Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)一酸化窒素(NO)による一次根成長阻害機構

2011-11-29 05:37:26 | 読んだ論文備忘録

Nitric oxide causes root apical meristem defects and growth inhibition while reducing PIN-FORMED 1 (PIN1)-dependent acropetal auxin transport
Fernandez-Marcos et al.  PNAS (2011) 108:18506-18511.
doi:10.1073/pnas.1108644108

一酸化窒素(NO)は植物の成長や防御応答におけるシグナル分子として機能している。しかしながら、NOの作用機作やターゲットについては不明な点が多い。スペイン サラマンカ大学のLorenzo らは、NOによるシロイヌナズナ一次根の成長抑制機構について詳細な解析を行なった。シロイヌナズナ芽生えにNO供与体であるS-ニトロソ-N-アセチル-L-ペニシラミン(SNAP)を与えると、その濃度に応じて一次根の成長阻害が起こる。ここにNOスカベンジャーの2-(4-ニトロフェニル)-4,4,5,5-テトラメチルイミダゾリン-1-オキシル-3-オキシド(cPTIO)を添加するとNOの作用が部分的に抑制された。他のNO供与体のニトロプルシドナトリウム(SNP)、S-ニトロソグルタチオン(GSNO)やNOガスの添加、内生NO量の増加したchlorophyll a/b binding protein underexpressed 1 /NO overproducer 1cue1 /nox1 )変異体においても同様の一次根成長阻害が観察されることから、NOは根の成長に対して抑制的に作用しているといえる。4,5-ジアミノフルオレセインジアセテート(DAF-2DA)を用いて発芽2日目の野生型芽生えの根の内生NOを可視化したところ、NOによる蛍光は一次根の分裂組織の基部と伸長領域において検出された。発芽7日目野生型芽生えでは、根端部の表皮細胞列、皮層/内皮始原細胞、側根根冠で蛍光が観察された。NOは根端分裂組織の細胞分裂活性を抑制しており、NO処理により根端分裂組織の細胞数の減少と細胞拡張が起こり、根端分裂組織が小さくなっていることがわかった。根端分裂組織の細胞分裂活性はオーキシンによる制御を受けていることから、オーキシン応答DR5 プロモーターによりGUS もしくはGFP を発現させてDR5 活性を見たところ、NO処理やcue1 /nox1 変異体では静止中心(QC)やコルメラ幹細胞(CSC)でのDR5活性が低下しており、これはpin1 変異体と類似していた。放射性同位元素で標識したオーキシンを用いた実験から、cue1 /nox1 変異体では求頂的なオーキシン輸送能力が低下していることがわかった。NO処理は一次根の中心柱や根端分裂組織のPIN1タンパク質量を減少させることが確認され、このことが求頂的なオーキシン輸送の抑制を引き起こしていると考えられる。このNOによるPIN1タンパク質の減少は、一次根のみに限定されており、PIN1 転写産物の減少やプロテアソームを介したPIN1タンパク質の分解によるものではなく、何らかの転写後制御により引き起こされていると考えられる。cue1 /nox1 変異体とpin1 変異体は、QCとその周囲の細胞の組織化の乱れ、根端分裂組織のサイズ、一次根の長さにおいて類似性が見られた。以上の結果から、NOは一次根のPIN1タンパク質量を減少させることで根端部へのオーキシン輸送を低下させ、このことによって根端分裂組織の細胞分裂活性が低下し、成長阻害が引き起こされると考えられる。

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論文)SHORT-ROOTはサイトカイニン量を調節することによって維管束パターンを制御している

2011-11-23 15:55:53 | 読んだ論文備忘録

Genome-Wide Direct Target Analysis Reveals a Role for SHORT-ROOT in Root Vascular Patterning through Cytokinin Homeostasis
Cui et al.  Plant Physiology (2011) 157:1221-1231.
doi:10.1104/pp.111.183178

