隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0703.夏の名残の薔薇

2006年03月01日 | クローズド
夏の名残の薔薇
読 了 日 2006/03/01
著  者 恩田陸
出 版 社 文藝春秋
形  態 単行本
ページ数 384
発 行 :日 2004/10/15
ISBN 4-16-323320-2

 

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が国では「庭の千草」として知られているアイルランド民謡のタイトル"The Last Rose of Summer"と同じタイトルが気にかかっていた。
ところが、本書に収録されている「恩田陸スペシャル・インタビュー」の中で、このタイトルはクラシックで、十九世紀ハインリヒ・W・エルンストというヴァイオリニストが作った曲だと言っている。そこでは同様にスタンダードナンバーからタイトルを採ることが多いとも言及しており、僕が著者の作品タイトルに心惹かれる要因もその辺にあるのかもしれない。
本書は、文藝春秋から刊行されている、本格ミステリ・マスターズというシリーズの中の1冊で、この中には僕の好みの作品がいくつかあって、そんなところからも期待は大きかった。
著者の作品には、僕にとって難解と思われるものが少なくない。読んでいて翻弄されるような感覚に陥る作品もあり、それはそれで面白い。それがファン心理というものだろう。

 

 

本書もその例外ではなく、六章に分けて進められるストーリーは、各々登場人物がリレー式に語り手となって展開される。本文の合間合間に挿入される(そういうのを何とか言ったが、ちょっと度忘れした)映画の台本のような書き込みが、本編をドラマに仕立てあげるかのような印象を与える。
どうも。作中で登場人物が何度も見ることになっているフランス映画は、「去年、マリエンバートで」というらしいが、僕は見ていないのでよくは分からないが、それがモチーフとして用いられているようだ。
山奥に建てられたホテルが舞台となっている、言わばクローズド・サークルのドラマである。趣は違うが、僕は読んでいて3年ほど前に読んだ「木曜組曲」を連想した。限られた場所でのストーリー展開が、同じというだけで、物語そのものは別物なのだが・・・・。
僕が難解だと感じるのは、章ごとに語り手が変わることで、同じ場面を違う視点で眺めるため、ところどころで「オヤッ?」と思わせる部分が出てくることだ。そういったところをも僕が受け入れようとするのは、自分でもよく理解できない現象なのだが、まあ、この作者には甘んじて騙されようと思っているのかもしれない。

本書には、著者のあとがきや、インタビューのほかに、杉江松恋(マッコイ)氏の「心地よく秘密めいた恩田陸」という評論も併載されており、こちらも面白く読める。

 

 

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