Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)イネのストリゴラクトンシグナル伝達活性化転写因子

2017-10-27 21:38:36 | 読んだ論文備忘録

IPA1 functions as a downstream transcription factor repressed by D53 in strigolactone signaling in rice
Song et al. Cell Research (2-17) 27:1128-1141.

doi:10.1038/cr.2017.102

イネIdeal Plant Architecture1(IPA1)はSQUAMOSA PROMOTER BINDING PROTEIN-LIKE(SPL)ファミリーに属する転写活性化因子で、分けつの成長を負に制御しているTEOSINTE BRANCHED1OsTB1 )遺伝子のプロモーター領域に結合して分けつ数の増加を抑制している。中国科学院遺伝与発育生物学研究所Li らは、ゲノム編集によってIPA1の機能喪失変異体ipa1-10ipa1-11 および機能獲得変異体ipa1-3Dipa1-4D を作成し、表現型を調査した。その結果、ipa1-10ipa1-11 は分けつ数が増えて矮化し、ipa1-3Dipa1-4D は分けつ数が減少した。これまでにイネにおいて見出されてきた分けつ数に関する変異体はストリゴラクトン(SL)に関与したものであることから、ipa 変異体のSL(rac-GR24)に対する感受性を調査したところ、機能喪失変異体も機能獲得変異体もSL処理による分けつ数変化を示さず、SL非感受性であった。したがって、IPA1はSLシグナル伝達に関与していると考えられる。IPA1 mRNA量やIPA1タンパク質量はSL処理をしても変化せず、野生型イネとSL関連変異体との間でIPA1タンパク質量に差異は見られなかった。よって、SLはIPA1 の転写や翻訳に影響していないと考えられる。そこで、SLシグナル伝達の抑制因子であるDWARF53(D53)との関係について調査したところ、IPA1はD53と直接相互作用をすることが確認された。また、ベンサミアナタバコを用いた一過的発現解析から、D53がIPA1の転写活性化機能を阻害することがわかった。IPA1とD53との相互作用を詳細に解析したところ、IPA1のN末端ドメインとDNA結合活性に関与しているSBP-boxがD53と相互作用をしており、IPA1のC末端ドメインはD53と相互作用をせず、IPA1の転写活性化機能に関与していることがわかった。また、D53とIPA1との相互作用はIPA1のDNA結合活性には影響しないことがわかった。クロマチン免疫沈降(ChIP)-seq解析から、IPA1はD53 遺伝子プロモーター領域に結合することが確認された。また、この領域はIPA1が結合するGTACエレメントを含んでいた。さらに、IPA1はD53 プロモーターに直接結合して転写を活性化することがわかった。したがって、IPA1はD53 の発現を促進することで負のフィードバックループを形成している。野生型植物ではSL処理をすることでD53 転写産物量が増加するが、d53ipa1-10ipa1-3D の各変異体ではD53 転写産物量の変化は見られなかった。したがって、イネのSLシグナル伝達経路では、D53がIPA1の転写活性化活性を抑制することで下流遺伝子の発現を抑制しており、これは同時にD53 の転写も抑制し、SL応答の負のフィードバックループを形成している。IPA1はmiRNA156およびmiRNA529による転写後調節を受けており、miRNA156過剰発現個体(miR156OE )は分けつ数が劇的に増加し、IPA1 を含むSPL 遺伝子群の発現量が大きく減少する。miR156OE にSL処理処理をしても、分けつ数の減少やD53 の発現誘導は野生型と比べると僅かであった。ipa1-1D d53 二重変異体は、d53 変異による分けつ数の増加が抑制された。同様に、ipa1-1D d27 二重変異体やipa1-1D d10 二重変異体は、d27d10 といったSL生合成欠失変異による分けつ数の増加を抑制した。よって、IPA1はSLシグナル伝達経路においてD53の下流で作用していることが示唆される。以上の結果から、IPA1はSLシグナル伝達の活性化因子として機能し、SL非存在下ではD53と相互作用をして転写活性化機能が阻害されているが、SL存在下でD53がプロテアソーム系で分解されるとターゲット遺伝子の転写が活性化すると考えられる。また、IPA1はD53 遺伝子のプロモーター領域に結合してD53 の発現を活性化し、負のフィードバックループを形成する。

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論文)不定根形成の分子機構

2017-10-25 21:51:37 | 読んだ論文備忘録

Non-canonical WOX11-mediated root branching contributes to plasticity in Arabidopsis root system architecture
Sheng et al. Development (2017) 144:3126-3133.

