数十年ぶりの再読。
本作以前は多重人格というとホラーという感じだったが、多重人格を題材に真面目な小説は本作がそのはしりだったではないか。
分裂していた人格が順番に統合されていくストーリーは、現実的ではないのかもしれないがとても面白く、サリーの人格が少しづつ変わっていく描写が素晴らしい。特に語り手となるデリーの人格が魅力的で、その人格ができるきっかけが他の人格と違っていることからも、作者としても特別なキャラクターとして造形したのではないか。
この作品以後のダニエルキースは、実話路線に走り、オリジナル作品も救いのない話になっていく。「アルジャーノンに花束を」から「五番目のサリー」までの間が、ダニエルキースのピークだったように思う。