竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌3021から集歌3025まで

2022年03月31日 | 新訓 万葉集
集歌3021 絶沼之 下従者将戀 市白久 人之可知 歎為米也母
訓読 隠沼(こもりぬ)し下ゆは恋ひむいちしろく人し知るべく嘆(なげ)きせめやも
私訳 水のはけ口が無い隠沼の奥底、そのような密やかに心の奥底から恋い焦がれましょう。はっきりとあの人が気付くような恋の嘆きはいたしません。

集歌3022 去方無三 隠有小沼乃 下思尓 吾曽物念 頃者之間
訓読 行方(ゆくへ)無(な)み隠(こも)れる小沼(をぬ)の下(した)思(もひ)に吾(われ)ぞ物思ふこのころし間(あひだ)
私訳 水のはけ口が無い隠れる小さい沼の奥底、そのような密やかに心の奥底から私は物思いをします。今日この頃は。

集歌3023 隠沼乃 下従戀餘 白浪之 灼然出 人之可知
訓読 隠沼(こもりぬ)の下ゆ恋ひ余(あま)り白波しいちしろく出(い)でぬ人し知るべく
私訳 水のはけ口が無い隠沼の奥底、そのような密やかに心の奥底から恋い焦がれた思いの一端が、白波のようにはっきりと溢れ出た。きっと、あの人が気付くでしょう。

集歌3024 妹目乎 見巻欲江之 小浪 敷而戀乍 有跡告乞
訓読 妹し目を見まく堀江しさざれ波重(し)きて恋ひつつありと告げこそ
私訳 愛しい貴女のお顔を見たいと思う(欲:ほす)、その言葉の響きのような堀江にさざれ波が幾重にも立つように、幾重にも恋い焦がれていると、あの娘に告げて下さい。

集歌3025 石走 垂水之水能 早敷八師 君尓戀良久 吾情柄
訓読 石(いは)走(はし)る垂水(たるみ)し水の愛(は)しきやし君に恋ふらく吾(あ)が心から
私訳 岩をも流れ落ちる激しい滝の水が馳(は)し下る。その言葉のひびきのような、非常にいとおしい貴女に恋い焦がれる。私の心の底から。
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万葉集 集歌3016から集歌3020まで

2022年03月30日 | 新訓 万葉集
集歌3016 山川之 瀧尓益流 戀為登曽 人知尓来 無間念者
訓読 山川し瀧(たぎ)にまされる恋すとぞ人知りにける間(ま)無くし思へば
私訳 山を流れる川のような激流の勢いに勝るような、激しい恋をしているとあの娘は気付きました。絶え間なくその娘を恋い慕っていると。

集歌3017 足桧木之 山川水之 音不出 人之子姤 戀渡青頭鶏
試訓 あしひきし山川水し音(おと)に出でず人し子遇(あ)ふに恋ひわたるかも
試訳 葦や桧の生える山の川の水が音もさせずにひそやかに流れるように、ひそやかで他の男との噂話も登らない私の自由にならない娘に出会ったので、私は恋い焦がれてしまう。
注意 原文の「人之子姤」の「姤」は、一般に「ゆへに」と訓みます。ここでは「姤」の持つ漢字の意味を尊重して試訓しています。

集歌3018 高湍尓有 能登瀬乃川之 後将合 妹者吾者 今尓不有十万
訓読 高湍(たかせ)なる能登瀬(のとせ)の川し後合はむ妹には吾(われ)は今にあらずとも
私訳 幾筋にも激しく流れる能登瀬の川の水の流れが末には合流するように、後には二人の身を合わせましょう。愛しい貴女には、私の体を。今でなくても。

集歌3019 浣衣 取替河之 川余杼能 不通牟心 思兼都母
訓読 洗ひ衣(ぎぬ)取替川(とりかひかは)し川淀の淀(よど)まむ心思ひかねつも
私訳 衣を洗って、その衣を取り替える。その言葉のような取替(鳥飼)川の川淀のように、恋をためらう気持ちは、私には思いも寄りません。