 シロイヌナズナSHORT-ROOTSHR )はGRASファミリー転写因子をコードしており、根の中心柱で発現して維管束組織の分化や側根形成に関与している。米国 フロリダ州立大学Cui らは、ChIP-chip法によってSHRの直接のターゲットとなる遺伝子の探索を行ない、595のターゲット候補を見出し、ランク付けを行なって200遺伝子のリストを作成した。これらの遺伝子を発現パターンによって分類し、46遺伝子は中心柱での発現量が低下したSHRによって発現抑制される遺伝子に分類された。残りの大部分はSHRによって活性化されて中心柱で発現する遺伝子であり、これらをさらに主な発現部位が静止中心(8遺伝子)、木部(45遺伝子)、内鞘(32遺伝子)である3つのサブクラスに分類した。SHRが木部・師部の分化に関与していることは知られているが、内鞘での役割は明らかとなっていない。そこで、木部極内鞘マーカーのJ0121、師部極内鞘マーカーのS17を用いて野生型とshr 変異体の内鞘を観察した。野生型の根ではJ0121は伸長領域から検出されたが、shr 変異体では成熟領域以降になって検出された。一方、S17はshr 変異体において検出される領域が拡大していた。よって、shr 変異体では師部と木部のバランスが変化しているものと思われる。師部マーカーのS32、木部マーカーのS4を用いた実験からも、shr 変異体では師部が拡張し木部領域が減少していることが確認された。維管束組織の分化はオーキシンとサイトカイニンによって制御されていることから、それぞれのホルモン処理をした際のマーカーの発現パターンを比較したところ、オーキシン(NAA)処理ではJ0121の発現部位が側根が誘導される領域に拡張した以外には大きな変化は見られなかったが、サイトカイニン(BA)処理ではS17とS32の発現領域が拡大し、J0121とS4の発現領域が縮小し、この発現領域変化に対するサイトカイニンの効果は濃度依存的であった。よって、shr 変異体における維管束パターンの変化はサイトカイニン応答性が高まったことによるものと考えられる。そこでサイトカイニン応答のマーカーとしてARR5 遺伝子プロモーターにGUSを連結したコンストラクトを導入してshr 変異体のサイトカイニン応答性を調査した。野生型植物の根ではGUS活性は根冠と中心柱で検出され、成熟領域では検出されなかったが、shr 変異体では根毛を含むすべての細胞で、すべての成長ステージにおいてGUS活性が見られた。維管束パターンの変化がshr 変異体と類似しているscarecrow scr )変異体でのGUS活性野生型よりも僅かに増加している程度であり、SHRによるサイトカイニン応答の変化はSCRとは独立したものであると考えられる。shr 変異体の内生サイトカイニン量は、シュートも根も野生型よりも高くなっており、shr 変異体の維管束パターンの変化の主な原因はサイトカイニン量の上昇によるものであることが示唆される。SHRがサイトカイニン量を直接制御しているか、SHRターゲットリストにサイトカイニンの生合成もしくは異化に関与している遺伝子がないかを調査したところ、サイトカイニンを不活性化するサイトカイニンオキシダーゼをコードするCKX3 が高いランク付けで見出された。SHRが実際にCKX3 遺伝子のプロモーターに結合することがChIP-PCRによって確認され、shr 変異体ではCKX3 の発現量が減少していた。また、CKX3 は主に木部で発現していた。よって、SHRは木部のサイトカイニン量をCKX3を介して低レベルに維持することで維管束パターンを制御していると考えられる。そこで、shr 変異体においてCKX3と機能的に同等なCKX1 を過剰発現させ、師部マーカーS32、師部極内鞘マーカーS17の発現パターンを見たところ、shr 変異体において観察された両マーカーの発現領域の拡大が抑制されていることがわかった。以上の結果から、SHRはサイトカイニン量を調節することによって維管束パターン形成を制御していると考えられる。

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論文)根の水分屈性に関与する因子による側根形成制御

2011-11-21 22:09:59 | 読んだ論文備忘録

Hormonal Regulation of Lateral Root Development in Arabidopsis Modulated by MIZ1 and Requirement of GNOM Activity for MIZ1 Function
Moriwaki et al.  Plant Physiology (2011) 157:1209-1220.
doi: 10.1104/pp.111.186270

植物の根は水分屈性を示し、相対的に水分含量の多い空間へと伸長する性質がある。シロイヌナズナmizu-kussei1miz1 )変異体は根の水分屈性能が欠損しており、MIZ1 遺伝子は機能未知のタンパク質をコードしている。東北大学宮沢らは、MIZ1の機能解明を目的に、MIZ1 cDNAをCaMV35Sプロモーターで過剰発現させた形質転換シロイヌナズナ(MIZ1 OE)を作出して解析を行なった。miz1-1 機能喪失変異体芽生えの根の形態は野生型と同等であったが、MIZ1 OEの根は野生型よりも成長が遅いために短く、側根形成が殆ど起こらなかった。側根原基の数は野生型、miz1-1 変異体、MIZ1 OEの間で殆ど差は見られなかったが、MIZ1 OEは側根原基の発達過程後期にあたるステージⅤから側根出現の段階のものが少なく、ステージⅠからⅣの側根原基の割合が高くなっていた。したがって、MIZ1 の過剰発現は側根原基の誘導には影響していないが側根原基の発達をステージⅠからⅣの段階で遅延・抑制しているものと思われる。MIZ1 OEではステージⅠ、Ⅱの側根原基において異常な垂層分裂が起こり側根原基の細胞列の異常がしばしば見られるが、その後のステージⅢ、Ⅳでは異常分裂は観察されなかった。よって、MIZ1 OEでは側根原基形成のステージⅠ、Ⅱで異常な原基が形成されるために側根形成が停止してしまっており、MIZ1は側根形成の初期過程の制御に関与しているものと思われる。これまでに単離された側根形成に関する変異体の多くは植物ホルモンに対する応答性が変化していることから、MIZ1 OEの根の成長に対する各種ホルモンの影響を調査したところ、サイトカイニンによる根の成長阻害や側根形成阻害が野生型よりも強く表れることがわかった。逆にmiz1-1 変異体はサイトカイニンに対する感受性が低下していた。よって、MIZ1 は根の成長過程でのサイトカイニン感受性を制御しているものと思われる。GFPを付加したMIZ1を自身のプロモーターによって発現させてMIZ1タンパク質の局在を見たところ、一次根の成熟領域においてMIZ1-GFPは全ての細胞層(表皮、皮層、内皮、内鞘を含む中心柱)で検出された。しかし、側根始原細胞、ステージⅡからⅣの側根原基では発現しておらず、ステージⅤ以降に側根原基の内鞘との境界部分で発現が見られた。また、サイトカイニン処理をすることによってステージⅡの側根原基においてMIZ1-GFPの強いシグナルが観察された。MIZ1 OE芽生えをオーキシン(NAA)処理すると、その濃度に応じて側根形成の回復が見られたが、エチレン(ACC)処理では側根形成の回復は起こらなかった。MIZ1 OEの根ではオーキシンの濃度勾配は形成されていたが、内生IAA量は野生型よりも低く、miz1-1 変異体の内生IAA量は僅かに高くなっていた。したがって、MIZ1はオーキシン蓄積の負の制御因子として機能していると考えられる。MIZ1 OEでのオーキシン排出キャリアPIN 遺伝子の転写産物量は野生型と同等であり、PIN1、PIN2の局在にも変化は見られなかった。よって、MIZ1 の過剰発現はPINによるオーキシン輸送活性には影響していないことが示唆される。miz1 とは別に単離された水分屈性変異体のmiz2 は、小胞輸送に関与しているGDP /GTP交換因子(GEF)のGNOMをコードする遺伝子の弱い変異体で、根の成長や側根形成に変化は見られないが、miz2 変異体でMIZ1 を過剰発現させても根の成長や側根形成に変化が生じず、miz2 変異体でのMIZ1-GFPシグナルのパターンやサイトカイニン処理による発現誘導は野生型と同じであった。MIZ1 を過剰発現させたmiz2 変異体の内生IAA量は野生型と同等であることから、MIZ1によるオーキシン蓄積制御にはGNOMが関与していると考えられる。MIZ1 OEにGEF阻害剤のブレフェルジン(BFA)処理をしても側根形成の回復は見られず、MIZ1 の過剰発現は小胞輸送活性に影響していないことが確認された。GNOMはPINタンパク質の細胞膜上の局在に関与しているが、miz2 変異体でのPIN1、PIN2の局在は野生型と同じであることから、miz2 変異体はGEF活性が欠失してはいないと考えられる。したがって、GNOMは、PINタンパク質の輸送以外にも、MIZ1によるオーキシン蓄積制御を介した根の成長制御に対して何らかの関与をしているものと思われる。

