集歌2801 大海之 荒礒之渚鳥 朝名旦名 見巻欲乎 不所見公可聞
訓読 大海(おほうみ)し荒礒(ありそ)し渚鳥(すとり)朝(あさ)な朝(さ)な見まく欲(ほ)しきを見えぬ君かも
私訳 大海の荒磯に居る渚鳥を、毎朝毎朝、眺めたいと思うが、時化ると見ることが出来ない。そのように、毎日毎日、逢いたいと願うが逢えない貴方です。
集歌2802 念友 念毛金津 足桧之 山鳥尾之 永此夜乎
訓読 思へども思ひもかねつあしひきし山鳥の尾し長きこの夜を
私訳 恋い焦がれても、貴女への想いは尽きない。葦や桧の生える山の山鳥の尾のような長いこの夜を。
或本謌云 足日木乃 山鳥之尾乃 四垂尾乃 長永夜乎 一鴨将宿
或る本の謌に云はく、
訓読 あしひきの山鳥し尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む
私訳 葦や桧の生える山の山鳥のしだれ尾のような、長い長い夜を、ただ独りで寝るのでしょう。
集歌2803 里中尓 鳴奈流鶏之 喚立而 甚者不鳴 隠妻羽毛
訓読 里中(さとなか)に鳴くなる鶏(かけ)し呼び立てていたくは鳴かぬ隠(こもり)妻(つま)はも
私訳 人里で鳴いている鶏のように声を張り上げて人が気付くほどには大層には鳴かない。私は、人には秘めた貴方の妻だから。
一云 里動 鳴成鶏
一は云はく、
訓読 里(さと)響(と)め鳴くなる鶏(かけ)の
私訳 里、一体を響かせて鳴いている鶏のように
集歌2804 高山尓 高部左渡 高々尓 余待公乎 待将出可聞
訓読 高山(かくやま)にたかべさ渡り高々に余(あ)が待つ公を待ち出(い)でむかも
私訳 天の香具山にたかべが渡って来て高々と飛ぶように、彼方を見つめるために背を伸ばし高々と私が待っている貴方を、待ち受けることが出来るでしょうか。
集歌2805 伊勢能海従 鳴来鶴乃 音杼侶毛 君之所聞者 吾将戀八方
訓読 伊勢の海ゆ鳴き来(く)る鶴(たづ)の音(おと)どろも君し聞こさば吾(わ)れ恋ひめやも
私訳 伊勢の海から鳴き飛び来る鶴のはっきりした鳴き声のようでなくても、貴方が気付いていただければ、私はこのように忍ぶ恋をするでしょうか。
訓読 大海(おほうみ)し荒礒(ありそ)し渚鳥(すとり)朝(あさ)な朝(さ)な見まく欲(ほ)しきを見えぬ君かも
私訳 大海の荒磯に居る渚鳥を、毎朝毎朝、眺めたいと思うが、時化ると見ることが出来ない。そのように、毎日毎日、逢いたいと願うが逢えない貴方です。
集歌2802 念友 念毛金津 足桧之 山鳥尾之 永此夜乎
訓読 思へども思ひもかねつあしひきし山鳥の尾し長きこの夜を
私訳 恋い焦がれても、貴女への想いは尽きない。葦や桧の生える山の山鳥の尾のような長いこの夜を。
或本謌云 足日木乃 山鳥之尾乃 四垂尾乃 長永夜乎 一鴨将宿
或る本の謌に云はく、
訓読 あしひきの山鳥し尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む
私訳 葦や桧の生える山の山鳥のしだれ尾のような、長い長い夜を、ただ独りで寝るのでしょう。
集歌2803 里中尓 鳴奈流鶏之 喚立而 甚者不鳴 隠妻羽毛
訓読 里中(さとなか)に鳴くなる鶏(かけ)し呼び立てていたくは鳴かぬ隠(こもり)妻(つま)はも
私訳 人里で鳴いている鶏のように声を張り上げて人が気付くほどには大層には鳴かない。私は、人には秘めた貴方の妻だから。
一云 里動 鳴成鶏
一は云はく、
訓読 里(さと)響(と)め鳴くなる鶏(かけ)の
私訳 里、一体を響かせて鳴いている鶏のように
集歌2804 高山尓 高部左渡 高々尓 余待公乎 待将出可聞
訓読 高山(かくやま)にたかべさ渡り高々に余(あ)が待つ公を待ち出(い)でむかも
私訳 天の香具山にたかべが渡って来て高々と飛ぶように、彼方を見つめるために背を伸ばし高々と私が待っている貴方を、待ち受けることが出来るでしょうか。
集歌2805 伊勢能海従 鳴来鶴乃 音杼侶毛 君之所聞者 吾将戀八方
訓読 伊勢の海ゆ鳴き来(く)る鶴(たづ)の音(おと)どろも君し聞こさば吾(わ)れ恋ひめやも
私訳 伊勢の海から鳴き飛び来る鶴のはっきりした鳴き声のようでなくても、貴方が気付いていただければ、私はこのように忍ぶ恋をするでしょうか。