竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

後撰和歌集 巻4 歌番号212から216まで

2023年07月27日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻4
歌番号二一二
原文 可部之
読下 返し

原文 布知八良乃万佐多々
読下 藤原雅正

原文 者那止利乃以呂遠毛祢遠毛以多川良尓毛乃宇可留三八春久寸乃美奈利
和歌 はなとりの いろをもねをも いたつらに ものうかるみは すくすのみなり
読下 花鳥の色をも音をもいたづらに物憂かる身は過ぐすのみなり
解釈 春の花、夏の鳥、その花色も鳴き声も虚しいままに、(貴方の身を案じて)この世の物事は辛いものと感じる私は、ただ、時を過ごすばかりです。

歌番号二一三
原文 多以之良寸
読下 題知らす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 奈川无之乃三遠多幾春天々多末之安良波和礼止万祢波武比止女毛留三曽
和歌 なつむしの みをたきすてて たましあらは われとまねはむ ひとめもるみそ
読下 夏虫の身をたきすてて霊しあらば我とまねばむ人目もる身ぞ
解釈 夏虫が己が身を炎の中に焚き捨てても、それでも霊魂があるのならば、私もそれを真似てみよう、人目を気にしてはばからなければいけない立場だから。

歌番号二一四
原文 奈川乃与川幾於毛之呂久者部利个留尓
読下 夏夜、月おもしろく侍りけるに

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 己与比加久奈可武留曾天乃川由个幾者川幾乃之毛遠也安幾止三川良无
和歌 こよひかく なかむるそての つゆけきは つきのしもをや あきとみつらむ
読下 今夜かくながむる袖の露きけは月の霜をや秋と見つらん
解釈 今夜、このように夜空を眺めて袖が露に濡れたように物思いの涙で濡れているのは、この月の光の白さに霜を感じて、秋が来たかと思ったからでしょうか。

歌番号二一五
原文 美奈川幾者良部之尓可者良尓満可利以天々
川幾乃安可幾遠三天
読下 水無月祓へしに河原にまかり出でて、
月の明かきを見て

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 加毛可者乃美奈曽己春美天々留川幾遠由幾天三武止也奈川者良部寸留
和歌 かもかはの みなそこすみて てるつきを ゆきてみむとや なつはらへする
読下 賀茂河の水底澄みて照る月を行きて見むとや夏祓へする
解釈 賀茂河の水底までも澄み照らす、その煌々と照る月を出かけて行って眺めようと、夏祓いの行事をします。

歌番号二一六
原文 美奈川幾布多川安利个留止之
読下 水無月二つありける年

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 堂奈者多者安満乃加者良遠奈々加部利乃知乃美曽可遠美曽幾尓八世与
和歌 たなはたは あまのかはらを ななかへり のちのみそかを みそきにはせよ
読下 七夕は天の河原を七かへりのちの晦日を禊にはせよ
解釈 (恋人が待ち遠しいでしょうが、今年に水無月(六月)は二回ありますから)、七夕のためにする天の河原でする七回の禊行事は最初の水無月ではなく、閏の水無月の晦日(三十日)にその禊行事をしなさい。

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後撰和歌集 巻4 歌番号207から211まで

2023年07月26日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻4
歌番号二〇七
原文 多以之良寸
読下 題知らす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 可佐々幾乃美祢止比己衣天奈幾由个者奈川乃与和多留川幾曽加久留々
和歌 かささきの みねとひこえて なきゆけは なつのよわたる つきそかくるる
読下 鵲の峯飛び越えて鳴き行けば夏の夜渡る月ぞ隠るる
解釈 七夕の夜、天の河で橋を渡す役目を終えた、そのカササギが峰を飛び越えて鳴いて飛んで行くと、短い夏の夜を渡って行った月が山の端に隠れて行きます。

歌番号二〇八
原文 多以之良寸
読下 題知らす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 安幾知可美奈川者天由个者本止々幾寸奈久己恵可多幾己々知己曽寸礼
和歌 あきちかみ なつはてゆけは ほとときす なくこゑかたき ここちこそすれ
読下 秋近み夏はて行けば郭公鳴く声かたき心地こそすれ
解釈 秋が近く夏が終わって行くので、ホトトギスの鳴き声を聞くことが難しくなったとの気持ちがします。

歌番号二〇九
原文 可川良乃美己乃本多留遠止良部天止以飛者部利个礼者
和良波乃加左美乃曽天尓川々美天
読下 桂の内親王の、蛍を捕へてと言ひ侍りけ
れば、童の汗衫の袖につつみて

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 徒々女止毛加久礼奴毛乃者奈川无之乃三与利安万礼留於毛日奈利个利
和歌 つつめとも かくれぬものは なつむしの みよりあまれる おもひなりけり
読下 つつめども隠れぬ物は夏虫の身よりあまれる思ひなりけり
解釈 袖を借りて包んでみたけれど隠すことが出来ないものは、夏虫(蛍)の身が発する光より、我が心の内からあふれ出す貴女への思いです。