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論文)ジャスモン酸による根端分裂組織の分裂・分化制御機構

2011-11-19 18:01:03 | 読んだ論文備忘録

The Basic Helix-Loop-Helix Transcription Factor MYC2 Directly Represses PLETHORA Expression during Jasmonate-Mediated Modulation of the Root Stem Cell Niche in Arabidopsis
Chen et al.  The Plant Cell (2011) 23:3335-3352.
doi:10.1105/tpc.111.089870

根の成長は様々な植物ホルモンによって制御されている。中国科学院遺伝学発生生物学研究所のLi らは、ジャスモン酸(JA)によるシロイヌナズナ芽生えの根の成長抑制機構について解析を行なった。JAは根の成長を添加する濃度に応じて阻害するが、JA非感受性のcoi1-1 変異体の根の成長はJAによる成長阻害を殆ど受けなかった。JAによる根の成長阻害は細胞分裂と細胞伸長の両方が低下したことによって引き起こされていた。JA処理により根端分裂組織細胞数が減少するが、その効果はcoi1-2 変異体やmyc2-2 変異体では低下しており、JAはCOI1やMYC2を介して細胞数を減少させていると考えられる。JA処理は細胞周期に関与しているCYCB1;1KRP1PCNA1 の発現量を低下させ、この低下はcoi1-2 変異体やmyc2-2 変異体では見られなかった。よって、JAは根端分裂組織の細胞分裂活性をCOI1、MYC2を介して負に制御している。野生型植物の根の静止中心(QC)細胞は殆ど分裂しないが、JA処理をするとQCの分裂が観察される。この異常分裂したQCではデンプンの蓄積は見られないことから、JAはQCの分裂を促進するがQCの分化は誘導しないと考えられる。JA処理は根端分裂組織幹細胞の維持に関与しているWOX5 発現領域を僅かに拡張させるが、WOX5 の転写産物量には殆ど影響を及ぼしていなかった。よって、JAはQC細胞の細胞分裂活性を誘導する作用があり、この作用は処理するJAの濃度に依存して高まった。JA処理によるQC分裂は発芽2日後には観察され、その後余分に分裂したQC細胞の数は増加していった。JA処理によるQCの分裂はcoi1-2 変異体やmyc2-2 変異体では見られず、JAによるQC分裂促進はCOI1、MYC2を介してなされている。QC分裂促進はエチレン処理によっても観察されるが、エチレンシグナル伝達経路の機能喪失変異体やエチレン作用阻害剤の添加によってもJAによるQC分裂が起こることから、JAのQC分裂促進はエチレンの作用とは独立したものであると考えられる。JA処理をするとQC細胞の直下にデンプン粒を含んだ細胞の増加が見られ、このことから、コルメラ幹細胞(CSC)は分化状態にあると考えられる。JA処理した根でのQCの分裂はCSCの分化よりも早い時期に起こることから、QCの異常分裂がCSCの幹細胞としての維持能力を失わせているいることが示唆される。JA処理はコルメラ細胞層を増加させ、細胞層の列に乱れを生じさせた。JAのこれらの効果についてもCOI1とMYC2が関与していた。内生JA量が増加するconstitutive expression of VSP1cev1 )変異体においても根端分裂組織細胞数の減少、QC分裂、CSC分化が見られ、JAシグナルの負の制御因子であるJAZ10 遺伝子にT-DNA挿入された個体ではJA処理による形態変化が野生型よりも強まることから、内生のJAも根の幹細胞分裂制御や根端分裂組織活性の低下を引き起こしていると考えられる。根の幹細胞のパターン形成・維持にPLTファミリー転写因子が関与しているが、JAはPLT1PLT2 の発現をCOI1、MYC2に依存して抑制していることがわかった。JAによるPLT1PLT2 の発現抑制はMYC2 を過剰発現させた個体で強く現れ、MYC2はJA存在下でのみPLT 遺伝子の発現を抑制していた。PLT 遺伝子の発現はオーキシンによる制御を受けており、JAはオーキシン生合成を促進することが知られているが、asa1-1yuc1D といったオーキシン生合成の変異体においてもJAによるPLT1PLT2 の発現抑制、根の成長阻害、根端分裂組織細胞数の減少が見られ、JAの作用はオーキシン経路とは独立してなされていると考えられる。PLT1PLT2 遺伝子のプロモーター領域にはMYC2タンパク質が結合するとされるG-box様モチーフ(CACAGT)があり、MYC2タンパク質はPLT1PLT2 のプロモーター領域と相互作用を示すことが確認された。よって、MYC2はPLT1PLT2 のプロモーター領域と直接相互作用をしてこれらの遺伝子の発現を制御していると考えられる。Nicotiana benthamiana の葉を用いたトランジェントアッセイにより、MYC2は生体内においてPLT1 の発現を抑制することが確認された。JA処理は野生型植物の根端分裂組織細胞数を33%減少させたが、plt1-4 plt2-2 二重変異体での減少割合は19.7%であり、二重変異体はJAによる根端分裂組織細胞数の減少効果を弱めている。PLT2 を過剰発現させた個体でのJAによる根端分裂組織細胞数の減少は20%であり、PLTは根端分裂組織の維持においてJAの下流において機能していると考えられる。以上の結果から、JAによる根端分裂組織活性や幹細胞維持に対する制御はMYC2を介したPLT 遺伝子の発現抑制によってなされており、PLT1、PLT2は根端分裂組織幹細胞の制御におけるJAとオーキシンのクロストークの重要な接点として機能していることが示唆される。