集歌3020 斑鳩之 因可及池之 宜毛 君乎不言者 念衣吾為流
訓読 斑鳩(いかるが)し因可(よるか)の池し宜(よろ)しくも君を言はねば念(おも)ひぞ吾がする
私訳 斑鳩にある因可(よるか)の池の言葉のような、宜(よろ)しくも(=とりたてて)、貴女の事を誰も噂話をしないので、反って、恋心を私はするのでしょう。

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万葉集 集歌3011から集歌3015まで

2022年03月29日 | 新訓 万葉集
集歌3011 吾妹兒尓 衣借香之 宜寸川 因毛有額 妹之目乎将見
訓読 我妹子(わぎもこ)に衣(ころも)春日し宜寸川(よきかは)縁(よし)もあらぬか妹し目を見む
私訳 私の愛しい貴女と床を共にし下着を交換して貸す、その言葉ではないが、春日にある宜寸川の、その言葉の響きのような、良き縁もないでしょうか。愛しい貴女のお顔を拝見したい。

集歌3012 登能雲入 雨零川之 左射礼浪 間無毛君者 所念鴨
訓読 との曇り雨布留川(ふるかは)しさざれ波(なみ)間(ま)なくも君は思ほゆるかも
私訳 すっかり一面に曇り、雨が降る、その布留川に立つさざれ波に絶え間がないように、絶え間なく貴女は私の心に浮かぶ。

集歌3013 吾妹兒哉 安乎忘為莫 石上 袖振川之 将絶跡念倍也
訓読 吾妹子(わぎもこ)や吾(あ)を忘らすな石上(いそのかみ)袖(そで)布留川(ふるかは)し絶えむと念(おも)へや
私訳 私の愛しい貴女。私を忘れてくれるな。石上、その「袖を振る」ような言葉の響きの、布留川の水が絶えるなどと、同じように、二人の仲が絶えるなどと思うでしょうか。

集歌3014 神山之 山下響 逝水之 水尾不絶者 後毛吾妻
訓読 神山(みわやま)し山下響(とよ)み行く水し水脈(みを)し絶えずは後(のち)も吾(あ)が妻
私訳 三輪山の麓を瀬音轟かせて流れていく水の水脈が絶えないならば、これからも貴女は私の妻です。

集歌3015 如神 所聞瀧之 白浪乃 面知君之 不所見比日
訓読 神し如(ごと)聞こゆる瀧(たぎ)し白波の面(おも)知(し)る君し見えぬこのころ
私訳 鳴る神のように轟聞こえる激流の、その白波のように、お顔だけは見知っている貴方がお見えにならない近頃です。

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万葉集 集歌3006から集歌3010まで

2022年03月28日 | 新訓 万葉集
集歌3006 月夜好 門尓出立 足占為而 徃時禁八 妹二不相有
訓読 月夜(つくよ)よみ門(かど)に出(い)で立ち足占(あしうら)して行く時さへや妹に逢はずあらむ
私訳 月夜が芳しく、家の門に出て立って足占いをして、逢うことを確信して貴女の許へ行くのですから、愛しい貴女に逢えないことがあるでしょうか。

集歌3007 野干玉 夜渡月之 清者 吉見而申尾 君之光儀乎
訓読 ぬばたまし夜渡る月し清(さや)けくはよく見てましを君し姿を
私訳 漆黒の夜空を渡って行く月の光が清らかだったら、月明りの下に、しっかり見つめました。貴女のお姿を。

集歌3008 足引之 山乎木高三 暮月乎 何時君乎 待之苦沙
訓読 あしひきし山を木高(こだか)み夕月(ゆうづき)をいつかと君を待つし苦しさ
私訳 足を引きずるような険しい山が小高いので、梢から夕月がいつ出るのかと待つように、何時、貴方はおいでになるのかと、待っているのは辛いことです。

