Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)オーキシンはABP1を介して微小管の配向を制御する

2015-01-30 23:23:25 | 読んだ論文備忘録

Inhibition of cell expansion by rapid ABP1-mediated auxin effect on microtubules
Chen et al.  Nature (2014) 516:90-93.

doi:10.1038/nature13889

オーストリア科学技術研究所(IST Austria)Friml らは、微小管結合タンパク質4(MAP4)とGFPとの融合タンパク質(MAP4-GFP)を発現するシロイヌナズナを用いて、オーキシン処理の際の細胞内微小管の変化を観察した。根の細胞の微小管は横方向に配向しているが、オーキシン処理をすると10分以内に再編成が起こり、1時間後には縦横行に配向した。同様の変化は黄化芽生えの胚軸においても根よりも高濃度のオーキシン処理をした際に観察された。オーキシンアナログである2-NAA処理では微小管の変化は弱く、酸性pH処理では微小管の配向は大きく崩れて方向の一貫性がなくなった。よって、微小管の配向変化はオーキシン活性に特異的である。根は重力刺激を受けるとオーキシンの不均等分布を引き起こし、上側はオーキシン量が低下して細胞拡張を起こし、下側はオーキシン濃度が増加して拡張が阻害される。その際の微小管の配向変化を見たところ、上側では横方向の配向が維持されていたが、下側では、10分以内に、成長阻害に先立って、微小管が縦方向に配向が変化した。したがって、オーキシン添加も内生オーキシンの分布変化も微小管の縦方向への配向変化促進し、このことはオーキシンによる細胞伸長阻害と関連している。オーキシンの補助受容体TIR1/AFBが機能喪失したtir1-1 afb1-1 afb2-1 afb3-1 四重変異体の根では、微小管は通常の横方向の配向をしていたが、オーキシン処理に対する感受性が失われていた。オーキシン結合タンパク質1(ABP1)のモノクローナル抗体を発現させてABP1を不活性化した系統では、不活性化の程度が増すにつれて微小管の配向に乱れが生じた。一方、オーキシン結合能が低下したabp1-5 変異体では微小管の配向に変化は見られなかった。それにも関わらず、ABP1不活性化系統もabp1-5 変異体もオーキシンに応答した微小管の配向変化は見られなかった。根に重力屈性を与えた場合、ABP1不活性化系統では下側の微小管の配向変化とオーキシンの不均等分布が野生型よりも弱く、重力屈性応答が低下していた。オーキシン処理に対する微小管の応答は非常に速く、この過程は転写によって制御されてはいないと思われる。TIR/AFB経路の阻害剤であるPEO-IAA処理をしてもオーキシンによる微小管の変化が起こることから、この応答経路はABP1が関与していると考えられる。ABP1を過剰発現させた個体はオーキシンの応答性が高く、abp1-5 変異体は応答性が低いことから、オーキシンの微小管の配向変化に対する速く、転写を経ない効果は、ABP1を介したシグナルによって制御されていることが示唆される。ABP1経路に関与している下流の因子のROP6 ATPaseとそのエフェクターであるRIC1、微小管の配向変化に関与している微小管切断因子カタニン(KTN1)の機能喪失変異体について解析したところ、rop6-1 変異体、ric1-1 変異体の根では微小管は正常に横方向に配向していたが、オーキシン応答性が低下していた。ric1-1 変異体でABP1を不活性化させた場合、根の表現型はABP1不活性化系統と類似していたが、微小管の配向はric1-1 変異体と同じであり、RIC1はABP1の下流で作用しているという過去知見と一致している。ktn1 変異体の胚軸ではオーキシンに応答した微小管の配向変化が低下していたが、ktn1 変異体ででABP1を不活性化させると微小管の配向はABP1不活性化系統と同等になり、オーキシンに対して非感受性となった。よって、微小管の配向におけるABP1によるオーキシンシグナル伝達は、Rho GTPaseおよびRICエフェクターを介してKTN1等の因子に作用していると考えられる。以上の結果から、オーキシンは転写を経ずにABP1およびその下流の因子に影響して微小管を横方向から縦方向に数分以内に再編成させ、細胞伸長を阻害していると考えられる。

