Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)ジャスモン酸による葉の老化誘導制御

2015-07-28 06:15:10 | 読んだ論文備忘録

Regulation of Jasmonate-Induced Leaf Senescence by Antagonism between bHLH Subgroup IIIe and IIId Factors in Arabidopsis
Qi et al.  Plant Cell 2015 27: 1634-1649.

doi:10.1105/tpc.15.00110

ジャスモン酸(JA)は、葉の老化を誘導し、様々な老化関連遺伝子の発現を制御していることが知られており、coi1 変異体はJAによる葉の老化が抑制される。しかしながら、JAによる老化誘導経路において鍵となるシグナル分子は明らかとなっていない。中国 清華大学Xie らは、Jasドメインを欠いていることで恒常的にJA応答を抑制するJAZ1Δ3A を過剰発現させたシロイヌナズナは、MeJA処理による葉の老化誘導や、老化関連遺伝子の発現誘導が抑制され、光合成関連遺伝子の発現抑制が見られないことを見出した。よって、JAによる葉の老化誘導はCOI1-JAZを介してなされていると考えられる。JAZタンパク質相互作用をする転写促進因子のうち、MYC2の機能喪失変異体myc2 はMeJA処理による老化誘導がやや抑制され、myc2 myc3 二重変異体は抑制の程度が強まり、myc2 myc3 myc4 三重変異体はcoi1 変異体と同程度に強く老化が抑制された。よって、MYC2、MYC3、MYC4は機能重複してJAによる葉の老化を誘導していると考えられる。MYC2はターゲット遺伝子のプロモーター領域内のG-box(CACGTG)やG-box likeモチーフに結合する。老化関連遺伝子SAG29 のプロモーター領域には2つのG-box likeモチーフがあり、クロマチン免疫沈降-定量PCR(ChIP-qPCR)解析から、MYC2は直接SAG29 遺伝子のプロモーター領域に結合することが確認された。シロイヌナズナプロトプラストを用いたPSAG29-LUC レポーター遺伝子の一過的発現解析から、MYC2はSAG29 遺伝子プロモーターのG-box likeモチーフに結合することでSAG29 の発現を活性化することが確認された。また、JAZタンパク質はMYC2と相互作用をすることでMYC2の転写促進活性を抑制することがわかった。MYC2MYC3MYC4 を過剰発現させた形質転換体は、MeJA処理による葉の老化が促進され、SAG29 の発現量が高まった。サブグループⅢd bHLH転写因子(bHLH03、bHLH13、bHLH14、bHLH17)はJA応答を抑制する転写抑制因子として機能する。bhlh03 bhlh13 bhlh14 bhlh17 四重変異体はMeJA処理による葉の老化が対照よりも強くなり、老化関連遺伝子の発現量が増加し、光合成関連遺伝子の発現量が減少した。よって、bHLH03、bHLH13、bHLH14、bHLH17はJAが誘導する葉の老化を抑制していることが示唆される。bHLH03はSAG29 遺伝子プロモーター領域のG-box likeモチーフに結合することが確認され、bHLH03、bHLH13、bHLH17はMYC2によるPSAG29-LUC レポーター遺伝子の活性化を抑制することがわかった。したがって、Ⅲd bHLH転写因子は、ターゲット遺伝子であるSAG29 のプロモーター領域への結合においてMYC2、MYC3、MYC4と拮抗して転写抑制因子として機能していると考えられる。bHLH03bHLH13bHLH14bHLH17 を過剰発現させた形質転換体はJA処理による葉の老化やSAG29 の発現が抑制された。coi1 bhlh03 bhlh13 bhlh14 bhlh17 五重変異体やmyc2 myc3 myc4 bhlh03 bhlh13 bhlh14 bhlh17 七重変異体は、それぞれcoi1 変異体、myc2 myc3 myc4 三重変異体と同じようにMeJA処理による老化誘導が抑制された。したがって、Ⅲd bHLH転写因子はMYC2/MYC3/MYC4による葉の老化促進を減衰させることで老化を抑制していると考えられる。

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論文)DELLAタンパク質の経路を介さないGA応答

2015-07-24 23:06:07 | 読んだ論文備忘録

Uncovering DELLA-Independent Gibberellin Responses by Characterizing New Tomato procera Mutants
Livne et al.  Plant Cell 2015 27: 1579-1594.