歌番号二一〇
原文 多以之良春
読下 題知らす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 安満乃可者三川万左留良之奈川乃与者奈可留川幾乃与止武万毛奈之
和歌 あまのかは みつまさるらし なつのよは なかるるつきの よとむまもなし
読下 天の河水まさるらし夏の夜は流るる月の淀む間もなし
解釈 天の河の水嵩が増しているようです、その勢いで夏の夜空を渡って行く月の動きに淀むことがありません。

歌番号二一一
原文 川幾己呂和川良不己止安利天満可利安利幾毛世天
満天己奴与之以比天布美乃於久尓
読下 月ごろわづらふことありて、まかりありきもせで、
まで来ぬよし言ひて文の奥に

原文 徒良由幾
読下 つらゆき(紀貫之)

原文 者奈毛知利本止々幾寸左部以奴留万天幾美尓毛由可寸奈利尓个留可奈
和歌 はなもちり ほとときすさへ いぬるまて きみにもゆかす なりにけるかな
読下 花も散り郭公さへ往ぬるまで君にも行かずなりにけるかな
解釈 春の花が散り、また、夏のホトトギスさえも去っていくまで、貴方のところに行けないままになってしまいました。

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後撰和歌集 巻4 歌番号202から206まで

2023年07月25日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻4
歌番号二〇二
原文 可部之
読下 返し

原文 以呂止以部者己幾毛宇寸幾毛堂乃万礼寸也万止奈天之己知留世奈之也者
和歌 いろといへは こきもうすきも たのまれす やまとなてしこ ちるよなしやは
読下 色といへば濃きも薄きも頼まれず大和撫子散る世なしやは
解釈 撫子の花の色には濃いもあり、薄いもあり、確実なものではありません、また、大和撫子の花が散る世が無いということがあるのでしょうか。(ふん、恋歌なんか、貰ってないからね。)

歌番号二〇三
原文 毛呂多々安曾无乃満多和良波尓天者部利个留止己奈川乃
者奈遠々利天毛知天者部利个礼者己乃者奈尓徒个天
奈以之乃可美乃可多尓遠久利者部利个留
読下 師尹朝臣のまだ童にて侍りける、常夏の
花を折りて持ちて侍りければ、この花につけて
尚侍の方に贈り侍りける

原文 於本幾於本以万宇知幾三
読下 太政大臣

原文 奈天之己者以川礼止毛奈久尓保部止毛遠久礼天佐久者安者礼奈利个利
和歌 なてしこは いつれともなく にほへとも おくれてさくは あはれなりけり
読下 撫子はいづれともなく匂へども遅れて咲くはあはれなりけり
解釈 撫子の花はどれもともなく美しいのですが、特に遅れて咲く花(晩年に出来た子供、師尹のこと)はいとおしいとものです。

歌番号二〇四
原文 多以之良寸
読下 題知らす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 奈天之己乃者奈知利可多尓奈利尓个利和可末川安幾曽知可久奈留良之
和歌 なてしこの はなちりかたに なりにけり わかまつあきそ ちかくなるらし
読下 撫子の花散り方になりにけり我が待つ秋ぞ近くなるらし
解釈 撫子の花が散る季節になったようだ、私が待っている秋が近づいたようです。

歌番号二〇五
原文 多以之良寸
読下 題知らす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 与為奈可良比留尓毛安良奈无奈川奈礼者万知久良寸万乃本止奈可留部久
和歌 よひなから ひるにもあらなむ なつなれは まちくらすまの ほとなかるへき
読下 宵ながら昼にもあらなん夏なれば待ちくらす間のほどなかるべく
解釈 宵の時間ではあるのですが昼の時であってほしいものです、夜の短い夏なので短い夜を待って暮らす時間が短くて済むようにと。

歌番号二〇六
原文 多以之良寸
読下 題知らす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 奈川乃与乃川幾者保止奈久安个奴礼者安之多乃満遠曽加己知与世徒留
和歌 なつのよの つきはほとなく あけぬれは あしたのまをそ かこちよせつる
読下 夏の夜の月はほどなく明けぬれば朝の間をぞかこちよせつる
解釈 夏の夜の月はすぐに明けてしまうので、朝焼けの間ですが、その明かりを月明かりとこじつけて眺めます。

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後撰和歌集 巻4 歌番号197から201まで

2023年07月24日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻4
歌番号一九七
原文 多以之良春
読下 題知らす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 本止々幾寸安可川幾可多乃比止己衛者宇幾世乃奈可遠春久寸奈利个利
和歌 ほとときす あかつきかたの ひとこゑは うきよのなかを すくすなりけり
読下 郭公暁方の一声は憂き世の中を過ぐすなりけり
解釈 ホトトギスの明け方に鳴く一声は、貴女と過ごした身も心も浮く夜の、その夜が明けて貴女と別れて帰って行く、その「憂き世」、辛い現実の中を過ごすことの声なのです。

歌番号一九八
原文 多以之良春
読下 題知らす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 比止之礼寸和可志女之乃々止己奈川者々奈左幾奴部幾止幾曽幾尓个留
和歌 ひとしれす わかしめしのの とこなつは はなさきぬへき ときそきにける
読下 人知れず我がしめし野の常夏は花咲きぬべき時ぞ来にける
解釈 人に気づかれないように私が囲って置いた、野の常夏(撫子)の花は咲くべき時が来たようです。(大切にしていた撫子のような、あの女の子は娘となる時になったようです。)

歌番号一九九
原文 多以之良春
読下 題知らす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 和可也止乃加幾祢尓宇部之奈天之己八者奈尓佐可奈无与曽部徒々見武
和歌 わかやとの かきねにうゑし なてしこは はなにさかなむ よそへつつみむ
読下 我が宿の垣根に植ゑし撫子は花に咲かなんよそへつつ見む
解釈 私の屋敷の垣根の前に植えた撫子は、早く、花として咲いて欲しい、その花を美しい人に見立てて眺めたいから。

歌番号二〇〇
原文 多以之良春
読下 題知らす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 止己奈川乃者奈遠多尓三者己止奈之尓寸久寸川幾比毛美之可加利奈无
和歌 とこなつの はなをたにみは ことなしに すくすつきひも みしかかりなむ
読下 常夏の花をだに見ば事なしに過ぐす月日も短かかりなん
解釈 常夏(撫子)の花だけを眺めていたら、所在なくなにごとも無く過ごす月日も短く感じられるでしょう。

歌番号二〇一
原文 多以之良春
読下 題知らす

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 止己奈川尓於毛比曽女天者比止之礼奴己々呂乃保止者以呂尓三衣奈无
和歌 とこなつに おもひそめては ひとしれぬ こころのほとは いろにみえなむ
読下 常夏に思ひそめては人知れぬ心のほどは色に見えなん
解釈 常夏(撫子)の花に思いを染める、その言葉のように貴女に思いを染めてしまった私の、貴女に気づかれない気持ちのほどを、貴女にはっきりと気づいてもらいたいものです。

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後撰和歌集 巻4 歌番号192から196まで

2023年07月21日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻4
歌番号一九二
原文 多以之良春
読下 題知らす

原文 与美比止之良春
読下 詠み人知らす

原文 宇知者部天祢遠奈幾久良寸可良世三乃武奈之幾己比毛和礼者寸留可奈
和歌 うちはへて ねをなきくらす うつせみの むなしきこひも われはするかな
読下 うちはへて音を鳴きくらす空蝉のむなしき恋も我はするかな
解釈 引き続きずっと声を立てて鳴き暮らす空蝉、その言葉のような、声を上げて泣くような抜け殻のような虚しい恋を私はするのでしょうか。(ねぇ、貴女)

歌番号一九三
原文 多以之良春
読下 題知らす

原文 与美比止之良春
読下 詠み人知らす

原文 川祢毛奈幾奈川乃久佐者尓遠久川由遠以乃知止多乃武世美乃者可奈左
和歌 つねもなき なつのくさはに おくつゆを いのちとたのむ せみのはかなさ
読下 常もなき夏の草葉に置く露を命と頼む蝉のはかなさ
解釈 いつまでのそのままではいられない、夏の草葉に置く露を命の糧と頼みにする蝉のはか無さです。

歌番号一九四
原文 多以之良春
読下 題知らす

原文 与美比止之良春
読下 詠み人知らす

原文 也部武久良志个幾也止尓者奈川无之乃己恵与利保可尓止布比止毛奈之
和歌 やへむくら しけきやとには なつむしの こゑよりほかに とふひともなし
読下 八重葎繁き宿には夏虫の声より外に訪ふ人もなし
解釈 幾重にも葎が生い茂った私の屋敷には夏虫の声の他には、声を上げて訪れる人もいません。

歌番号一九五
原文 多以之良春
読下 題知らす

原文 与美比止之良春
読下 詠み人知らす

原文 宇川世美乃己恵幾久可良仁毛乃曽於毛布和礼毛无奈之幾世尓之寸万部波
和歌 うつせみの こゑきくからに ものそおもふ われもむなしき よにしすまへは
読下 空蝉の声聞くからに物ぞ思ふ我も空しき世にし住まへば
解釈 空蝉の声を聞く、その言葉の響きではありませんが、「現つ世(うつせ)」、かりそめのこの世の評判を聞いたばかりに、あれこれと物を思います、私もこの虚しき世に住んでいますから。

歌番号一九六
原文 比止乃毛止尓川可者之个留
読下 人のもとにつかはしける

原文 布知八良乃毛呂多々安曾无
読下 藤原師尹朝臣

原文 以可々世武遠久良乃也万乃保止々幾寸於本川可奈之止祢遠乃美曽奈久
和歌 いかかせむ をくらのやまの ほとときす おほつかなしと ねをのみそなく
読下 いかにせむ小倉の山の郭公おぼつかなしと音をのみぞ鳴く
解釈 どのようにしたらいいのでしょうか、「お暗い」の言葉の響きのような、小倉の山に住むホトトギスは当たりの様子がはっきりしないと声を上げて鳴くように、私は貴女の態度に戸惑いの声を上げて泣いています。(ねぇ、貴女。)

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