東京都美術館で開催されている「エルグレコ展」について、現富山県立近代美術館長雪山行二氏の講演会が横浜であり、参加した。
雪山行二氏は、エルグレコ展は25年前に当時の国立西洋美術館で開催されたが、その時に西洋美術館で担当であり、今回監修者の立場で関与されている。
この雪山行二氏、私が51歳から58歳の時まで横浜美術館の館長でもあり、その時分何かの催しで見かけたことはあったと思う。今回も教室に時間前に入ったときどこかで見たことがある人が教室の前にいるな、と思っていたらそこ方が雪山氏であった。面識があるわけでもないし、私などこんなすごい肩書きの方に声をかけてもらえるような立場でもないが、見たことのある人だと何となく話を聞くのも楽しくなるものらしい。
当初13時半から15時半の予定が16時15分近くまでと45分も超過してエルグレコの絵画の見所や画家の特徴を詳しく語ってもらった。講義の前段には、25年前のエルグレコ展での苦労と今回の展示の比較の話もあり、なかなか勉強になった。
エルグレコがギリシャのクレタ島出身で、ヴェネツィアでイタリアルネッサンス様式の絵画を身につけ、スペインのトレドに赴き宮廷画家をめざしたらしいがなれなかったこと、終生絵のサインにギリシャ文字を使用したこと、エルグレコとはギリシャ人という意味のスペイン語であること、スペインに渡った後イタリア様式の写実的な絵画から脱却し独自の画家として開花したこと、死後あっという間に忘れられたが19世紀末から20世紀初頭にセザンヌやピカソなどにより再評価されたこと、東方教会の影響下にあったクレタ島出身でもあり平面的なビザンツィン様式の影響が晩年まで続いたこと、などなどごく基本的なことを語ってもらった。
神奈川大学での伊坂清二氏の5回連続講義(4月から続きがあるかもしれないとのことでこれも申し込む予定)とあわせて多少は西洋美術の基本を教わることが出来たようだ。再来月にはラファエロ展についての講座も申し込んだ。
美術展の楽しみ方、こういう方法もあったことがようやく最近わかってきた。独りよがりの楽しみ方もまたいいのだが、基本的な視点を教わると視界がぐんと広がるような気がする。
この日は“円空展”の講演会に申し込んでいるため(抽選ですが、結果はまだ不明)、身動きがとれませんが…。
宗教画は知識の有無で見方が随分違ってくるでしょうから、実際の鑑賞が更に楽しみになりますね。
それにしても…クレタ人と聞くとつい、『「クレタ人は嘘つきだ」とクレタ人が言った』というパラドックスを連想してしまいます(笑)。
12月までの神大の講座でルーベンスも講義で触れられました。日本ではフランダースの犬ですが、当のフランドルではこの話はあまり流通していないようですね。
ルーベンスはネットで自習とするしかないようです。
しかしキリスト教も、仏教も、むろん他の宗教も疎いので困っています。
クレタ人のパラドックス、いつも理解できないでそのうち忘れてしまう話です。
ただルーベンスは当時のフランドルでは偉人でしたから引き合いに出されたんでしょうが・・。