doi:10.1242/dev.152132

植物の根系は、成長中の根から出現する側根と根以外の器官から形成される不定根から成り立っている。中国科学院上海生命科学研究院植物生理生態研究所Xu らは、以前に、シロイヌナズナ葉切片からの不定根形成にWUSCHEL-RELATED HOMEOBOX11WOX11 )が関与していることを明らかにしており、今回、WOX11 による不定根形成の誘導機構について調査した。WOX11 を過剰発現させた形質転換シロイヌナズナでは、葉切片、茎切片、胚軸から不定根形成が野生型よりも促進され、SRDXリプレッションドメインを付加したWOX11WOX11-SRDX )を発現させた植物では不定根形成が阻害された。WOX11 プロモーター制御下でGUSを発現する形質転換体(WOX11pro・GUS )を用いてWOX11 の発現を解析したところ、葉切片培養2日目には不定根の始原細胞での発現誘導が見られ、不定根原基(ARP)の発達につれて発現が減少していった。一方、側根形成過程ではWOX11 の発現は検出されなかった。また、この形質転換体を土壌栽培したところ、GUSシグナルが根系の多くの領域で検出された。さらに、土壌栽培したWOX11-SRDX 発現系統は、根系の二次、三次、四次根数が減少した。また、土壌栽培したWOX11 過剰発現系統は、三次、四次根数が増加していた。したがって、土壌栽培条件ではWOX11 を介した根の形成が起こっており、これは土壌からの環境シグナルに応答したものであると思われる。培地上で育成しているWOX11pro・GUS 芽生えの一次根を中程で切断すると、1日後には切断部位でGUS発現が検出された。したがって、WOX11 による根の誘導は一次根の切断によって引き起こされていると思われる。側根形成に関与しているARF7ARF19 が機能喪失したarf7 arf19 二重変異体芽生えの一次根を中程で切断すると、切断部位近傍から多くの根が形成され、切断1日目に切断部位近傍でオーキシンの蓄積およびWOX11 の発現が見られた。また、WOX11-SRDX を発現させたarf7 arf19 変異体では切断傷害による根の形成が見られなかった。したがって、一次根の切断傷害による根の誘導は、ARF7/19 を介した側根形成経路ではなく、WOX11 を介した経路によって引き起こされていることが示唆される。arf7 arf19 変異体芽生えの地上部を切断した一次根では、切断傷害による根の形成が観察されず、オーキシンの蓄積やWOX11 の発現も見られなかった。しかし、地上部切断部位からオーキシンを供給することで切断傷害による根の形成が部分的に回復した。arf7 arf19 変異体を土壌栽培すると一次根から多くの根が形成され、これにはWOX11 が関与していた。arf7 arf19 変異体は乾燥条件での一次根からの根の形成が促進され、この時にはWOX11 の発現も誘導されていた。ARF7とARF19によるLBD16 の活性化は、側根原基形成における重要なステップとなっていることが知られている。lbd16-2 機能喪失変異体は、不定根形成能力が低下しており、側根形成能力も幾分低下していた。したがって、LBD16WOX11 を介した根の形成とWOX11 を介さない根の形成の両方に関与していることが示唆される。LBD16 遺伝子のプロモーター領域にはWOX結合シスエレメント(TTAATGG)が2つ含まれており、クロマチン免疫沈降(ChIP)解析からWOX11タンパク質がLBD16 遺伝子プロモーター領域に結合することが確認された。また、WOX11はLBD16 の発現を活性化した。LBD16-GUS融合タンパク質をLBD16 プロモーター制御下で発現するコンストラクト(LBD16pro・LBD16-GUS )および2つのWOX結合部位が変異したLBD16 プロモーター制御下で発現するコンストラクト(mLBD16pro・LBD16-GUS )を導入した形質転換体の葉切片でのGUS発現を見ると、LBD16pro・LBD16-GUS 導入個体では不定根原基の形成とともにGUS活性が誘導されたが、mLBD16pro・LBD16-GUS 導入個体ではGUS活性は殆ど検出されなかった。また、LBD16pro・LBD16-GUS 導入個体でWOX11-SRDX を過剰発現させるとGUS活性は検出されなくなった。これらの結果から、WOX11は不定根原基の形成過程においてLBD16 の転写活性化因子として作用していると考えられる。一方、培地上での一次根からの側根形成過程において、LBD16pro・LBD16-GUS 導入個体、mLBD16pro・LBD16-GUS 導入個体、WOX11-SRDX を過剰発現させたLBD16pro・LBD16-GUS 導入個体ともに側根原基形成時にGUS活性が検出された。したがって、WOX11は側根形成過程においてはLBD16 の発現を制御していないことが示唆される。以上の結果から、不定根形成においてはWOX11が、側根形成においてはARF7/19がそれぞれの始原細胞でのLBD16 の発現を活性化し、原基の発達を誘導していると考えられる。したがって、不定根形成と側根形成は最初の発達過程が違っており、WOX11 は2つの根形成タイプを区別する分子マーカーとなりうると考えられる。

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論文)フィトクロム相互作用因子による避陰反応誘導機構

2017-10-20 05:40:32 | 読んだ論文備忘録

Phytochrome-interacting factors directly suppress MIR156 expression to enhance shade-avoidance syndrome in Arabidopsis
Xie et al. Nature Communications (2017) 8:348.

