Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

本日の読書

2010年07月04日 20時38分03秒 | 読書
「みすず7月号」読了
 先月号から中井久夫氏の「病棟深夜の長い叫び」が開始された。今号は2回目。臨床再訪のシリーズとしては3回目。
 みずからの臨床体験をつづっているが、誇るでもなく淡々とした筆致が私にはとてもうれしい。
 氏のエッセイを追っかけ初めて何年目になるか、私には専門外の方のエッセイだが、まず文章の呼吸が私の呼吸と合う。黙読のテンポと句読点の位置がうまく合致する。そう、文章の呼吸が合うとしか表現のしようがないように、読みやすい。不思議と理解できない言葉や単語と出会っても先に進める。そして最後までその言葉が理解できていなくても何となくわかったような気になる。
 今の私とは文章の呼吸はぜんぜん違うが、18・19歳の頃、吉本隆明とであったときの気分と似ている。評論集を読みながら、「吉本隆明の文章の呼吸・リズムに慣れてろう」という意欲を掻き立てられたことを思い出す。そして慣れにしたがい、「言語にとって美とは何か」などの長いものを読めるようになった。さらにその後、政治的な評論の世界に目を向けることが出来て、さまざまな文章に目を通すことができるようになった。
 そんな風に読める幅を広げてきたが、中井久夫氏の文章には、それ以上に何かホッとする呼吸も感じている。文章を通して伝わる人柄なのかもしれない。私が年相応の反応を示しているのかもしれない。
 そんなことを感じながら読むことのできる数少ないエッセイである。