歌番号一一六
原文 美也徒可部之个留遠无奈乃以曽乃加美止以不止己呂尓
寸三天美也己乃止毛多知乃毛止尓徒可者之个留
読下 宮仕へしける女の石上といふ所に
住みて、京のともだちのもとにつかはしける
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす
原文 加美左比天布利尓之佐止尓寸武比止者美也己尓々保不者奈を多尓三寸
和歌 かみさひて ふりにしさとに すむひとは みやこににほふ はなをたにみす
読下 神さびて古りにし里に住む人は都に匂ふ花をだに見ず
解釈 古代から神様が座ますような古びた里、その名のような名を持つ布留の里に住む私ですから、貴方が住む都の華やいだ盛りのその花だけであっても、もう、見ること出来ません。
歌番号一一七
原文 保宇之尓奈良武乃己々呂安利个留比止也末止尓満可
里天保止比左之久者部利天乃知安比之利天者部利个留
比止乃毛止与利川幾己呂者以可尓曽者奈者佐幾尓太
利也止以比天者部利个礼八
読下 法師にならむの心ありける人、大和にまか
りてほど久しく侍りてのち、あひ知りて侍りける
人のもとより、月ごろはいかにぞ花は咲きにた
りやと言ひて侍りければ、
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす
原文 三世之乃々与之乃々也万乃佐久良者奈之良久毛止乃見三衣末可日川々
和歌 みよしのの よしののやまの さくらはな しらくもとのみ みえまかひつつ
読下 み吉野の吉野の山の桜花白雲とのみ見えまがひつつつ
解釈 立派な野であり見れば善しと言う言葉の響きのような、み吉野の吉野の山に咲く桜花を山に棚引く白雲とばかりに見間違うことです。
歌番号一一八
原文 天以之為无乃宇多安和世乃宇多
読下 亭子院歌合の歌
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす
原文 也万佐久良佐幾奴留止幾者川祢与利毛美祢乃之良久毛多知万佐利个里
和歌 やまさくら さきぬるときは つねよりも みねのしらくも たちまさりけり
読下 山桜咲きぬる時は常よりも峯の白雲立ちまさりけり
解釈 山桜が咲いている時は、いつもの時よりも、淡い山桜の花色で峯の白雲が多く立っているようです。
歌番号一一九
原文 也万佐久良遠三天
読下 山桜を見て
原文 徒良由幾
読下 つらゆき(紀貫之)
原文 之良久毛止三衣川留末乃遠佐久良者奈个不者知留止也以呂己止尓奈留
和歌 しらくもと みえつるものを さくらはな けふはちるとや いろことになる
読下 白雲と見えつるものを桜花今日は散るとや色異になる
解釈 白雲と見えていたものなのに、桜の花は今日は散ると言うのでしょうか、峯の色が違って見えます。
歌番号一二〇
原文 多以之良寸
読下 題知らす
原文 与美比止毛
読下 詠み人も
原文 王可也止乃可个止毛堂乃武布知乃者奈多知与利久止毛奈美尓於良留奈
和歌 わかやとの かけともたのむ ふちのはな たちよりくとも なみにをらるな
読下 我が宿の影とも頼む藤の花立ち寄り来とも浪に折らるな
解釈 私の家の輝きと自慢する藤の花、その言葉の響きではありませんが、私の一族が恩恵を被っている藤原氏からの、その恩恵の花咲くような栄えがやって来たとしても、しなやかな藤枝が風などで折れることが無いように、世の荒波に折られることのないようにあってほしいものです。
原文 美也徒可部之个留遠无奈乃以曽乃加美止以不止己呂尓
寸三天美也己乃止毛多知乃毛止尓徒可者之个留
読下 宮仕へしける女の石上といふ所に
住みて、京のともだちのもとにつかはしける
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす
原文 加美左比天布利尓之佐止尓寸武比止者美也己尓々保不者奈を多尓三寸
和歌 かみさひて ふりにしさとに すむひとは みやこににほふ はなをたにみす
読下 神さびて古りにし里に住む人は都に匂ふ花をだに見ず
解釈 古代から神様が座ますような古びた里、その名のような名を持つ布留の里に住む私ですから、貴方が住む都の華やいだ盛りのその花だけであっても、もう、見ること出来ません。
歌番号一一七
原文 保宇之尓奈良武乃己々呂安利个留比止也末止尓満可
里天保止比左之久者部利天乃知安比之利天者部利个留
比止乃毛止与利川幾己呂者以可尓曽者奈者佐幾尓太
利也止以比天者部利个礼八
読下 法師にならむの心ありける人、大和にまか
りてほど久しく侍りてのち、あひ知りて侍りける
人のもとより、月ごろはいかにぞ花は咲きにた
りやと言ひて侍りければ、
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす
原文 三世之乃々与之乃々也万乃佐久良者奈之良久毛止乃見三衣末可日川々
和歌 みよしのの よしののやまの さくらはな しらくもとのみ みえまかひつつ
読下 み吉野の吉野の山の桜花白雲とのみ見えまがひつつつ
解釈 立派な野であり見れば善しと言う言葉の響きのような、み吉野の吉野の山に咲く桜花を山に棚引く白雲とばかりに見間違うことです。
歌番号一一八
原文 天以之為无乃宇多安和世乃宇多
読下 亭子院歌合の歌
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす
原文 也万佐久良佐幾奴留止幾者川祢与利毛美祢乃之良久毛多知万佐利个里
和歌 やまさくら さきぬるときは つねよりも みねのしらくも たちまさりけり
読下 山桜咲きぬる時は常よりも峯の白雲立ちまさりけり
解釈 山桜が咲いている時は、いつもの時よりも、淡い山桜の花色で峯の白雲が多く立っているようです。
歌番号一一九
原文 也万佐久良遠三天
読下 山桜を見て
原文 徒良由幾
読下 つらゆき(紀貫之)
原文 之良久毛止三衣川留末乃遠佐久良者奈个不者知留止也以呂己止尓奈留
和歌 しらくもと みえつるものを さくらはな けふはちるとや いろことになる
読下 白雲と見えつるものを桜花今日は散るとや色異になる
解釈 白雲と見えていたものなのに、桜の花は今日は散ると言うのでしょうか、峯の色が違って見えます。
歌番号一二〇
原文 多以之良寸
読下 題知らす
原文 与美比止毛
読下 詠み人も
原文 王可也止乃可个止毛堂乃武布知乃者奈多知与利久止毛奈美尓於良留奈
和歌 わかやとの かけともたのむ ふちのはな たちよりくとも なみにをらるな
読下 我が宿の影とも頼む藤の花立ち寄り来とも浪に折らるな
解釈 私の家の輝きと自慢する藤の花、その言葉の響きではありませんが、私の一族が恩恵を被っている藤原氏からの、その恩恵の花咲くような栄えがやって来たとしても、しなやかな藤枝が風などで折れることが無いように、世の荒波に折られることのないようにあってほしいものです。