DOI: 10.1038/s41467-017-00404-y

植物は、近接する植物の陰になると避陰反応(SAS)を起こして光を得るために成長パターンを変化させる。この過程には、フィトクロム相互作用因子(PIF)が関与しており、シロイヌナズナpif 機能喪失変異体の芽生えは植物の陰になることによって誘導される胚軸伸長が抑制される。一方、PIF を過剰発現させた芽生えは、胚軸や葉柄が伸長して、恒常的にSASを示す。中国農業科学院バイオテクノロジー研究所Wang らは、PIFPIF1PIF3PIF4PIF5 )を過剰発現させたシロイヌナズナ成熟個体は、ロゼット葉数とロゼットからの分枝数が減少し、葉柄が長く、葉身が小さくなり、花成が早くなることを見出した。一方、pif1 pif3 pif4 pif5pifq )四重変異体は、PIF 過剰発現系統(PIF-OE )とは逆の表現型を示した。したがって、PIFは成熟個体においてSASを正に制御していることが示唆される。夜の前に15分間遠赤色光(FR)を照射する(EOD-FR)処理は、近接植物の陰となることと同じ表現型の変化を引き起こす。野生型植物と比較して、PIF-OE 成熟個体はEOD-FR処理に対する感受性が低く、pifq 変異体は感受性が高くなっていた。シロイヌナズナMIR156B を過剰発現させた系統(MIR156-OE )は、ロゼット葉数が増加し、ロゼットからの分枝が増加し、葉が大きくなり、草丈が低くなる。また、MIR156 の発現量が低下したMIM156 形質転換体は逆の表現型を示す。したがって、MIR156-OE の表現型はSASが低下した個体と類似している。MIR156-OE をEOD-FR処理すると、野生型と同じように、ロゼット葉数と分枝数が減少し、葉が小さくなった。また、MIR156-OE は、EOD-FR処理による草丈や葉柄の伸長の割合が野生型よりも高くなった。これらの結果から、MIR156 の過剰発現は通常の高R:FR光条件でのSASを低下させ、陰に対する感受性を高めていることが示唆される。EOD-FR処理はPIFタンパク質の蓄積量を増加させ、SASのマーカー遺伝子(PIL1HFR1ATHB2CKX5XTR7IAA19 )の発現量を増加させた。一方、成熟MIR156 RNA量はEOD-FR処理をすることで減少し、miR156のターゲットであるSQUAMOSA-PROMOTER BINDING PROTEIN-LIKESPL )ファミリー遺伝子の発現量が増加した。シロイヌナズナの8つのMIR156 遺伝子(MIR156A-H )のプロモーター領域には1つ以上のPIFタンパク質結合部位(G-box、PBE-box)が存在し、酵母one-hybridアッセイの結果、調査したPIF(PIF1、PIF3、PIF4、PIF5)はMIR156BMIR156DMIR156EMIR156FMIR156H のプロモーター領域のG-boxモチーフに結合することが確認され、特にPIF3、PIF5はMIR156EMIR156F と強く結合した。こうした結合はゲルシフトアッセイ(EMSA)やクロマチン免疫沈降(ChIP)-PCRアッセイによっても確認された。p35S:PIF エフェクターとpMIR156:LUC レポーターをベンサミアナタバコで共発現させた試験から、PIFタンパク質はMIR156 遺伝子の発現を抑制することが確認された。また、PIF-OE の成熟MIR156 量は野生型よりも少なく、pifq 変異体では多くなっていた。さらに、miR156のターゲット遺伝子であるSPL 遺伝子の発現量はPIF-OE において増加していた。これらの結果から、PIFタンパク質は幾つかのMIR156 遺伝子の発現を直接抑制していると考えられる。交雑によってPIF5-OE/MIR156-OEpifq/MIR156-OEPIF5-OE/MIM156pifq/MIM156 を作出して各系統のSASを調査した結果、SASの制御においてMIR156 はPIFの下流で作用していることが示された。以上の結果から、シロイヌナズナでは以下のモデルが考えられる。1)植物の陰となることで増加したFR光に応答してフィトクロム(特にphyB)が不活性化して幾つかのPIFタンパク質(PIF1、PIF3、PIF4、PIF5)が安定化して蓄積し、2)蓄積したPIFタンパク質が幾つかのMIR156 遺伝子(MIR156BMIR156DMIR156EMIR156F 、MIR156H )のプロモーター領域のG-boxに結合して発現を直接抑制し、3)miR156のターケットの転写因子遺伝子SPL の発現量が増加して下流のさまざまな遺伝子の発現量が変化することで植物の多くの器官の成長プログラムが変化し、陰に応答した形態の変化を示す。

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論文)野生タバコの花の食稙性昆虫防御機構

2017-10-14 13:55:34 | 読んだ論文備忘録

Flower-specific jasmonate signaling regulates constitutive floral defenses in wild tobacco
Li et al. PNAS (2017) 114:E7205-E7214.

