新米弁護士のライネンが弁護する殺人犯が殺したのは、幼少の頃に可愛がってくれた亡くなった親友の祖父だった。
ドイツの作品ということで、殺された名士の隠された過去が、どうせナチ絡みだろうとすぐに想像がついてしまい、ミステリー小説としての出来は良くない。
だが、本作で問うているのは、ドイツ刑法の改正によってナチの犯罪が追求できなくなってしまった法の瑕疵であり、本作の出版が問題提起となり法改正の動きが出たことが重要である。
本作はまさに社会派小説であり、小説の力を世に知らしめる金字塔である。戦後ドイツがいかに過去の問題に真摯に向き合ってきたかがよくわかる。日本の歴史修正主義者は、爪の垢を煎じて飲むべきであろう。