Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)茎頂分裂組織の複数のフィードバックループによる制御

2009-09-30 23:53:15 | 読んだ論文備忘録

Multiple feedback loops through cytokinin signaling control stem cell number within the Arabidopsis shoot meristem
Gordon et al.  PNAS (2009) 106:16529-16534.

doi:10.1073/pnas.0908122106

Cytokinin and WUSCHEL tie the knot around plant stem cells
Robert Sablowski PNAS (2009) 106:16016-16017.
doi:10.1073/pnas.0909300106

シロイヌナズナの茎頂分裂組織(SAM)は、髄状部(RM)で発現している膜貫通受容体キナーゼCLAVATA1(CLV1)に未分化状態を維持しながら増殖する中心部(CZ)で生産される分泌性ペプチドCLAVATA3(CLV3)がリガンドとして結合し、RMで発現してCZの多能性に関与しているホメオドメイン転写因子WUSCHEL WUS )の発現を負に制御することで幹細胞集団のサイズが維持されている。このCLV /WUS 回路によるSAMの形成/維持には幹細胞の生産するサイトカイニンが関与している。サイトカイニンはCLV1 の発現を抑制し、サイトカイニンシグナルの負の制御因子であるタイプAレスポンスレギュレーターARR5 の発現を誘導すること、さらにWUSがARR5 の発現を抑制していることが知られている。カリフォルニア工科大学のMeyerowitz らのグループは、サイトカイニンによるWUS の発現誘導は、サイトカイニンによるCLV1 の発現抑制による経路と、CLVを介さずにサイトカイニンが直接WUS の発現を誘導する経路の2つがあることを明らかにした。また、サイトカイニン受容体AHK4 の発現はSAMの中心部に限定されており、WUS の発現部位と重なることを示した。したがって、サイトカイニンシグナルとWUS 発現の間には複数のフィードバックループが存在し、WUS の発現をSAMの限られた領域に限定することで幹細胞集団を維持していると考えられる。

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植物観察)箱根

2009-09-26 23:00:51 | 植物観察記録

久しぶりに箱根へ行きました。7月に行った際に雄花/両性花の数を数えてきたバイケイソウ開花個体の稔実したさく果数を調べてきました。今年のバイケイソウ観察はこれで終わりとなります。開花個体の成長量、雄花/両性花比、稔実さく果数については近いうちにまとめて私のホームページバイケイソウプロジェクトに掲載します。咲いている花は秋の花でした。ヤマトリカブト、ハコネトリカブト、ホソエノアザミ、ホトトギス、シロヨメナ、イヌヤマハッカなどの花が見られました。神山の木々の葉も少し変色してきたように見えました。


ハコネトリカブト


ホトトギス


イヌヤマハッカ


ホソエノアザミ

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論文)MYB転写因子を介したアブシジン酸とオーキシンのクロストーク

2009-09-23 12:16:22 | 読んだ論文備忘録

The MYB96 Transcription Factor Mediates Abscisic Acid Signaling during Drought Stress Response in Arabidopsis
Seo et al.  Plant Physiology (2009)151:275-289.
doi:10.1104/pp.109.144220

