し送ると
て、加へて侍りける

原文 加祢多々乃安曾无可者々乃女乃止
読下 兼忠朝臣母のめのと(源兼忠朝臣母乳母)

原文 武寸比遠幾之加多美乃己多尓奈可利世者奈尓々志乃不乃久左遠川万々之
和歌 むすひおきし かたみのこたに なかりせは なににしのふの くさをつままし
読下 結び置きしかたみのこだになかりせば何に忍の草を摘ままし
解釈 もし、結び置くように、大切な形見の御子たちがいませんと、私は何によってあの御方を偲び申し上げましょうか。

歌番号一一八八
原文 毛乃於毛日者部利个留己呂也武己止奈幾堂可幾止己呂
与利止者世多末部利个礼八
読下 物思ひ侍りけるころ、やむごとなき高き所
より問はせたまへりければ

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 宇礼之幾毛宇幾毛己々呂者日止川尓天和可礼奴毛乃者奈美多奈利个利
和歌 うれしきも うきもこころは ひとつにて わかれぬものは なみたなりけり
読下 うれしきも憂きも心は一つにて分かれぬ物は涙なりけり
解釈 嬉しい気持ちも辛い気持ちも、その気持ちの許は一つですが、ただ、分けることが出来ないのは、その時に流す涙です。

歌番号一一八九
原文 与乃奈可乃己々呂尓加奈者奴己止毛宇之个留川以天尓
読下 世の中の心にかなはぬ事申しけるついでに

原文 従良由幾
読下 つらゆき(紀貫之)

原文 於之可良天加奈之幾毛乃者三奈利个利宇幾与曽武可无可多遠之良祢八
和歌 をしからて かなしきものは みなりけり うきよそむかむ かたをしらねは
読下 惜しからで悲しき物は身なりけり憂き世背かん方を知らねば
解釈 捨てるのが惜しいのではなく、しかし、悲しきものとは我が身だった、この辛いこの世に背向く手立てを知らないので。

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後撰和歌集 巻16 歌番号1180から1184まで

2024年04月25日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻16
歌番号一一八〇
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 以世
読下 伊勢

原文 布久加世乃志多乃知利尓毛安良奈久尓佐毛太知也寸幾和可奈幾奈可奈
和歌 ふくかせの したのちりにも あらなくに さもたちやすき わかなきなかな
読下 吹く風の下の塵にもあらなくにさも立ちやすき我がなき名かな
解釈 吹く風の下で舞う塵でもないのに、なんとも舞立ち易い私に関わる実のない噂話です。

歌番号一一八一
原文 加春可仁満宇天个留三知尓左本可者乃本止利尓
者川世与利加部留於无奈久留万乃安比天者部利个留可寸多礼乃
安幾多留与利者川可尓美以礼个礼者安比之利天
者部利个留於无奈乃己々呂左之不可久於毛比加者之奈可良
者々可留己止者部利天安比者奈礼天无川奈々止之者可利尓
奈利者部利尓个留於无奈尓者部利个礼者加乃久留万尓以比
以礼者部利个留
読下 春日に詣でける道に、佐保河のほとりに、
初瀬より帰る女車の逢ひて侍りけるが、簾の
開きたるより、はつかに見入れければ、相知りて
侍りける女の、心ざし深く思ひ交しながら、
はばかる事侍りて、あひ離れて六七年ばかりに
なり侍りにける女に侍りければ、かの車に言ひ
入れ侍りける

原文 可武為无乃比多利乃於本以万宇知幾三
読下 閑院左大臣

原文 布留佐止乃佐本乃可者美川个不毛奈保加久天安不世八宇礼之可利个利
和歌 ふるさとの さほのかはみつ けふもなほ かくてあふせは うれしかりけり
読下 古里の佐保の河水今日もなほかくて逢瀬はうれしかりけり
解釈 古い里である佐保の河の水が、今日もなおこのように溢れ流れている、その言葉の響きではありませんが、この佐保河の辺で、今日、貴女にお逢いしたことは、実に嬉しいことです。

歌番号一一八二
原文 飛者乃比多利乃於本以万宇知幾三与宇者部利天奈良乃波遠毛止女
者部利个礼者知可奴可安比之利天者部利个留以部尓止利
尓徒可者之多利个礼八
読下 枇杷左大臣、用侍りて、楢の葉をもとめ
侍りければ、千兼があひ知りて侍りける家に取り
につかはしたりければ

原文 止之己
読下 俊子

原文 和可也止遠以徒奈良之天可奈良乃者遠奈良之加本尓八於利尓遠己春留
和歌 わかやとを いつならしてか ならのはを ならしかほには をりにおこする
読下 我が宿をいつ馴らしてか楢の葉を馴らし顔には折りにおこする
解釈 ねぇ、千兼の貴方。いつ、私の屋敷を自分の家のように馴れ馴れしく思うようになったのですか、楢の葉を馴れ馴れしい様子で、折りにやって来るとは。