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論文)葉の概日時計の組織特異性

2015-01-23 13:36:40 | 読んだ論文備忘録

Tissue-specific clocks in Arabidopsis show asymmetric coupling
Endo et al.  Nature (2014) 515:419-422.

doi:10.1038/nature13919

News & Views
Plant science: Leaf veins share the time of day
Maria C. Marti & Alex A. R. Webb  Nature (2014) 515:352-353.

doi:10.1038/nature13936

京都大学遠藤らは、シロイヌナズナの子葉から葉肉、維管束、表皮の主要な3組織を30分以内に分離する手法を開発し、各組織の遺伝子発現プロファイルを4時間毎に調査した。その結果、長日条件で育成した芽生えの維管束においてZT16で高い発現を示す遺伝子群は葉肉での発現量が低く、維管束で発現量が低い遺伝子群は葉肉での発現量が高いことがわかった。葉全体のRNAの約80%は葉肉由来であるので、維管束は葉や葉肉とは逆の遺伝子発現プロファイルを示していることになる。概日時計は複数の連動したフィードバックループで構成されており、朝に発現するフィードバックループ遺伝子は葉肉での発現が高く、夕方に発現するフィードバックループ遺伝子は維管束での発現が高かった。また、葉肉で発現の高い遺伝子は朝に発現し、維管束で発現量の高い遺伝子は夕方に発現する傾向が見られた。葉肉で発現量の高い遺伝子と維管束で発現量の高い遺伝子では遺伝子オントロジーが異なっており、両者の時計は機能的に異なっていることが示唆される。TIMING OF CAB EXPRESSION 1TOC1 )とCIRCADIAN CLOCK ASSOCIATED 1CCA1 )の時計遺伝子プロモーター、維管束特異的SUCROSE-PROTON SYMPORTER 2SUC2 )プロモーター、対照としてのカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターを組み合わせてスプリットルシフェラーゼアッセイを行ない、2つのプロモーターの発現が重なる時間や組織でルシフェラーゼの再構成が起こって発光するtissue-specific luciferase assay(TSLA)法を開発し、発光の変動周期を見たところ、CCA1/CaMV35S TSLAとCCA1/SUC2 TSLAは同一の概日リズムを示したが、TOC1/CaMV35S TSLAはTOC1/SUC2 TSLAよりも周期が早めにずれていた。このことから、維管束での概日時計の制御は特性が葉肉とは異なると考えられる。12時間日長条件で育成した芽生えのTOC1 の日周変動の振幅の程度は維管束と葉全体でほぼ同じだが、連続光下に移行すると、葉全体のTOC1 振幅は3周期目で失われてしまうのに対して、維管束では概日リズムが持続していた。CCA1EARLY FLOWERING 4ELF4 )といった他の時計遺伝子の発現も維管束では振幅が維持されていた。CCA1SUC2 プロモーター制御下で発現させることで維管束の時計を機能阻害させると、TOC1 の振幅が維管束だけでなく葉肉においても失われた。一方、CCA1CHLOROPHYLL A/B BINDING PROTEIN 3CAB3 )プロモーター制御下で発現させて葉肉の時計を機能阻害すると、葉肉でのTOC1 の振幅は失われるが維管束の振幅は維持されていた。したがって、維管束の時計は葉肉の時計に対して支配的あると考えられる。CCA1 を組織特異的プロモーターで発現させた形質転換体のうち、自身のプロモーター(CCA1 )と維管束特異的プロモーター(SUC2 )で発言させた場合、花成遅延を起こし、FLOWERING LOCUS TFT )の発現量が低下した。以上の結果から、シロイヌナズナの概日時計は維管束と葉肉で制御が異なり、維管束の時計は葉肉に対して影響を呼ぼしていることが示唆される。

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論文)側根形成を制御するMADS-Box転写因子

2015-01-16 22:42:58 | 読んだ論文備忘録

MADS-Box Transcription Factor AGL21 Regulates Lateral Root Development and Responds to Multiple External and Physiological Signals
Yu et al.  Molecular Plant (2014) 7:1653-1669.