韓国ソウル国立大学のPark らのグループは、アクティベーションタギング法で得られたシロイヌナズナのR2R3タイプMYB転写因子MYB96(At5g62470)の過剰発現変異体myb96-ox について解析を行なった。この変異体は、わい化しており、葉が湾曲して非対称、主根の成長は正常だが側根数が減少していた。MYB96 の発現は葉や花で高いが根では低く、詳細に発現部位を見ると、葉の孔辺細胞や側根原器で発現が見られた。MYB96 は乾燥、アブシジン酸(ABA)処理によって発現量が上昇し、インドール-3-酢酸(IAA)処理によっても根での発現が上昇するが、メチルジャスモン酸(MeJA)や1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)処理は発現量に影響を及ぼさなかった。myb96-ox 変異体は乾燥ストレスに対して耐性を示し、乾燥応答遺伝子RESPONSIVE TO DEHYDRATION22RD22 )発現量が増加していた。逆にMYB96 機能喪失変異体myb96-1 は乾燥に弱く、RD22 発現量が低下していた。気孔の開閉においても、ABAや乾燥処理条件下でmyb96-ox 変異体は野生型よりも気孔が閉まっており、myb96-1 変異体は野生型よりも開いていた。myb96-ox 変異体の種子発芽はABA感受性が高く、myb96-1 変異体種子は僅かではあるが抵抗性が見られた。側根形成はオーキシンにより促進されABAにより抑制されるが、myb96-ox 変異体は野生型よりもABAによる抑制の程度が強く、myb96-1 変異体は野生型と同程度だった。しかしながら、myb96-ox 変異体の根の側根原器数は野生型と変わりないことから、MYB96 は側根発達過程の後半に関与しているものと考えられる。また、myb96-ox 変異体ではIAA-アミノ酸複合体合成酵素をコードするGH3 遺伝子のうち、GH3-3GH3-5/WES1GH3-6/DFL1 の発現量がオーキシンとは独立して増加しており、myb96-1 変異体ではABAによるGH3-3GH3-5 の発現誘導が減少していた。以上の結果から、MYB96 はABAシグナルを受けてRD22 を介して地上部での様々な乾燥ストレス応答に関与し、根ではGH3 の発現を誘導して活性型オーキシンレベルを調整することで側根の発達を制御する乾燥ストレス条件下でのABAとオーキシンのクロストークに関与していると考えられる。さらに、MYB96GH3 を介したオーキシンレベル制御の負のフィードバックループにも関与していると思われる。

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学会)日本植物学会第73回大会 2日目

2009-09-19 23:08:20 | 学会参加

大会二日目の午後は学会賞の授賞式・受賞講演があった。大賞は古谷雅樹東京大学名誉教授で、フィトクロムの光環境情報受容機構に関する研究に対して授与された。古谷先生は、日本におけるフィトクロム研究環境をソフト・ハード両面から整備され、幾多の業績を上げられてこられた。学術賞は岡田清孝基礎生物学研究所所長のシロイヌナズナを用いた植物分子遺伝学の展開に対して授与された。岡田先生は、シロイヌナズナ研究を日本に導入され、シロイヌナズナ研究のコミュニティーを定着させ、発展させてきた。これまでに花や根などの形態に関する多数の突然変異体の単離・解析をなされてこられた。奨励賞は以下の3名
永田典子(日本女子大学 准教授)
「高等植物の雄性配偶体形成過程における特異なオルガネラ分化に関する研究」
西村芳樹(京都大学 助教)
「葉緑体母性遺伝の分子機構の探求」
日原由香子(埼玉大学 准教授)
「シアノバクテリアの環境順化応答の分子生物学的解析」
他に、若手奨励賞を、
池田 啓(京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程)
「系統地理学を基盤にした日本列島高山植生の進化史の解析」
風間裕介(理化学研究所 基礎科学特別研究員)
「雌雄異株植物ヒロハノマンテマの性染色体と性発現機構」
桧垣 匠(東京大学大学院新領域創成科学研究科 特任研究員)
「アクチン繊維の生体可視化と画像情報処理による細胞形態形成・制御機構の解析」
吉田大和(立教大学極限生命情報研究センター・ポストドクトラルフェロー)
「ゲノム情報とプロテオミクスを基盤にした色素体・ミトコンドリア分裂装置の構造と分子機構に関する研究」
の四氏が、特別賞を
大林 武(東京大学医科学研究所 特任研究員)
「シロイヌナズナ遺伝子発現に関する汎用性の高いデータベースの構築」
百瀬忠征(東京農工大学 工学部生命工学 研究生)
「長年にわたる植物学会での発表と教育に対する貢献」
国際生物学オリンピック日本委員会および国際生物学オリンピック2009組織委員会
「生物学を志す次世代の若者を育成」
後藤伸治(宮城教育大学名誉教授)
「仙台シロイヌナズナ種子保存センターの設置・運営に関する貢献」
野尻湖水草復元研究会
「野生絶滅車軸藻ホシツリモの復元を目指した活動とその社会的貢献」
が受賞した。同時に2009年度のJPR 論文賞の発表もあり、BEST PAPER賞は、
Hybridization and asymmetric introgression between Rhododendron eriocarpum and R. indicum on Yakushima Island, southwest Japan
Tagane et al.  JPR 121(4): page 387-395.

