Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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植物観察)若夏の西表島 2日目

2010-05-31 20:47:52 | 植物観察記録

朝、宿を出るときにはまだどんよりとした曇りでしたが、徐々に雲が切れて、時折、日もさすようになってきました。午前中に歩いた林道ではリュウキュウイナモリ(アカネ科)が多く見られたのですが、まだほとんど開花していない状態でした。花としては、昨日も見たノボタンやヤエヤマノボタンに加えて、マルヤマシュウカイドウ、コウトウシュウカイドウ(どちらもシュウカイドウ科)を見ることができました。道を歩いているだけで、アカショウビンやリュウキュウイノシシが普通に目の前を横切って行くのには驚かされます。さすがにイリオモテヤマネコには遭遇しませんでしたが・・・。蝶の類では、コウトウシロシタセセリ、アオタテハモドキ、オオゴマダラ、イシガケチョウ、リュウキュウウラボシシジミ、が見られました。それと、翅表面が薄青色で尾状突起が長めのシジミチョウを多く見かけました(後日、友人の蝶屋さんに問い合わせたところ、近年、ソテツの害虫として問題となっている発生迷蝶のクロマダラソテツシジミではないかとのことでした)。午後に入った渓流沿いでは、タイワンイワタバコの群生を見ることができました。


ノボタン


ヤエヤマノボタン


マルヤマシュウカイドウ


コウトウシロシタセセリ


クロマダラソテツシジミ


タイワンイワタバコ

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植物観察)若夏の西表島 1日目

2010-05-30 20:31:05 | 植物観察記録

沖縄では5、6月の梅雨の頃の晴れた日を「若夏(わかなつ)」と呼びます。盛夏ほどの強い日差しはなく、日陰にいると案外風が心地よく、あまりジトジト感もありません。緑もますます活力を増してくるこの時期、西表島へ行きました。今日は数日前からの梅雨前線の活動がまだ収まりきっておらず、時折小雨が降る天気でしたが、自然観察には問題ない程度でした。昨年7月に西表島へ行った際に既に実になっていたタカサゴシラタマ(マタタビ科)の花を今回は見たいと思っていましたが、ようやく咲き始めたところで、まだ蕾のものが多い状態でした。ですが、サクララン(ガガイモ科)、ノボタン、ヤエヤマノボタン(どちらもノボタン科)の花を見ることができました。他には、コンロンカ(アカネ科)、イジュ(ツバキ科)、ギョクシンカ(アカネ科)、ヒメタムラソウ(シソ科)などの花が見られました。ゲットウ、アオノクマタケラン(どちらもショウガ科)はピークを過ぎていました。マングローブ周辺ではオキナワキョウチクトウ(キョウチクトウ科)、イボタクサギ(クマツヅラ科)、サキシマハマボウ(アオイ科)の花を見ることができました。


サクララン


ギョクシンカ


ナナホシキンカメムシ


コナカハグロトンボ


オキナワキョウチクトウ


キバウミニナ マングローブの落ち葉を食べる巨大なウミニナ

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論文)根の木部形成における中心柱と内皮のクロストーク

2010-05-28 20:33:28 | 読んだ論文備忘録

Cell signalling by microRNA165/6 directs gene dose-dependent root cell fate
Carlsbecker et al.  Nature (2010) 465:316?321.
doi:10.1038/nature08977

