竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

後撰和歌集 巻14 歌番号1069から1074まで

2024年03月26日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻14
歌番号一〇六九
原文 美奈毛止乃堂々安幾良乃安曾无可武奈川幾者可利尓止己奈川遠
於利天遠久利天者部利个礼者
読下 源正明朝臣、十月ばかりに、
常夏を折りて贈りて侍りければ

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 布由奈礼止幾美可々幾本尓佐幾个礼者武部止己奈川尓己比之可利个利
和歌 ふゆなれと きみかかきほに さきけれは うへとこなつに こひしかりけり
読下 冬なれど君が垣ほに咲きければむべ常夏に恋しかりけり
解釈 季節としては、もう、冬ですが、貴女の屋敷の垣根に咲いたのですと、なるほど、常夏(とこなつ)の言葉の響きのように、「常なつかし」との、その永遠にお慕いしますとの貴女のお気持ちに、私は一層に貴女に恋焦がれます。

歌番号一〇七〇
原文 於无奈乃宇良武留己止安利天於也乃毛止尓満可利和多利
天者部利个留尓由幾乃布可久奈利天者部利个礼八
安之多尓於无奈乃武可部尓久留万徒可者之个留
世宇曽己尓久波部天徒可者之个留
読下 女の、恨むることありて親のもとにまかり渡り
て侍りけるに、雪の深く降りて侍りければ、
朝に女の迎へに車つかはしける
消息に加へてつかはしける

原文 加祢寸計乃安曾无
読下 かねすけの朝臣(藤原兼輔)

原文 志良由幾乃計左者川毛礼留於毛日可奈安者天不留与乃本止毛部奈久尓
和歌 しらゆきの けさはつもれる おもひかな あはてふるよの ほともへなくに
読下 白雪の今朝は積もれる思ひかな逢はでふる夜のほども経なくに
解釈 白雪が、今朝、積もっているように、私に知らせることなく行ってしまった貴女にたくさんの恋焦がれる思いがあります、貴女に逢わないで時を経る夜がそれほども続いてはいないのに。

歌番号一〇七一
原文 可部之
読下 返し

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 志良由幾乃川毛留於毛日毛堂乃万礼寸者留与利乃知者安良之止於毛部八
和歌 しらゆきの つもるおもひも たのまれす はるよりのちは あらしとおもへは
読下 白雪の積もる思ひも頼まれず春より後はあらじと思へば
解釈 今朝の白雪がたくさんに積もるような、たくさんの積もれる私への恋心と言いますが、それは信用が出来ません、雪が融ける、その春から後は雪が無いのとおなじようだと思うと。

歌番号一〇七二
原文 己々呂左之者部利於无奈美也徒可部之者部利个礼者安不己止可
多久天者部利个留尓由幾乃不留尓川可八之个留
読下 心ざし侍る女、宮仕へし侍りければ、逢ふことか
たくて侍りけるに、雪の降るにつかはしける

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 和可己飛之幾美可安多利遠者奈礼祢八布留志良由幾毛曽良尓幾由良无
和歌 わかこひし きみかあたりを はなれねは ふるしらゆきも そらにきゆらむ
読下 我が恋ひし君があたりを離れねば降る白雪も空に消ゆらん
解釈 私の恋焦がれた思いは貴女の周辺を離れませんので、降る白雪も私の恋の「火」に溶けて地に積もる前に空で消えて行くでしょう。

歌番号一〇七三
原文 可部之
読下 返し

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 也万可久礼幾衣世奴由幾乃和比之幾者幾美万川乃者尓加々利天曽布留
和歌 やまかくれ きえせぬゆきの わひしきは きみまつのはに かかりてそふる
読下 山隠れ消えせぬ雪のわびしきは君松の葉にかかりてぞ降る
解釈 山蔭(宮の奥に居ること)にあって融け消えない雪は心気がかりなものですが、貴方が待つ、その言葉の響きのような松の葉に雪は降り懸かって、宮で時を過ごす私の周囲では降っています。(さて、降る雪を消すと言う貴方の思いの「火」は、どうなっているのでしょうか。証を見せてください。)

