隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1343.フェルメールの仮面

2013年04月22日 | 絵画
フェルメールの仮面
読 了 日 2013/04/05
著  者 小林英樹
出 版 社 角川書店
形  態 単行本
ページ数 329
発 行 日 2012/08/31
I S B N 978-4-04-110268-8

 

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のまだ知らない作家と作品は、たくさんあるだろうということは、常日頃感じていることだが、面白そうだから、あるいは僕の好みに合いそうだから読んでみたいと思う本を探すのは、思うほど簡単ではない。
手っ取り早いのは、ミステリー文学賞をチェックすることなのだが、最近それで何度か失敗した。受賞作必ずしも僕にとって喜ばしい作品とは限らない、とそんなことは頭でわかってはいるのだが、それほど落胆することもあるまいと、受賞作という謳い文句に惑わされるのだ。しかし、皮肉なもので僕が見逃していた中に、好みの作品が隠れていることがある。
たまたまAnazonのサイトを見ていて、この本を見つけた。すると、著者の小林英樹氏は「ゴッホの遺言」という作品で日本推理作家協会賞(2000年度)を受賞しており、他にも数点ゴッホをテーマとした作品があることが分かった。そんなところからも僕の情報収集能力のお粗末さを感じるのだ。
絵画ミステリーには大いに興味があり、昨年は女性作家による二つの趣の異なる作品(高樹のぶ子氏の「マルセル」、原田マハ氏の「楽園のカンヴァス」)を読み、今年に入ってからは厳密には絵画ミステリーとは言えないが、気になっていた「ダ・ヴィンチコード」を読んだところだ。
この本もぜひ読みたいと思い、Amazonの中古品を注文して受賞作より先に、新作のこっちを手に入れた。

 

 

フェルメール(Johannes Vermeer:ヨハネス・フェルメール)については、何年か前に話題となって、テレビで特集番組が放送された。それほど多くはないこのオランダの画家の作品が、なぜ僕らの心に響くのか?
そうした興味を引くような番組がいくつかあった。そして、フェルメール展は現在も我が国の各地で催されており、相変わらずの人気を博している。
いや、わが国だけではない、イギリスでは、フェルメールの名画をモチーフとした「真珠の耳飾りの少女」が映画化されて、2004年に公開された。「真珠の耳飾りの少女」については、視線の行方、瞳の光、耳飾りの光等々からフェルメールがどのようにして、この絵を描いたのか?モデルはだれか?などがテレビでも、最新のIT技術を駆使しながら検証する番組も作られた。僕はぜひ本物を見たいと思いながらも、若い時のような行動力もなく、それらの番組を視聴することで満足するしかなかった。

 

 

の作品の中で、主人公が絵画の修復作業をする場面が描写されている。前にたしかNHKテレビだったと思うが、絵画の修復についての番組を見たことを思い出した。海外で行われた修復作業の一部始終を取材した番組で、修復師たちのチームワークで経年変化で痛みや褪色の進んだ絵画が、度重なる経験と技術、加えて最新の機器類とにより、次第に元の形と色に復元されていく過程が、背筋が寒くなるような感覚を抱きながら見ていた。
本書のストーリーは、フェルメールの時代に生きた、若い画家の生涯と、現在の修復師の活動とが、交互に描かれて、フェルメールのいくつかの作品が贋作ではないかという疑問を持たせながら展開する。ワシントン・ナショナルギャラリーに収蔵される「赤い帽子の女」と「フルートを持つ女」の二点のうち、特に後者はフェルメール作と伝えられるという添え書きがあることから、事実贋作ではないかという説もあるということだ。 主人公が自分の技術が認められることに、執着することにより、半ば無意識のうちに道を踏み外していく過程が、不安を煽るように描かれていく。そうしたストーリー展開に、僕はあまりに入り込んで、いうべき言葉が亡くなっている。このフィクションが、もしかしたら事実なのではないかという思いを感じさせて、その迫力に圧倒されたのだ。

 

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