doi:10.1093/mp/ssu088

中国科学技術大学Xiang らは、シロイヌナズナの根で発現しているMADS-box転写因子の機能を解析するために、AGL21 を35Sプロモーター制御下で過剰発現させた形質転換体とAGL21 遺伝子にT-DNAが挿入された変異体の表現型を観察した。AGL21 過剰発現個体は野生型よりも側根密度が高く、側根長も長くなっていたが、agl21 変異体では側根数が減少し、長さも短くなっていた。しかしながら、一次根の長さは過剰発現個体、野生型、変異体の間で差は見られなかった。AGL21 過剰発現個体は発達初期の側根原基数が野生型よりも多く、agl21 変異体は野生型よりも少なくなっていた。以上の結果から、AGL21は側根の誘導および成長を正に制御していることが示唆される。AGL21 は一次根の中心柱で発現しており、静止中心を含む根端のすべての細胞層や分裂組織で強い発現が見られた。また、側根形成初期の1層から4層の細胞からなる若い原基でAGL21 の強い発現が見られたが、後期過程では発現は見られなくなった。AGL21タンパク質は核に局在していた。AGL21 遺伝子のプロモーター領域には、オーキシン応答エレメント(AuxRE)、アブシジン酸(ABA)応答エレメントlike(ABRE-like)、G-box、GCC-box like、JA応答シスエレメント(JARE)といった様々なシスエレメントが見られ、AGL21 の発現はIAA、MeJA、ABAを処理することによって増加した。IAAやMeJA処理によるAGL21 の発現量の増加は、側根原基形成初期や出現した側根に加えて側根原基形成後期においても見られた。ABA処理では、根端、分裂組織領域、伸長領域においてAGL21 の発現量増加が見られたが、分化領域では発現が見られなくなった。ストレスによるAGL21 発現量変化見たところ、窒素欠乏や硫黄欠乏によって発現誘導が起こり、乾燥やNaCl処理に対しても応答性を示した。これらの結果から、AGL21は様々なホルモンやストレスシグナルに応答して側根形成を制御する重要な転写因子の1つであると考えられる。AGL21 過剰発現個体やagl21 変異体での側根数や側根長の変化は窒素欠乏条件においても見られ、側根伸長に対する影響の方が強く現れた。AGL21 過剰発現個体やagl21 変異体の側根数の差は、培地にIAAを添加することで見られなくなった。また、AGL21 過剰発現個体の根のIAA含量は野生型よりも多く、agl21 変異体は野生型よりも少ないことから、AGL21は内生オーキシン量に影響することで側根発達を制御しているものと思われる。オーキシン応答マーカーとしてDR5:GUS を導入したところ、agl21 変異体では側根原基や若い側根でのGUS活性が低く、AGL21 過剰発現個体では高くなっていた。よって、AGL21は側根原基や側根においてオーキシン蓄積の正の制御因子として作用し、このことによって側根原基誘導や側根成長促進がもたらされていると考えられる。AGL21 過剰発現個体は、オーキシン輸送阻害剤のN-1-ナフチルフタラミン酸(NPA)処理をしても側根形成促進が起こることから、AGL21による側根形成制御はオーキシン極性輸送とは独立したものであると考えられる。根でのオーキシン輸送に関与しているPINAUX1 の発現量にもagl21 変異体とAGL21 過剰発現個体で差は見られなかった。そこで、オーキシン生合成遺伝子の発現を見たところ、野生型とagl21 変異体との間では差は見られなかったが、AGL21 過剰発現個体の根ではYUC1YUC7NIT4AAO1 の発現量が野生型よりも高くなっていた。よって、AGL21は局所的なオーキシン生合成を介して側根や側根原基のオーキシン含量を高めていると思われる。pCYCB1;1::GUS レポーターをAGL21 過剰発現個体やagl21 変異体で発現させた結果から、AGL21は側根原基や側根根端部での細胞分裂活性を正に制御していることが示唆される。以上の結果から、AGL21は外部環境や植物体内部から発せられたシグナルとオーキシンシグナルとを統合して側根原基誘導や側根成長を制御する重要な因子であると考えられる。

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論文)ARGONAUTE1による花序構造の制御

2015-01-09 22:47:52 | 読んだ論文備忘録

AGO1 controls arabidopsis inflorescence architecture possibly by regulating TFL1 expression
Fernández-Nohales et al.  Annals of Botany (2014) 114:1471-1481.