歌番号一〇七四
原文 毛乃以比者部利个留於无奈尓止之乃者天乃己呂本比川可者
之个留
読下 物言ひ侍りける女に、年の果てのころほひ、つかは
しける

原文 布知八良乃止幾布留
読下 藤原ときふる(藤原時雨)

原文 安良多万乃止之者个不安寸己衣奴部之安不左可也万遠和礼也遠久礼无
和歌 あらたまの としはけふあす こえぬへし あふさかやまを われやおくれむ
読下 あらたまの年は今日明日越えぬべし相坂山を我や遅れん
解釈 時間が経ち神の気が荒れた荒霊が新しくなる、その年越・新年は今日から明日にと朝日が越える上るはずの相坂山、その言葉のように貴女との逢う坂を越えることに私は遅れを取るでしょうか、(ちゃんと、貴女の許へ行きますから。)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

後撰和歌集 巻14 歌番号1064から1068まで

2024年03月25日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻14
歌番号一〇六四
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 与三飛止毛
読下 よみ人も

原文 飛止奈美尓安良奴和可三八奈尓者奈留安之乃祢乃美曽志多尓奈可留々
和歌 ひとなみに あらぬわかみは なにはなる あしのねのみそ したになかるる
読下 人並みにあらぬ我が身は難波なる葦の根のみぞ下に泣かるる
解釈 貴女から人並みに相手にされない我が身は、難波の潟に生える葦の根のその下には水が流れる、その言葉の響きのように、音(ね)のみを上げて、貴女に気が付かれないように泣いています。

歌番号一〇六五
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 与三飛止毛
読下 よみ人も

原文 志良久毛乃由久部幾也万者佐多万良寸於毛不可多尓毛可世者与世奈无
和歌 しらくもの ゆくへきやまは さたまらす おもふかたにも かせはよせなむ
読下 白雲の行くべき山は定まらず思ふ方にも風は寄せなん
解釈 白雲が流れ行くべきの山は定まっていない、でも、あちらに流れ行くと思う方向には風が吹き寄せるでしょう、そのように、貴女への恋焦がれる思いは、貴女の許へと吹き寄せて欲しいものです。

歌番号一〇六六
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 与三飛止毛
読下 よみ人も

原文 与乃奈可尓奈保安利安个乃川幾奈久天也美尓万与不遠止八奴川良之奈
和歌 よのなかに なほありあけの つきなくて やみにまよふを とはぬつらしな
読下 世の中になほ有明けの月なくて闇にまどふを訪はぬつらしな
解釈 空には有明の月が出ていますが、世(貴方と私との関係)の中には闇夜を照らすような有明の月が出ていなくて、貴方との関係に戸惑う私を尋ねて来ないのは辛いものがあります。

歌番号一〇六七
原文 佐多万良奴己々呂安利止於无奈乃以日多利个礼八徒可八之个留
読下 定まらぬ心あり、と女の言ひたりければ、つかはしける

原文 於久留於保萬豆利古止乃於保萬豆岐美
読下 贈太政大臣

原文 安寸可々者世幾天止々武留毛乃奈良波布知世止奈留止奈止可以者礼无
和歌 あすかかは せきてととむる ものならは ふちせになると なとかいはれむ
読下 飛鳥河せきてとどむる物ならば淵瀬になるとなどか言はれん
解釈 貴女は私のことを一途では無いと言いますが、もし、あの飛鳥河が堰き止められるものでしたら、後は淵となり、瀬となると、どうして、歌に詠われるでしょうか。世(男女の関係)には移り変わりがあるものです。
注意 古今和歌集「世の中はなにか常なる飛鳥河昨日の淵ぞ今日は瀬になる」を引用する。

歌番号一〇六八
原文 飛佐之宇満可利可与八寸奈利尓个礼八可武奈川幾者可利尓
由幾乃寸己之布利多留安之多尓以比者部利个留
読下 久しうまかり通はずなりにければ、十月ばかりに、
雪の少し降りたる朝に言ひ侍りける