doi:10.1073/pnas.1703463114

植物は食物連鎖の底辺にあり、草食生物による摂食を頻繁に受ける。そのため、植物は摂食から逃れるための戦略を進化させてきた。その中でも最も多様化したものは防御物質による被食回避である。防御物質は恒常的に生産されるものもあるが、防御物質の生産はコストがかかるので、摂食に応答して生産が誘導されたり、植物体内の組織によって変化することがある(最適防御理論)。野生タバコのNicotiana attenuata の花は二次代謝産物蓄積量が葉よりも多いことが知られているが、花の防御応答やその制御についてはあまり知られていない。ドイツ マックス・プランク化学生態学研究所Baldwin らは、N. attenuata の被食葉と発達中の花での6種類の防御物質の量を比較した。その結果、ニコチン、全17‐ヒドロキシゲラニルニナロールジテルペングリコシド類(HGL-DTGs)、フェニルプロパノイドポリアミン抱合体のカフェオイルプトレシン(CP)やジカフェオイルスペルミジン(DCS)は花の方がロゼット葉よりも少ないことがわかった。一方、セスキテルペンの(E)-α-ベルガモテンやトリプシンプロテアーゼインヒビター(TPI)活性は被食葉よりも発達中の花の方が高くなっていた。これらの結果から、葉とは異なり、N. attenuata の花は恒常的に(E)-α-ベルガモテンやTPIといった防御物質を生産して花を摂食から守っていることが示唆される。花は恒常的に被食葉よりも多くのジャスモン酸(JA)やJA-Ileを蓄積していることから、このことが(E)-α-ベルガモテンやTPIの生産と関連しているものと思われる。RNAiによってJA生合成酵素をコードするアレンオキシドシクラーゼ(AOC )遺伝子をサイレンシングさせた系統(ir-aoc )やJA受容体をコードするCOI1 遺伝子をサイレンシングさせた系統(ir-coi1 )では、発達中の花のニコチン、全HGL-DTGs、CP、DCS、(E)-α-ベルガモテン、TPIは対照よりも低くなっていたが、花冠が開いた花ではir-coi1 系統の(E)-α-ベルガモテン量が対照よりも高くなっていた。花冠が開いたir-coi1 系統の花はジャスモン酸類の含量が対照よりも高いことから、この時期の花の(E)-α-ベルガモテン量はCOI1とは独立したJAシグナルによって制御されているものと思われる。N. attenuata ゲノムには13のJAZ 遺伝子がコードされており、そのうちのNaJAZi は花のみで検出され、特に発達初期の雌ずい群、花冠、花糸で転写産物の蓄積量が高くなっていた。ウイルス誘導遺伝子サイレンシング(VIGS)によってNaJAZi をサイレンシングさせた系統(JAZi VIGS)は、葉での食稙性昆虫に対する応答性に変化は見られなかったが、発達初期の花のJAおよびJA-Ileの蓄積量が対照よりも高く、NaJAZdNaJAZh の発現量が増加していた。JAZi VIGS系統の発達初期の花は、対照と比較して108の遺伝子に発現量の変化が見られ、94遺伝子はNaJAZi のサイレンシングによって発現量が増加していた。発現量が増加した遺伝子は、JA生合成(LOX5、AOS、ILL6、IAR3)、テルペン生合成(TPSs)、フェニルプロパノイドポリアミン抱合体生合成(MYB8、DH29)、に関与する遺伝子、プロテアーゼインヒビター遺伝子(PI )、ディフェンシン遺伝子(DEF1DEF2 )が含まれていた。したがって、JAZiは花の防御調節を行なっていることが示唆される。JAZi VIGS系統の発達初期の花は(E)-α-ベルガモテン含量とTPI活性が対照よりも高くなっていた。しかし、CPやDCSの含量は大きな変化を示さなかった。JAZi VIGS系統の花ではディフェンシンタンパク質量がいずれの発達過程においても高くなっていた。自然環境において、N. attenuata の花はオオタバコガ(Heliothis virescens )の幼虫に摂食される。JAZi VIGS系統を摂食したオオタバコガ幼虫は、対照を摂食した幼虫よりも体重増加が少なく、NaJAZi のサイレンシングは花のオオタバコガに対する抵抗性を高めた。JAZiと同様にJAZjも花での発現量が高いが、JAZjはDEF1TPS38 の発現に影響を及ぼしていなかった。JAZiはMYC2と相互作用をすることから、花でのJA応答はJAZiがMYC2の作用を抑制することによって制御されていることが推測される。そこでVIGSによってMYC2MYC2aMYC2b )をサイレンシングさせた系統(MYC2 VIGS)の花を解析したところ、TPI活性、(E)-α-ベルガモテン含量、ディフェンシン含量が低下していた。シロイヌナズナでは、JAZタンパク質はアダプタータンパク質のNINJAと相互作用をしてコリプレッサーのTOPLESSをリクルートする。NaNINJAは殆どのNaJAZと相互作用を示したが、NaJAZiとは相互作用を示さなかった。N. attenuata ゲノムにはNaNINJA との相同性が高いNaNINJA-like が存在し、NaNINJA-likeはNaJAZiやTOPLESSと相互作用をすることが確認された。NaNINJA-like の発現は花において高いことから、花でのNaJAZiによる発現抑制機能に関与していることが示唆される。NaNINJA-like をサイレンシングさせたNaNINJA-like VIGS系統は、発達初期の花でのNaTPS38NaDEF1NaMYB8 の発現量が増加し、(E)-α-ベルガモテン含量とTPI活性が対照よりも高くなっていた。以上の結果から、N. attenuata の花での防御応答は、花に特異的なジャスモン酸シグナル伝達機構によって制御されていることが示唆される。

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論文)ブラシノステロイドによる温度上昇に応答した根の伸長促進

2017-10-10 05:30:38 | 読んだ論文備忘録

Brassinosteroid signaling-dependent root responses to prolonged elevated ambient temperature
Martins et al. Nature Communications (2017) 8:309.