動植物において、転写因子タンパク質やmRNAは周囲の細胞へ移動して位置情報を伝達していることが知られている。siRNAやtasiRNAといった低分子RNAも移動することが確認されているが、miRNAの移動については確かな証拠が得られていない。フィンランド ヘルシンキ大学のHelariutta らのグループは、シロイヌナズナの根のパターン形成における細胞間クロストークに関与している因子について解析した。転写因子SHORT ROOT(SHR)は根の中心柱で産生され、内皮に移動して転写因子SCARECROW (SCR )を活性化する。SHRSCR の変異体では、内皮と皮層を形成する不等分裂が起こらず静止中心が維持されないために、基本組織層が1層のみとなった短い根になる。SHRSCR により発現が制御されている遺伝子の約半分は中心柱で強く発現しており、shr 変異体やscr 変異体では原生木部が後生木部置き換わるといった形態変化が生じる。よって、この2つの転写因子は木部のパターン形成に重要な役割を果たしていると考えられる。今回、shrscr と類似の形態変化を起こし、根が短くなる変異体を単離し、その原因遺伝子を調査したところ、III型ホメオドメイン-ロイシンジッパー(HD-ZIPⅢ)転写因子PHABULOSA PHB )をコードする遺伝子のmiR165/6ターゲット部位に変異が生じたものであることがわかった。PHB 転写産物は主に後生木部前駆体とその周囲の前形成層細胞で発現しているが、今回得られた変異体phb-7d ではPHB の発現領域が広がって中心柱の外側にまで見られた。よって、miR165/6はPHB mRNAを転写後に中心柱周縁部や基本組織から排除する作用があると考えられる。shr 変異体やscr 変異体ではmiR165/6量が低下しており、MIR165/6 遺伝子ファミリーのうち、MIR165aMIR166b のプロモーター領域にSHRが結合して内皮における発現を活性化していることが確認された。また、miR165/6は内皮の内外に放射状に移動することが確認された。以上の結果から、中心柱で生成されたSHRは内皮に移動して、そこでSCRと協同してMIR165aMIR166b を活性化し、生成されたmiR165/6が中心柱周辺部へ移動してPHB mRNAを分解し、その結果生じたPHB 転写産物の分布量の差が木部のパターン形成を制御していると考えられる。

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論文)概日時計による夜間の葉のデンプン分解制御

2010-05-25 06:18:17 | 読んだ論文備忘録

Circadian control of carbohydrate availability for growth in Arabidopsis plants at night
Graf et al.  PNAS (2010) 107:9458-9463.
doi:10.1073/pnas.0914299107

植物は日中に光合成によって炭酸固定を行ない、デンプンのかたちで葉に蓄える。そして、夜間に蓄えたデンプンを分解して代謝や成長に利用する。シロイヌナズナの葉は、夜間に一定の速度でデンプンを分解し、夜明けには殆どのデンプンが代謝される。この時、夜の長さを変えて植物体を育成すると、その長さに応じてデンプン分解速度が変化することが知られている。英国 ジョン・イネスセンターのSmith らは、葉のデンプン分解の調節機構を調査した。12-h昼/12-h夜で育成したシロイヌナズナを日没を4時間早めて8-h昼/16-h夜の環境に移行すると、夜間のデンプン分解速度が遅くなる。糖の減少によって発現が誘導される2つの遺伝子(At3g59940、At1g76410)を指標として、夜明け近くの葉におけるそれらの転写産物量を見たところ、夜の長さを長くしても夜明け頃の両遺伝子転写産物の増加のタイミングは対照とほぼ同じであった。よって、日没を早めたことによるデンプン分解速度の低下は、夜明けの葉の糖含量を一定に保つ作用がある。この作用は日没を4時間以上早めてしまうと失われた。デンプンの分解は概日時計によって制御されており、一日の周期を28時間(14-h昼/14-h夜)にすると夜明け前に葉のデンプンが枯渇し、17時間(8.5-h昼/8.5-h夜)にすると夜明けでも40%のデンプンが残った。また、概日時計の中心振動因子の変異体cca1 /lhy ではデンプンの分解速度が速くなった。28時間周期で育成した植物体はバイオマスが小さくなるが、これは夜明け前に葉のデンプンが枯渇してしまうためであり、ショ糖を添加することによって24時間周期で育成した植物体とのバイオマスの差は解消した。以上の結果から、夜間の葉でのデンプン分解は概日時計による制御を受けて夜明けまでにデンプンを消費するよう調節されており、これは植物の成長維持にとって重要であることが示唆される。

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論文)ヘテロ接合による雑種強勢

2010-05-23 19:07:40 | 読んだ論文備忘録

The flowering gene SINGLE FLOWER TRUSS drives heterosis for yield in tomato
Krieger et al.  Nature Genetics (2010) 42:459?463.
doi:10.1038/ng.550

