竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

後撰和歌集 巻2 歌番号77から80まで

2023年06月20日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻2
歌番号七七
原文 志乃日多利个留於止己乃毛止尓者留美以幾安留
部之止幾々天佐宇曽久比止久多利天宇之天
徒可者寸止天佐久良以呂乃志多可佐祢尓曽部天
者部利个留
読下 しのびたりける男のもとに、春、行幸ある
べしと聞きて、装束一具調じて
つかはすとて、桜色の下襲に添へて
侍りける

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 和可也止乃佐久良乃以呂者宇寸久止毛者奈乃佐可利八幾天毛於良奈无
和歌 わかやとの さくらのいろは うすくとも はなのさかりは きてもをらなむ
読下 我が宿の桜の色は薄くとも花の盛りは来ても折らなん
解釈 私の家の桜の色がたとえ薄くても、(色が薄い=美人じゃなくても)、花の盛りの時にはやって来て、(また、あの時のように私を)手折って下さい。

歌番号七八
原文 王寸礼者部利尓个留比止乃以部尓者奈遠己不止天
読下 忘れ侍りにける人の家に、花を乞ふとて

原文 加祢美乃於本幾三
読下 かねみのおほきみ(兼覧王)

原文 止之遠部天者奈乃多与利尓己止々者々為止々安多奈留奈遠也多知奈无
和歌 としをへて はなのたよりに こととはは いととあたなる なをやたちなむ
読下 年をへて花のたよりに事問はばいとどあだなる名をや立ちなん
解釈 しばらく逢わないままに年を経て、桜の花が咲いたからと理由を付けて、貴女の気持ちを聞いたなら、貴女の心の内に不誠実な男だと思いが立つでしょうか。

歌番号七九
原文 与不己止利遠幾々天止奈利乃以部尓遠久利者部利个留
読下 喚子鳥を聞きて、隣の家に贈り侍りける

原文 者留美知乃徒良木
読下 はるみちのつらき(春道列樹)

原文 和可也止乃者奈尓奈々幾曽与不己止利与不可比安利天幾美毛己奈久尓
和歌 わかやとの はなにななきそ よふことり よふかひありて きみもこなくに
読下 我が宿の花にな鳴きそ喚子鳥呼ぶかひ有りて君も来なくに
解釈 私の家に咲く桜の花で啼くな、呼子鳥よ。あの人を呼ぶと言う名を持つ呼子鳥のお前が鳴いても、あの人からの良き便りが来るわけでもないのだから。

歌番号八〇
原文 美不乃多々三祢可佐己无乃徒可比乃於左尓天
布美遠己世天者部利个留徒以天尓三遠宇良美天
者部利遣留可部之己止尓
読下 壬生忠岑が左近の番長にて、
文おこせて侍りけるついでに、身をうらみて
侍りける返事に

原文 幾乃川良由幾
読下 紀貫之

原文 布利奴止天以多久奈王飛曽者留佐免乃堂々尓也武部幾毛乃奈良奈久尓
和歌 ふりぬとて いたくなわひそ はるさめの たたにやむへき ものならなくに
読下 降りぬとていたくなわびそ春雨のただに止むべき物ならなくに
解釈 春雨が降る、その言葉の響きではないが、春が来ないままに年古りぬと言って、そんなに悲しまないでください。春雨はただ止むだけでなく、めでたい芽吹きも伴いますから。(きっと、春の授位でいいことがありますよ。)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

後撰和歌集 巻2 歌番号72から76まで

2023年06月19日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻2
歌番号七二
原文 多以之良寸
読下 題知らず

原文 美也知乃多可々世
読下 宮道高風

原文 者留乃以个乃多末毛尓安曾布尓本止利乃安之乃以止奈幾己比毛寸留哉
和歌 はるのいけの たまもにあそふ にほとりの あしのいとなき こひもするかな
読下 春の池の玉藻に遊ぶ鳰鳥の脚のいとなき恋もするかな
解釈 春の池の美しい藻に遊び泳ぐ鳰鳥の脚のような、人には気づかれない暇の無い恋をしています。

歌番号七三
原文 可武部以乃於保武止幾者奈乃以呂可寸美尓己女天
三世寸止以不己々呂遠与美天多天万川礼止
於本世良礼个礼者
読下 寛平御時、花の色霞にこめて
見せずといふ心をよみてたてまつれと
仰せられければ