原文 宇己无
読下 右近

原文 三遠徒免者安者礼止曽於毛不者川由幾乃布利奴留己止毛多礼尓以者万之
和歌 みをつめは あはれとそおもふ はつゆきの ふりぬることも たれにいはまし
読下 身をつめばあはれとぞ思ふ初雪の降りぬることも誰れに言はまし
解釈 我が身に年が積みゆくと痛ましいものと感じられます、今年もまた初雪が降る、その言葉のように我が身が古く年を取り、貴方に振られてしまったことを、さて、誰に相談しましょうか。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

後撰和歌集 巻14 歌番号1059から1063まで

2024年03月22日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻14
歌番号一〇五九
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 与美比止之良春
読下 詠み人知らず

原文 勢遠者也三堂衣春奈可留々美川与利毛多衣世奴毛乃者己比尓曽安利个留
和歌 せをはやみ たえすなかるる みつよりも たえせぬものは こひにそありける
読下 瀬を早み絶えず流るる水よりも絶えせぬ物は恋にぞ有りける
解釈 瀬の流れが速く淀むことなく絶えずに流れる川の水よりも、もっと、絶えないものは私の貴女への恋心です。

歌番号一〇六〇
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 与美比止之良春
読下 詠み人知らず

原文 己布礼止毛安不与奈幾三者和寸礼久左由女知尓左部也於以之个留良无
和歌 こふれとも あふよなきみは わすれくさ ゆめちにさへや おひしけるらむ
読下 恋ふれども逢ふ夜なき身は忘草夢路にさへや生ひ繁るらん
解釈 恋焦がれても貴女に逢うこともないこの世、その言葉の響きではありませんが、貴女に恋焦がれて夜に泣きをする我が身には、この恋の辛さを忘れさせる忘草が、夢路の中でさえ生い茂っているでしょう。(だから、逢わせて下さい)

歌番号一〇六一
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 与美比止之良春
読下 詠み人知らず

原文 与乃奈可乃宇幾者奈部天毛奈可利个利多乃武可幾利曽宇良美良礼个留
和歌 よのなかの うきはなへても なかりけり たのむかきりそ うらみられける
読下 世の中の憂きはなべてもなかりけり頼む限りぞ恨みられける
解釈 男女の関係の中での心配なことは、おおむね、無いのですが、ただ、私が貴方を恋人として頼りにしている間は貴方に不安な思いをさせられるのです。

歌番号一〇六二
原文 堂乃女多利个留飛止尓
読下 頼めたりける人に

原文 与美比止之良春
読下 詠み人知らず

原文 由不左礼者於毛日曽志个幾満川飛止乃己武也己志也乃左多女奈个礼八
和歌 ゆふされは おもひそしけき まつひとの こむやこしやの さためなけれは
読下 夕されば思ひぞしげき待つ人の来むや来じやの定めなければ
解釈 夕方になって来ると、貴方への想いが募ります、私が待つ貴方が、今宵、やって来るのか、やって来ないのかの、その約束事がありませんので。

歌番号一〇六三
原文 於无奈尓川可八之个留
読下 女につかはしける

原文 美奈毛堂乃与之乃々安曾无
読下 源よしの朝臣(源善)

原文 以止者礼天加部利己之知乃志良也末者以良奴尓万由不毛乃尓曽安利个留
和歌 いとはれて かへりこしちの しらやまは いらぬにまよふ ものにそありける
読下 厭はれて帰り越路の白山は入らぬにまどふ物にぞ有りける
解釈 訪れを嫌がられて帰って来る、その帰り道は知らない、その言葉の響きのような、越の山深い白山の山にも入りもしないのに、戸惑うものなのですね。貴女の仕打ちと同じように。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

後撰和歌集 巻14 歌番号1054から1058まで

2024年03月21日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻14
歌番号一〇五四
原文 毛止奈可乃美己尓奈川乃佐宇曽久之天遠久留止天曽部多利个留
読下 元長親王に夏の装束して贈るとて、そへたりける

