約束の果て: 黒と紫の国

2020-07-29 11:08:20 | Book
日本ファンタジーノベル大賞2019受賞作。

中国っぽい国の偽史書に書かれた、過去にあったかもしれない物語という、封神演義っぽいファンタジー。

時を超える感動の愛の物語という売り文句がついているが、これは読者をミスリードするマーケティングであり、本作は間違いなく、山田風太郎や荒山徹系のとんでも伝奇小説系統の作品である。

これらの作品を読んだことがなく、純粋ファンタジーファンが本作を読むと、中盤からの展開に度肝を抜かれること間違いないのだが、はたして本作をファンタジーというジャンルで売り出すのは、どうなのだろうか。

上記のような点で、本作がファンタジー大賞の受賞作として相応しいのかとか、本作のマーケティング手法にはケチをつけたくなるが、内容に関しては、間違いなくここ数年出版された小説の中でトップクラスの面白さであり、練りに練られた伏線と、巧みな言葉選び、中盤からの怒涛のストーリー展開には脱帽するしかない。

どれも同じようなラノベ作品や、深夜アニメに飽き飽きとしている人は、ぜひ本作を読んでもらいたい。

本作が作者の持っている作風で、これからも同様の系統の作品を書かれるのか、それともまっとうなファンタジーに回帰するのか、はたしてどちらか?

 
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AIの魔女

2020-07-21 10:22:12 | Book
なぜ、AIとかVRとかを題材にすると、SFというよりも魔法の世界になってしまうのだろうか。
このシリーズにリアリティを求めるのはナンセンスとは思いつつも、さすがにAIがあまりにも万能すぎて、物語世界に没入できなかった。

 
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言葉のない世界に生きた男

2020-07-15 10:39:01 | Book
手話教室で出会った一人の聴覚障害者の青年。言語を知らずに大人になった彼に、手話を通じて言葉を教えようとする著者とのドキュメンタリー。

表題が「言葉のない世界に生きた男」だが、実際には彼は人間社会の中で育ったため、他者との意思疎通という「コミュニケーション」の概念が存在することを知っていたことが、ジニーとの大きな違いだろう。なので、彼は言語という概念は知らなくとも、文明社会が存在し、人間が他の動物とは異なっている知性を身に付けていた。

つまり、言語を知らなくても知性は存在するということを証明したことになり、言語は知性の必要条件ではないことを明らかにした。

聴覚障害者が手話を用いることで、音声言語に劣らないコミュニケーションが可能であることや、音声の記号化よりも手話の記号化のほうが容易であることから、もしかしたら、手話や文字のほうが音声言語より先に発展した可能性もあるのではないかとも思った。

また、言語とは何かという興味深い問題とは別に、不法移民かつ障害者という社会から見捨てられかねない存在を、自己の良心に基づいて救おうとする人たちが大勢いるアメリカの市民社会の強さに感銘した。

 
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実はSARSは、広まっていたのではないか?

2020-07-10 12:56:00 | Weblog
なぜアジア地区で、コロナの被害が小さいのか未だに謎である。

今回のコロナで初めてわかったこととして、無症状感染者の存在があるが、これは新型コロナに限らず、実は過去に流行した多くの感染症でも同じように無症状感染者が多数いたのではないかと思う。

SARSは致死率が約10%と高かったと言われているが、実はSARSも実際には無症状感染者が多数いたのではないか? それも、ほとんどが無症状で一部に感染者に症状が出て、発症後は一気に重症化していたのではないだろうか? そして、SARSに感染し免疫を獲得した人は新型コロナに感染しにくいのではないか?

そう考えると、SARSの被害が出たベトナムや台湾、韓国での、新型コロナの被害が小さいことと辻褄が合うように思われる。

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イップ・マン 完結

2020-07-08 20:41:36 | Movie
コロナの影響で、約五ヶ月ぶりの映画鑑賞。
当初の公開予定日から延期となり、もしかして見れないのではとも懸念したが、7月頭から公開となったため、見れるうちにと見てきた。

ストーリーは、イップ・マン葉問のリメイクかというぐらいほぼ同じように進み、新参者のイップ・マンが中国人ネットワークに拒否されてトップと対決、クライマックスは外国人と異種格闘技戦と、ちょっと興ざめ。

みどころは、チャン・クォックワンが扮したブルース・リーのアクション。蹴りのポーズから、ヌンチャクアクションまで、まさにブルース・リーそのもの。

しかしかながら、これだけ完成度の高いカンフーアクション映画は、当分の間出てこないだろうと思うと、とてもさみしい。素晴らしい作品を見せてくれた、ドニー・イェンを始めとした出演者や制作陣には、心の底からありがとうと言いたい。
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隔絶された少女の記録

2020-07-07 11:13:05 | Book
幼い頃から虐待され、暗い部屋に椅子に縛り付けられ、言葉を知らずに育てられたジニー。

救助された少女は、人は言語をどのようにして習得するのかという疑問を持つ学者たちの好奇心を釘付けにし、治療と研究、打算と愛情、官僚主義や名声競争の元で、結果的に最悪の結末を迎える。

主テーマはジニーを題材とした言語とはなにかという何千年も前からの人類の疑問へのアプローチだが、実際に本書が書いているのは、ある人にとって、世界中で最も好ましいと思える人物が、別の人にとっては最悪の人物足り得る、個々の人物がベストだと思っていても全体としてみると最悪の結果となる、人間の愛と愚かさである。

暗闇の部屋から助け出されたジニーが、また社会の暗闇へと追いやられてしまう結末は言葉にできない。

 
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