集歌3009 橡之 衣解洗 又打山 古人尓者 猶不如家利
訓読 橡(つるばみ)し衣(きぬ)解(と)き洗ひ真土山(まつちやま)本(もと)つ人にはなほ如(し)かずけり
私訳 橡で染めた衣を解いて洗い、また縫う。その言葉ではないが、真土(まつち)山の、その言葉の響きのような、私を待っている元からの仲のあの娘には、やはり、及ばないなあ。

集歌3010 佐保川之 川浪不立 静雲 君二副而 明日兼欲得
訓読 佐保川(さほかわ)し川波立たず静けくも君に副(たぐ)ひし明日さへもがも
私訳 佐保川の嵐の川波も立たず静かです。嵐ならば貴方を引き留めて、今、このように貴方に寄り添い抱かれているように、明日もこのように抱かれたいと願います。

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墨子 巻一 三辯(原文・読み下し・現代語訳)

2022年03月27日 | 新解釈 墨子 現代語訳文付
墨子 巻一 三辯(原文・読み下し・現代語訳)
「諸氏百家 中国哲学書電子化計画」準拠

《三辯》:原文
程繁問於子墨子曰、夫子曰、聖王不為楽、昔諸侯倦於聴治、息於鐘鼓之楽、士大夫倦於聴治、息於竽瑟之楽、農夫春耕、夏耘、秋斂、冬蔵、息於瓴缶之楽。今夫子曰、聖王不為楽、此譬之猶馬駕而不税、弓張而不弛。無乃非有血気者之所能至邪。
子墨子曰、昔者堯舜有茅茨者、且以為禮、且以為楽。湯放桀於大水、環天下自立以為王、事成功立、無大後患、因先王之楽、又自作楽、命曰護、又脩九招。武王勝殷殺紂、環天下自立以為王、事成功立、無大後患、因先王之楽、又自作楽、命曰象。周成王因先王之楽、又自作楽、命曰騶虞。周成王之治天下也、不若武王。武王之治天下也、不若成湯。成湯之治天下也、不若堯舜。故其楽逾繁者、其治逾寡。自此観之、楽非所以治天下也。
程繁曰、子曰、聖王無楽。此亦楽已、若之何其謂聖王無楽也。子墨子曰、聖王之命也、多寡之。食之利也、以知饑而食之者智也、因為無智矣。今聖有楽而少、此亦無也。

字典を使用するときに注意すべき文字
三、天地人之道也。 ただしいみち、の意あり。
税、舍也 舍、息也。から、やすむ、きゅうそく、の意あり。
弛、放也 弓では、はなつ、の意あり。
亦、總也。 すべるに、の意ある。
已、甚也。 はなはだしい、の意あり。


《三辯》:読み下し
程繁の子墨子に問ひて曰く、夫子は曰く、聖王は楽(がく)を為さずと、昔の諸侯は治を聴くに倦(う)めば、鐘鼓(しょうこ)の楽(がく)に息(いこ)ひ、士大夫は治を聴くに倦(う)めば、竽瑟(うしつ)の楽(がく)に息(いこ)ひ、農夫は春の耕(たがや)し、夏の耘(くさぎ)り、秋に斂(おさ)め、冬に蔵(おさ)むれば、瓴缶(れいふ)の楽(がく)に息(いこ)ふ。今、夫子は曰く、聖王は楽(がく)を為さずと、此れ之を譬(たとえ)ば猶(なお)馬に駕(が)して而して税(いこ)はず、弓を張りて而して弛(い)ざるがごとし。乃ち血気有ること非ず者の至ること能はざる所になること無からむ。
子墨子の曰く、昔の堯舜は茅茨(ぼうじ)という者(こと)有り、且(すで)に以って禮を為し、且(すで)に以って楽を為す。湯は桀を大水に放ち、天下を環(めぐ)らし自立して以って王と為り、事は成り功は立ち、大いなる後患(こうかん)は無し、先王の楽(がく)に因り、又た自ら楽(がく)を作りて、命(なつけ)て曰く、護(ご)。又た脩(おさ)めて、九招(きゅうしょう)。武王は殷に勝ち紂を殺し、天下を環(めぐ)らし自立して以って王と為り、事は成り功は立つ、大いなる後患は無し、先王の楽に因り、又た自(みずか)ら楽を作りて、命(なつけ)て曰く、象(しゃう)。周の成王は先王の楽に因り、又た自(みずか)ら楽を作り、命(なつけ)て曰く、騶虞(すうぐ)。周の成王の天下を治むるや、武王に若(し)かず。武王の天下を治むるや、成湯に若(し)かず。成湯の天下を治むるや、堯舜に若(し)かず。故に其の楽の逾(いよいよ)繁(しげ)き者は、其の治は逾(いよいよ)寡(すくな)し。此れ自(よ)り之を観れば、楽は天下を治める所以(ゆえん)に非ざるなり。
程繁の曰く、子は曰く、聖王に楽(がく)は無し。此れ亦(すべ)るに楽(がく)は已(はなはだ)し、若(かくのごと)き之は何ぞ其れ、聖王は楽(がく)は無しと謂うなり。子墨子の曰く、聖王の命(めい)なり、多きはこれを寡(すく)くす。食の利なるは、以って饑(う)えて而して之を食(く)らふことを知るは智なり、因(もと)には智は無しと為す。今、聖(せい)に楽(がく)有れど而して少し、此れ亦た無(な)きなり。