doi:10.1105/tpc.114.132795

イスラエル ヘブライ大学Weiss らは、矮性トマトMicro-Tom の変異体集団の中から草丈が高くなる劣性の変異体を単離し、この変異を戻し交雑によりM82に導入した。この変異体の表現型はトマトのDELLA 遺伝子が変異したprocerapro )変異体と類似していることから、この変異体のPRO 遺伝子の塩基配列を調べたところ、VHIIDドメインの下流にストップコドンが生じ、コードされているタンパク質はGRASドメインの大部分が欠けることが判った。この proΔGRAS 変異体はM82やpro 変異体よりも草丈が高く、小葉は大きくて全縁で巻き上がり、葉柄は長く介在小葉がなく、花成が遅延し、花は花柱が長く、柱頭が突出していた。果実は楕円形で小さく、種子がなかった。 proΔGRAS 変異体のヘテロ接合体を交雑して得られた後代植物の2~8%がホモ接合体であり、理論値の25%よりも低かった。果実から採種して直ぐに播種すると、ホモ接合体の割合は25%程度になったが、乾燥貯蔵後に播種するとホモ接合体の割合が低下した。よって、proΔGRAS  変異体の種子は乾燥貯蔵により発芽率が低下すると考えられる。proΔGRAS 変異体種子では、アブシジン酸(ABA)によって発現制御を受けるABA INSENSITIVE3ABI3 )、LATE EMBRYOGENESIS25LE25 )、GALACTINOL SYNTHASE1GOLS1 )および乾燥耐性に関与しているFUSCA3-likeFUS3-like )のトマトホモログの発現量がM82種子よりも低くなっており、proΔGRAS 変異体種子は乾燥耐性の誘導が抑制されていると考えられる。DELLAタンパク質は、RING-E3リガーゼをコードするXERICO の転写を活性化することでABAの蓄積を正に制御しているが、proΔGRAS 変異体種子ではXERICO トマトホモログの発現量がM82よりも低くなっていた。よって、proΔGRAS 変異体種子の乾燥耐性の低下はABA量の低下によるものと思われる。M82やpro 変異体の芽生えはジベレリン(GA)生合成阻害剤のパクロブトラゾール(PAC)処理をすると、茎の伸長が抑制され、その後にGA処理をすると伸長が促進されるが、proΔGRAS 変異体芽生えはPACにもGAにも応答しなかった。同様にM82やpro 変異体ではPAC処理によってクロロフィル含量が増加し、その後のGA処理によって低下するが、proΔGRAS 変異体ではそのような変化も見られなかった。これらの結果から、proΔGRAS 変異体はGAに対する感受性がないと考えられる。GA生合成遺伝子GA20ox1 の発現はPAC処理によって促進され、GA処理によって抑制されるが、proΔGRAS 変異体では定常レベルのGA20ox1 発現量が非常に低く、PACやGA処理に対する応答性が見られなかった。GA不活性化遺伝子GA2ox4 の発現量は通常は低く、GA処理によって誘導されるが、proΔGRAS 変異体では恒常的にGAシグナルが出ているにも拘らず対照と同様にGA2ox4 発現量が低く、GA処理により発現が強く誘導された。このproΔGRAS 変異体のGA処理に対する応答性から、DELLAとは独立したGA応答機構の存在が示唆される。DELLAドメインを欠いたシロイヌナズナRGA(rgaΔ17 )を過剰発現させたトマトは極度に矮化し、葉は小さく葉色が濃くなり、典型的なGA活性が低下した表現型を示し、GAに対して感受性を示さない。この植物体はGA処理をしても伸長が促進されず、GA非感受性を示す。また、GA20ox1 遺伝子の発現量が対照よりも高く、PAC処理やGA処理による発現量変化は起こらなかった。しかし、GA2ox4 の発現は対照と同じようにGA処理によって誘導され、このことからもGAはGA2ox4 の発現をDELLAとは独立した経路で制御していることが示唆される。他の植物においてもDELLAとは独立した経路を介してGA2ox のGAによるフィードバック発現制御がなされているのかを、シロイヌナズナdella 五重変異体dellaP を用いて解析したところ、GA20ox2 についてはトマトの場合と同様にPAC処理やGA処理による発現量変化を起こさなかったが、GA2ox4 はGA処理による発現誘導が見られた。よって、シロイヌナズナにおいてもGAによるGA2ox4 の発現はDELLAとは独立した経路で制御されていることが示唆される。一方、シロイヌナズナの花でのGA2ox1 発現についても同様の試験を行ったが、こちらについてはDELLAによる発現制御を受けていた。シロイヌナズナの3つのGID1 GA受容体遺伝子のうち2つが機能喪失したgid1ac 変異体では、GA2ox4 のGAに対する応答性が低下していることから、DELLAとは独立したGA応答はGID1受容体にGAが結合することによって開始されると考えられる。M82とproΔGRAS 変異体のディープシークエンシング解析から、GA処理によって転写産物量が増加する81の遺伝子のうち4つ、転写産物量が減少する15遺伝子のうち1つ、すなわちGAによって制御される遺伝子の5%はDELLAを介していないことがわかった。