doi:10.1093/aob/mcu132

TERMINAL FLOWER 1TFL1 )は、シロイヌナズナの花序構造を制御している。スペイン 植物分子細胞生物学研究所(IBMCP)Madueño らは、TFL1 遺伝子の発現を制御する因子を探索するために、TFL1 プロモーター制御下でGUSを発現させるコンストラクト(TFL1::GUS )を導入したシロイヌナズナを変異源処理した集団からGUSの発現パターンや形態に異常の見られる変異体を選抜した。この変異体は非常に小さく、細葉で葉柄がなく、花序は小さく密集し、糸状で小型の花をつけた。moss と命名したこの変異体は花序茎や小花柄に糸状の器官が形成され、これは茎生葉や包葉が変化したものと考えられる。moss 変異体は花の器官の数が減少し、花弁と雄ずいが糸状器官に変化し、心皮は融合していなかった。よって、moss 変異体は不稔となる。moss 変異体のロゼット葉数は野生型とほぼ同じだが、花序の側枝の数は野生型の約2倍形成された。moss 変異体の茎頂でのTFL1::GUS の発現は栄養成長期においても花序形成期においても野生型よりも強く、花では異所的な発現が見られた。また、TFL1 転写産物量は野生型よりも多くなっていた。moss 変異体はARGONAUTE1AGO1 )遺伝子の第18エクソンの最初の塩基がGからAに置換しており、AGO1タンパク質においてターゲットmRNAの分解に関与しているPIWIドメイン内のGly残基がAsp残基に置換していることがわかった。対立性検定からmoss 変異がAGO1 遺伝子の変異によることが確認され、この変異体をago1-103 と命名した。moss/ago1-103 変異体のようにPIWIドメインの保存されたアミノ酸が置換を起こしているago1-26 変異体は、moss/ago1-103 変異体に類似した表現型を示し、TFL::GUS の異所的な発現が見られた。これらの結果から、AGO1TFL1 の発現および花序の構造を制御していると考えられる。moss/ago1-103 tfl1-2 二重変異体やago1-26 tfl1-1 二重変異体は、それぞれのago1 変異体と比較して葉数や花序側枝数が減少していた。よって、tfl1 変異はago1 変異体の表現型を部分的に抑制している。これらの結果から、ago1 変異体の花序側枝の増加はTFL1を介して引き起こされており、AGO1はTFL1 の発現を抑制することで花序の構造を制御していると考えられる。ただし、AGO1はTFL1 転写産物の直接の制御は行なっていないと考えられる。

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論文)DE-ETIOLATED1による暗所での光形態形成抑制

2015-01-06 20:20:24 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis DE-ETIOLATED1 Represses Photomorphogenesis by Positively Regulating Phytochrome-Interacting Factors in the Dark
Dong et al.  Plant Cell (2014) 26:3630-3645.