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論文)イネの分枝を制御する新規因子

2011-11-17 19:11:02 | 読んだ論文備忘録

LAX PANICLE2 of Rice Encodes a Novel Nuclear Protein and Regulates the Formation of Axillary Meristems
Tabuchi et al.  The Plant Cell (2011) 23:3276-3287.
doi:10.1105/tpc.111.088765

名古屋大学佐藤らは、散生円錐花序を示すイネ変異体lax panicle2lax2 )を単離した。lax2 変異体の穂は一次枝梗の数は野生型と同等だが、二次枝梗数や小穂数が減少していた。また、この変異体は分けつ数も減少しており、これは腋生分裂組織形成の欠如によるものであった。したがって、lax2 変異体では栄養成長期、生殖成長期の一次枝梗以外の分枝の発達が低下している。二次枝梗と小穂が減少し、分けつ数も僅かに減少するlax1 変異体とlax2 との二重変異体は表現型がさらに極端になり、一次枝梗の末端の小穂を残して二次枝梗と小穂が失われ、分けつもさらに少なくなった。よって、イネの分枝形成には複数の経路が存在しており、LAX1LAX2 はこの経路に関与している因子であると考えられる。穂の下部の一次枝梗数、および二次枝梗数、小穂数が減少するmonoculm1moc1 )変異体とlax2 との二重変異体では全ての一次枝梗、二次枝梗、小穂が失われ、分けつも起こらなかった。よって、分枝形成にはMOC1 が関与しているさらに別の経路が存在し、LAX2MOC1 は一次枝梗を含めた栄養成長期、生殖成長期の分枝形成に関与していることが示唆される。lax2 moc1 二重変異体の茎頂での腋生分裂組織の喪失、lax2 変異体の発達中の花序分裂組織での二次枝梗や小穂の原基の喪失は組織学的な観察からも確認された。マップベース法によってlax2 の同定を行ったところ、Os04g0396500遺伝子に変異が認められ、正常なOs04g0396500遺伝子をlax2 変異体へ導入することによりlax2 変異体の表現型が相補されることから、Os04g0396500がLAX2 であると判断した。LAX2のアミノ酸配列と相同性のあるホモログをコードした遺伝子はイネゲノム中に6つ、シロイヌナズナには5つ存在していた。LAX2 遺伝子は腋生分裂組織において発現しており、LAX1 遺伝子の発現部位との重複が見られた。LAX2タンパク質のアミノ酸配列には核局在シグナルに相当する配列は見出されなかったが、GFPとの融合タンパク質は核に局在していた。lax2 変異体でのLAX1 の発現、lax1 変異体でのLAX2 の発現に変化は見られないことから、両者はお互いの発現には関与していないものと思われる。酵母two-hybrid アッセイにより、両者は相互作用を示し、これにはLAX2のC末端側にある保存領域が関与していることがわかった。以上の結果から、LAX2はイネの分枝に関与する新規因子であり、LAX1とは独立した経路とLAX1に依存した経路の2つの経路によって腋生分裂組織の形成を制御していると考えられる。

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論文)TERMINAL FLOWER1による花成調節

2011-11-15 19:14:21 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis TERMINAL FLOWER1 Is Involved in the Regulation of Flowering Time and Inflorescence Development through Transcriptional Repression
Hanano & Goto  The Plant Cel (2011) 23:3172-3184.
doi:10.1105/tpc.111.088641

シロイヌナズナTERMINAL FLOWER1(TFL1)とFLOWERING LOCUS T(FT)はアミノ酸配列に相同性が見られるが、機能的には拮抗しており、FTが花成を誘導するのに対してTFL1は花成を負に制御している。そのため、tfl1 変異体はロゼット葉、一次花序の花芽数が野生型よりも少なくなる。TFL1とFTはともに転写因子に特徴的なドメインを有していないが、bZIP型転写因子のFLOWERING LOCUS D(FD)およびFD PARALOG(FDP)と相互作用をすることが知られており、FT-FD複合体は花芽形成に関与する遺伝子の発現を誘導するとされている。TFL1も転写因子複合体の一部として機能していることが推測されているが、分子機構の詳細は明らかとなっていない。岡山県生物科学研究所後藤らは、TFL1に転写アクティベータードメインのVP16(TFL1-VP16)、サプレッサードメインのSRDX(TFL1-SRDX)を融合したタンパク質を野生型もしくはtfl1 変異体で35Sプロモーターによって恒常的に発現させ、表現型を調査した。その結果、TFL1-SRDXを発現させたtfl1 変異体は早期花成や有限花序形成といったtfl1 変異体の表現型が消え、野生型においてもtfl1 変異体においてもがく片が苞葉状の器官に変化し、花弁がなくなり二次花が形成されるといったTFL1 を過剰発現させた際に見られる表現型を示した。一方、TFL1-VP16を過剰発現させた野生型植物は有限花序となり、tfl1 変異体と似た表現型を示し、花成が早くなった。TFL1-VP16を過剰発現させたtfl1 変異体の表現型は元の変異体と同じであった。よって、転写アクティベーターを付加したTFL1-VP16はドミナントネガティブにTFL1の機能を妨げていると考えられる。TFL1-SRDXを過剰発現させた個体では野生型でもtfl1 変異体でも花芽形成に関与しているAPETALA1AP1 )、SEPALLATA1SEP1 )、SEP3FRUITFULLFUL )、LEAFYLFY )の発現が抑制されており、これはTFL1 過剰発現個体での発現と類似していた。TFL1-VP16を過剰発現させた野生型植物ではAP1SEP1SEP3LFY の発現量が野生型よりも高くなっており、早期花成する表現型の変化に対応していた。tfl1 変異体ではTFL1-VP16を過剰発現させてもAP1SEP1SEP3 の発現量がtfl1 変異体での発現量と同じであり、tfl1 変異体でのTFL1-VP16の過剰発現が花成時期の変化をもたらさないという結果と一致していた。TFL1がこれらの遺伝子の発現を直接制御しているかは不明だが、TFL1はこれらの遺伝子の転写抑制に関与していることが示唆される。酵母two-hybrid アッセイによってTFL1がFDやFDPと弱い相互作用を示すことが確認されたことから、FDとFDPはTFL1と転写抑制複合体を形成するものと思われる。fd 変異体は花成に遅れが見られ、fd tfl1 二重変異体ではtfl1 変異による早期花成の表現型が抑制されたが、有限花序の表現型は残ることから、fd は部分的にtfl1 よりも上位にあると考えられる。fd 変異体でTFL1-VP16を過剰発現させてもtfl1 変異体で過剰発現させた場合と同様に花成時期の変化は起こらなかった。これらの結果から、TFL1がターゲット遺伝子の発現や花成時期を制御するためにはFDが必要であることが示唆される。Nicotiana benthamiana を用いたBiFCアッセイによって、TFL1とFDが細胞核において相互作用を示すことが確認された。また、GFPを融合したTFL1を用いた実験からTFL1は細胞質と核の両方に局在することがわかった。以上の結果から、TFL1はFTがターゲットとしているものと同一の花成調節遺伝子をFDと相互作用をして転写抑制し、花成時期や花序分裂組織の発達の微調整を行なっていると考えられる。

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論文)師部の発達と根系パターンとの関係

2011-11-12 09:00:52 | Weblog

Arabidopsis Lateral Root Development 3 is essential for early phloem development and function, and hence for normal root system development
Ingram et al.  Plant J (2011) 38:455-467.
doi: 10.1111/j.1365-313X.2011.04700.x

米国 シカゴ大学Malamy らは、シロイヌナズナT-DNA挿入系統の中から芽生えの一次根が短く側根数の多くなったlateral root development 3lrd3 )変異体を得た。lar3 変異体の一次根は細胞の分裂と伸長が低下しており、側根の形成密度が野生型よりも高くなっていた。lrd3 変異体の発芽時の一次根の成長は遅く、その後多くの場合成長が回復してくるが、回復が見られない場合は側根もしくは胚軸と根の分岐部分から発生する錨根(anchor root)が一次根に代わって優先的に成長した。lrd3 変異体は、機能未知遺伝子At2g39830の第9イントロンにT-DNAが挿入された機能喪失変異体であった。LRD3 遺伝子は526アミノ酸からなるタンパク質をコードしており、このタンパク質にはN末端から約150アミノ酸のところにLIMドメイン、C末端近くにZn結合ドメインが見られた。野生型植物においてLRD3 遺伝子は葉の維管束走行、花序茎、花、胚軸、一次根、側根で発現しており、根では若い組織の維管束走向での発現が強く、伴細胞で特異的に発現しており、分裂組織や側根原基、新たに出現した側根では発現が見られなかった。lrd3 変異体芽生えは師部の根端部への物質輸送能力が低下しており、子葉のデンプン蓄積量が野生型よりも多くなっていた。lrd3 変異体の胚軸の師部輸送能力は野生型と同等であることから、lrd3 変異体の根端部への物質輸送能力低下は根特異的であり、このことが一次根の成長抑制をもたらしていると考えられる。発芽5日目の芽生えの根をアニリンブルーを用いて師板に沈着するカロースを染色して観察したところ、lrd3 変異体では染色される師板の間隔が野生型よりも長くなっており、師孔が少なく、師要素が細くなっていた。しかし、発芽11日目の根ではlrd3 変異体と野生型の間でこれらの差異は観察されなかった。lrd3 変異体芽生えの一次根の長さと根系全体の総延長との間には負の相関が見られ、側根の成長量増加が一次根の成長の代わりとなっていると考えられる。lrd3 変異体の側根は一次根の場合と同様に師部形成の遅れや物質輸送能力の低下が見られた。lrd3 変異体芽生えをオーキシン処理することにより、物質輸送量は少ないが野生型と同様に根端部近くまで輸送されるようになり、形態も野生型に近くなった。よって、オーキシンは芽生えの師部の発達にlrd3 の下流もしくは別経路において関与しているものと思われる。以上の結果から、LRD3は芽生えの根における師部輸送の確立に関与する因子であると考えられる。lrd3 変異体の多くは成長後期になると師部輸送が回復することから、成長後期には他の遺伝子による補償がなされるものと思われる。LRD3 遺伝子は根の師部の初期発達に関与していると考えられるが、その機能は不明である。

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論文)LATERAL SUPPRESSORの発現特異性は3’側領域によって制御されている

2011-11-10 19:49:21 | 読んだ論文備忘録

Specific expression of LATERAL SUPPRESSOR is controlled by an evolutionarily conserved 3' enhancer
Raatz et al.  The Plant Journal (2011) 68:400-412.
doi: 10.1111/j.1365-313X.2011.04694.x

シロイヌナズナLATERAL SUPPRESSORLAS )遺伝子は、GRASファミリーの転写因子をコードしており、葉原基の向軸側の境界領域部分で特異的に発現して腋生分裂組織(AM)形成の主要な調節因子として機能している。ドイツ マックス・プランク植物育種学研究所Theres らは、LAS 遺伝子の特異的な発現パターンを決定しているシス領域の探索を行なった。LAS 遺伝子の転写開始点から117 bpから3992 bpまでの5'領域と3'側3550 bpまでを10種類の組み合わせでLAS 転写領域に繋ぎ、las 変異体に形質転換してlas 変異体の表現型が相補されるかを調査した。その結果、505 bpと117 bpのプロモーター断片では腋芽形成が野生型と比べて僅かに減少した。よって、十分な3'領域が保持されている場合、転写開始点から117 bp上流が存在すればLAS プロモーターとして機能すると考えられる。しかしながら、転写開始点から2815 bp上流と終始コドンから488 bp下流を結合したコンストラクトを導入した形質転換体では相補が非常に弱くなり、1352 bp以下の上流配列を結合した場合には相補性が失われた。したがって、主要なエンハンサー領域はLAS ORFの下流に存在しており、5'側1352 bpから2815 bpの間(領域D)にマイナーな関連領域が存在することが示唆される。5'側領域725 bpと3'側488 bpから4360 bpまでを結合したコンストラクトを用いて相補性を見たところ、3'側3550 bpまでは十分な相補性があったが、そこから308 bp欠損した3239 bpでは相補性が完全に失われてしまった。よってこの領域(領域C)に重要なエンハンサーが存在していると考えられる。3'側1840 bpから3550 bpまでを逆向きにしてLAS ORFの上流に結合してもlas 変異を完全に相補するプロモーターとして機能したことから、この領域は位置や向きに関係なくエンハンサーとして機能を発揮することが示唆される。以上の結果から、LAS 遺伝子は3'側の3239 bpから3550 bpの領域にLAS プロモーター活性を決定する重要なエンハンサーが存在していると考えられる。他の植物のLAS オーソログ遺伝子の塩基配列を比較したところ、シロイヌナズナLAS 遺伝子のORFから2075 bp下流に位置する52 bp(領域B)がよく保存された領域として見出され、他の植物では終始コドンから677 bpから2390 bp下流にこの領域が見られた。しかしながら、この領域B以外には5'側にも3'側にも植物間で保存された領域はなかった。シロイヌナズナの近縁種のミヤマハタザオ(Arabidopsis lyrata )、Arabis alpina 、ルベラナズナ(Capsella rubella )のLAS 遺伝子の塩基配列を比較したところ、ORF周辺と領域B周辺がよく保存されており、プロモーター領域の一部にも保存された領域が見られた。シロイヌナズナLAS 遺伝子のエンハンサーとして重要な領域Cには強く保存された領域は見当たらなかったが、領域の3'末端の22 bpは多型がなくよく保存されており、この部分が領域Cのエンハンサーとして機能しているものと思われる。LAS 遺伝子3'領域をトマトのオーソログ(Ls )のORFから下流925 bpから2231 bpまで領域と置換してlas 変異体に導入したところ表現型が完全に相補された。またこの領域を逆向きにしてLAS ORFの前に繋いでも相補が起こった。よって、シロイヌナズナLAS 遺伝子とトマトLs 遺伝子の間で3'エンハンサー領域の機能は保存されていることが示唆される。植物間で保存されている3'側の領域B部分を欠失させた3'領域で相補性を見たところ、トマト3'領域ではこの欠失によって僅かに相補性が失われたが、シロイヌナズナの領域B欠失3'領域では完全にlas 変異を相補した。よって、トマト3'エンハンサーにおいては領域Bは完全な相補性を示すために必要であると思われる。トマトls 変異体はわき芽形成が抑制されるので育種形質として優れているが、花序や花の発達も悪くなるために育種素材としては利用されていない。そこで、花特異的に発現させるプロモーターとしてキンギョソウPLENA 遺伝子の5'プロモーター領域、葉腋特異的に発現させるプロモーターとしてタバコCET4 遺伝子の5'プロモーター領域を用いてトマトls 変異体においてLs 遺伝子を発現させたが、どちらのプロモーターもls 変異体の表現型を相補しなかった。しかしながら、このコンストラクトにLs 遺伝子3'領域を繋いだ場合にはどちらのプロモーターを用いてもわき芽と花の両方の表現型を相補した。よって、Ls 遺伝子3'領域は5'側のプロモーターの特性に関係なくLs 遺伝子の発現特異性をもたらしていることが示唆される。シロイヌナズナにおいても、LAS 遺伝子を90 bp CaMV 35S ミニマルプロモーターや花特異的に発現させるPISTILLATAPI )プロモーター制御下で発現させた際にLAS 3'エンハンサー領域を結合させればlas 変異の相補がなされた。レポーター遺伝子としてGUS 遺伝子を用いて発現部位の特定を行なったところ、LAS 3'エンハンサー領域は5'側に繋いだプロモーターの特異性に関係なく内生のLAS 遺伝子と同じ発現パターンを示した。よって、LAS 3'側領域はエンハンサーとしてだけでなくサプレッサーとしての機能も有していると考えられる。以上の結果から、LAS 遺伝子の発現部位特異性は3'側にあるエンハンサー/サプレッサー領域によって主にもたらされていると考えられる。

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論文)サイトカイニンによるPIN1タンパク質量の制御

2011-11-08 20:22:35 | 読んだ論文備忘録

Cytokinin Modulates Endocytic Trafficking of PIN1 Auxin Efflux Carrier to Control Plant Organogenesis
Marhavý et al.  Developmental Cell (2011) 21:796-804.
DOI:10.1016/j.devcel.2011.08.014

側根原基の形成は、オーキシンの濃度勾配によって制御されており、サイトカイニンは側根原基の形成を抑制する。したがって、サイトカイニンはオーキシンのシグナル伝達もしくは分布を妨げることで側根原基形成を抑制していることが示唆される。ベルギー フランダースバイオテクノロジー研究機関(VIB)Benková らは、シロイヌナズナの根をサイトカイニン処理すると側根原基形成過程においてオーキシン濃度勾配の形成に関与しているオーキシン排出キャリアのPIN1が細胞膜上から減少し、PIN1タンパク質量としても急速に減少していくことを見出した。GFPタンパク質を融合したPIN1を35S プロモーター制御下で発現させてもサイトカイニン処理によってPIN1-GFPの減少が観察された。サイトカイニン処理による細胞膜上のPIN1-GFPシグナルの減少は、タンパク質生合成阻害剤のシクロヘキシミド(CHX)や転写阻害剤のコルディセピン(COR)を同時処理しても起こることから、サイトカイニンによるPIN1タンパク質量の制御は転写や新規タンパク質生合成の影響を受けないことが示唆される。サイトカイニン処理は他のオーキシン排出キャリアのPIN7やオーキシン取り込みキャリアのAUX1のタンパク質量には影響しておらず、PIN3はサイトカイニン処理による減少を示したが、PIN1の減少と比較すると緩やかであった。また、PIN1-GFPをPIN2 プロモーター制御下で通常PIN1が発現していない細胞で発現させた場合でもサイトカイニン処理によるPIN1-GFPの減少が見られた。サイトカイニン処理によって細胞膜上のPIN1-GFPシグナルが減少することと一致して液胞のGFPシグナルが強くなった。サイトカイニンによるPIN1-GFPの液胞への輸送は、アクチン繊維の脱重合剤であるラトルンクリンB(LatB)、ARF-GEFの阻害剤剤であるブレフェルジンA(BFA)、液胞へのターゲッティングを阻害するウォルトマリン(Wm)を処理することによって抑制された。したがって、サイトカイニンはPIN1タンパク質の液胞への輸送・分解の制御に関与しているものと思われる。PIN1タンパク質のエンドサイトーシスが欠損したben1BFA-visualized endocytic trafficking defective1 )変異体、ben2 変異体ではサイトカイニン処理による細胞膜上のPIN1-GFPシグナルの減少や液胞へのターゲッティングが見られず、側根原基の誘導・発達や一次根の分裂組織分化に対してサイトカイニン非感受性となった。しかしながら、サイトカイニンに応答したエチレン過剰生産による根の伸長抑制に関しては野生型と同等であった。サイトカイニン受容体として機能してるヒスチジンキナーゼ受容体の機能喪失変異体のうち、cre1 /ahk4 変異体のみがサイトカイニンに応答したPIN1-GFPの分解や側根原基形成の抑制が低減していた。また、サイトカイニンシグナル伝達に関与するタイプB ARRの機能喪失変異体のうち、arr1-2arr10-1 変異体ではサイトカイニンに応答したPIN1タンパク質の分解が観察されたが、arr2arr12-1 変異体ではPIN1タンパク質の減少が見られなかった。以上の結果から、サイトカイニンによるPIN1タンパク質のエンドサイトーシスによる分解にはAHK4サイトカイニン受容体を介した一部のタイプB ARR(ARR2やARR12)によるシグナル伝達が関与しており、この転写を経ずに短時間で起こるPIN1タンパク質量の調節がオーキシンの流れや濃度勾配を変化させて側根原基形成や根の分裂組織分化を制御しているものと考えられる。

