歌番号七七
原文 志乃日多利个留於止己乃毛止尓者留美以幾安留
部之止幾々天佐宇曽久比止久多利天宇之天
徒可者寸止天佐久良以呂乃志多可佐祢尓曽部天
者部利个留
読下 しのびたりける男のもとに、春、行幸ある
べしと聞きて、装束一具調じて
つかはすとて、桜色の下襲に添へて
侍りける
原文 与美比止毛
読下 詠み人も
原文 和可也止乃佐久良乃以呂者宇寸久止毛者奈乃佐可利八幾天毛於良奈无
和歌 わかやとの さくらのいろは うすくとも はなのさかりは きてもをらなむ
読下 我が宿の桜の色は薄くとも花の盛りは来ても折らなん
解釈 私の家の桜の色がたとえ薄くても、(色が薄い=美人じゃなくても)、花の盛りの時にはやって来て、(また、あの時のように私を)手折って下さい。
歌番号七八
原文 王寸礼者部利尓个留比止乃以部尓者奈遠己不止天
読下 忘れ侍りにける人の家に、花を乞ふとて
原文 加祢美乃於本幾三
読下 かねみのおほきみ(兼覧王)
原文 止之遠部天者奈乃多与利尓己止々者々為止々安多奈留奈遠也多知奈无
和歌 としをへて はなのたよりに こととはは いととあたなる なをやたちなむ
読下 年をへて花のたよりに事問はばいとどあだなる名をや立ちなん
解釈 しばらく逢わないままに年を経て、桜の花が咲いたからと理由を付けて、貴女の気持ちを聞いたなら、貴女の心の内に不誠実な男だと思いが立つでしょうか。
歌番号七九
原文 与不己止利遠幾々天止奈利乃以部尓遠久利者部利个留
読下 喚子鳥を聞きて、隣の家に贈り侍りける
原文 者留美知乃徒良木
読下 はるみちのつらき(春道列樹)
原文 和可也止乃者奈尓奈々幾曽与不己止利与不可比安利天幾美毛己奈久尓
和歌 わかやとの はなにななきそ よふことり よふかひありて きみもこなくに
読下 我が宿の花にな鳴きそ喚子鳥呼ぶかひ有りて君も来なくに
解釈 私の家に咲く桜の花で啼くな、呼子鳥よ。あの人を呼ぶと言う名を持つ呼子鳥のお前が鳴いても、あの人からの良き便りが来るわけでもないのだから。
歌番号八〇
原文 美不乃多々三祢可佐己无乃徒可比乃於左尓天
布美遠己世天者部利个留徒以天尓三遠宇良美天
者部利遣留可部之己止尓
読下 壬生忠岑が左近の番長にて、
文おこせて侍りけるついでに、身をうらみて
侍りける返事に
原文 幾乃川良由幾
読下 紀貫之
原文 布利奴止天以多久奈王飛曽者留佐免乃堂々尓也武部幾毛乃奈良奈久尓
和歌 ふりぬとて いたくなわひそ はるさめの たたにやむへき ものならなくに
読下 降りぬとていたくなわびそ春雨のただに止むべき物ならなくに
解釈 春雨が降る、その言葉の響きではないが、春が来ないままに年古りぬと言って、そんなに悲しまないでください。春雨はただ止むだけでなく、めでたい芽吹きも伴いますから。(きっと、春の授位でいいことがありますよ。)
原文 志乃日多利个留於止己乃毛止尓者留美以幾安留
部之止幾々天佐宇曽久比止久多利天宇之天
徒可者寸止天佐久良以呂乃志多可佐祢尓曽部天
者部利个留
読下 しのびたりける男のもとに、春、行幸ある
べしと聞きて、装束一具調じて
つかはすとて、桜色の下襲に添へて
侍りける
原文 与美比止毛
読下 詠み人も
原文 和可也止乃佐久良乃以呂者宇寸久止毛者奈乃佐可利八幾天毛於良奈无
和歌 わかやとの さくらのいろは うすくとも はなのさかりは きてもをらなむ
読下 我が宿の桜の色は薄くとも花の盛りは来ても折らなん
解釈 私の家の桜の色がたとえ薄くても、(色が薄い=美人じゃなくても)、花の盛りの時にはやって来て、(また、あの時のように私を)手折って下さい。
歌番号七八
原文 王寸礼者部利尓个留比止乃以部尓者奈遠己不止天
読下 忘れ侍りにける人の家に、花を乞ふとて
原文 加祢美乃於本幾三
読下 かねみのおほきみ(兼覧王)
原文 止之遠部天者奈乃多与利尓己止々者々為止々安多奈留奈遠也多知奈无
和歌 としをへて はなのたよりに こととはは いととあたなる なをやたちなむ
読下 年をへて花のたよりに事問はばいとどあだなる名をや立ちなん
解釈 しばらく逢わないままに年を経て、桜の花が咲いたからと理由を付けて、貴女の気持ちを聞いたなら、貴女の心の内に不誠実な男だと思いが立つでしょうか。
歌番号七九
原文 与不己止利遠幾々天止奈利乃以部尓遠久利者部利个留
読下 喚子鳥を聞きて、隣の家に贈り侍りける
原文 者留美知乃徒良木
読下 はるみちのつらき(春道列樹)
原文 和可也止乃者奈尓奈々幾曽与不己止利与不可比安利天幾美毛己奈久尓
和歌 わかやとの はなにななきそ よふことり よふかひありて きみもこなくに
読下 我が宿の花にな鳴きそ喚子鳥呼ぶかひ有りて君も来なくに
解釈 私の家に咲く桜の花で啼くな、呼子鳥よ。あの人を呼ぶと言う名を持つ呼子鳥のお前が鳴いても、あの人からの良き便りが来るわけでもないのだから。
歌番号八〇
原文 美不乃多々三祢可佐己无乃徒可比乃於左尓天
布美遠己世天者部利个留徒以天尓三遠宇良美天
者部利遣留可部之己止尓
読下 壬生忠岑が左近の番長にて、
文おこせて侍りけるついでに、身をうらみて
侍りける返事に
原文 幾乃川良由幾
読下 紀貫之
原文 布利奴止天以多久奈王飛曽者留佐免乃堂々尓也武部幾毛乃奈良奈久尓
和歌 ふりぬとて いたくなわひそ はるさめの たたにやむへき ものならなくに
読下 降りぬとていたくなわびそ春雨のただに止むべき物ならなくに
解釈 春雨が降る、その言葉の響きではないが、春が来ないままに年古りぬと言って、そんなに悲しまないでください。春雨はただ止むだけでなく、めでたい芽吹きも伴いますから。(きっと、春の授位でいいことがありますよ。)