歌番号一一八三
原文 加部之
読下 返し

原文 飛者乃比多利乃於本以万宇知幾三
読下 枇杷左大臣

原文 奈良乃葉乃者毛利乃加美乃末之个留遠志良天曽於里之多々利奈左留奈
和歌 ならのはの はもりのかみの ましけるを しらてそをりし たたりなさるな
読下 楢の葉の葉守の神のましけるを知らでぞ折りしたたりなさるな
解釈 楢の葉にその葉を守る神がいらっしゃるのに気が付かずに折り取りました、どうぞ、祟ることをしないでください。(貴女が、千兼が出入りする屋敷の女主とは知りませんでした、どうか、千兼を叱らないでください。)

歌番号一一八四
原文 止毛多知乃毛止尓満可利天佐可川幾安万多々比尓
奈里尓个礼者尓遣天満可利个留遠止々女和川良日
天毛天者部利个留布衣遠止利止々女天万多乃安之多
尓川可八之个留
読下 友だちのもとにまかりて、盃あまた度に
なりにければ、逃げてまかりけるを、とどめわつらひ
て、持て侍りける笛を取りとどめて、又の朝
につかはしける

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 加部利天者己恵也堂可者武布衣多計乃川良幾比止与乃加多美止於毛部八
和歌 かへりては こゑやたかはむ ふえたけの つらきひとよの かたみとおもへは
読下 帰りては声や違はむ笛竹のつらき一夜のかたみと思へば
解釈 笛の吹き手の貴方を帰しては、笛の音律の「返し」の音が変わりますので、この貴方の竹笛は貴方が逃げて帰った残念なあの夜の身代として思っています。

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後撰和歌集 巻16 歌番号1175から1179まで

2024年04月24日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻16
歌番号一一七五
原文 也末左止尓者部利个留尓武可之安比之礼留飛止乃
以川与利己々尓者寸武曽止々飛个礼八
読下 山里に侍りけるに、昔あひ知れる人の、
いつよりここには住むぞ、と問ひければ

原文 可武為无
読下 閑院

原文 者留也己之安幾也由幾个无於本川可奈加个乃久知幾止与遠寸久寸三八
和歌 はるやこし あきやゆきけむ おほつかな かけのくちきと よをすくすみは
読下 春や来し秋や行きけんおぼつかな蔭の朽木と世を過ぐす身は
解釈 ここに移り住み、それから、春が来たのか、秋が過ぎ行ったのか、はっきりはしません、木々の蔭の朽木のように世に隠れて過ごしている私にとっては。

歌番号一一七六
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 従良由幾
読下 つらゆき(紀貫之)

原文 与乃奈可者宇幾毛乃奈礼也飛止己止乃止尓毛加久尓毛幾己衣久留之幾
和歌 よのなかは うきものなれや ひとことの とにもかくにも きこえくるしき
読下 世の中は憂きものなれや人言のとにもかくにも聞こえ苦しき
解釈 男女の関係は辛いものがあります、世の人達がああだこうだと言う、とかく噂となって聞こえて来ることに辛いものがあります。

歌番号一一七七
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 武差之乃者曽天比川者可利和个之可止和可武良左幾八多川根和比尓起
和歌 むさしのは そてひつはかり わけしかと わかむらさきは たつねわひにき
読下 武蔵野は袖ひつばかり分けしかと若紫は尋ねわびにき
解釈 きっとあると言うので、その武蔵野は露に袖が濡れるほどに草を分けて探しました、それでも若紫は探し求めることが出来ない。
注意 伊勢物語の初段「春日野の若紫」を引用し、紫草の産地である武蔵野に変えたもの。

歌番号一一七八
原文 以止万尓天己毛利為天者部利个留己呂飛止乃止八寸者部利个礼者
読下 暇にてこもりゐて侍りけるころ、人の訪はず侍りければ

原文 美不乃多々三祢
読下 壬生忠岑

原文 於保安良幾乃毛利乃久左止也奈利尓个无加利尓多尓幾天止不飛止乃奈幾
和歌 おほあらきの もりのくさとや なりにけむ かりにたにきて とふひとのなき
読下 大荒木の森の草とやなりにけん刈りにだに来て訪ふ人のなき
解釈 あの歌ではないが、私は大荒木の森の草となってしまったのだろうか、草を食む駒でさえ嫌がるような草とばかりに刈りに来る人が居ないように、私の許を訪ね来る人もいません。
注意 古今和歌集「大荒木の森の下草老ひねれば駒もすさめず刈る人もなし」を引用する。