原文 奈武為无乃乃利乃豆加佐乃加美乃美己乃武寸女
読下 南院式部卿のみこのむすめ(南院式部卿親王女)

原文 和可多知天幾留己曽宇个礼奈川己呂毛於保可多止乃美三部幾宇寸左遠
和歌 わかたちて きるこそうけれ なつころも おほかたとのみ みへきうすさを
読下 我が裁ちて着るこそ憂けれ夏衣おほかたとのみ見べき薄さを
解釈 私が裁って調製したこの衣を貴方が儀礼で着るときのことが心配です、贈った夏衣がそのあたりにあるものと同じみるような薄さのことを、(同じように、私の貴方への想いを通り一遍の薄い恋心と思われないかと)

歌番号一〇五五
原文 飛佐之宇止者佐利个留飛止乃於毛比以天々己与比
万宇天己无加止左々天安比万天止毛宇寸天万天
己左利个礼者
読下 久しう訪はざりける人の、思ひ出でて、今宵
まうで来ん。門鎖さであひまて、と申してまで
来ざりければ

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 也部武久良佐之天之可止遠以末左良尓奈尓々久也之久安計天万知个无
和歌 やへむくら さしてしかとを いまさらに なににくやしく あけてまちけむ
読下 八重葎や鎖してし門を今更に何に悔しく開けて待ちけん
解釈 貴方の訪れがないままに八重葎が生え伸びて通路を鎖していた、その通路の門を、今更に、どうして、貴方の訪れの呼びかけに門を開けて待っていたのでしょうか。貴方の仕打ちに悔しく辛いことです。

歌番号一〇五六
原文 飛止遠以比和川良比天己止飛止尓安比者部利天乃知以可々
安利个无者之女乃飛止尓於毛比可部利天本止部尓个礼八
布美八也良寸之天遠保幾尓多可佐己乃加多加幾多留尓
徒个天川可者之个留
読下 人を言ひわづらひて、異人にあひ侍りて後、いかが
ありけん、初めの人に思ひかへりて、ほど経にければ、
文はやらずして、扇に高砂のかた描きたるに
つけてつかはしける

原文 美奈毛堂乃毛呂安幾良乃安曾无
読下 源庶明朝臣

原文 佐遠之可乃川万奈幾己比遠多可左己乃於乃部乃己万川幾々毛以礼奈无
和歌 さをしかの つまなきこひを たかさこの をのへのこまつ ききもいれなむ
読下 さを鹿の妻なきこひを高砂の尾上の小松聞きも入れなん
解釈 牡鹿が、妻が無いと雌鹿を請い啼く、その高砂の峯の上の小松ではありませんが、妻問う人もなく恋を求めている、この私の気持ちを聞き入れてくれるでしょうか。

歌番号一〇五七
原文 可部之
読下 返し

原文 与美比止之良春
読下 詠み人知らず

原文 左乎志可乃己衣多可左己尓幾己江之者川万奈幾止幾乃祢尓己曽安利个連
和歌 さをしかの こゑたかさこに きこえしは つまなきときの ねにこそありけれ
読下 さを鹿の声高砂に聞こえしは妻なき時の音にこそ有りけれ
解釈 牡鹿の声高く、この高砂の峯に聞こえたのは、妻がいないときの啼き声だったからなのでしょう。(貴方に妻=恋人がいた時、お声がかりはありませんでしたが。)

歌番号一〇五八
原文 於毛不飛止尓衣安比者部良天和寸良礼尓个礼八
読下 思ふ人に、え逢ひはべらで忘られにければ

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 世幾毛安部寸奈美多乃可八乃世遠者也美加々良武毛乃止於毛比也八世之
和歌 せきもあへす なみたのかはの せをはやみ かからむものと おもひやはせし
読下 せきもあへず涙の河のせ瀬を早みかからむ物と思ひやはせし
解釈 堰留め置くこともできず、流れ出す涙の河の瀬の流れが速い、その言葉ではありませんが、これほども早く、貴女に私のことを忘れ去られようとは思いもよりませんでした。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