DOI: 10.1038/s41467-017-00355-4

温度は、植物の発芽、成長、花成、ホルモン応答、病害耐性等の様々な過程に影響を及ぼしている。フランス 先端細胞生物学第2研究所(I2BC)Vert らは、長期間温度上昇条件に晒された際の根への影響を調査した。シロイヌナズナ芽生えを21℃もしくは26℃で育成し、一次根の成長を観察したところ、26℃で育成した芽生えの根長は21℃で育成した芽生えよりも40%程度長くなっていた。この根の伸長は、細胞数の増加によるものではなく、細胞の伸長によるものであった。胚軸では、PHYTOCHROME INTERACTING FACTOR 4(PIF4)が直接オーキシン生合成遺伝子YUC8 やTAA1 を活性化してオーキシン量を増加させることで温度上昇による伸長を促進している。そこで、pif4yuc8taa1 の各変異体の一次根の伸長を見たところ、全ての変異体が温度上昇条件で根の伸長促進を示した。したがって、長期温度上昇条件での根の伸長にはPIF4、YUC8、TAA1によるオーキシン生合成は関与していないことが示唆される。長期温度上昇は、根でのオーキシンレポーターDR5::GFP の発現に影響を及ぼさなかった。また、オーキシン受容体の変異体であるtir1tir1/afb2 においても長期温度上昇による根の伸長が観察された。これらの結果から、長期温度上昇条件での根の伸長促進は、胚軸で観察される伸長促進とは異なるものであり、オーキシンに依存していないと考えられる。21℃と26℃で育成した芽生えの根のトランスクリプトームを比較すると、温度上昇によって2681遺伝子の発現が上昇し、2114遺伝子の発現が低下していた。発現上昇する遺伝子には生物ストレスや病害・虫害応答に関連したものが多く、発現低下した遺伝子には酸化ストレスや金属イオン応答に関するものが含まれていた。しかしながら、オーキシンに関連した遺伝子は含まれていなかった。幾つかの最近の研究で、根の成長とブラシノステロイド(BR)が関連していることが示されている。そこで、根において温度上昇で発現制御を受ける遺伝子とBRによる制御を受ける遺伝子を比較したところ、温度上昇で発現量変化する遺伝子のうちの1911はBRによっても発現制御を受けていた。また、BRシグナル伝達の下流に位置する転写因子BRASSINAZOLE RESISTANT 1(BZR1)の直接のターゲットとなっている遺伝子が1302含まれていた。BRは根の分化した細胞の伸長と分裂組織の大きさを調節することで根の成長を制御している。BR生合成が機能喪失した変異体のdet2dwf4 の芽生えは、21℃で育成すると野生型よりも根が短くなるが、温度上昇条件では野生型と同等の根の伸長促進を示した。BR受容体BRASSINOSTEROID INSENSITIVE 1(BRI1)の変異体であるbri1 も、21℃で育成すると野生型よりも根が短いが、温度上昇条件では根が通常条件の2倍近く伸長した。このbri1 変異体の根の伸長促進は、細胞伸長と細胞分裂の両方が促進されてもたらされたものであった。恒常的にBR応答を示すbes1-D 変異体は温度上昇による根の伸長促進が見られなくなっていた。同様に、恒常的にBR応答性を示すbzr1-D 変異体も温度上昇に応答した根の伸長促進が低下していた。BRシグナル伝達を負に制御しているGSK3の3重機能喪失変異体bin2/Atsk2-2/Atsk2-3 も温度上昇による根の伸長促進が低下していた。これらの結果から、BRシグナルは長期温度上昇条件に対する根の応答に負に作用していると考えられる。根の伸長は、短期間の高温処理によっても促進されるが、BRシグナルは、この伸長促進に対しても負の制御を示した。温度上昇条件で育成した植物では、BRシグナル伝達の正の制御因子であるBES1の不活性型であるリン酸化型(P-BES1)の割合が高くなっていた。また、BRシグナルの負のフィードバック制御を受けているBR生合成遺伝子のSTE1/DWF7CPD の発現量が高くなっていた。一方、BRの代謝に関与しているBAS1SOB7 の発現量は減少していた。したがって、温度上昇はBRシグナル伝達を低下させることで根の伸長を促進していることが示唆される。RNA-seq解析では、BRシグナル伝達に関与する主要な因子(BRI1BAK1BES1BZR1 )の温度上昇による転写産物量の変化は観察されなかった。そこで、BRI1タンパク質量を見たところ、温度上昇によって根でのBRI1タンパク質蓄積量が低下しており、この低下は温度上昇条件に移行した12時間後には観察された。BRI1タンパク質はポリユビキチン化されるとエンドサイトーシスによって液胞へ運ばれて分解される。ユビキチン化されない変異型BRI1タンパク質は、温度上昇条件での減少が見られず、変異型BR1を発現させたbri1 変異体は、正常なBRI1を発現させたbri1 変異体よりも温度上昇による根の伸長促進が低下した。以上の結果から、温度上昇はブラシノステロイドシグナル伝達を低下させ、このことが根の伸長促進に関与してると考えられる。