原文 布知八良乃於幾可世
読下 藤原興風

原文 也万可世乃者奈乃可々止不々毛止尓八者留乃可寸美曽保多之奈利个留
和歌 やまかせの はなのかかとふ ふもとには はるのかすみそ ほたしなりける
読下 山風の花の香門(かど)ふ麓には春の霞ぞ絆(ほだ)しなりける
解釈 山風が桜の花の美しさを連れ出す、その山の麓には、春の霞の有り様が足かせのようなものだなぁ。

歌番号七四
原文 多以之良春
読下 題知らず

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 者留佐女乃世尓布利尓多留己々呂尓毛奈保安多良之久者奈遠己曽於毛部
和歌 はるさめの よにふりにたる こころにも なほあたらしく はなをこそおもへ
読下 春雨の世に降りにたる心にもなほあたらしく花をこそ思へ
解釈 春雨が世に降る、その言葉のような世に古るとなった私の心にも、それでも毎年に新しく咲く桜の花のことを思うべきなのでしょうね。

歌番号七五
原文 幾与宇己久乃美也寸无止己呂尓遠久利者部利个留
読下 京極の御息所に贈り侍りける

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 者留可寸美多知天久毛為尓奈利由久者加利乃己々呂乃加者留奈留部之
和歌 はるかすみ たちてくもゐに なりゆくは かりのこころの かはるなるへし
読下 春霞立ちて雲居になりゆくは雁の心の変はるなるべし
解釈 春の霞が立って山際に雲居の様になって行くならば、里から離れて北へと帰って行く雁のように、心変わりで去って行くのでしょうか。

歌番号七六
原文 多以之良寸
読下 題知らず

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 祢良礼奴遠志日天和可奴留者留乃与乃由女遠宇川々尓奈寸与志毛可奈
和歌 ねられぬを しひてわかぬる はるのよの ゆめをうつつに なすよしもかな
読下 寝られぬをしひて我が寝る春の夜の夢をうつつになすよしもがな
解釈 貴女を想って寝られないこの夜を無理に寝る、その私が寝てみる春の夜の夢を現実にする手立ては無いものでしょうか。(ねぁ、貴女。)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

後撰和歌集 巻2 歌番号67から71まで

2023年06月16日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻2
歌番号六七
原文 遠无奈乃毛止尓徒可者之遣留
読下 女の許につかはしける

原文 布知八良乃毛呂多々安曾无
読下 藤原師尹朝臣

原文 安遠也幾乃以止川礼奈久毛奈利由久可以可奈留寸知尓於毛比与良末之
和歌 あをやきの いとつれなくも なりゆくか いかなるすちに おもひよらまし
読下 青柳のいとつれなくもなりゆくかいかなる筋に思ひよらまし
解釈 青柳の枝を糸のようだと言う、その言葉の響きではありません、いとつれなく(ひどくそっけなく)素振りをするのですね。糸を撚り機織りの筋にするように、どのような、貴女への心を届ける手立て(筋)を取りましょうか。

歌番号六八
原文 恵毛无乃美也寸无止己呂乃以部宇川万佐尓
者部利个留尓曽己乃者奈於毛之呂加奈利止天
於里尓徒可者之多利个礼者幾己江多利个留
読下 衛門の御息所の家、太泰に
侍りけるに、そこの花おもしろかなりとて、
折りにつかはしたりければ、きこえたりける

原文 布知八良乃毛呂多々安曾无
読下 藤原師尹朝臣

原文 也万佐止尓知利奈万之可八佐久良者奈尓保不佐可利毛志良礼左良末之
和歌 やまさとに ちりなましかは さくらはな にほふさかりも しられさらまし
読下 山里に散りなましかば桜花匂ふ盛りも知られざらまし
解釈 山里にただ散ってしまったならば、桜の花の美しく色付く盛りを知られることは無かったでしょう。(手折って届けられた花枝のように、確かにお気持ちを受け取りました。)

歌番号六九
原文 於保无可部之
読下 御返し

原文 恵毛无乃美也寸无止己呂
読下 衛門御息所

原文 尓本比己幾者奈乃加毛天曽志良礼个留宇部天三留良无比止乃己々呂八
和歌 にほひこき はなのかもてそ しられける うゑてみるらむ ひとのこころは
読下 匂ひこき花の香もてぞ知られける植ゑて見るらん人の心は
解釈 花色の目立つその花の美しさがあるからこそ、人に桜が咲いていると気づかれるのでしょう。このように桜の木を植えて知りました、貴方の私へのお気持ちを。