後撰和歌集 巻14 歌番号1049から1053まで

2024年03月20日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻14
歌番号一〇四九
原文 越止己乃飛佐之宇止者左利个礼者
読下 男の久しう訪はざりければ

原文 宇己无
読下 右近

原文 止不己止遠満徒尓川幾比者己由留幾乃以曽尓也以天々以末者宇良見无
和歌 とふことを まつにつきひは こゆるきの いそにやいてて いまはうらみむ
読下 訪ふことを待つに月日はこゆるぎの磯にや出でて今は恨みん
解釈 貴方の訪れを待つことに月日は少し越えて行きますので、さて、小余綾(こゆるぎ)の磯に出向いて、今日は、浦を見ましょうか、恨みましょうか、

歌番号一〇五〇
原文 安飛之利天者部利个留飛止乃毛止尓比左之宇万可良
左利个礼者和寸令久佐奈尓遠可多祢止於毛比之波止
以不己止遠以比川可者之多利个礼者
読下 あひ知りて侍りける人のもとに、久しうまから
ざりければ、忘草なにをか種と思ひしは、と
言ふことを言ひつかはしたりければ

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 和寸令久佐奈遠毛由々之美加利尓天毛於不天不也止八由幾天多尓三之
和歌 わすれくさ なをもゆゆしみ かりにても おふてふやとは ゆきてたにみし
読下 忘草名をもゆゆしみかりにても生ふてふ宿は行きてだに見じ
解釈 貴女はあの「忘草」の歌を引用しますが、忘草の名は恋人との別れの苦しみを忘れさせると言う不吉がありますので、例えとしても、「忘草」が生えると言う屋敷には出向いて行って、恋人と逢うことはしません。
注意 古今和歌集「忘草何かは種と思ひしはつれなき人の心なりけり」を引用する。

歌番号一〇五一
原文 可部之
読下 返し

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 宇幾己止乃志个幾也止尓者王寸礼久左宇部天多尓三之安幾曽和日之幾
和歌 うきことの しけきやとには わすれくさ うゑてたにみし あきそわひしき
読下 憂きことのしげき宿には忘草植ゑてだに見じ秋ぞわびしき
解釈 貴方に逢えなくて恋に辛いことが茂る、私の屋敷には忘草なんて、わざわざ、植えて眺めることはありません、「花薄」の歌ではありませんが、秋、その言葉のような飽きが訪れると辛いですから。
注意 古今和歌集「今よりは植ゑてだに見じ花薄穂に出づる秋はわびしかりけり」を引用する。

歌番号一〇五二
原文 於无奈止毛呂止毛尓者部利天
読下 女と、もろともに侍りて

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 加寸志良奴於毛日者幾美尓安留毛乃遠々幾止己呂奈幾己々知己曽寸礼
和歌 かすしらぬ おもひはきみに あるものを おきところなき ここちこそすれ
読下 数知らぬ思ひは君にあるものを置き所なき心地こそすれ
解釈 貴女を恋焦がれる、その数知れない恋心は貴女の許にすべて行っていますから、その恋焦がれる気持ちがどこに置いてあるのか判らない、その言葉の響きではありませんが、こうして貴女と共寝をしていると、朝に起きる所がない(起き出すことが嫌や)な気持ちがします。

歌番号一〇五三
原文 可部之
読下 返し

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 遠幾止己呂奈幾於毛日止之幾々川礼八和礼尓以久良毛安良之止曽於毛不
和歌 おきところ なきおもひとし ききつれは われにいくらも あらしとそおもふ
読下 置き所なき思ひとし聞きつれば我にいくらもあらじとぞ思ふ
解釈 恋心の置き処が無い思いと聞きますと、私にもその置き処はそれほどにも無いと思います、(でも、同じように私の気持ちに朝に共寝からの「起き処」もないと思います、このままで、)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする