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論文)低分子RNAによる側根成長制御

2010-06-17 19:40:48 | 読んだ論文備忘録

miR390, Arabidopsis TAS3 tasiRNAs, and Their AUXIN RESPONSE FACTOR Targets Define an Autoregulatory Network Quantitatively Regulating Lateral Root Growth
Marin et al.  The Plant Cell (2010) 22:1104‐1117.
DOI:10.1105/tpc.109.072553

オーキシンシグナル伝達に関与しているオーキシン応答因子(ARF)の多くは、マイクロRNA(miRNA)やトランス作動性siRNA(tasiRNA)による制御を受けていることが知られている。フランス科学研究庁 植物科学研究所(ISV-CNRS)のMaizel らは、シロイヌナズナのARF2ARF3ARF4 mRNAをターゲットとしているtasiRNA(tasiARFs)の前駆体TAS3a (At3g17185)の発現量が100倍以上増加しているアクティベーションタギング系統およびTAS3a を過剰発現させた形質転換体の形態を観察し、これらの芽生えでは側根の長さが野生型よりも長いことを見出した。また、TAS3a 発現量が低下しているtas3a-1 変異体芽生えでは側根が短くなっていた。よって、TAS3a 転写産物量は側根の長さと正の相関があり、側根原器の発達に関与することで側根の成長を正に制御してると考えられる。TAS3aMIR390a の発現により根で生産されるmiR390と相互作用をして分解されてtasiRNAを生成する。TAS3a は根の中心柱柔細胞で、MIR390a は木部、内鞘、側根原器の基部と側面で発現しており、側根原器の誘導される領域でTAS3a とmiR390の発現部位に重なりが見られた。側根の形成は主根の特定部位での局所的なオーキシン極大の形成によって誘導されるが、MIR390a の発現は直接にはオーキシンによって誘導されず、オーキシン極大形成のステージとmiR390の生成時期には食い違いが見られた。ARF2ARF3ARF4 をターゲットとする人工的なmiRNA(aMIR-ARF)を発現させた形質転換体、arf2arf3arf4 の単独変異体は、TAS3a 過剰発現形質転換体と同様に側根が野生型よりも長くなった。よって、tasiARFのターゲットは側根の成長に関与していることが示唆される。また、tasiARFのターゲットのうち、ARF3は正のフィードバックループによりMIR390a の発現を促進し、ARF4はMIR390a の発現を負に制御していることがわかった。以上の結果から、低分子RNAとARFは相互の発現を空間的・時期的に制御し合うことで、側根成長の制御を行なっていると考えられる。

 

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