doi:10.1105/tpc.114.130666

シロイヌナズナの核局在タンパク質DE-ETIOLATED1(DET1)は、暗所における光形態形成を抑制する因子として機能しているが、詳細な制御機構は明らかとなっていない。中国 北京大学のChen らは、DET1は転写因子と相互作用をすることで光形態形成を抑制しているのではないかと考え、光形態形成を抑制する転写因子として知られているフィトクロム相互作用因子(PIF)との相互作用を酵母two-hybridアッセイで検定した。その結果、DET1タンパク質の26番目から87番目までのペプチド断片は光形態形成の抑制因子として機能するPIF1、PIF3、PIF4、PIF5および種子休眠や避陰反応に関与するとされるPIF6、PIF7と相互作用をすることがわかった。次に、PIFタンパク質のどのドメインがDET1との相互作用に関与しているかを解析するために、PIF3タンパク質の各ドメインが欠失した変異タンパク質との相互作用を見たところ、活性型phyB結合領域(APB)を欠いた変異PIF3はDET1との相互作用を示さないことがわかった。しかしながら、DET1は単独のPIF3 APBドメインとは相互作用を示さなかった。したがって、PIF3 APBドメインはDET1との相互作用に必要であるが、他にも相互作用に関与する領域が存在すると考えられる。幾つかの試験から、DET1とPIFとの相互作用は生体内でも起こることが確認された。暗所で発芽させたdet1-1 変異体は光形態形成の表現型を示し、PIF3タンパク質量が減少していた。DET1はDNA DAMAGE BINDING PROTEIN1 (DDB1)、CONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENESIS10 (COP10)と相互作用をしてCDD複合体を形成し、この複合体はCULLIN4(CUL4)とともにE3リガーゼを形成することが知られている。暗所育成cul4cs 変異体やcop10 変異体もPIF3タンパク質量が減少していることから、DET1によるPIF3タンパク質量の正の制御はCUL4-CDD複合体を介してなされていると考えられる。pif 単独変異体やpif 四重変異体においてCUL4やDET1のタンパク質量に変化は見られないことから、PIFタンパク質はDET1やCUL4のタンパク質量の制御には関与していないと考えられる。これらの結果から、PIFは光シグナルの伝達においてDET1もしくはCUL4-CDD複合体の下流で作用していることが示唆される。暗所育成det1-1 変異体芽生えではPIF3 転写産物量が減少しており、PIF1PIF4PIF5 転写産物量は野生型と同等であった。PIF3 転写産物量はエチレン処理によって増加することが知られているので、芽生えをエチレン前駆体(ACC)処理をしたところ、det1-1 変異体のPIF3 転写産物量は無処理の野生型と同等にまで増加したが、PIF3タンパク質量は無処理野生型よりも低くなっていた。したがって、DET1によってPIFタンパク質量を正に制御する転写後の機構が存在すると考えられる。det1-1 変異体ではPIF1、PIF4、PIF5のタンパク質量も減少しており、シクロヘキシミド処理をして新規タンパク質合成を阻害するとPIFタンパク質の減少はより早くなった。これらの結果から、DET1は暗所におけるPIFタンパク質の安定性を正に制御していると考えられる。det1-1 変異体をプロテアソーム阻害剤処理をしてもPIF3タンパク質量の増加は起こらないことから、暗所育成芽生えdet1-1 変異体でのPIF3タンパク質の不安定化・分解はユビキチン-プロテアソーム系によって引き起こされているのではないと考えられる。暗所で育成したpif1-1 det1-1pif3-3 det1-1pif4-2 det1-1pif5-3 det1-1 の各二重変異体は光形態形成の表現型が単独変異体よりも強調された。よって、DET1は暗所での光形態形成の抑制に対してPIFの上流で作用していると考えられる。そこで、det1-1 変異体においてPIF を過剰発現させたところ、PIF4 PIF5 を過剰発現させたdet1-1 変異体はdet1-1 変異体よりも胚軸が長くなり、PIF1PIF3 PIF4 を過剰発現させたdet1-1 変異体はdet1-1 変異体と比較して子葉の展開が抑制された。また、芽生えを暗所から光照射下に移すと、PIF を過剰発現させたdet1-1 変異体はdet1-1 変異体よりもアントシアニン蓄積量が少なく、緑化の程度が高くなった。これらの結果からも、DET1はPIFを介して光形態形成を抑制していることが示唆される。暗所育成芽生えを光照射すると3050遺伝子に発現量の変化が見られ、暗所育成したdet1-1 変異体と野生型植物の間では3740遺伝子、pif 四重変異体と野生型植物の間では3775遺伝子に発現量の変化が見られる。光照射とdet1-1 変異の両方で発現量変化の見られる1684遺伝子のうち、940遺伝子(55.8 %)はpif 四重変異によっても発現量が変化する遺伝子であった。940遺伝子のうち、575遺伝子は発現量が増加し、296遺伝子は発現量が減少、69遺伝子は発現量変化が相互で異なっていた。これらの結果から、DET1による光形態形成の抑制はPIFをを介した経路の貢献が大きいと考えられる。光照射、det1-1 変異、pif 四重変異で共通して発現量が増加する遺伝子は、光合成、光刺激、色素合成、細胞の酸化還元制御、グルカン代謝、タンパク質複合体形成、バクテリア耐性、テトラテルペノイド合成に分類されるものが含まれていた。また、共通して発現量が減少する遺伝子は、遠赤色光刺激応答、細胞壁の緩み、有機物質応答、オーキシン刺激応答に分類されるものが含まれていた。よって、DET1はPIFを介して遺伝子発現を制御することで暗所での光形態形成を抑制していると考えられる。

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