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論文)暗形態形成を制御しているPIF3の分解機構

2017-10-04 22:59:58 | 読んだ論文備忘録

Light-Dependent Degradation of PIF3 by SCFEBF1/2 Promotes a Photomorphogenic Response in Arabidopsis
Dong et al. Current Biology (2017) 27:2420-2430.
DOI:10.1016/j.cub.2017.06.062

植物の芽生えは、地中から地上へ現れると光形態形成を起こし、形態や生理を光環境に適応したかたちに転換する。この過程において、暗形態形成を引き起こす転写因子のPHYTOCHROME-INTERACTING FACTOR 3(PIF3)が光受容体のフィトクロムA(phyA)やphyBと相互作用をしてリン酸化され、ユビキチン-プロテアソーム系によって分解される。PIF3のユビキチン化はLIGHT-RESPONSE BRIC-A-BRACK/TRAMTRACK/BROAD (LRB) E3リガーゼによってなされることが報告されているが、LRBはphyBもユビキチン化する。したがって、LRBは光形態形成の負の制御因子として機能する。そこで、中国 北京大学のChen らは、光形態形成の正の制御因子として機能するPIF3 E3リガーゼの探索を行なった。その結果、エチレンシグナル伝達の負の制御因子として知られているEIN3-BINDING F BOX PROTEIN 1(EBF1)とEBF2が、PIF3の過剰発現による明所育成シロイヌナズナ芽生えの胚軸伸長促進を抑制することがわかった。また、ebf1-3 ebf2-2 二重変異体の明所育成芽生えは胚軸が対照よりも伸長した。そしてこの表現型はpif3 変異を加えることで完全に抑制された。以上の結果から、PIF3は、EBF1/2の下流において、光に対する胚軸の応答を阻害し、EBF1/2はPIF3活性を打ち消すことで光形態形成を促進していると思われる。各種アッセイから、PIF3がEBF1およびEBF2と相互作用をすることが確認された。暗所で育成した芽生えに光を照射すると直ちにPIF3タンパク質量が減少するが、EBF1/2が機能喪失した系統では内生のPIF3も35Sプロモーターで過剰発現させたPIF3も分解速度が減少した。さらに、EBFの過剰発現は、内生PIF3と過剰発現PIF3の光照射後の分解を促進させた。また、プロテアソーム阻害剤MG132の添加はPIF3の分解を阻害した。これらの結果から、EBF1/2はユビキチン-プロテアソーム系によるPIF3の光誘導分解の律速因子であることが示唆される。また、EBF1/2は光照射によって誘導されるPIF3のポリユビキチン化を特異的に促進することが確認された。EBF1もしくはEBF2の過剰発現によるPIF3の光誘導分解は、phyA-211 phyB-9 二重変異体では見られないことから、この過程にはphyAおよびphyBが必要である。さらにフィトクロムとの相互作用に関与するアミノ酸残基を置換したPIF3変異体のPIF3 mAPAmAPBは、野生型のPIF3よりも安定性があり、EBF1/2による分解に対して抵抗性を示した。したがって、EBFによるPIF3の光誘導分解には、PIF3とフィトクロムとの直接の相互作用が必要である。PIF3と活性型フィトクロムとの相互作用は、PIF3のリン酸化を誘導し、この過程は光照射による分解に必須である。PIF3のリン酸化部位に変異が導入されることでPIF3の分解が抑制されることから、PIF3のリン酸化はEBF1/2を介した分解にとって重要であることが示唆される。EBFは暗所においても光照射下においても同じ親和性でPIF3と結合した。また、EBFはリン酸化状態に関係なく同じ結合親和性でPIF3と相互作用を示した。したがって、EBF1とEBF2は、光シグナルやリン酸化状態に関係なくPIF3と結合する。そこで、他のSCF複合体コンポーネントについて調査したところ、CULLIN1(CUL1)とPIF3との相互作用が光照射した場合のみ観察されることがわかった。しかも、この相互作用はEBF1/2に依存していた。これらの結果から、EBF1/2はPIF3と光シグナルと関係なく結合するが、PIF3-EBF1/2のSCF複合体形成は光シグナルによって引き起こされると考えられる。PIF3の恒常的リン酸化型変異体(PIF3 D6)と無リン酸化型変異体(PIF3 A6、PIF3 A20)を用いた解析から、PIF3のリン酸化はSCF複合体形成を促進することがわかった。LRB E3リガーゼはPIF3に加えてphyBも分解のターゲットとしているが、EBF1/2 E3リガーゼはphyBの安定性には関与していなかった。lrb1 lrb2 lrb3 三重変異体芽生えは赤色光照射下において胚軸が野生型よりも短くなり、光感受性が高いが、ebf 変異体芽生えは胚軸が長く、光感受性が低い。lrb123 変異体でのPIF3の分解は強赤色光照射下で弱まり、低赤色光照射下でわずかに分解された。一方、ebf1 ebf2 変異体ではPIF3の分解は殆ど見られなかった。したがって、EBF E3リガーゼは光形態形成に関与するE3として機能して様々な光強度に応答して光シグナル伝達を促進するが、LRB E3リガーゼは主として光受容体に対するE3として機能して強光に応答して光シグナルを低下させると考えられる。以上の結果から、EBF1/2はPIF3をユビキチン化するE3リガーゼであり、光形態形成を促進していると考えられる。今回見出された光照射が誘導するPIF3のユビキチン化は、一般的な基質とF-boxタンパク質との結合の活性化ではなく、基質-F-box複合体とCULLINとの結合の活性化によって引き起こされる初めての例である。