歌番号七〇
原文 志也宇尓尓徒可者之遣留
読下 小弐につかはしける

原文 布知八良乃安佐多々安曾无
読下 藤原朝忠朝臣

原文 止幾之毛安礼者奈乃佐可利尓川良个礼者於毛八奴也万尓以利也之奈末之
和歌 ときしもあれ はなのさかりに つらけれは おもはぬやまに いりやしなまし
読下 時しもあれ花の盛りにつらければ思はぬ山に入りやしなまし
解釈 このような時期でもあるのに、(貴女がつれないので)貴女と言う桜の花の盛りの季節にそれを思うことが辛ければ、その桜の花を思わないで済む、山の中にでも入りましょうか。

歌番号七一
原文 可部之
読下 返し

原文 志也宇尓
読下 小弐

原文 和可多女尓於毛者奴也万乃遠止尓乃美者奈左可利由久者留遠宇良見武
和歌 わかために おもはぬやまの おとにのみ はなさかりゆく はるをうらみむ
読下 わがために思はぬ山の音にのみ花盛りゆく春をうらみむ
解釈 私のために思いを寄せることも無く、想像もしなかった「止む」と言う響きのような山と言う、その言葉だけに噂の花が咲く、そのような言葉だけが盛り上がって行くだけの噂話の花が咲く、その春を恨みます。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

後撰和歌集 巻2 歌番号57から61まで

2023年06月14日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻2
歌番号五七
原文 以部与利止遠幾止己呂尓満可留止幾世无左以乃佐久良乃
者奈尓由比川計者部利个留
読下 家より遠き所にまかる時、前栽の桜の
花に結ひつけ侍りける

原文 寸可波良乃美幾乃於保以末宇知幾美
読下 菅原右大臣

原文 佐久良者奈奴之遠王寸礼奴物奈良波布幾己武可世尓己止徒天者世与
和歌 さくらはな ぬしをわすれぬ ものならは ふきこむかせに ことつてはせよ
読下 桜花ぬしを忘れぬ物ならば吹き来む風に事づてはせよ
解釈 桜花よ、主を忘れることが無いのならば、吹き来る風に載せてお前の花びらであのひとへの言伝をしてください。

歌番号五八
原文 者留乃己々呂遠
読下 春の心を

原文 以世
読下 伊勢

原文 安遠也幾乃以止与利者部天遠留者多遠以川礼乃也万乃宇久比須可幾留
和歌 あをやきの いとよりはへて おるはたを いつれのやまの うくひすかきる
読下 青柳の糸撚りはへて織るはたをいづれの山の鴬か着る
解釈 春の鮮やかな新緑の青柳の枝、その枝を糸を撚り延ばすかのようにして織る緑鮮やかなその布を、どこの山の鶯が着るのでしょうか。

歌番号五九
原文 者奈乃知留遠三天
読下 花の散るを見て

原文 於保可宇知乃美川祢
読下 凡河内躬恒

原文 安飛於毛者天宇川呂不以呂遠三留毛乃遠者奈尓志良礼奴奈可女寸留哉
和歌 あひおもはて うつろふいろを みるものを はなにしられぬ なかめするかな
読下 あひ思はで移ろふ色を見るものを花に知られぬ眺めするかな
解釈 互いに心を寄せ合うことも無く、思いが消えゆくように、色あせて行く花の色を見るたびごとに、その移ろい逝く桜花にも覚られない、秘めた物思いをすることです。

歌番号六〇
原文 加部留可利遠幾々天
読下 帰る雁を聞きて

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 可部留可利久毛知尓満止不己恵寸奈利可須美布幾止計己乃女者留可世
和歌 かへるかり くもちにまとふ こゑすなり かすみふきとけ このめはるかせ
読下 帰る雁雲地にまどふ声すなり霞吹き解け木の芽春風
解釈 春となり北へ帰って行く雁の、その雁が雲間の中で道に迷ったのかのような鳴き声が聞こえる、その道を迷わす霞を吹き別けよ、木の芽を覚ます春風よ。