《三辯》:現代語訳
程繁が子墨子に問いて言うことには、「先生は次のように言う、『聖王は楽の儀礼を行わない。』と。昔の諸侯は統治の物事を聴衆することに疲れると鐘や鼓の音楽に憩いをとり、士大夫は統治の物事を聴衆することに疲れると竽や瑟の音楽に憩いを取り、農夫は春に耕し、夏に作物を収穫し、秋に税を納め、冬に穀物・家畜を納屋に収容すると、瓶や木箱を叩いて音楽に憩いを取る。今、先生は次のように言う、『聖王は楽の儀礼を行わない。』と。これはこの説明を例えれば、馬に乗って楽をせず、弓を張って矢を射ないことと同じです。これでは血気盛んな者では従うことが出来ないのではないでしょうか。」と。
子墨子が言われたことには、『昔の堯王や舜王は茅葺屋根の家に住むことがあったが、それでも儀礼を行い、楽の儀礼を行った。湯王は桀王を大海の辺に放逐し、天下を巡らし自ら立って王となり、事業は成り功名は立ち、大いなる後患は無く、先の王の楽の儀礼にならって、また自ら楽の儀礼を作り、それを名付けて「護」と言う。また、九招の楽の儀礼を整えた。武王は殷に勝ち紂王を殺し、天下を巡らして自ら立って王となり、事業は成り功名は立つ、大いなる後患は無く、先の王の楽の儀礼にならって、また自ら楽の儀礼を作り、それを名付けて、「象」と言う。周の成王は先の王の楽の儀礼にならって、また自ら楽の儀礼を作り、それを名付けて「騶虞」と言う。周の成王が天下を治める様は、武王に及ばず。武王が天下を治める様は、成湯王に及ばず。成湯王が天下を治める様は、堯王や舜王に及ばない。だから其の楽の儀礼がますます煩雑になったときに、その時代の統治はだんだんと貧しくなったのだ。このことからこれらのことがらを観れば、楽の儀礼は天下を治める手段ではないのだ。』と。
程繁が言うには、「先生が語るところでは、『聖王に楽は無い。』と。ところが、先生が語るこれらのすべてに音楽の種類はたくさんあります、このようなありさまは、いったい何なのでしょうか、それでも先生は『聖王に楽は無い』と言います。」と。子墨子が言うことには、『聖王の命題なのだ。煩雑ならばこれを簡略化する。食べ物の利点として、餓えた時に食べ物を食べることを知ることは知恵であるが、食べ物を食べること自体は知恵を持たないのと同じだ。今、聖王に楽の儀礼はあるが、それは簡素化されていて、それはまた食べ物の例と同じで、無いことと同じなのだ。』と。


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