隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1352.黒猫の薔薇あるいは時間飛行

2013年05月19日 | 安楽椅子探偵
黒猫の薔薇あるいは時間飛行
読 了 日 2013/05/03
著  者 森晶麿
出 版 社 早川書房
形  態 単行本
ページ数 269
発 行 日 2012/12/15
I S B N 978-4-15-209343-1

 

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1回アガサ・クリスティ賞を受賞した「黒猫の遊歩、あるいは美学講義」のシリーズ3作目だ。第2作の「黒猫の接吻、あるいは最終講義」の、安い古書が出たら買おうと思っていたら、木更津市立図書館で、3作目の本書が貸出可になっていたので、前に読んだ「視線」と一緒に借りてきた。
昨年2月に第1作を読んだばかりだから、1年あまりで3作はずいぶんと速い執筆だと感じる。
ずっと昔に、サントリーミステリー大賞が制定された時に感じた、モダンな素晴らしいミステリーが生まれるのではないかという期待を、アガサクリスティ賞にも感じて受賞作を読み、ほぼ期待通りの本格ミステリーに出会ったという感じだった。
僕がこのシリーズ作品に惹かれたもう一つの要因は、若き大学教授で黒猫とあだ名される主人公の安楽椅子探偵ぶりである。はるか昔、僕が初めてであったシャーロック・ホームズ譚で、ベーカー街を訪れた依頼人の服装などから、ホームズがその職業や身分、はては朝食のメニューまで言い当ててしまうという描写に、心躍らせながら、こんなにも面白い探偵小説があったのだ、とそんなことに無上の喜びをを感じていたものだった。

 

 

後から考えれば、そうした主人公の思考回路は、それよりもはるか以前に、エドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」や「マリー・ロジェの事件」に登場するオーギュスト・デュパンが示していたことを知るのだが・・・・。
勿論このシリーズの黒猫というのも、ポーの黒猫に由来しているのだ。そっちこっちにポーの作品解説が出てきて、影響されやすい僕は、またいつか機会があったらじっくりと、ポーの作品を読み返してみよう、などという気にもなるのだ。
本書には、「アッシャー家の崩壊」をモチーフとし用いられているのだが、はるか昔に読んだ「アッシャー家~」はとっくに記憶のかなたで、本文中で何度か解説が出てきてさえ思い出すことができない。何てことだ。
だが、心配はいらない。思い出せなくても本書のストーリーを追うことには、一向に差し支えない。

 

 

の「黒猫の遊歩、あるいは美学講義」からいきなり第3作に来てしまったので、黒猫がフランスに来ているいきさつも分からないし、黒猫の付き人に指名された“私”に名前があったかどうかも、第1作がもう手元にないから確かめようもない。と、ないないづくしではあったが、フランスにおける黒猫と、日本に残っている“私”は、偶然にも同様の帰結を迎える事態に遭遇するというのが本書のストーリーなのだ。
今回の謎は男女の不思議なめぐり合わせ? 恋模様が絡んで、無粋な僕にはその辺はよく理解できないが、黒猫の相変わらずの深い洞察力と、推理力がそんなストーリーを面白く読ませる。

 


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