歌番号六一
原文 須左久為无乃佐久良乃於毛之呂幾己止々乃保三川延光安曾无
乃加多利者部利个礼者三留与之毛安良万之物遠奈止
武可之遠於毛比以天々
読下 朱雀院の桜のおもしろきことと、延光朝臣
の語り侍りければ、見るよしもあらまし物をなど、
昔を思ひ出でて

原文 多以之世宇美也須无止己呂
読下 大将御息所

原文 佐幾左可寸和礼尓奈徒遣曽佐久良者奈比止徒天尓也者幾可武止於毛比之
和歌 さきさかす われになつけそ さくらはな ひとつてにやは きかむとおもひし
読下 咲き咲かず我にな告げそ桜花人づてにやは聞かむと思ひし
解釈 朱雀院の庭の桜の花が咲いた咲かないを、私に告げないでください。まさか、宴会に呼ばれず、朱雀院の庭の桜の花のことを人伝てに聞くとは思いもよりませんでした。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

後撰和歌集 巻2 歌番号52から56まで

2023年06月12日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻2
歌番号五二
原文 可部之
読下 返し

原文 以世
読下 伊勢

原文 美奴比止乃加多美可天良者於良佐利幾三尓奈寸良部留者奈尓之安良祢者
和歌 みぬひとの かたみかてらは をらさりき みになすらへる はなにしあらねは
読下 見ぬ人のかたみがてらは折らざりき身になずらへる花にしあらねば
解釈 逢いに来もしない貴方への私の分身として手折ったわけではありません。私は貴方にとって他の女たちのように「ひとしき枝」と擬えられるような花ではありませんから。

歌番号五三
原文 佐久良乃者奈遠与女留
読下 桜の花をよめる

原文 与美比止之良寸
読下 詠む人知らず

原文 布久可世遠奈良之乃也万乃左久良者奈乃止遣久曽三留知良之止於毛部八
和歌 ふくかせを ならしのやまの さくらはな のとけくそみる ちらしとおもへは
読下 吹く風をならしの山の桜花のどけくぞ見る散らじと思へば
解釈 北から吹く風を山並みでならす(平らす)、その奈良(平良)の山の桜花よ、そよ風の中で心を落ち着けて眺めましょう、強い風で花が散ることは無いと思うので。

歌番号五四
原文 世无左以尓多个乃奈可尓佐久良乃左幾多留遠三天
読下 前栽に竹の中に、桜の咲きたるを見て

原文 佐可乃宇部乃己礼乃利
読下 坂上是則

原文 左久良者奈遣不与久見天武久礼多个乃飛止世乃本止尓知利毛己曽春礼
和歌 さくらはな けふよくみてむ くれたけの ひとよのほとに ちりもこそすれ
読下 桜花今日よく見てむ呉竹の一夜のほどに散りもこそすれ
解釈 桜の花を、今日、十分に眺めておきましょう。和歌に詠われる呉竹ではありませんが、夜半に鶯が来て花を散らすかもしれませんから。

歌番号五五
原文 多以之良春
読下 題知らず

原文 与美比止毛
読下 詠み人も

原文 佐久良者奈尓保不止毛奈久者留久礼者奈止可奈計幾乃志个利乃美春留
和歌 さくらはな にほふともなく はるくれは なとかなけきの しけりのみする
読下 桜花匂ふともなく春来ればなどか嘆きのしげりのみする
解釈 桜の花が梅とは違い匂いをさせることなく咲き、春が来ると、なぜかそれに気が付かなかったのかと、残念な気持ちが募ります。

歌番号五六
原文 志也宇可无乃於保无止幾由美乃和左徒可宇万川利个留尓
読下 貞観御時、弓のわざつかうまつりけるに

原文 可波良乃飛多利乃於保以末宇知幾美
読下 河原左大臣

原文 遣不左久良志徒久尓和可身以左奴礼武加己女尓佐曽不可世乃己奴万尓
和歌 けふさくら しつくにわかみ いさぬれむ かこめにさそふ かせのこぬまに
読下 今日桜雫に我が身いざ濡れむ香込めに来ふ風のこぬ間に
解釈 今日は、穏やかに数輪が散り舞う桜の滴のような花びらに私の身を濡らしましょう、衣装を染めるように多くの花びらを纏わすような強く花びらを散らす風が来ない間に。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする