隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1205.萩を揺らす雨

2011年11月29日 | 短編集
萩を揺らす雨
読 了 日 2011/11/08
著  者 吉永南央
出 版 社 文藝春秋
形  態 文庫
ページ数 268
発 行 日 2011/04/10
ISBN 978-4-16-781301-7

 

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繁に送ってくるAmazonのメールマガジンに紹介されていた本書がちょっと気になって、買う気になった。もう一つは、このタイトルだ。僕には何か読書意欲をそそられるような、意味ありげなタイトルだったのだ。
初めての作家だが、アガサ・クリスティ女史のミス・マープルを思わせるようなお婆さん探偵のストーリーらしいことと、連作短編集なので読みやすいだろうと思ったことなどが動機だった。というのは後付けの理由か!まあ、いつもの僕の気まぐれだ。
クリスティ女史のミス・マープルは基本的に安楽椅子探偵の形をとっているが、本書の主人公であるお草(そう)さんは、なぞに向かって自ら足を使って情報を集める行動型の探偵だ。
探偵という言い方も少し違うかもしれない。好奇心旺盛なお婆さんで、その点ではミスマープル並みである。小蔵屋(こくらや)というコーヒー豆と和食器を扱う店を商っているのが、お草さんこと、杉浦草だ。
文中の記述などから大正末期の生まれだと推測できるので、1作目の発表された2004年には、すでに78歳という年齢になっているはずだ。それにしては随分と行動的なお婆さんだ、と僕は自分の歳に重ねてみて感心するばかり。(小説の中の人物に感心してもしょうがないだろうが・・・・)

 

 

頭を飾る「紅雲町のお草」は2004年にオール讀物推理小説新人賞を受賞した作品で、店に来た女子高生二人の会話から、事件?を嗅ぎ付けたお草さんの活躍と謎解きが描かれる。こんなストーリーを読んでいると、全くミス・マープルにも負けてないな、とワクワクするのだが、舞台設定も素晴らしい。
小蔵屋は東北から取り寄せた古い家屋を解体して得た材木を使って、古民家風に設計された建築である。コーヒー豆を買いに来店した客には1杯のコーヒーをふるまうというサービスが好評で、そこそこ客足は絶えない。そうしたサービスは前に読んだ「蒼林堂古書店・・・」を思い浮かべて、似たようなことを考えるものだと思うが、蒼林堂にしても小蔵屋にしても、実際にそういう店があったらと思わせるところが憎い。
収録された5編の連作短編は、いわゆる「日常の謎」を巡ってお草さんと、その周辺の人間関係をからませた物語ではあるが、中にはちょっと重い話もあり、また年老いてもなお女性ならではの心理(僕には理解できないところもあるのだが)も描かれて(表題作)、悩ましいところだ。

 

収録作
# タイトル 発行月・号
1 紅雲町のお草 2004年11月号
2 クワバラ、クワバラ 2007年7月号
3 0と1の間 単行本書き下ろし
4 悪い男 単行本書き下ろし
5 萩を揺らす雨 2006年10月号

 

 

とは関係ないが、僕が役員を務める社会福祉法人「薄光会」については、たまにここにも書いてきたが、その薄光会が運営する福祉施設の中で、中核ともいえる豊岡光生園は創立30年を超えて、鉄筋コンクリートの建築もさすがに老朽化は免れず、改築を余儀なくされている。
40名の知的障害者である利用者と、短期入所者の住環境と暮らしの向上を目指して、近々リニューアルが予定されている。2年ほど前からそのためのプロジェクトチームが編成されて、建築設計事務所との交渉や利用者の保護者・家族への説明等に、多忙な日々を送っている。


僕も役員の端くれとして、お手伝いできることとして、理事会や保護者への説明に用いるプレゼンの作成に携わることとなった。マイクロソフトのOfficeソフトも2010となって、パワーポイント(プレゼンテーション用のソフト)もバージョンアップして、機能も増えて一段と使いやすくなったことから、アピールできるプレゼンが作りやすくなった。
まあ、僕が出来ることと言ったら、それ位の事だからせいぜい今のうちに頑張っておこう、と思っているところだ。


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