歌番号一一七九
原文 安留止己呂尓美也川可部之者部利个留於无奈乃安多奈多知个留加毛止与利
遠乃礼可宇部八曽己尓奈无久知乃者尓可个天以者留奈留止
宇良美天者部利个礼八
読下 ある所に宮仕へし侍りける女の、あだ名立ちけるがもとより、
己れが上は、そこになん口の端にかけて言はるなる、と
恨みて侍りければ

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 安者礼天不己止己曽川根乃久知乃波尓加々留也飛止遠於毛不奈留良无
和歌 あはれてふ ことこそつねの くちのはに かかるやひとを おもふなるらむ
読下 あはれてふ事こそ常の口の端にかかるや人を思ふなるらん
解釈 噂話に「あの人は」と言われていることこそは、常に人々の気を引いて会話の折に出て来る人のことだと思いますが、(人には、貴女が気にかかる存在なのですよ。)

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後撰和歌集 巻16 歌番号1170から1174まで

2024年04月23日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻16
歌番号一一七〇
原文 満可利加与比个留於无奈乃己々呂止計寸乃美三衣者部利个礼八
止之川幾毛部奴留遠以万左部加々留己止々以比川可者
之多利个礼八
読下 まかり通ひける女の心解けずのみ見え侍りければ、
年月も経ぬるを、今さへかかること、と言ひつかは
したりければ

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 奈尓者可多美幾者乃安之乃於以可与尓宇良三天曽布留飛止乃己々呂遠
和歌 なにはかた みきはのあしの おいかよに うらみてそふる ひとのこころを
読下 難波潟汀の葦の老ひが世に恨みてぞ経る人の心を
解釈 難波の潟の渚に生える葦が時とともに枯れ逝くことを残念に思うように、互いに年を取るほどの長い関係なのに、どうして、貴方は嫌味の気持ちを手紙に見せるのですか。
注意 三句目の「於以可与尓(おいかよに)」を「おひかせに」と改訂するのが標準で、「追い風に葉の裏を見せる」と解釈します。

歌番号一一七一
原文 於无奈乃毛止与利宇良三遠己世天者部利个留可部之己止尓
読下 女の許より恨みおこせて侍りける返事に

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 和寸留止八宇良三左良奈无者之多可乃止可部留也末乃之為八毛三知寸
和歌 わするとは うらみさらなむ はしたかの とかへるやまの しひはもみちす
読下 忘るとは恨みざらなんはし鷹のとかへる山の椎はもみぢず
解釈 私が貴女を忘れたと恨まないでください、はし鷹が住処へ帰る、その山の椎の葉は紅葉することは無いのですから、(私が心変わりすることはありません。)
注意 四句目「止可部留也末乃(とかへるやまの)」の「とかへる」の言葉には「巣に戻る」と「羽の色が変わる」との二つの説があります。

歌番号一一七二
原文 武可之於奈之止呂尓美也徒可部之者部利个留於无奈乃於止己尓
徒幾天飛止乃久尓々於知為多利遣留遠幾々川个天
己々呂安利个留飛止奈礼者以比川可八之个留
読下 昔同じ所に宮仕へし侍りける女の、男に
つきて人の国に落ちゐたりけるを聞きつけて
心ありける人なれば、言ひつかはしける

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 遠知己知乃飛止女万礼奈留也末左止尓以部為世无止八於毛比幾也幾美
和歌 をちこちの ひとめまれなる やまさとに いへゐせむとは おもひきやきみ
読下 遠近の人目まれなる山里に家ゐせんとは思ひきや君
解釈 あちこちの人が男が女の許へと通うことを眺め気にすることも稀な山里に家を構えて、そこに恋人を住まわせることを思いましたが、貴女はそのような私の想いに気が付きましたか、思いも寄りませんよね。

歌番号一一七三
原文 加部之
読下 返し

原文 与美飛止之良寸 
読下 詠み人知らす

原文 三遠宇之止飛止之礼奴与遠多川祢己之久毛乃也部堂川也末尓也八安良奴
和歌 みをうしと ひとしれぬよを たつねこし くものやへたつ やまにやはあらぬ
読下 身を憂しと人知れぬ世を尋ね来し雲の八重立つ山にやはあらぬ
解釈 私は棄てられたものと思い、我が身は辛いと思っていて、今は貴方が知らないこの国にやって来ましたが、その貴方から昔の私と貴方との関係への思いを尋ねて手紙がやって来たことは、幾重にも雲が隔てる山がありますが、それがないような嬉しい思いです。