Low temperature-induced chloroplast relocation mediated by a blue light receptor, phototropin 2, in fern gametophytes
Komada et al.  JPR 121(4): page 441-448.

の2報が、Most cited paper賞は、
An improved technique for isolating codominant compound microsatellite markers
Lian et al.  JPR 119: 415-417.
が受賞した。

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学会)日本植物学会第73回大会 1日目

2009-09-18 23:00:24 | 学会参加

日本植物学会第73回大会が山形大学小白川キャンパス(山形市)で開催された。東北地区での開催は1999年の秋田大学での第63回大会以来となる。山形大学小白川キャンパスには、事務局・人文学部・地域教育文化学部・理学部・附属図書館・博物館・学術情報基盤センター・留学生センターがあり、他に飯田(医学部・医学部附属病院・遺伝子実験施設)、米沢(工学部・地域共同研究センター・大学院ベンチャービジネスラボラトリー)、鶴岡(農学部)にキャンパスがある。大会ロゴは、ナデシコ科ノミノツヅリ属の多年草チョウカイフスマ(Arenaria merckioides Maxim. var. chokaiensis (Yatabe) Okuyama)がデザインされたものだった。この植物は雌性両全性異株で、鳥海山山頂付近の荒涼とした砂礫地に生息する。大会期間中、付属図書館で「杉崎紀世彦・杉崎文子ボタニカルアート展」が開催された。杉崎紀世彦・杉崎文子夫妻は、山形在住のボタニカルアート作家で、山形県の草花を題材とした繊細で瑞々しい植物画は、国内外で高く評価されている。

学会の会場となった山形大学小白川キャンパス

大会ロゴのチョウカイフスマ

杉崎紀世彦・杉崎文子ボタニカルアート展のポスター

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論文)ササの一回繁殖性の検証

2009-09-16 05:53:01 | 読んだ論文備忘録

Genets of dwarf bamboo do not die after one flowering event: evidence from the genetic structure and flowering pattern
Miyazaki et al.  J Plant Res (2009)122:523-528.
DOI:10.1007/s10265-009-0241-9

タケ・ササ類は長寿命一回繁殖性植物で、一斉開花結実によって枯死し、種子により再生するという生活史をもっているとされている。しかし、ササ類は個体識別が困難であるため、開花個体群の遺伝構造を把握した上で、一回繁殖性を検証されることはなかった。奈良県森林技術センター・北海道大学の宮崎らは、北海道大学苫小牧研究林においてオモエザサ(Sasa pubiculmis Makino subsp. pubiculmis )個体群の開花パターンを4年間(2004-2007)調査した。調査期間内に1つのジェネットにおいて開花が確認されたが、同一ジェネット内で開花は一斉に起こっておらず、全てのラメットが開花していない部分、開花ラメットと非開花ラメットが混在している部分、ほとんど全てのラメットが開花している部分が同時に存在していた。ほとんど全てのラメットが開花した部分のうち、開花後に全ての地上部が枯死した部分もあったが、翌年以降も生き残るラメットがある部分もあった。また、開花ラメットと地下茎で繋がっている非開花ラメットは、開花ラメットが枯死した後も生存し、13CO2を用いたトレース実験から、非開花ラメットから地下茎で繋がった開花ラメットへ同化産物が転流していることが確認された。以上の結果から、オモエザサは一斉開花はするが、必ずしも一回繁殖型の生活史を有していないことが示された。

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論文)様々な成長過程に関与しているオーキシン生合成酵素遺伝子

2009-09-14 23:10:14 | 読んだ論文備忘録

The TRANSPORT INHIBITOR RESPONSE2 Gene Is Required for Auxin Synthesis and Diverse Aspects of Plant Development
Yamada et al.  Plant Physiology (2009) 151:168-179.
DOI:10.1104/pp.109.138859