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論文)ストライガ抵抗性の分子機構

2015-07-20 13:26:00 | 読んだ論文備忘録

The WRKY45-dependent signaling pathway is required for resistance against Striga hermonthica parasitism
Mutuku et al.  Plant Physiology (2015) 168:1152-1163.

doi:10.1104/pp.114.256404

ストライガ ヘルモンティカ(Striga hermonthica )はトウモロコシ、モロコシ、イネ、サトウキビの根に半寄生し、作物の収量を大幅に減少させる。しかし、ジャポニカイネ品種 日本晴はS. hermonthica に対して抵抗性を示し、同じジャポニカイネ品種のコシヒカリやインディカイネ品種のカサラスは感受性を示す。理化学研究所 環境資源科学研究センター白須らは、コシヒカリがS. hermonthica に感染した際に発現量が変化する遺伝子をRNAシークエンシング(RNA-Seq)解析によって調査し、789遺伝子の発現量が増加し、315遺伝子の発現量が減少することを見出した。発現量が増加する遺伝子は、他生物に対する応答、生物刺激、防御応答に関与するものが多く含まれていた。したがって、イネはS. hermonthica を病原として認識して、寄生に対して防御応答をしていることが示唆される。誘導性の防御機構の多くは、植物ホルモンのジャスモン酸(JA)、サリチル酸(SA)、エチレンのシグナルによって制御されている。そこで、これらのシグナルに関与する遺伝子の発現をコシヒカリと日本晴の間で比較した。JAについてはJA生合成遺伝子の根における発現を調査した。その結果、ALLENE OXIDE SYNTHASE2OsAOS2 )はS. hermonthica の感染によって両品種とも発現量の一過的な増加を示したが、ALLENE OXIDE CYCLASEOsAOC )は日本晴では一過的発現増加が見られたが、コシヒカリでは発現量の変化が見られなかった。これに呼応して、日本晴の根ではS. hermonthica の感染によってJA量やJA-Ile量が増加した。SAについてはSAシグナル伝達に関与するOsWRKY45OsWRKY62 の発現量がS. hermonthica の感染によって両品種とも増加した。エチレンに関してはシグナル伝達に関与する複数の遺伝子につて調査し、一部の遺伝子の発現量が感染によって減少することがわかった。S. hermonthica に対する防御応答におけるJAの役割を解析するために、予めコシヒカリの葉にMeJAを散布した後にS. hermonthica を感染させたところ、S. hermonthica の感染量が減少し、根のバイオマスが増加した。OsAOC 遺伝子が機能喪失したhebiba 変異体は野生型よりもS. hermonthica の感染を受けやすく、根のバイオマスの減少していた。しかし、MeJA処理をすることでhebiba 変異体と野生型は同程度のS. hermonthica 抵抗性と根のバイオマスを獲得した。よって、JAシグナルの活性化はS. hermonthica の寄生に対して抵抗性をもたらすことが示唆される。細菌由来のSA加水分解酵素NahG を発現させることで内生SA量が低下したイネは、S. hermonthica に対する抵抗性が野生型の日本晴よりも高くなった。NahG 発現個体は野生型よりもS. hermonthica の感染によるOsAOS2 の発現誘導量が高く、JA量やJA-Ile量も高くなっていた。したがって、S. hermonthica 感染に対するJAの防御経路は、SA欠損NahG 個体で強く誘導されることが示唆される。イネは他の植物に比べ内生SA量が高いため、SA添加試験にあたって低濃度のSA処理をしたのでは効果が出ず、高濃度SA処理では副作用が出る可能性がある。そこでSAの機能的アナログであるベンゾチアゾール(BTH)をコシヒカリの葉に処理したところ、S. hermonthica に対する抵抗性が高まり、この抵抗性の増加はhebiba 変異体をBTH処理した際にも観察された。よって、BTHと内生SAはS. hermonthica に対する抵抗性において異なる効果があると考えられる。S. hermonthica の感染によりOsWRKY45 の発現量が増加することから、OsWRKY45 をRNAiでノックダウンしたところ、この個体はS. hermonthica の感染量が増加し、OsAOS2 の発現量が低下し、JAやJA-Ileの蓄積が抑制された。そして、この感染量の増加はJA処理によって低下した。よって、OsWRKY45S. hermonthica が感染した際にOsAOS2 の発現を制御することでJAやJA-ILeの蓄積を促進していると考えられる。BTH処理はOsWRKY45 ノックダウン個体の抵抗性を部分的に回復させ、JAの蓄積を誘導した。よって、BTHはOsWRKY45 に依存した経路に加えてOsWRKY45 とは独立した経路でJA経路を活性化していることが示唆される。