雑種強勢は農作物の収量増加等に広く利用されているが、そのメカニズムは十分に解明されていない。イスラエル ヘブライ大学のZamir らは、単一のヘテロ接合性遺伝子から強勢が生ずる超優性(overdominance)モデルを検証する実験を行なった。33種類の様々なトマトの変異体と変異のない親品種(M82)を交配してヘテロ接合となった変異体の収量を比較したところ、6種類のヘテロ接合体で雑種強勢が見られた。最も強い雑種強勢は、シロイヌナズナのFLOWERING LOCUS T のオーソログをコードするSINGLE FLOWER TRUSSSFT )遺伝子のミスセンス突然変異のヘテロ接合のものであった。この雑種強勢は、SFT 遺伝子の他の変異対立遺伝子のヘテロ接合でも起こり、その収量は商品化されているハイブリッドトマトAB2と同等であった。SFT のヘテロ接合による収量の超優性は頑強であり、異なる遺伝的背景や環境条件でも起こった。sft /+ ヘテロ接合体はM82に比べて花序数、花序あたりの花数が多く、花序の増加が頭打ちとなる時期が遅かった。トマトの栽培品種は有限花序を示し、これはシロイヌナズナTERMINAL FLOWER1TFL1 )のオーソログであるSELF PRUNINGSP )の変異による。SP の機能している無限花序のM82ではSFT のヘテロ接合による雑種強勢が見られないことから、sft /+ ヘテロ接合体ではsp が誘導する成長終結が抑制されて雑種強勢が起こるものと考えられる。今回の知見は、単一のヘテロ接合性変異で農作物の生産性が向上する可能性を示唆している。

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論文)ヘキソースによるオーキシン生合成の制御

2010-05-19 05:24:35 | 読んだ論文備忘録

Sugar Levels Regulate Tryptophan-Dependent Auxin Biosynthesis in Developing Maize Kernels
LeClere et al.  Plant Physiol. (2010) 153:306-318.

doi:10.1104/pp.110.155226

トウモロコシMiniature1Mn1 )は成熟過程の穀粒基部の胚乳輸送層に局在する細胞壁インベルターゼINCW2をコードしており、mn1 変異体は穀粒が小さく、穀粒中のオーキシンレベルが野生型よりも低いことが知られている。米国農務省農業研究局のChourey らは、mn1 変異体未成熟穀粒の糖含量を調査し、基部では穀粒あたりのショ糖含量が高くグルコース(Glc)とフラクトース(Fru)の含量が低いが、先端部の糖組成は野生型と同等であることを見出した。mn1 変異体の穀粒はインベルターゼの欠失により浸透圧が低いために小さいとされていたが、mn1 変異体穀粒の水分含量は野生型と同じであった。次に、mn1 変異体穀粒でのオーキシン生合成経路の酵素の発現について調査したところ、変異体ではYUCCA 遺伝子(ZmYUC )の発現量が低下していることがわかった。ZmYUC の発現が糖による制御を受けているか、穀粒を様々な濃度の糖を含む培地に置床して転写産物量を見たところ、50 mM Glcが最も高い発現量を示し、Fru、ショ糖では顕著な変化は見られなかった。また、ZmYUC プロモーター:GUSコンストラクトを導入した形質転換シロイヌナズナに糖を与えてGUSの発現を見たところ、50~250 mM Glc、250 mM FruでGUS活性が増加しており、ショ糖ではGUS活性の増加が見られなかった。また、細胞質ヘキソキナーゼの阻害剤であるグルコサミンとADP、ヘキソキナーゼの生成産物であるG6P、F6FはGUS活性を抑制した。以上の結果から、Glc、Fruといったヘキソースがヘキソキナーゼを介してZmYUC の発現を制御することでオーキシン生合成量を変化させ、これが穀粒の成長に関与しているものと考えられる。

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論文)高温による花粉形成不全とオーキシンとの関係

2010-05-17 19:56:48 | 読んだ論文備忘録

Auxins reverse plant male sterility caused by high temperatures
Sakata et al.  PNAS (2010) 107:8569-8574.
doi:10.1073/pnas.1000869107

高温による花粉形成不全は様々な植物で見られる現象で、主要穀物の収量低下の要因の一つとなっているが、その分子メカニズムはよくわかっていない。東北大学の東谷らは、シロイヌナズナのオーキシン生合成酵素機能喪失変異体において観察される雄性不稔が高温障害による花粉形成不全と類似していることに着目し、高温障害とオーキシンとの関係を調査した。その結果、高温処理したオオムギやシロイヌナズナの発達中の葯の内生オーキシン量が対象に比べて低いことを見出した。また、高温処理によってオーキシン合成酵素YUCCA の葯における発現量が低下することがわかった。よって、高温障害による花粉形成不全は、発達中の葯におけるオーキシン生合成能の低下による内生オーキシンレベルの低下が主要因となっているものと考えられる。そこで、高温処理条件下でオオムギの出穂もしくはシロイヌナズナの花序にオーキシンを添加したところ、葯の成長が回復し、成熟した花粉粒が形成された。将来的に、この技術を応用することにより、地球規模の温暖化においても様々な作物を安定的に供給することが可能となるかもしれない。

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植物観察)箱根

2010-05-15 22:48:01 | 植物観察記録

箱根へバイケイソウの観察に行きました。小田原から箱根へ向かう道沿いでは、ミズキ、フジ、シャガの花を見かけました。山の上は「まだ寒い」といった感じで、花も若干遅れ気味、ベニバナヒメイワカガミはまだ蕾が固い状態でした。バイケイソウの成長も、昨年に比べると少し遅れ気味かもしれません。


バイケイソウの成長は昨年に比べると遅れ気味?


フォッサ・マグナ要素植物のマメザクラ


ミヤマシキミ 雌雄異株で、これは雄花


エイザンスミレ

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論文)ポリアミンによるオーキシンとサイトカイニンの応答性の変化

2010-05-13 23:22:31 | 読んだ論文備忘録

The BUD2 mutation affects plant architecture through altering cytokinin and auxin responses in Arabidopsis
Cui et al.  Cell Research (2010) 20:576-586.
doi:10.1038/cr.2010.51

植物において、ジアミンのプトレシン、トリアミンのスペルミジン、テトラアミンのスペルミンといったポリアミン類は、環境ストレス応答や成長に関与していることが知られており、ポリアミン合成能を欠損した植物は草丈が低くなり、シュートや根に分枝が増えることが報告されている。中国科学院 遺伝・発育生物学研究所のWang らは、以前に、わい化して分枝の多いシロイヌナズナ変異体bushy and dwarf2bud2 )を単離しており、BUD2 遺伝子がポリアミン合成に関与するS-アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ4(SAMDC4)をコードしていることを見出している。今回は、この変異体を用いて、ポリアミンと形態変化との関連を調査した。まず、bud2 変異体の頂芽優勢が失われたような形態変化から、これにはオーキシンが関与しているのではないかと考え、オーキシンによって引き起こされるとされる、温度上昇による胚軸の伸長促進と頂芽切除による腋芽の成長促進について調査した。その結果、bud2 変異体のインドール-3-酢酸(IAA)含量とオーキシン極性輸送能力は野生型と同等であるにもかかわらず、変異体ではどちらの形質とも野生型よりも劣っていた。また、オーキシン添加による側根形成の促進と腋芽成長の抑制が野生型より鈍くなっていた。よって、bud2 変異体ではオーキシンに対する応答性が低下していると考えられる。BUD2 の転写産物量はIAA処理によって増加し、オーキシン受容体の三重変異体tir1afb2afb3 ではIAAによるBUD2 発現誘導量が減少した。次に、bud2 変異体の頂芽優勢の喪失とサイトカイニンとの関係を調べたところ、bud2 変異体では一部の内生サイトカイニン誘導体の含量が増加しており、サイトカイニン応答遺伝子ARR5ARR6ARR15 の発現量が上昇していた。また、サイトカイニン添加によるARR5ARR6 の誘導レベルが野生型よりも高く、サイトカイニンによる根の伸長阻害に対して野生型よりも感受性が高くなっていた。よって、bud2 変異体ではサイトカイニンに対する応答も変化している。胚軸断片からのカルス形成は、培地に添加するオーキシンとサイトカイニンの量がある濃度範囲内にあることが重要だが、bud2 変異体では野生型よりも低濃度のサイトカイニン、高濃度のオーキシンでもカルスが形成された。以上の結果から、ポリアミンはサイトカイニンレベルの維持とオーキシン・サイトカイニンの感受性に影響することでシロイヌナズナの分枝を制御していると考えられる。

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論文)ジャスモン酸により誘導される二次代謝に関与するP450タンパク質

2010-05-12 20:45:26 | 読んだ論文備忘録

The Arabidopsis P450 protein CYP82C2 modulates jasmonate-induced root growth inhibition, defense gene expression and indole glucosinolate biosynthesis
Liu et al.  Cell Research (2010) 20:539-552.
doi:10.1038/cr.2010.36

中国科学院 遺伝・発育生物学研究所のLi らは、シロイヌナズナT-DNA挿入変異体集団の中から、ジャスモン酸(JA)による芽生え一次根の成長阻害が野生型よりも感受性が強いjasmonic acid -hypersensitive1-1jah1-1 )変異体を得た。しかし、この変異体では、傷害応答遺伝子であるVEGETATIVE STORAGE PROTEIN1VSP1 )とLIPOXYGENASE2LOX2 )のJAによる発現誘導は野生型と同等だったが、病害応答遺伝子である植物ディフェンシンPDF1.2 と抗菌ペプチドチオニンThi2.1 の発現誘導量が減少していた。変異体ゲノム中のT-DNA挿入領域を探索したところ、チトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードするCYP82C2 (At4g31970)遺伝子の翻訳開始点から900 bp上流に挿入が見られ、変異体ではCYP82C2 の発現量が減少していることが確認された。野生型でのCYP82C2 の発現は調査したすべての組織(根、葉、花)で確認され、CYP82C2 プロモーター:: GUS により発現組織を詳細に調査したところ、芽生えでは根と胚軸、葉ではトライコーム、花では葯、果実では長角果と小花柄の接続部で強い発現が見られた。芽生えをメチルジャスモン酸(MeJA)処理すると1日後にCYP82C2 の発現誘導が確認され、2日後に転写産物量が最大となり、その後減少していった。同様の誘導パターンは植物体に灰色カビ病菌(Botrytis cinerea ) を感染させた際にも見られた。MeJAによるCYP82C2 の発現誘導は、coi1 変異体においても見られ、atmyc2-2 変異体では発現量が増加し、AtMYC2 過剰発現個体では発現量が減少していた。よって、CYP82C2 の発現誘導はCOI1を介したJAシグナル伝達経路を介していないが、AtMYC2により負に制御されていると考えられる。jah1-1 /coi1 二重変異体およびCYP82C2 過剰発現個体の芽生えでは、JAによる一次根成長阻害が消失してJA非感受性となっていた。しかし、CYP82C2 過剰発現個体ではMeJAによるPDF1.2Thi2.1 の発現誘導量が増加し、灰色カビ病菌に対する耐性が増加していた。jah1-1 変異体では、トリプトファン(Trp)生合成路のアントラニル酸シンターゼのαサブユニットコードするASA1 、Trpからインドール-3-アセトアルドキシム(IAOx)を合成するCYP79B2CYP79B3 、IOAxから抗菌性二次代謝産物のインドールグルコシノレート(IGs)を合成する経路上の酵素をコードするATR1SUPERROOT2SUR2 )、SUPERROOT1SUR1 )のMeJAによる発現誘導量が低下し、Trp含量、IGs含量の上昇量も野生型よりも低かった。CYP82C2 過剰発現個体はMeJAにより誘導されるTrpの増加量がjah1-1 変異体よりさらに低くなっていたが、IGsの増加が野生型よりも高くなっていた。CYP82C2 過剰発現個体において、IOAxから合成される他の代謝産物であるインドール-3-酢酸(IAA)やファイトアレキシンのカマレキシンの量は野生型と同等であった。以上の結果から、CYP82C2はJAによって誘導されるTrp、IGs合成過程に関与していると考えられる。

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