米国インディアナ大学のEstelle らのグループは、オーキシン輸送阻害剤N-1-ナフチルフタラミン酸(NPA)に対して抵抗性を示すシロイヌナズナtransport inihibitor responsetir )突然変異体を7つ単離しており、これまでにオーキシンシグナル伝達(TIR1 )、オーキシン輸送(TIR3 )、オーキシン生合成(TIR7 )に関連する遺伝子を見出している。今回、新たにtir2 変異体について解析を行なった。tir2 変異体は芽生えをNPA処理しても根毛の伸長促進や根端のコルメラ細胞の増加が見られない。また、tir2 変異体では側根数の減少、根の重力屈性の低下、子葉の維管束組織の減少、芽生えを高温処理(29℃)した際の下胚軸や葉柄の伸長促進の低下といった変異が見られる。ポジショナルクローニングによりtir2 変異の原因遺伝子の同定を行ない、tir2 変異ではアリイナーゼ様タンパク質をコードしているAt1g70560 遺伝子の第3エクソンに変異が入ることで171番目のGly残基がGlu残基に置換していることを突き止めた。この遺伝子はTRYPTOPHAN AMINOTRANSFERASE OF ARABIDOPSIS1TAA1 )として同定されており、著者らの解析からもTIR2はトリプトファンからオーキシンの前駆体であるインドール-3-ピルビン酸を合成するTrpアミノトランスフェラーゼであることが確認された。TIR2 プロモーターにレポーター遺伝子としてGUSを繋いだコンストラクトを導入してTIR2 の発現部位を見たところ、若い葉と子葉、シュート、下胚軸、根の維管束での発現が確認されたが、根の分裂組織では発現していなかった。オーキシンは子葉でのTIR2 の発現を負に制御していたが、根では正に制御しており、根における正のフィードバックループがオーキシン合成を増加させることで重力屈性応答を増幅させているものと思われる。また、TIR2 の発現は高温処理で上昇することから、高温による成長促進と関連があるものと思われる。TIR2は下胚軸や葉柄の伸長、側根形成、重力屈性、根毛形成といった様々な過程に関与しているオーキシン生合成経路の酵素である。

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論文)インドール-3-酪酸排出による細胞内オーキシンレベルの調節

2009-09-10 23:42:03 | 読んだ論文備忘録

The Arabidopsis PLEIOTROPIC DRUG RESISTANCE8/ABCG36 ATP Binding Cassette Transporter Modulates Sensitivity to the Auxin Precursor Indole-3-Butyric Acid
Strader and Bartel  Plant Cell (2009) 21:1992-2007.
doi:10.1105/tpc.109.065821

インドール-3-酪酸(IBA)はパーオキシゾームにおいて脂肪酸のβ-酸化に類似した過程を経て炭素側鎖が短くなりインドール-3-酢酸(IAA)となる。シロイヌナズナのインドール-3-酪酸応答突然変異体iba response5ibr5 )は、二重特異性ホスファターゼに欠損があり、オーキシンおよびアブシジン酸に対する応答性が低い。ライス大学のBartel らのグループは、ibr5 変異体のIBAに対する応答性が回復しIAAに対する応答性の低い修飾変異体MS115を単離し、解析を行なった。そして、この変異体は細胞膜に局在するATP結合カセット(ABC)トランスポーターの1つ、PLEIOTROPIC DRUG RESISTANCE8 PDR8 )/PENETRATION3 /ABCG36 に1塩基置換が入り、11番目の膜貫通ドメイン内のアミノ酸残基が変異したものであることを突き止めた。pdr8 変異体はIBAに対する応答性が非常に高いがIAAや合成オーキシンのNAAに対する応答性は野生型と変わりがなかった。また、pdr8 変異体は細胞内のIBA蓄積量が多く、IBAの細胞外排出量が少なかった。これらの結果から、PDR8はオーキシンの前駆体であるIBAの細胞外への排出を担っており、細胞内にIBAが過剰に蓄積するのを防ぎ、細胞内のオーキシンレベルの安定化に貢献していると考えられる。

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論文)イネの花器官形成を制御するC2H2ジンクフィンガー型B-クラス転写因子

