歌番号二一二
原文 可部之
読下 返し
原文 布知八良乃万佐多々
読下 藤原雅正
原文 者那止利乃以呂遠毛祢遠毛以多川良尓毛乃宇可留三八春久寸乃美奈利
和歌 はなとりの いろをもねをも いたつらに ものうかるみは すくすのみなり
読下 花鳥の色をも音をもいたづらに物憂かる身は過ぐすのみなり
解釈 春の花、夏の鳥、その花色も鳴き声も虚しいままに、(貴方の身を案じて)この世の物事は辛いものと感じる私は、ただ、時を過ごすばかりです。
歌番号二一三
原文 多以之良寸
読下 題知らす
原文 与美比止毛
読下 詠み人も
原文 奈川无之乃三遠多幾春天々多末之安良波和礼止万祢波武比止女毛留三曽
和歌 なつむしの みをたきすてて たましあらは われとまねはむ ひとめもるみそ
読下 夏虫の身をたきすてて霊しあらば我とまねばむ人目もる身ぞ
解釈 夏虫が己が身を炎の中に焚き捨てても、それでも霊魂があるのならば、私もそれを真似てみよう、人目を気にしてはばからなければいけない立場だから。
歌番号二一四
原文 奈川乃与川幾於毛之呂久者部利个留尓
読下 夏夜、月おもしろく侍りけるに
原文 与美比止毛
読下 詠み人も
原文 己与比加久奈可武留曾天乃川由个幾者川幾乃之毛遠也安幾止三川良无
和歌 こよひかく なかむるそての つゆけきは つきのしもをや あきとみつらむ
読下 今夜かくながむる袖の露きけは月の霜をや秋と見つらん
解釈 今夜、このように夜空を眺めて袖が露に濡れたように物思いの涙で濡れているのは、この月の光の白さに霜を感じて、秋が来たかと思ったからでしょうか。
歌番号二一五
原文 美奈川幾者良部之尓可者良尓満可利以天々
川幾乃安可幾遠三天
読下 水無月祓へしに河原にまかり出でて、
月の明かきを見て
原文 与美比止毛
読下 詠み人も
原文 加毛可者乃美奈曽己春美天々留川幾遠由幾天三武止也奈川者良部寸留
和歌 かもかはの みなそこすみて てるつきを ゆきてみむとや なつはらへする
読下 賀茂河の水底澄みて照る月を行きて見むとや夏祓へする
解釈 賀茂河の水底までも澄み照らす、その煌々と照る月を出かけて行って眺めようと、夏祓いの行事をします。
歌番号二一六
原文 美奈川幾布多川安利个留止之
読下 水無月二つありける年
原文 与美比止毛
読下 詠み人も
原文 堂奈者多者安満乃加者良遠奈々加部利乃知乃美曽可遠美曽幾尓八世与
和歌 たなはたは あまのかはらを ななかへり のちのみそかを みそきにはせよ
読下 七夕は天の河原を七かへりのちの晦日を禊にはせよ
解釈 (恋人が待ち遠しいでしょうが、今年に水無月(六月)は二回ありますから)、七夕のためにする天の河原でする七回の禊行事は最初の水無月ではなく、閏の水無月の晦日(三十日)にその禊行事をしなさい。
原文 可部之
読下 返し
原文 布知八良乃万佐多々
読下 藤原雅正
原文 者那止利乃以呂遠毛祢遠毛以多川良尓毛乃宇可留三八春久寸乃美奈利
和歌 はなとりの いろをもねをも いたつらに ものうかるみは すくすのみなり
読下 花鳥の色をも音をもいたづらに物憂かる身は過ぐすのみなり
解釈 春の花、夏の鳥、その花色も鳴き声も虚しいままに、(貴方の身を案じて)この世の物事は辛いものと感じる私は、ただ、時を過ごすばかりです。
歌番号二一三
原文 多以之良寸
読下 題知らす
原文 与美比止毛
読下 詠み人も
原文 奈川无之乃三遠多幾春天々多末之安良波和礼止万祢波武比止女毛留三曽
和歌 なつむしの みをたきすてて たましあらは われとまねはむ ひとめもるみそ
読下 夏虫の身をたきすてて霊しあらば我とまねばむ人目もる身ぞ
解釈 夏虫が己が身を炎の中に焚き捨てても、それでも霊魂があるのならば、私もそれを真似てみよう、人目を気にしてはばからなければいけない立場だから。
歌番号二一四
原文 奈川乃与川幾於毛之呂久者部利个留尓
読下 夏夜、月おもしろく侍りけるに
原文 与美比止毛
読下 詠み人も
原文 己与比加久奈可武留曾天乃川由个幾者川幾乃之毛遠也安幾止三川良无
和歌 こよひかく なかむるそての つゆけきは つきのしもをや あきとみつらむ
読下 今夜かくながむる袖の露きけは月の霜をや秋と見つらん
解釈 今夜、このように夜空を眺めて袖が露に濡れたように物思いの涙で濡れているのは、この月の光の白さに霜を感じて、秋が来たかと思ったからでしょうか。
歌番号二一五
原文 美奈川幾者良部之尓可者良尓満可利以天々
川幾乃安可幾遠三天
読下 水無月祓へしに河原にまかり出でて、
月の明かきを見て
原文 与美比止毛
読下 詠み人も
原文 加毛可者乃美奈曽己春美天々留川幾遠由幾天三武止也奈川者良部寸留
和歌 かもかはの みなそこすみて てるつきを ゆきてみむとや なつはらへする
読下 賀茂河の水底澄みて照る月を行きて見むとや夏祓へする
解釈 賀茂河の水底までも澄み照らす、その煌々と照る月を出かけて行って眺めようと、夏祓いの行事をします。
歌番号二一六
原文 美奈川幾布多川安利个留止之
読下 水無月二つありける年
原文 与美比止毛
読下 詠み人も
原文 堂奈者多者安満乃加者良遠奈々加部利乃知乃美曽可遠美曽幾尓八世与
和歌 たなはたは あまのかはらを ななかへり のちのみそかを みそきにはせよ
読下 七夕は天の河原を七かへりのちの晦日を禊にはせよ
解釈 (恋人が待ち遠しいでしょうが、今年に水無月(六月)は二回ありますから)、七夕のためにする天の河原でする七回の禊行事は最初の水無月ではなく、閏の水無月の晦日(三十日)にその禊行事をしなさい。