歌番号一一七四
原文 於止己奈止者部良寸之天止之己呂也末左止尓己毛利
者部利个留於无奈遠武可之安比之利天者部利个留飛止
美知満可利个留徒以天尓飛佐之宇幾己衣佐利川留遠
己々尓奈利个利止以比以礼天者部利个礼者
読下 男など侍らずして年ごろ山里に籠もり
侍りける女を、昔あひ知りて侍りける人、
道まかりけるついでに、久しう聞こえざりつるを、
ここになりけり、と言ひ入れて侍りけれは

原文 土左
読下 土左

原文 安佐奈个尓与乃宇幾己止遠志乃比川々奈可女世之万尓止之者部尓个利
和歌 あさなけに よのうきことを しのひつつ なかめせしまに としはへにけり
読下 朝なけに世の憂きことをしのびつつながめせしまに年は経にけり
解釈 朝や昼間に、この世に生きる辛さを思い出し、あの歌ではありませんが、長雨を眺めている内に時間が経ってしまいました。
注意 古今和歌集「花の色はうつりにけりないたづらに我が身世にふるながめし間に」と「朝なけに見べき君としたのまねば思ひたちぬる草枕なり」を引用する。

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後撰和歌集 巻16 歌番号1165から1169まで

2024年04月22日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻16
歌番号一一六五
原文 也末乃為乃幾美尓徒可者之遣留
読下 山の井の君につかはしける

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 遠止尓乃三幾々天八也末之安佐久止毛以左久美々天无也末乃為乃美川
和歌 おとにのみ ききてはやまし あさくとも いさくみみてむ やまのゐのみつ
読下 音にのみ聞きてはやまじ浅くともいざ汲みみてん山の井の水
解釈 貴女のことを噂に聞きましたから、ただ、聞くだけでは済ましません、あの歌に詠うように、浅くても、さぁ汲みに行きましょう、山の井に湧く水を。(私に抱かれてみませんか。)
注意 万葉集「安積山影さえ見ゆる山の井の浅き心をわが思はなくに」を引用する。

歌番号一一六六
原文 也末比之个留遠加良宇之天遠己多礼利止幾々天
読下 病しけるを、からうじておこたれり、と聞きて

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 志天乃也末多止留/\毛己衣奈々天宇幾与乃奈可尓奈尓加部利个无
和歌 してのやま たとるたとるも こえななて うきよのなかに なにかへりけむ
読下 死出の山たどるたどるも越えななで憂き世の中になに帰りけん
解釈 私は病により死出の山への路をたどたどしく越えてしまうのでしたが、そうではなく、どうも死出の山ではなく、病が峠を越えたようで、この辛いこの世に、どういう訳が帰って来たようです。
注意 詞書の「おこたれり」は「病が解放に向かう」の意味で、ここでは「病の峠が越えた」と解釈しています。

歌番号一一六七
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 加寸奈良奴三遠毛知尓々天与之乃也末多可幾奈計幾遠於毛比己利奴留
和歌 かすならぬ みをもちににて よしのやま たかきなけきを おもひこりぬる
読下 数ならぬ身を持荷にて吉野山高き嘆きを思ひ懲りぬる
解釈 (我が身は除目の考課では条件を「満(もち:満足)としています)、さて、物の数にも入らない我が身を持荷としているので登るのに吉野の山の高さに嘆きます、その言葉の響きではないが、吉野の山のような身分の高さへ、投げ気(絶望の気持ち)を思い、除目での私の身分が上がることへの期待に懲りているのです。

歌番号一一六八
原文 加部之
読下 返し

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 与之乃也末己衣无己止己曽加多可良女己良武奈个幾乃加寸者之利奈无
和歌 よしのやま こえむことこそ かたからめ こらむなけきの かすはしりなむ
読下 吉野山越えん事こそ難からめ樵らむ嘆きの数は知りなん
解釈 あの吉野の山を越えることは確かに難しいでしょう、ただ、山の木を樵(こ)る投げ木、その言葉の響きのような、貴方の除目で官位が得られずに、懲りたとの嘆きの数は、確かに判りましたよ。

歌番号一一六九
原文 与宇世為无乃美可止々幾/\止乃為尓佐不良八世太末宇个留遠
飛左之宇女之奈可利个礼八多天万川利个留
読下 陽成院の帝、時々宿直にさぶらはせたまうけるを、
久しう召しなかりければ、たてまつりける

原文 无左之
読下 武蔵

原文 加寸奈良奴三尓遠久与為乃之良堂万者飛可利三衣左寸毛乃尓曽安利个留
和歌 かすならぬ みにおくよひの しらたまは ひかりみえさす ものにそありける
読下 数ならぬ身に置く宵の白玉は光見えさす物にぞ有りける
解釈 物の数にも入らない我が身に置く宵の白玉は、光が途中で消えてなくなるものだったのですね。

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