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論文)ネナシカズラの寄生で架橋された宿主植物間での摂食シグナルの伝達

2017-10-01 16:57:21 | 読んだ論文備忘録

Stem parasitic plant Cuscuta australis (dodder) transfers herbivory-induced signals among plants
Hettenhausen et al. PNAS (2017) 114:E6703-E6709.

doi:10.1073/pnas.1704536114

ヒルガオ科 ネナシカズラ属植物は、宿主植物に巻きついて寄生する蔓植物で、宿主の維管束から水や養分、巨大分子を吸収することが知られている。ネナシカズラの蔓は、最初の宿主から更に伸びて周囲の植物にも寄生し、ネナシカズラを介して繋がった植物のクラスターを形成することがある。最近の研究では、ネナシカズラを介して宿主から別の宿主へとウイルスが輸送されることが報告されている。しかしながら、生態学的に有意義なシグナルが宿主とネナシカズラの間でおよびネナシカズラで結ばれた宿主間で伝達されるかは明らかではない。中国科学院 昆明植物研究所Wu らは、ネナシカズラ属のマメダオシ(Cuscuta australis )を用いて、ある宿主での昆虫摂食がマメダオシで繋がった摂食を受けていない他の宿主に防御応答を誘導させるかを調査した。マメダオシの寄生によって繋がった2株のダイズの一方の葉をハスモンヨトウ(Spodoptera litura )の幼虫に24時間摂食させ、摂食を受けた葉(L葉)、摂食を受けたダイズの無摂食の葉(S1葉)、マメダオシで繋がった摂食を受けていないダイズの葉(S2葉)、マメダオシの蔓を収穫してRNA-seq解析を行なった。その結果、対照と比較してL葉では904遺伝子の発現に変化(820遺伝子が増加、84遺伝子が減少)しており、S1葉では655遺伝子の発現量変化(519遺伝子が増加、136遺伝子が減少)が見られ全身性のシグナル伝達が見られた。また、S2葉では566遺伝子の発現量変化(283遺伝子が増加、283遺伝子が減少)が見られ、マメダオシの架橋は摂食によって誘導された全身性シグナルを第2の宿主へ移行しうることが示唆される。発現量が変化したL葉遺伝子の90%、S1葉遺伝子の80%は発現誘導される遺伝子であったが、S2葉で発現誘導される遺伝子は50%程度であった。発現量変化する遺伝子は殆ど重複しておらず、L葉では703遺伝子、S1葉で362遺伝子、S2葉で353遺伝子はそれぞれの葉で特異的に変化する遺伝子であり、49遺伝子のみが共通の制御を受け、そのうち7遺伝子は発現量変化の方向が3者で異なっていた。しかし、トリプシンプロテアーゼインヒビター(TPI)をコードしているGlyma09g28310Glyma16g33710 はL葉、S1葉、S2葉の3者で発現量が増加していた。したがって、マメダオシで繋がっている全てのダイズで摂食に応答した防御応答が増加していると思われる。L葉では、ジャスモン酸(JA)生合成、ジビニルエーテル生合成Ⅱ、13-LOXおよび13-HPL経路の3つの経路の遺伝子発現が高くなっており、S1葉ではセルロース生合成、JA生合成、アスパラギン生合成の3つの経路、S2葉ではグリセロール分解Ⅰとセルロース生合成の経路の発現が高くなっていた。そして3種の葉ともモノテルペン生合成経路の発現が変化していた。モノテルペンは摂食昆虫の捕食者を誘引することで間接的防御として機能していると思われる。S2葉で発現が高まった経路のうち、グリセロール分解Ⅰ以外の殆ど全てがS1葉でも見出されており、S1葉とS2葉は類似した防御応答を示すことが示唆される。マメダオシの蔓のRNA-seq解析では、L葉摂食後に140遺伝子で発現量変化(79遺伝子が増加、61遺伝子が減少)しており、その中にはロイシンリッチリピートタンパク質、チトクロムP450、カルシウム結合タンパク質、タンパク質キナーゼが含まれていた。また、変化の見られた代謝経路は一次代謝に関連するものであった。これらの結果は、異なる宿主を繋ぐマメダオシの架橋は、摂食を受けていない宿主に遺伝子発現の変化を誘導する新しいタイプの植物間全身性シグナル伝達機構であることを示唆している。ハスモンヨトウによるL葉摂食の48時間後、S2葉のTPI活性は対照よりも40%高くなっており、摂食に対する抵抗性が増加していた。植物は傷害や摂食に応答して揮発性有機化合物を放出し、そのような物質の幾つかは周囲の植物に抵抗性反応を誘導することが知られている。