Arabidopsis WRKY71 regulates ethylene-mediated leaf senescence by directly activating EIN2, ORE1 and ACS2 genes
Yu et al. Plant Journal (2021) 107:1819-1836.
doi: 10.1111/tpj.15433
中国 青島農業大学のDong らは、シロイヌナズナの花成や分枝に関与しているWAKYファミリー転写因子WRKY71の過剰発現系統WRKY71-1D は野生型よりも葉の老化が促進され、機能喪失変異体wrky71-1 は葉の老化が遅延することを見出した。よって、WRKY71は葉の老化制御に関与する転写因子であると考えられる。WRKY71-1D の葉は、野生型と比較してクロロフィル含量や光化学系Ⅱ最大量子収率(Fv/Fm)が低く、老化関連遺伝子(SAGs)の発現量が高くなっており、wrky71-1 の葉では逆の傾向を示した。成長段階が異なる葉においてWRKY71 の発現を見ると、老化していない葉での転写産物量は最も低く、老化が進むにつれて黄化した領域から転写産物量が増加していった。この発現量の変化は老化マーカー遺伝子SAG13 の発現パターンと一致していた。WRKYタンパク質はシスエレメントW-box(TTGACC/T)に結合することが知られており、SAG13 遺伝子のプロモーター領域には15個、SAG201 遺伝子プロモーター領域には4個のW-boxが存在していた。解析の結果、WRKY71はこれらの遺伝子をターゲットとしていることが確認された。WRKY71-1D にsag13 変異もしくはsag201 変異を導入したところ、WRKY71-1D よりも葉の老化が遅延した。このことから、WRKY71 はSAG13 およびSAG201 の発現を直接制御することで葉の老化を加速させていることが示唆される。野生型植物、WRKY71-1D 、wrky71-1 変異体の葉のRNA-seq解析から、WRKY71は様々な葉の老化誘導経路、例えば塩ストレス、暗黒処理、エチレンを介した老化に関与する49個の遺伝子の発現を制御していることが確認された。そこでエチレンによる葉の老化誘導との関連に着目して解析を行なったところ、WRKY71 の発現はACC処理によって誘導されることが判った。切り葉にACC処理をした老化誘導実験では、WRKY71-1D は野生型よりも強く老化が現れたが、wrky71-1 変異体の葉は緑色を維持した。よって、WRKY71はエチレンによる葉の老化を促進していると考えられる。WRKY71-1D ではエチレンシグナル伝達に関与しているEIN2 、EIN3 やエチレンが誘導する葉の老化に関与しているORE1/NAC2 の転写産物量が増加しており、wrky71-1 変異体では減少していた。WRKY71-1D にein2-5 変異、ein3-1eil1-1 変異もしくはnac2-1 変異を導入したところ、WRKY71-1D の葉の老化が遅延した。よって、WRKY71はエチレンシグナルを介して葉の老化を促進していると考えられる。EIN2 遺伝子、ORE1 遺伝子のプロモーター領域にもW-boxが含まれており、各種解析から、WRKY71はEIN2 とORE1 のプロモーター領域に結合することが確認された。よって、WRKY71はエチレンシグナル伝達経路の因子の発現を介して葉の老化を促進していることが示唆される。さらに、ACC合成酵素遺伝子ASC2 のプロモーター領域にもW-boxが含まれており、WRKY71による発現制御を受けていることが判った。よって、WRKY71はASC2 を直接活性化してエチレン合成にも関与している。そこで、WRKY71-1D の切り葉にエチレン合成阻害剤の硝酸銀もしくはアミノエトキシビニルグリシン(AVG)処理をしたところ、WRKY71による老化促進が抑制された。また、WRKY71-1D にacs2-1 変異を導入することでも老化が遅延した。以上の結果から、WRKY71は老化関連遺伝子の発現を直接活性化し、エチレンの生合成やシグナル伝達に関与する遺伝子の発現も活性化して正のフィードバックループを形成することで葉の老化を促進していると考えられる。