Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)子葉と胚軸の光応答成長制御

2016-06-30 19:16:08 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis SAURs are critical for differential light regulation of the development of various organs
Sun et al. PNAS (2016) 113(21):6071-6076.

doi:10.1073/pnas.1604782113

暗所で育成したシロイヌナズナ芽生えを明所に移すと、子葉は展開し、胚軸は伸長が抑制される。中国 北京大学のChen らは、器官特異的な光応答に関与している遺伝子を解析するために、シロイヌナズナ暗所育成芽生えに光照射した後の子葉と胚軸での遺伝子発現の変化を網羅的に調査した。器官特異的光応答遺伝子群(OLRs)のうち、子葉のみで光に応答する遺伝子(OLR1)、胚軸のみで光に応答する遺伝子(OLR2)、子葉と胚軸で逆の応答をする遺伝子(OLR3)の3つのグループについて詳細な解析を行なった。これら3つのグループとも、ホルモン刺激に応答する遺伝子が多く含まれており、それらのうち37%はオーキシン経路に関与するものであった。特にOLR2で発現量が低下する遺伝子はオーキシン刺激に応答する遺伝子が多く含まれていた。オーキシンに関連した器官特異的光応答遺伝子では、Small Auxin Up RNASAUR )遺伝子が特に多く含まれていた。SAUR ファミリー遺伝子は、シロイヌナズナには79遺伝子あり、これらすべてのSAUR 遺伝子の発現パターンを解析すると4つのクラスに分類された。クラス1は子葉では光に応答して発現量が増加するが、胚軸では光応答を示さない。クラス2は光に応答して子葉で発現量が増加するが、胚軸では減少する。クラス3は光に応答して胚軸で発現量が減少するが、子葉では一定の発現を維持する。クラス4は子葉、胚軸ともに常に発現量が一定となる。クラス2の遺伝子は子葉と胚軸で光に応答して逆の制御がかかるので興味深い。また、このような遺伝子は芽生え全体を解析した場合には光応答遺伝子としては同定されないと思われる。SAUR 遺伝子の80%はこの4つのクラスに分類され、クラス1~3に分類される32のSAUR 遺伝子をlirSAURlight-induced in cotyledons and/or repressed in hypocotyls SAUR )と命名した。クラス1、2、3に分類される遺伝子として、それぞれSAUR14SAUR50SAUR65 を選び、これらを過剰発現させた形質転換体芽生えの表現型を観察した。いずれの過剰発現個体も暗所育成3日目の胚軸が野生型よりも長く、さらに育成すると子葉が開いた。また、SAUR50SAUR65 の過剰発現個体は子葉が野生型よりも大きくなっていた。明所で育成した形質転換体は、野生型よりも胚軸が長く、SAUR50SAUR65 の過剰発現個体の子葉は野生型よりも大きくなった。過剰発現個体の子葉や胚軸の表皮細胞は野生型のものよりも大きいことから、lirSAURは細胞拡張を促進することで子葉や胚軸の成長を促進していると考えられる。こられの結果から、lirSAURは暗所と明所の両方で子葉と胚軸の成長を促進していることが示唆される。クラス2遺伝子のSAUR50 と、この遺伝子と発現パターンが類似しているクラス2遺伝子のSAUR16 とをCRISPR/Cas9でゲノム編集したsaur50saur16 二重変異体の暗所育成芽生えは、野生型よりも胚軸が短く、明所育成芽生えの子葉は野生型よりも小さくなった。また、暗所から明所へ移した際の子葉の展開が遅かった。光照射による各器官のオーキシン量の変化を見たところ、子葉では僅かに増加し、胚軸では減少していた。また、暗所育成芽生えをIAA処理したところ、lirSAUR 遺伝子の発現は胚軸のみで誘導され、子葉では誘導されなかった。これらの結果から、子葉でのlirSAUR の光照射による発現誘導はオーキシン以外のシグナルによって引き起こされ、胚軸ではオーキシンがlirSAUR の発現を正に制御していると考えられる。芽生えを暗所から明所へ移すと胚軸でのSAUR50SAUR65 の発現は速やかに減少するが、オーキシンアナログのピクロラムをを添加すると発現量の減少が緩やかになり、胚軸は対照よりも長くなった。したがって、オーキシン量の低下が光照射による急速なlirSAUR の発現量低下と胚軸身長阻害に関与していると考えられる。しかし、オーキシンを添加しても光照射による胚軸でのlirSAUR 発現量の低下は見られることから、光照射によるlirSAUR 発現はオーキシンによって部分的に制御されるが、胚軸においてSAUR を特異的に発現抑制する別の機構が存在すると考えられる。ChIP-qPCRアッセイから、光形態形成の抑制因子として作用するフィトクロム相互作用因子(PIF)のPIF3とPIF4は、SAUR14SAUR50SAUR65 のプロモーター領域に結合することがわかった。また、pif1pif3pif4pif5pifq )変異体の暗所育成芽生えでは、子葉でのSAUR14SAUR50SAUR65 の発現量が増加し、胚軸での発現量が減少していた。よって、PIFは暗所育成芽生えの子葉でのlirSAUR の発現を抑制し、胚軸では発現を促進していることが示唆される。このことは、暗所育成pifq 変異体芽生えは子葉が展開、拡大して胚軸が短くなることと一致している。pifq 変異体の胚軸が短い表現型は、lirSAUR を過剰発現させることによって部分的に回復した。したがって、PIFがlirSAUR 遺伝子のプロモーターに直接結合して、子葉や胚軸での発現を直接制御していることが示唆される。以上の結果から、以下の作業モデルが考えられる。子葉では、PIFがlirSAUR のプロモーターに結合して暗所での発現を抑制しているが、光照射によってPIFが分解されると抑制から解放されてlirSAUR 転写産物が蓄積し、子葉の拡張が促進される。胚軸では、PIFと高濃度内生オーキシンが暗所でのlirSAUR の発現を活性化し、蓄積したlirSAURが胚軸の伸長を促進する。光照射によってPIFが分解され内生オーキシン量が減少することでlirSAUR 転写産物量が減少し、胚軸伸長が減速する。

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植物観察)箱根

2016-06-26 20:43:43 | 植物観察記録

箱根へ行ってきました。箱根のバイケイソウはいよいよ開花が始まりました。今年の調査は、標高の異なる3ヵ所の群生地を中心に行なっているのですが、一番低い標高940mの群生地では花成した4株とも開花しており、5~8分咲となっていました。2番目の標高1060mの群生地では20株の花成個体があるのですが、一部の個体はまだ1輪も花を咲かせていませんでした。そして最も標高の高い1100mの群生地では15株の花成個体のうち開花した花をつけているのは1株だけでした。いずれの群生地も成育環境に大きな違いは見られないので、開花状況の違いは標高の違いなのかもしれません。この時期に開花している花の殆どが両性花でした。

花成しなかったバイケイソウは朽ちて溶けてしまいました

 

標高の低い群生地のバイケイソウは花序の半分以上が開花し、独特の臭気を発していました

 

この時期開花している花は大部分が両性花でした

 

標高の高い群生地では開花していない個体が大部分でした

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論文)極長鎖脂肪酸によるカルス化の抑制

2016-06-22 22:36:07 | 読んだ論文備忘録

Very-long-chain fatty acids restrict regeneration capacity by confining pericycle competence for callus formation in Arabidopsis
Shang et al. PNAS (2016) 113:5101-5106.

doi: 10.1073/pnas.1522466113

植物組織培養における植物体再生の初期過程は、カルスと呼ばれる分化多能性を有した細胞塊の誘導から始まることがある。カルスは植物体の組織片をオーキシンを多く含むカルス誘導培地(CIM)で培養することで形成され、シロイヌナズナを用いた研究から、CIMでのカルス誘導にはオーキシン応答因子ARF7、ARF19の下流において作用しているLATERAL ORGAN BOUNDARIES DOMAIN(LBD)転写因子が関与していることが報告されている。ARF7、ARF19はAux/IAAタンパク質のIAA14と相互作用をし、IAA14の安定化変異体solitary-rootslr )は主根の根端分裂組織以外はCIM上でのカルス誘導が見られない。中国科学院 植物研究所Hu らは、slr 変異体をEMS処理した集団からCIMでカルス誘導するcallus formation-relatedcfr )変異体を複数単離した。そのうちの3系統は類似した表現型を示し、遺伝解析から単遺伝子の劣性変異であることが判明したことから、これらをcfr1-1cfr1-2cfr1-3 と命名した。cfr1 変異体の芽生えはCIM上で主根全体がカルス化するが、ホルモンを含まない培地上ではslr 変異体と同様に側根が形成されず、オーキシン添加による側根形成誘導も見られない。土壌育成したcfr1 変異体は、ロゼット葉が小さく、花序茎が短く、頂芽優勢が強まるといったslr 変異体と類似した表現型を示した。これらの結果から、CFR1 の変異はslr 変異によって阻害されているカルス形成能を回避させていることが示唆される。cfr1 変異体、slr 変異体、野生型の根は、細胞層の構成は同じであり正常な構造をしている。これらの芽生えをCIMで培養すると、野生型では側根の始原細胞群のように一定の間隔で内鞘細胞からカルス形成が起こるが、cfr1 変異体の内鞘細胞は根の全域で細胞が分裂して連続してカルス層を形成した。内鞘細胞のマーカー遺伝子であるJ0121の発現は、CIMへ移植する前のcfr1 変異体、slr 変異体では野生型と同等だが、CIMで培養するとslr 変異体では発現が維持され、野生型では始原細胞群様の構造が形成されたところから徐々に消失し、cfr1 変異体では内鞘全域で発現が消失した。これらの結果から、cfr1 変異体のカルスは内鞘細胞から形成され、cfr1 変異体の内鞘細胞はカルス形成課程への移行能が高いことが示唆される。根分裂組織で発現するマーカー遺伝子の解析から、cfr1 変異体由来のカルスは野生型のカルスと同様に根分裂組織の特性を有していることがわかった。cfr1 変異体由来のカルスをシュート誘導培地(SIM)に移植すると不定芽を形成した。cfr1-1 遺伝子の塩基配列を解読したところ、3‐ケトアシルCoAシンターゼ(KCS1)遺伝子の開始コドンから1472番目のGがAに置換し、KCS1タンパク質の491番目のGlyがAspに置換することがわかった。cfr1-2 変異体、cfr1-3 変異体のKCS1 遺伝子もコード領域にアミノ酸置換を生じる塩基置換が起こっていた。cfr1 変異体のKCS1 遺伝子の発現量は野生型と同等であった。cfr1-1 変異体で野生型KCS1 ゲノムを発現させることで根のカルス形成表現型が完全に抑制された。これらの結果から、KCS1 遺伝子の変異がcfr1 変異体で観察されるカルス形成表現型をもたらしていると考えられる。cfr1 変異体と野生型とを交雑してslr 変異を欠いたkcs1 変異体やKCS1 遺伝子にT-DNAが挿入されて機能喪失した変異体の芽生えは、CIMで培養した際の主根のカルス形成能が高くなっていた。これらの変異体の側根形成は正常であり、slr 変異体でのKCS1タンパク質の蓄積は野生型と同等であることから、KCS1による内鞘のカルス形成能の制御はSLRによる側根形成制御とは別のものであると考えられる。KCS1は脂肪酸エロンガーゼ複合体の一部であり、極長鎖脂肪酸(VLCFA)生合成の律速過程を触媒している。kcs1 変異体やkcs1 slr 変異体の飽和VLCFA(C18:0、C20:0、C22:0、C24:0)量は野生型やslr 変異体の30-60%程度となっていた。野生型植物やslr 変異体の根をVLCFA生合成の阻害剤であるメタザクロールを添加したCIMで培養すると、kcs1 変異体やksc1 slr 変異体の内鞘で観察されるようなカルス形成する表現型を再現した。C16:0脂肪酸以外のVLCFAを添加することでkcs1 変異体のカルス形成能はほぼ完全に抑制された。脂肪酸エロンガーゼ複合体の骨格タンパク質をコードするPASTICCINO1PAS1 )のT-DNA挿入変異体pas1-4 の芽生えをCIMで育成すると、kcs1 変異体のようにカルス形成能が高い表現型を示した。したがって、VLCFAは内鞘のカルス形成能を抑制する作用があると考えられる。kcs1 変異体やpas1-4 変異体の胚軸や子葉もCIMで培養した際のカルス形成能が野生型よりも高く、VLCFAは地上部器官のカルス形成能に対しても効果があることが示唆される。VLCFAは側根形成におけるオーキシンの極性輸送を制御していることが報告されていることから、DR5:GFPPIN1:GFP をレポーターに用いて根のオーキシン蓄積を見たが、kcs1 変異体、kcs1 slr 変異体と野生型やslr 変異体との間で差異は見られなかった。同様に、SLR-ARF7/ARF19のターゲットであるLBD16LBD17LBD18LBD29 のオーキシンによる発現誘導もkcs1 変異の有無による違いは見られなかった。したがって、VLCFAによる内鞘のカルス形成能の制御は内生オーキシンの安定性や蓄積によるものではないことが示唆される。CIMで誘導されるカルス形成において、Aberrant Lateral Root Formation 4(ALF4)が重要であることが報告されている。kcs1 変異体、kcs1 slr 変異体のALF4 発現量は野生型、slr 変異体よりも2倍高くなっていた。また、ALF4 の発現量は野生型とslr 変異体で同等であることから、ALF4 の発現量変化はkcs1 変異によるものであると考えられる。また、野生型植物をメタザクロール処理することでALF4 の発現量が増加し、kcs1 変異体をC16:0以外のVLCFAで処理するとALF4 の発現量が減少した。したがって、VLCFAはALF4 の転写を抑制していると考えられる。alf4 kcs1 二重変異体は内鞘細胞からのカルス形成が抑制され、ALF4 過剰発現形質転換体はCIMでのカルス形成能が高くなり、slr 変異体のカルス形成抑制を部分的に回復させた。これらの結果から、VLCFAによる内鞘のカルス形成能阻害の一部はALF4 転写の制御を介してなされていると考えられる。過去知見において、VLCFAはサイトカイニン生合成を抑制し、エチレン生合成活性化することが示されているが、ALF4 の転写は両植物ホルモンによる影響を受けなかった。シロイヌナズナKCS1 は根、茎、葉、花を含む殆ど全ての組織で発現している。KCS1 プロモーター制御下でKCS1:GFP融合タンパク質を発現させたところ、GFPシグナルは主根の内皮、側根原基の増殖している細胞、出現過程にある側根において見られたが、内鞘細胞では検出されなかった。よって、内皮で合成されたVLCFAが細胞層のシグナルとして作用して内鞘でのALF4 の発現に影響し、内鞘のカルス形成能を制限しているものと思われる。kcs1 変異体においてKCS1 を根の皮層特異的に発現させると、カルス形成能の高い表現型は抑制されたが、細胞層の構成やカルスの内鞘からの形成に関しては変化は見られなかった。以上の結果から、極長鎖脂肪酸は内鞘がカルス化するのを抑制するシグナルとして機能していると考えられる。

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植物観察)箱根

2016-06-12 20:55:08 | 植物観察記録

箱根へ行ってきました。バイケイソウは葉の黄変~褐変が進み、花成しなかった個体は偽茎が倒れ、林床がややすっきりしてきました。花成した個体は茎が伸び、草丈が100cm以上になりました。花序は発達の途上にあり、蕾はまだ硬い状態です。箱根でのバイケイソウの開花は北海道よりも遅く、7月に入ってからになります。ただ、バイケイソウハバチが花芽を食べてしまうので、開花期までにどのくらいの花芽が残っているかが心配です。特に花序の基部に位置する最初に咲く花は両性花なので種子繁殖にとって重要なのですが、幼虫はそういった花芽から先に食べ始めます。ですので、箱根ではバイケイソウハバチによる食害を受けるため、そこそこ花成した年の種子生産量は北海道よりも少ないかもしれません。

 

バイケイソウは葉の黄変~褐変が進んだ バイケソウハバチの食痕も目立つ

 

花序は発達の途中 開花はまだ先になる

 

バイケイソウハバチ若く柔らかい組織を好むようだ

 

ハバチに食べられてしまった基部の花芽

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植物観察)北海道バイケイソウ花成個体調査 野幌

2016-06-07 20:22:22 | 植物観察記録

今日は野幌森林公園でバイケイソウ花成個体調査をしました。公園内の定点観察エリアでは、2013年の一斉開花で400個体以上が花成しましたが、その後は間違って花成したような1~2個体を見かけるだけでした。今年は13個体が花成していました。数としては決して多いとは言えませんが、昨年や一昨年のように間違って咲いたレベルの数ではなく、花成条件がある程度整ってきたので、次の一斉開花の前触れとして花成したものではないかと思われます。旭川や箱根でも花成個体がそこそこ見られていますので、「そこそこ花成」は全国規模のことなのかもしれません。このあと北海道大学植物園の植栽されているバイケイソウを見に行きましたが、こちらは花成していませんでした。ただし、バイケイソウの隣に植えられたシュロソウは花成していました。

 

野幌森林公園でもバイケイソウ花成個体がそこそこ見られました

 

北大植物園で植栽されているバイケイソウ 花成個体はない

 

だたしバイケイソウの隣に植栽されている同属のシュロソウは花成していた

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植物観察)北海道バイケイソウ花成個体調査 旭川

2016-06-06 20:54:50 | 植物観察記録

今日は旭川のフィールドでバイケイソウ花成個体数調査を行ないました。旭川へは、前日に稚内から列車で来たのですが、こちらへ向かう途中の豊富辺りの鉄道林の林床で花成しているバイケイソウをかなり見かけましたので、ここ旭川でもそれなりの数の花成個体があるのではないかと期待して、定点観察をしている群生地へ向かいました。調査の結果、定点観察エリア内では3個体の花成個体が見られました。この調査地では、2013年の一斉開花(257個体開花)以来、2014、2015年と個体数が全くありませんでしたが、今年は花成個体が3個体ありました。調査エリア内にバイケイソウは800個体以上はありますので、数からすれば花成個体は極僅かということになりますが、今まで1個体も花成しなかったことを考えると、まあ良い方なのかもしれません。花序には、蕾を含めて260個程の花がついていましたが、大部分が雄花で、両性花は花序の各分枝の基部に1つあるかないか、花序全体では10個程度でした。花序の各花枝は更に2本の分枝が生じますが、花枝によっては分枝した花序全体が褐変して死んでいることもありました。したがって、花成個体および集団の種子生産量は少なく、今年のような花成個体数が少ない年は種子繁殖による個体数増加にはそれほど大きい寄与はないのかもしれません。

 

 

旭川の調査エリア 右側手前に花成個体が1個体ある

 

開花したばかり?の雄花 葯が花粉で充実している

 

開花してしばらく日にちが経った雄花 葯が褐変し、花粉がなくなっている

 

花枝の中には、さらに分枝した花序全体が褐変して死んでしまっているものもある よって全ての蕾が開花するわけではない

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植物観察)北海道バイケイソウ花成個体調査 稚内・サロベツ

2016-06-05 20:26:27 | 植物観察記録

今日は稚内・サロベツ方面へバイケイソウ花成個体調査に行きました。数年来観察を続けている稚内の海岸草原の群生地では、同一ジェネットから構成されていると推測される29の集団のうち2/3の花成個体が含まれていました。花成した個体数は個々の集団で異なり、数十個体中1個体しか花成していない集団もあれば、半数近くの個体(21/54個体)が花成している集団もありました。大部分の花成集団では、花成している個体数は5個体以下、集団の1~2割が花成しているといった感じでした。このあと「サロベツ湿原センター」で花成個体を観察し、花成したバイケイソウ1個体、花成したコバイケイソウ10数個体を確認しました。ここではコバイケイソウの方が多く生えており、そのため、花成個体数もコバイケイソウが多くなっています。バイケイソウは花序基部から開花が始まっていましたが、コバイケイソウはまだ花序が発達してる最中の個体が多いようでした。湿原センターでは、タテヤマリンドウ、イソツツジ、ワタスゲ、ショウジョウバカマ、ミツガシワの花が見られました。

 

稚内海岸草原の花成個体 残念なことに花序が切り取られている

 

稚内草原の集団の中には花成個体がないものもある

 

サロベツ湿原センターのバイケイソウは花序基部から開花が始まった

 

花成したコバイケイソウ

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植物観察)北海道バイケイソウ花成個体調査 礼文島

2016-06-04 20:06:18 | 植物観察記録

北海道でのバイケイソウ花成個体数調査を実施しました。今日は礼文島の桃岩遊歩道を歩き、花成個体を見て回りました。花成した個体はそこそこあり、100個体以上は花成していました。一斉開花とまではいきませんが、昨年よりも多いような印象を受けました。群生しているエリアで花成個体数の比率が多い/少ないの差はあるように感じられました。花成個体は各個体とも花序が発達中の段階で、開花している花は見られませんでした。遊歩道で見かけた花としては、エゾノハクサンイチゲ、キジムシロ、エゾイヌナズナ、レブンコザクラ、センダイハギ、ハクサンチドリ、ミヤマオダマキ、サクラソウモドキ、クロユリ、レブンキンバイ、ノビネチドリ、チシマフウロなどがありました。

 

今年はバイケイソウ花成個体がそこそこ見られました。

 

群生している場所によっては花成個体数が少ないエリアもありました。

 

どの個体も花序が発達中の段階で、開花した花はありませんでした。

 

このように2株並んで花成している個体は同一ジェネットでしょうか?

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HP更新)箱根の花の写真を掲載しました

2016-06-02 05:11:30 | ホームページ更新情報

久々にHP「Laboratory ARA MASA 」を更新しました。「Wild Flowers 箱根編」に、アセビエンレイソウモミジイチゴヤマウツボツクバネソウフタリシズカヤマボウシハコネギクの8種の写真を追加しました。箱根編では植物を写真撮影した月毎に分けていますので、凡その花の時期がわかるようになっています。これらの写真は箱根でのバイケイソウ観察の片手間に撮ったものなので、生息地は箱根の中でも一部の地域に限定されたものであることをご承知置き下さい。その他、サイト内のレイアウト等を一部変更しました。

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