そこで、L葉からの空気伝達シグナルがS2葉に防御応答を誘導させている可能性を排除するために、マメダオシが寄生してはいるが蔓の架橋で繋がってはいない2株のダイズの一方を摂食させ、RNA-seq解析を行なった。その結果、マメダオシによる架橋で繋がっていないダイズの間では摂食されていない宿主でのTPI活性や抵抗性の増加は検出されなかった。したがって、植物間での抵抗性シグナル伝達は空気伝達しているのではないと考えられる。マメダオシで架橋される宿主が異なる植物種である場合にシグナル伝達が起こるかを見るために、シロイヌナズナ(アブラナ科)とタバコ(ナス科)をマメダオシで架橋し、シロイヌナズナを摂食させたところ、タバコのTPI活性は対照と比べて8倍増加し、ハスモンヨトウに対する抵抗性も高くなっていた。同様に、ダイズ(マメ科)と野生トマト(Solanum pennellii 、ナス科)をマメダオシで架橋してダイズを摂食させたところ、野生トマトのPI-Ⅱ 転写産物量が増加した。全身性防御応答にJAが関与しているとされているので、シロイヌナズナのJA生合成酵素遺伝子AOS の変異体dde2-2 とタバコをマメダオシで架橋し、シロイヌナズナに傷害を与えてタバコの遺伝子発現量変化を見た。野生型のシロイヌナズナとタバコを架橋した場合には、傷害処理によって1342のタバコ遺伝子が発現量変化(981遺伝子が増加、361遺伝子が減少)し、TPIをコードする3遺伝子の発現量が増加したが、dde2-2 変異体と架橋した場合には404遺伝子のみが発現量変化(191遺伝子が増加、213遺伝子が減少)し、発現量変化したTPIコード遺伝子は1つだけだった。また、dde2-2 変異体を摂食させても架橋したタバコに摂食に対する抵抗性は付与されなかった。これらの結果から、マメダオシによる架橋は昆虫の摂食によって誘導された全身性シグナルを同種および異種の宿主間で伝達し、この植物間シグナル伝達は架橋されているすべての宿主に昆虫摂食に対する準備刺激となることが示唆される。さらに、JA経路は全身性シグナルの誘導や維持にとって重要であり、複数の移動性のシグナルがマメダオシを介して植物間を移動していると思われる。ナス科植物の多くは昆虫の口腔分泌物(OS)を受容して強力に防御応答を活性化させる。そこで、2株のタバコをマメダオシで架橋し、一方のタバコに傷害もしくは傷害+OSの処理をして無処理のタバコでのTPI の発現を見た。その結果、傷害のみを与えてもTPI 転写産物量は増加したが、傷害+OSによって転写産物量はさらに増加することがわかった。したがって、植物間での全身性シグナル伝達は昆虫のOSに含まれるエリシターを受容して増加し、ネナシカズラを介して他方の宿主の防御応答を活性化させることができると考えられる。マメダオシを介したシグナルがどのくらいの速度で伝達されるかを見たところ、マメダオシで架橋した2株のシロイヌナズナの一方に傷害を与えた30分後には他方での傷害誘導遺伝子(ZAT12WRKY40WRKY53 )の発現が検出された。同様に、傷害+OS処理したタバコとマメダオシの架橋で繋がったシロイヌナズナは、処理45分後にWRKY40 発現量が10倍に増加した。したがって、全身性シグナルは比較的速い速度、およそ1cm/分で宿主間を移動していると考えられる。自然状態では、複数のネナシガズラが複数の宿主に寄生してクラスターを形成している。そこで、5株のマメダオシの架橋で6株のシロイヌナズナ(A1-A6)を繋ぎ(全長100cm程度)、最初の宿主(A1)に傷害を与えて傷害誘導遺伝子の発現量を調査した。その結果、90分後の4番目の宿主(A4)の転写産物の増加量は45分後の2番目の宿主(A2)での転写産物量と同程度になっており、90分後にはA2の転写産物量は減少していた。したがって、応答は繋がっている植物を介して波動として伝播することが示唆される。6番目の宿主においても転写産物量の変化が検出されたので、マメダオシを介した植物間シグナルは100cmは伝達できると考えられる。A6をタバコに変え、A1をハスモンヨトウに摂食させたところ、タバコのTPI活性や摂食に対する抵抗性が増加していた。以上の結果から、マメダオシの寄生によって架橋された宿主植物は、昆虫の摂食を受けた植物から受けていない植物へと全身性シグナルが伝達されることが示された。ネナシカズラの寄生は宿主植物にとっては負の影響をおよぼすが、状況によっては生態学的に有用な情報を提供することもありうると推測される。

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