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論文)ジャスモン酸による一次代謝の変化が植食昆虫に与える影響

2015-07-02 05:57:25 | 読んだ論文備忘録

Jasmonate-dependent depletion of soluble sugars compromises plant resistance to Manduca sexta
Machado et al.  New Phytologist (2015) 207:91-105.

DOI: 10.1111/nph.13337

ジャスモン酸(JA)は植物の二次代謝を制御して植食昆虫に対する防御応答を誘導しているが、一次代謝に対する影響やそれが植食昆虫に与える効果については明らかとなっていない。スイス ベルン大学Erb らは、野生タバコ(Nicotiana attenuata )を実験材料に用いて、JA生合成酵素allene oxide cyclaseが発現抑制された形質転換体(irAOC)およびJA-Ile受容体coronatine insensitive 1の発現抑制個体(irCOI1)の葉の一次代謝産物量を対照と比較した。可溶性タンパク質量は何れの遺伝子型においても各成長過程で差異は認められなかった。デンプン量は、初期ロゼット期、ロゼット期、伸長期では各遺伝子型で差異は見られなかったが、初期開花期ではirCOI1個体のデンプン量が対照よりも高くなっていた。グルコース量とフラクトース量は、初期ロゼット期、伸長期、初期開花期のirAOC個体、irCOI1個体は対照よりも高く、ロゼット期ではirAOC個体のフラクトース量が対照よりも高くなっていた。irAOC、irCOI1以外のJA欠損形質転換体について、可溶性糖類量、JA量、JA-Ile量との相関を見たところ、可溶性糖類量とJA量との間に負の相関が見られ、可溶性糖類とJA-Ile量との間には相関は見られなかった。これらの結果から、JAは野生タバコの葉の可溶性糖類量に対して負に作用すると考えられる。可溶性糖類の日変化を見ると、irAOC個体は対照と比較して13時から17時のショ糖蓄積量が少なく、10時から21時のグルコースとフラクトースの蓄積量が多くなっていた。また、irAOC個体は13時から21時の可溶性インベルターゼ活性が対照よりも高くなっていた。irAOC個体の葉での糖蓄積量増加が植食昆虫の成長に影響しているかを見るために、irAOC個体においてRuBisCO活性化酵素(RCA)を発現抑制させてグルコースとフラクトースの蓄積量を減少させたが、irAOC × irRCA個体を摂食したタバコスズメガ(M. sexta )幼虫の成長はirAOC個体を摂食した幼虫よりも良くなった。光合成有効放射(PAR)を減らすことで対照もirAOC個体も糖含量が減少するが、このような個体はどちらも通常の光照射個体よりも幼虫の成長が良くなった。irAOC個体は対照よりも糖含量が高いが二次代謝産物が少ないので、両方の因子が幼虫の成長に影響していると考えられる。対照の葉に糖を添加してirAOC個体の糖含量と同程度にすると幼虫の成長が鈍くなった。また、予め幼虫の口腔分泌物処理をすることで低下した対照の糖含量を無処理と同等もしくはirAOC個体と同等となるように添加した場合、幼虫の成長は糖無添加の葉よりも鈍くなった。したがって、口腔分泌物処理による防御機構の誘導はタバコスズメガ幼虫の成長をJAに依存して抑制させるが、JAに依存し口腔分泌物によって誘導される糖含量の低下は幼虫の成長を促進し、誘導された抵抗性を打ち消していることが示唆される。幼虫に人工飼料を与えることでグルコースとフラクトースの個々の影響を見たところ、糖の組み合わせに関係なく糖の量に依存して幼虫の成長が悪くなり、フラクトースはグルコースよりも成長悪化の程度が高くなった。しかし、人工飼料に添加するタンパク質量を増やすと、糖含量の高い飼料の方が幼虫の成長が良くなった。以上の結果から、ジャスモン酸は可溶性インベルターゼを阻害して野生タバコのグルコース量とフラクトース量を低下させ、この糖含量の低下はタバコスズメガの成長を促進してジャスモン酸によって誘導される植物の植食昆虫に対する抵抗性を低下させていることが示唆される。

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