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論文)種子発芽におけるアブシジン酸とサイトカイニンのクロストーク

2011-11-04 05:22:06 | 読んだ論文備忘録

Cytokinin antagonizes ABA suppression to seed germination of Arabidopsis by downregulating ABI5 expression
Wang et al.  The Plant Journal (2011) 68:249-261.
doi: 10.1111/j.1365-313X.2011.04683.x

アブシジン酸(ABA)とサイトカイニンは植物の成長に対して逆の方向の制御をしている。中国 武漢大学のWu らは、エストラジオール処理によって発現が誘導されるシロイヌナズナT-DNA挿入系統を用いて、エストラジオールを添加した培地ではABA非感受性となって種子発芽する機能獲得変異体gim1 (germination insensitive to ABA mutant 1)を得た。この変異体のT-DNA挿入部位を調べたところ、サイトカイニン生合成酵素の1つであるイソペンテニルトランスフェラーゼをコードするAtIPT8At3g19160)の開始コドンの362 bp上流にT-DNAが挿入されており、エストラジオール処理によってAtIPT8 の発現量が増加することが確認された。gim1 変異体のABA非感受性がAtIPT8 の発現量と関連しているかを調査するために、T-DNA挿入ipt8 機能喪失変異体の発芽試験を行なったところ、この変異体はABA感受性が高いことがわかった。また、エストラジオール発現誘導プロモーター制御下でAtIPT8 を発現するコンストラクトを野生型シロイヌナズナとipt8 変異体に導入したところ、どちらもエストラジオール依存的に種子発芽がABA非感受性となった。よって、AtIPT8 の過剰発現がgim1 変異体種子発芽のABA非感受性をもたらしていると考えられる。エストラジオール処理によってgim1 変異体やAtIPT8 発現誘導形質転換体(OE-2 )の内生サイトカイニン量は10倍以上に増加した。ABA添加培地での発芽抑制は培地に6-BAを添加することによって消失し、6-BA添加量を増やすことで発芽率が上昇した。gim1 変異体をエストラジオール処理した際の遺伝子発現の変化を野生型と比較して網羅的に解析したところ、425遺伝子の転写産物量が2倍以上変化し、197遺伝子の転写産物量が増加、228遺伝子の転写産物量が減少していた。発現量が増加する遺伝子にはサイトカイニン応答遺伝子に分類されるものが含まれていた。gim1 変異体をエストラジオールとABAで同時に処理した際には658遺伝子の転写産物量に変化が見られ、422遺伝子は転写産物量が増加、216遺伝子は減少していた。このエストラジオールとABAの処理によって野生型、gim1 変異体ともにABAやストレスに応答する遺伝子の転写産物量が増加したが、ABI5 は野生型のみで転写産物量が増加し、gim1 変異体では増加が見られなかった。野生型ではABA処理によってタイプAレスポンスレギュレーターをコードするARR4ARR5ARR6 の転写産物量が減少するが、gim1 変異体ではエストラジオールとABAの同時処理によってこれらの転写産物量が増加した。野生型植物ではAtIPT8 は主に種子において発現しており、長角果でのAtIPT8 の発現はABA処理によって抑制された。また、主に栄養成長している組織において発現しているAtIPT3 の発現量もABA処理によって抑制された。よって、ABAはサイトカイニン生合成に対して負の制御を行なっていることが示唆される。また、サイトカイニン受容体をコードするCRE1 の発現もABA処理によって抑制された。以上の結果は、サイトカイニン量の上昇はABI5等のABAシグナル伝達に関与する因子の発現を抑制することでABAに対する応答性を抑制し、一方、ABAはサイトカイニンの生合成、シグナル伝達に関与する遺伝子の発現を抑制していることを示している。ABAに応答するABI5とサイトカイニンに応答するタイプA ARRとの関係をそれぞれの変異体を用いて調査したところ、arr3456 四重変異体ではABI5 の発現量が増加しており、種子発芽におけるABA感受性が高くなっていた。また、abi5-4 変異体ではARR4ARR5ARR6 の発現量が低下していた。よって、ABI5はタイプA ARRの下流に位置してABAシグナルとサイトカイニンシグナルを統合し、タイプA ARRはABAに応答したABI5 の発現を負に制御しているものと思われる。さらに、ABI5タンパク質はARR4、ARR5、ARR6タンパク質と相互作用をすることが確認された。以上の結果から、種子発芽時のABAとサイトカイニンの相互作用は、それぞれのシグナル伝達に関与している転写因子間の拮抗的な制御によって調節されているものと考えられる。

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