2009-09-09 06:14:54 | 読んだ論文備忘録

STAMENLESS 1, encoding a single C2H2 zinc finger protein, regulates floral organ identity in rice
Xiao et al.  The Plant Journal (2009) 59:789-801.
DOI: 10.1111/j.1365-313X.2009.03913.x

イネstamenlesssl )突然変異体は、内外穎が歪んでいるために開花後に完全に閉じることができず、心皮もしくは心皮様の器官が多数形成され、心皮と歪んだ内外穎との間に内外穎様の器官が形成される。また、正常な雄ずいが形成されず、代わりに退化したり心皮とキメラ化した雄ずいや、複数の柱頭を持つ心皮が形成されたりする。さらに第3ウォールに無定形の細胞塊が見られることがある。よって、sl  は鱗被と雄ずいが内外穎と心皮に変化したB-クラス変異体である。中国科学院 遺伝・発育生物学研究所のZhu らは、詳細なマッピングからsl1 変異の原因遺伝子を突き止め、SL1 は263アミノ酸からなるC2H2ジンクフィンガー型の転写因子をコードしていることを明らかにした。SL1タンパク質のモチーフの構造は、シロイヌナズナの側生器官形成に関与しているJAGGED(JAG)と類似していた。SL1 は長さ5㎝以下の若い円錐花序で強く発現しており、花序がそれよりも大きくなると発現が弱まっていった。SL1 は花器官形成過程において鱗被や雄ずいの原器において発現が見られ、心皮の原器が形成されると全てのウォールで発現が検出される。SL1 の発現パターンは、シロイヌナズナのB-クラス遺伝子APETALA3AP3 )のイネホモログSPW1/OsMADS16 とよく一致しており、sl1 変異体ではSPW1/OsMADS16 の発現が殆ど見られない。よって、SL1SPW1/OsMADS16 の発現を正に制御している因子であると考えられる。

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論文)ヒストン修飾による根の成長制御

2009-09-07 22:57:05 | 読んだ論文備忘録

The histone deacetylase OsHDAC1 epigenetically regulates the OsNAC6 gene that controls seedling root growth in rice
Chung et al.  The Plant Journal (2009) 59:764-776.
DOI: 10.1111/j.1365-313X.2009.03908.x

ヒストンのN末端テール領域は、アセチル化、メチル化などの修飾を受け、遺伝子発現のエピジェネティックな制御をしている。ヒストン中の特定のリジン残基のアミノ基がアセチル化されるとヒストンの電荷が中和されてヒストン-DNA間の結合が部分的に弱まることで転写が活性化し、脱アセチル化されると逆に転写が抑制される。韓国明知大學校のKim らは、以前にイネのヒストン脱アセチル化酵素OsHDAC1 を過剰発現させた形質転換体を作成し、この個体の芽生えの一次根の成長が非組換え体よりも良くなることを見出した。本論文では、このヒストン脱アセチル化により根の成長を制御しているターゲット遺伝子の探索を行なった。根で発現している遺伝子のマイクロアレイ解析から、OsHDAC1 過剰発現個体で発現が抑制され、HDACに対する阻害剤で処理した非組換え体で発現量が増加している39個の遺伝子を見出した。これらの遺伝子のうち、NAC型転写因子のOsNAC6 に注目して詳細な解析を行なった。OsNAC6 ノックアウト個体の芽生えはOsHDAC1 過剰発現個体と同様に根の成長の促進が見られ、OsNAC6 過剰発現個体とOsHDAC1 ノックアウト個体の芽生えでは根の成長が対照よりも劣っていた。OsNAC6 転写産物量はOsHDAC1 過剰発現個体で高く、OsHDAC1 ノックアウト個体で低くなっており、OsHDAC1はOsNAC6 の発現を負に制御することで芽生えの根の成長を制御していることが示唆された。また、クロマチン免疫沈降アッセイから、OsNAC6 遺伝子プロモーター領域の-146~+2に位置するヒストンH3の9、14、18番目のリジン残基、およびヒストンH4の5、12、16番目のリジン残基がOsHDAC1の標的となり脱アセチル化されることが確認された。

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