隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0451.図書室の海

2003年11月04日 | 短編集
図書室の海
読了日 2003/11/4
著 者 恩田陸
出版社 角川書店
形 態 単行本
ページ数 240
発行日 2002/2/20
ISBN 4-10-397104-5

著者の作品は今までに10冊ほど読んできたが、初めての短編集だ。Easyseekで購入した1冊。
本書を読んでいて、以前ネットで、著者の作品の読後感を書いたサイトを思い出した。
その中に、納得できない結末に不満を持った感想がいくつかあったが、この短編集なども、そうした人たちから見たら、同じ思いに囚われるかもしれない。
多分、送り手側(作者)と、受けて側(読者)の周波数の違いといったものがあるのではないかと思う。
僕は、この作者をミステリー作家と位置づけて、次々と読み続けてきたが、一般的なミステリーの概念としての結末がなくても、著者の紡ぎだす物語の多様性、あるいはストーリー展開の上手さに、またはファンタスティックな時の流れや、不思議な感覚に浸るだけで、充分読む価値があると感じている。
初出一覧で判る通り、アンソロジーに4篇、雑誌に4篇、書き下ろしが2編と、実に様々な形の作品が編まれており、“恩田陸が罠をはり巡らせた10の迷宮”という、帯の惹句そのままの短編集だ。
変な話だが、本の装丁のなんとも言えない緑色に惹かれる。僕にとっては、読書欲をそそるような装丁である。
独立した短編集だから、それぞれに味わいは違うのだが、先ず読み始め、初っ端の「春よ、こい」で参ってしまった。いかにもこれは恩田節、といって悪ければ恩田ワールドなのだ。僕は理屈ぬきでこうした話に弱い。実に泣ける話だ。
また、「六番目の小夜子」の番外編やら、後に発表する「夜のピクニック」と言う長編の予告編とか、盛りだくさんの内容で、恩田ファン必読の1冊である。巻末に筆者自身の各編の解説がある。

初出誌
# タイトル 紙誌名 発行月号
1 春よ、こい 時間怪談 1999年
2 茶色の小壜 血の12幻想 2000年
3 イサオ・オサリバン
を探して
SFオンライン 1998年10月26日号
4 睡蓮 蜜の眠り 2000年
5 ある映画の記憶 大密室 1999年
6 ピクニックの準備 書き下ろし  
7 国境の南 週刊小説 2000年8月25日号
8 オデュッセイア 小説新潮 2001年1月号
9 図書室の海 書き下ろし  
10 ノスタルジア SFマガジン 1995年8月号

 

 

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