刀と傘 | ||
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読了日 | 2021/04/21 | |
著 者 | 伊吹亜門 | |
出版社 | 東京創元社 | |
形 態 | 単行本 | |
ページ数 | 285 | |
発行日 | 2017/06/30 | |
ISBN | 978-4-488-01793-4 |
京創元社のメールマガジンで何度も目にしているうち、このタイトルも読んでみるか、と言うような気にさせられた。メールマガジンの役割なんてそれ以外にはないだろう。だが、僕にとって東京創元社のメールマガジンは、見ているだけでも楽しい。
大分昔の事だが、ミステリーに目覚めた頃に、東京創元社にはずいぶンとお世話になった。
メールマガジンが届くようになって、中でも表紙がカラーで表示されている箇所は、すぐにでも手に取って見たいという気にさせる。
その中の何冊かに読んでみたい記事があればなお嬉しいのだが、当たり前のことだが、毎回そういう記事があるわけではない。しかし、カラーの表紙が載っていたりすれば、読書欲を掻き立てられることも多い。
本書もそうして読みたいという気にさせた1冊だ。
特に“明治京洛推理帖”なるサブタイトルは、大いに気なるところだ。また、表紙イラストもページを繰らせるに足るいいイラストだ。中身の人物とは少し異なるところもあるが、その辺は大目に見て、何ともいかにもと言った風情の画風が良い。
だが、木更津市立図書館のページを潜ったが残念、在庫としてなかったから、仕方なく4月1日袖ヶ浦市立図書館へ行って借りてきたのだ。そんなことからも僕は期待に胸膨らませて本書を手に取った。
従来それほど深く考えたことも無かったが、もっとも考えたところで僕に分かろうはずもない。何のことかと言えば、それぞれの行政が主管とする図書館(公共図書館)の蔵書はどのように、決定購入されるのだろうかと言うことだ。
Wikipediaによれば、公立図書館には公立図書館司書が居て、その業務の一環として、新しい資料(図書を始めとする資料の事)の導入が行われる。となっているが図書館の職員がすべて司書だとは限らない。
多分、一般の職員(この場合市役所の職員だから、地方公務員と言うことになるか)の方が圧倒的に多いだろうから、その職員が司書のサブをしているに違いない。先述の通り、今まであまりそんなことは考えたこともなく、図書館を利用していたので、これからは少し異なる視線で図書館を見ることになるだろう。
そして、図書館の存在を今まで以上にありがたく感じることになるかもしれない。
しかし、僕が時々考えるのは、市によって例えば建物の大きさによって、蔵書の絶対数は変わる。我が千葉県の場合を見れば、木更津市の図書館は近隣三市の図書館と比較しても、建物が古く狭い。
今はそれほど近隣の図書館に行くことが少なくなったが、以前よく利用した市原市の図書館は、広く大きな建物で、蔵書の数も多いとみられる。
図書館には図書館ネットワークが張り巡らされているから、そこに無い本でもリクエストによって、他の図書館から回してもらうことが出来るのは知っているが、いかんせん時間がかかるのだ。
そんなことからあまり利用したことがなく、自分でそこに行って借りてくる方法をとってしまう。
僕の偏見かもしれないが、僕が読みたいと思う本が木更津市立図書館には、ない場合が多いような気がしており、そんなことから隣町の袖ヶ浦市立図書館や君津市立図書館へと出かけることが多かったのだ。
隣町だから車で行けば、それほど時間がかかるわけでもなく、足しげく通うことになるのだが、最近はできるだけ地元の図書館で利用出来る本を読もうと思っている。ガソリン代も高くなっているから、ちょくちょく出かけるとバカにならないのだ。
いろいろと愚痴を書いてしまった。
さて、本書は時代ミステリーと言うに相応しい内容で、下表のとおりの作品が納められた、短編集だ。
各作品には前書きのように、報告書の形でその事件の顛末が書かれている。
度かここ書いているが、僕の弱点の一つに歴史に弱いということがあって、この本で描かれた江戸から明治へとの時代の変遷がいまいち理解が深まらないのだ。最初に登場する人物すなわち前述の報告書の記述者だが、尾張藩公用人鹿野師光(かのもろみつ)と、江藤新平と言う人物だ。後者は実在の人物だが、前者はどうなのか知らない。早速弱点が出てしまった。僕がほんの少し歴史に詳しいとそうしたことも分かってなお一層物語を楽しめるのだが・・・・。
事件は福岡黒田藩を脱藩した論客、五丁森了介(ごちょうもりりょうすけ)が麩屋町押小路下ルの町屋にて、惨殺された一件で、その顛末についての報告書を書いたのが、鹿野師光だ。徳川最後の将軍である慶喜が、あっさりと朝廷へ政権を返上した慶応三年(1867年)のことだ。
五丁森了介は、新陰流免許皆伝の強者にて、簡単に殺されるようなものではない所から、誰がそれを実行したのかと言う捜査の過程が描かれたのが最初の1篇だ。時代に即した事件の捜査は、近代と異なるものの、論理的な視点を崩さずに事件の経過をたどることに徹底している。江藤新平の真実の追求はまるでシャーロック・ホームズのごとき頭脳明晰を示して、まるでワトソンの役柄を担ったような鹿野師光を従えて、追及を深めるのだ。もちろん、タイトルの佐賀から来た男は江藤新平の事だ。
続く第2編は弾正台切腹事件、中央集権国家が次第に形作られていく明治三年(1870年)普段は東京丸の内の庁舎で、法制度の調査立案に辣腕をふるっている、太政官となった江藤新平が、単身京都府庁に赴いたのは悲願の司法省設立の布石を作る為だった。
その一環として、東京まで悪名を響かせている京都の弾正台を壊滅するのが、当面の江藤の目的だ。同時に彼は三年前に一緒に仕事をした鹿野師光を捜していた。もちろん彼と 一緒に仕事をするということが目的だ。が、京都にも名古屋にも消息がなかった。
そんなことから、ストーリーは江藤新平と鹿野師光が中心となって展開するだろうと、想像させながら進む。
# | タイトル | 号 | 発行年月 |
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1 | 佐賀から来た男 | vol.80 | 2016年12月 |
2 | 弾正台切腹事件 | vol.89 | 2018年6月 |
3 | 監獄舎の殺人 | vol.73 | 2015年10月 |
4 | 桜 | 書き下ろし | |
5 | そして、佐賀の乱 | 書き下ろし |
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